2019年03月21日

古見さんは、コミュ症です。(12)オダ トモヒト (小学館)


信者にとって聖典みたいなもので褒めるしかないですが12巻はちょっといろいろ冒険巻。

古見さんという容姿端麗眉目秀麗なのにコミュ症なJKとその愉快な仲間がおりなすギャグマンガ。

2年の夏休み編突入。1年と2年ではどうちがった夏休みになるかというのが見どころっす。

2回めってのはけっこう大きくてさ。いろいろな行事で2回めをなぞるのは難しい。省略したり別の行事をぶっこんでもいいんだけど、学園モノにおいて、夏休みはどうあがいても省略しにくい間になるからねー。そうじゃなくても美味しいから絶対に利用したいところだし。

で、今回の夏は1巻からいる長名なじみさんを封印しがちという冒険をまず。

コミュ症の彼女との好対照でコミュ力の化物でなおかつトラブルメーカーなので、ひとりいると物語が動くし間が持つ。だからあらゆるイベントに混じってきてる。ところが今回は彼女を抜いて海に行くという大冒険イベントが発動するわけです。それ以外にも13巻でのなじみの出番はかなり抑えてあったように思える。(んま、作者はバランスのひとだから、別のところで帳尻を合わせる感じで、ラストに大活躍するところもあるけどさ)

この海での序盤の盛り上がらなさがまた画期的。この夏は全体的に静かな夏な感じがする。はっぴいえんどの「夏なんです」的な。顕著なのがTwitterで作者が1番気に入ってるというトマトを育てるというネタ。古見さんがひとりでトマトの世話をするというだけの話。お母さん以外に登場人物もいない。

ほかにもラジオ体操に参加するというネタもあった。

これらは、古見さんの成長も物語ってはいえるんだよな。植物を育てたりラジオ体操に行くって、小中学のときにできることではあるんだけど、彼女はずっとコミュ症でそんなことはできなかったんだよな。とくにラジオ体操。だから積年の想いがあるだろうなと。それをはじめてできた。それも1年から只野くんをはじめ友達が彼女に自信をつけて後押ししてきたんだからと。

とはいえ、ここいら地味だしあまり笑いもないのでものたりなくはあるんだけどさ。とくに「あずまんが大王」の功績であり罪である、細かいネタを織り交ぜても読者はついてきてこれるよね的なのがある(きっちりフォローしてきてはいるんだけどさ)。

今回は「静的な夏」を後押しするかのように、山井恋などのクレイジーなノリにするキャラや展開がないのも特徴。
なんというか地味なグループが静かに夏を過ごしている感。そしてたぶんおのおののキャラもおのおので過ごしてるんだろうなあと。

なおかつそこにきてニューキャラ。これも毎巻のことではあるが後半に出てきた小2の知り合いの子。古見さんと同じ家に寝泊まりするという新展開。これを推しすぎの気もする。あざとさがある。ただ彼女は次巻も引き継ぎだから判断は微妙なのよね。そう、今回、次も夏休みだからいろいろと判断保留のところもあるんだよな。あらゆることが前フリとはいえる。

と、いろいろと挑戦されておられる。でも、そろそろ古見さんもコミュ症っぽさはだいぶ失われて、美人だけど超おとなしいくらいになってきている。友達も多くなったし、まわりのキャラもだいぶ古見さんを把握するようになってきているからな。そうなるとキャラとしてはどうしても弱くなるという弱点がなあ。
今回は、只野くんとの萌え展開みたいのはなかった。10巻から恒例の万場木さんと只野くんの萌えシーンはがっちりあるんだけどね。

あと、おまけー。
(折りたたむよ)




男がなにもしないのに複数女性にモテるマンガはダメーってネタがバズってた。作者はマンガ描いてるし本も出してる。くだんのハーレムマンガの具体的なタイトルを挙げてなかったけど、それに該当する具体的なモノってあるかね?

おれが読んでるラブコメといえば、「古見さんはコミュ症」「かぐや様は告らせたい」「ぼくたちは勉強ができない」「初恋ゾンビ」「六道の悪女たち」くらいかな。あとアニメでみて「ゆらぎ荘の幽奈さん」なんかはネットでフェミのかたがバズった記憶がある。そのほかいくつかアニメはみてるか。

上記該当のどれも「なにもしてない」男主人公がモテてるマンガはないね。みんなチートな能力が備わってるか、努力してるか、チート能力があるのに努力してるやつばかりだ。

なんでそうなるのかというと1番大きい理由はなにもしてない主人公がモテるのは嘘くさいからなんだね。

キャラメイクに1番大事なのは現実と嘘。すなわちリアルとワンダーのブレンド。ウソすぎてもダメだし本当すぎてもダメ。

なにもしてない男主人公が次々と女性キャラに惚れられるのはワンダーすぎる。かといってあらゆる努力をしてるのに鼻もひっかけてもらえないリアルすぎる展開のラブコメなんかみたくもない。

よって、モテるためにこれだけの理由があるという「リアル」を混ぜていくことにより説得力というキャラの魅力が加わるのです。上記の男キャラはすべて努力してます。ヒロインや女子キャラのために身を粉にしてます。そして「じゃあモテるのも仕方ない」と説得力が生まれて同時に感情移入します。結果「おもしろい」となる。
ただまあそれは男性にとっての説得力ではある。女性にとってはいかにも嘘くさいところは多々あるだろうけど、それはお互い様。どっちがいい悪いではないよな。

これは逆もそうなんだよな。たとえば本宮ひろ志氏あたりからはじまっている番長マンガの、主人公のいうことに全肯定の女性キャラは同様の理由でモテない。だから逆に「いろいろ」ある。これがここ20年くらい日夜研究開発されている「属性」です。たとえば、メンヘラだからカワイイが性格に難ありだからこれはアリみたいな、あからさまでもうしわけないがそういう元も子もないあからさまなリアルを注入することで感情移入を可能とするわけよ。

男キャラがちゃんとしてることはけっこう大きくてさ、わりに男性キャラに感動させられることが大きい。それこそ、本作における只野くんも、古見さんに優しくし、コミュ症を克服するべく奮闘しているうちにその優しさや気配りや強さを古見さんだけじゃなくて全員に示すことができるようになっているんだよね。無理やりネタのように委員長に押し付けられてましたが、いまやマジで委員長くらいの信頼と実績と実力を得ることができているし、それに素直に感心し感動するのですよ。んま1巻1話からやさしさと気配りの片鱗は伺えますけどね。

とはいえ、12巻は地味でしたかねー。13巻超期待。



posted by すけきょう at 14:19| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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