2019年08月17日

心臓 奥田亜紀子 (リイド社)




読み終えて最初に思ったのが「さよなら平成」と。

6年ぶりの単行本だそうです。おれにははじめてです。書店にて「呼ばれ」ました。こういうことがあるので書店で本たちの声に耳をかたむけるのは大事なのです。

5本の短編に大橋裕之氏との合作ショートショートな「DREAM INTO DREAM」がインターミッションのように収録。

アフタヌーン系の雑誌におもに発表されておられる感じで、それはいま、奥付をみて知ったのだけどいわれてみればそれっぽいなと思ったりちょっと違うなと思ったり。

余命宣告されたJKの表題作「心臓」

親友とそのDV彼氏との変な関係の「ニューハワイ」

寝たきりの双子の姉と妹の恋愛の「神様」など。

昭和より地続きの「平成」を想う。それは最新作である「るすばん」にとっても顕著だけど、平成というのは日常にPCやデジタルが本格的に入り込んではいるけど、溶け込む最初であり最後の時代だったなと。昭和だと完全な異物であるPCをはじめとするデジタルガジェットが日常に溶け込んでいく過程こそが平成だったのかしらと。

「るすばん」でマンガを描いている彼女は「スクリーントーンとはなんだろう?」と思いつつ点々を描くことでで再現しようとする。逆に令和以降はスクリーントーンの使用頻度は極力下がるだろう。いまや液タブで描くほうが主流げな感じあるし。
そんな昭和と令和の狭間に存在する平成。文化その他モロモロ。その総決算のように思えた。そう考えるとギャグ要素の強い大橋裕之氏との共作の数々もいかにも「それ」に思えたりしてくる。

偶然かどうかともかく本作に出てくる小物はこの先消えゆく感じのものが多い。黒電話、ファミコン、ブックオフ、有線のイヤホン、和室に誂えた木で組んである外枠の和テイストの蛍光灯のシェード、ねるねるねるね等々。本作にガラケーはあるけどスマホは出てきてないしね。

引き合いに出すのもなんだけど、今年読んだ中ではもっとも「令和」な感じをもった「ヒョウヒョウ/ネルノダイスキ」とは好対照であり、この2冊で2019年令和元年はかなりセットになっているように思えた。これまでのマンガとこの先のマンガのセット。

参照:[ひょうひょう ネルノダイスキ (アタシ社): ポトチャリコミック]

それぞれの作者が新しいや古いってことじゃなくてそれぞれの作品、今回の場合は本作が「平成」を指してたわけでね。奥田亜紀子氏の次回作は令和を先取りするものかもしれない。
でも、平成は終わったという思いはこの作品で強く感じた。ニューハワイのDV男も平成が生んだ化け物のような気もするしな。

そう考えると書店によって新刊のマンガを眺め「これおもしろそう」とジャケ買いする機会も減っていきそうだよな。書店で紙の本を買ってきてネットに感想を挙げる。そしてネットで買ってもらう。これも非常に平成ですね。令和もそれがつづく感じはしないね。

ポトチャリコミックなんてのもね。






posted by すけきょう at 12:47| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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