ベテラン大御所マンガ家(といっても差し支えないだろう)の中川いさみ氏の鼻の奥にできたガン宣告からの5年に渡る軌跡を。
とはいえ、タイトルの通り、日本に二箇所しか無くてそのうちの一箇所の神戸にいって重粒子線治療を受けるというもの。その2ヶ月の日々がメイン。
しかも、本人にはまだ自覚(痛みなど)がなくて、むしろ重粒子線治療によって起こる鼻の変化くらいかな。鼻の皮がベロベロにむけて赤くなる。
でも放射線や抗癌剤治療による副作用もない。すごく画期的。保険適用外で金がかかるくらい。だから、主人公は普通に仕事をして、なおかつ、日課として1日1万歩歩いたりしてる。
この退屈な感じは非常にわかる。3ヶ月だらだらと入院してたからなあ。
そして重粒子線治療もわかる。なぜなら父親がガン宣告されたときにどこかでここを週刊誌でみつけてもってきたから。ただ、こんな一箇所どころでもない転移しまくりの末期だったので「あきらめなはれ」ってことにはなった。
淡々とした退屈な日々。なまじ動けるし不都合と行ったら人前に出ると鼻の赤いのが目立つのでマスクを手放せないくらいで、なおかつ、歯科医に通う必要があるのでいろいろと寄り道したりとちょっとした単身赴任くらいな感じ。PCとタブレットを持ち込み普通に仕事もできてるみたいし。
書いてあることに嘘はなにもないが、帯のいろいろはちょっと大げさだと思った。
「病室で原稿を描き、瀬戸内グルメを行脚し、患者仲間と出会い」とか。
その淡々としつつ、入院も含めての「旅」な感じ、でも、それははしゃいだりことさらにアッパーな気分になるようなものではないって感じは非常によくわかる。病院のとき窓から見える世界一風景のキレイなスタバにいくまで死ねないと思ってたもんだ。いまだにいけてないけどそのスタバ。
かように氏の今後の症状も大げさなことがないことを祈りますわ。