売れない小説家マンガも最終巻。作者のほぼ最初の長編だったそうです。
1巻より主人公のまわりにいた女子大学生と「気づいたらやってた」って文学的なやつをやっていいなあと。それが3巻の最大の感想です。文学だとどうしてそうなるのかと思うよなあ。気づいたらやってたいよなあ。と、そういう事ばかり考えてしまうのです。いわば文学的な感想です。
そしてオビにあった「心を揺さぶるフィナーレ」ね。そのJDとの生活が楽しくて書けなくなる主人公がふたたび書くようになるまでのきっかけなんですよね。そこからラストまでが本当鮮やか。そのきっかけの場面でフォーカスがキチっと合う。そこにはたしかにゆっくりではあるけどココロは揺れた。
ああ、ふとつながった。「の・ようなもの」だ。森田芳光監督の落語家のめんめんを描いた映画。だいぶ昔の。昭和の映画。これを連想したんだ。ちょっと誤解を招きそうだけど、「うそくさい」ところが。
「の・ようなもの」は売れない栃木弁丸出しの二つ目の落語家が主人公。ほかにも抑揚のない「テクノ」みたいな落語をする同期、妻帯者なのに後輩に金をたかってまでソープに行く兄弟子とか、いろいろ。
このそれぞれの「本当にいるかもしれない。でもいなそう」ってラインというか、それが実在しようとしまいと、別にかまわないという、ここに漂う空気を愛でるマンガという点で、本作と「の・ようなもの」は似ていると思った。
主人公は警備員のバイトで生計を補助しつつ、ポメラDM100を開いては帰り道の電車でも言葉を紡いでいく。そして10歳年下の女子大生と懇ろになったり、大学の学園祭でDJとかいかしたメンバーと「たほいや」をする。
それがリアルなのかファンタジーなのかおれにはよくわからない。でも、この雰囲気は悪くない。その雰囲気が「の・ようなもの」に似てると思ったのでした。
そういや、本作のラストページは、同じ森田監督の「家族ゲーム」のラストのそれに似てたな。
オカヤさんの次作を期待してます。あとやっぱりポメラがほしくなるな。小説を書く気はないんだけどさ。