2019年05月08日

ひょうひょう ネルノダイスキ (アタシ社)


ボールペンによる細密な背景画、反面、炭酸の抜けたようなネコ的な人物画。キテレツな世界観、予想つかないストーリー。

たとえば、
「コーサ」では柴犬のお尻をクリーニングする仕事をする主人公が、どのように仕事をしているのか細かく説明している。ベルトコンベアに乗ってやってくる柴犬のお尻の穴を綿棒でキレイにする仕事を精密に詳細に紹介する。
「アザーサイド」ではネットで検索した場所に行き死後の世界に行き帰ってくる。全身に入れ墨をほどこし、魂を抜け出すことにより旅立っていく。
「へのへのもへ」は田んぼに現れた謎の巨大生物「もへじ様」を退治するアクション巨編。

ロケハンきっちりしてるだろう現在の日本の背景、誰も想像つかないであろう背景。それらがシームレスにつながっている。

と同時にあらゆるところからの影響を発見する。マンガ、映画、ドラマ、映像、ネットなどなど。固有名詞を出したら100じゃきかないくらい(当然おれがわからないものもある)。それによりすべてから等距離をおいて宙空に存在しており、結果、何年に一度というレベルで得難い独自性を持ち、キラキラ輝いている。

あとがきによると自身は作品を昔話やおとぎ話のように位置づけたいとしている。なるほど、敷居の低さ、そのわりに、奇想天外であり奥深さも兼ね備えている。おとぎ話だ。荒唐無稽、ほら話、そういうところがいい面として作用している。

光り輝きどことなくひんやりするメタリックの表紙。紙質も印刷の感じも独特。編集装丁とってもグッジョブ。

気になった方はぜひすみやかに手に入れておかれること推奨。できるかぎり紙の本で(現時点電書はないが)。ずっと物体として現象として手元においておきたくなる1冊。うーと、もうちょっと盛るならすでにして令和を代表する1冊になっているかもしれない。おれ的には10年に1度レベル。ちょっといやらしい話、10年後に今の価格の10倍で取引されててもおかしくないものだと思うぞ。

個人的には「日々雑感」。ヒップホップなミュージカルというかテンポがよくてなおかつ楽しくこの世界観をポップに彩っていて最高。帯のコメントがスチャダラパーのBOSEさんってのにシンプルに引っ張られているのかもしれないけどとても楽しいし新しいし作者の味が遺憾なく発揮されてるなと。


posted by すけきょう at 13:55| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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