2019年8月に発売された筒井漫画瀆本の続編であり、2010年発売の文藝春秋版を基底に、筒井康隆氏みずからの作品を3作収録しております。
参加マンガ家は以下。略称敬、じゃなくて敬称略で。
◆明智抄「幸福ですか?」
◆いがらしみきお「北極王」
◆伊藤伸平「五郎八航空」
◆折原みと「サチコちゃん」
◆雷門獅篭「落語・伝票あらそい」
◆菊池直恵「熊の木本線」
◆鈴木みそ「あるいは酒でいっぱいの海」
◆大地丙太郎「発明後のパターン」
◆高橋葉介「ラッパを吹く弟」
◆田亀源五郎「恋とは何でしょう」(『男たちのかいた絵』より)
◆竹本健治「スペードの女王」
◆萩原玲二「弁天さま」
◆畑中純「遠い座敷」
◆みずしな孝之「フェミニズム殺人事件のようなもの」
◆Moo. 念平「うちゅうを どんどん どこまでも」
にとり・みき「わが良き狼」は文庫1作に収録で除外。
くわえて「たぬきの方程式」「傷ついたのは誰の心」「客」の筒井作品を巻末収録。
前作である漫画瀆本のオリジナルが1995年で今回は2010年。この15年でのマンガの移り変わりでしょうか。筒井作品はわりあいとして古いものが選ばれており原作のマンガ化での洗練さというか変遷が鮮明となっておりそこが見どころのひとつにはなってますね。
それぞれのマンガのチョイス、自身の作風に合わせてのもあり、意外なチョイスもある。そのどれも共通するのはマンガとして成立しているというか帳尻を合わせている。完成度が高いというと微妙な表現になるし、よりおもしろくなるというとこれまた齟齬が生じる気もする。ちょっと面映いものいいではあるが「よくできている」と。ここが差なのかと思った。
小説からマンガへのメディアを移すことはどんどん洗練性がましています。そういう中で、本作は選ばれている作品は短編をおもにしておりますが、それでも漏らしてしまったりする内容を絵と内容とマンガならではの描写と処理などでうまく補完しております。その技術がまずおもしろいなあと。そこらへん研究すると筒井原作、1と2で卒論書けますよ。
ま、学生じゃないので淡々と感想書いていきまーす。
いがらし北極星、大地発明後の、マンガ家からのイメージ解釈のおもしろさ。雷門伝票やみずしなフェミニズムの4コマというホームフィールドでの落とし具合。大地氏と竹本健治氏それぞれの異業種でのマンガも、前作の清水ミチコ氏のような破天荒さはなく「マンガ」してるなと。
個人的におどろいたのは菊池熊の木本線です。
菊池直恵氏は「鉄子の旅」というアニメ化もされた鉄道ルポマンガでその流れで鉄道が出てくる本作も抜擢されたんだろうと思っておりましたが物語の再現度、描画、とくに家に列車が入り込むシーンなどはすばらしくて、ちょっと驚きました。「鉄子の旅」では同乗者のエキセントリックなキャラである横見氏にフォーカスを合わせていてあまり列車や景色描写をしてなかったような記憶があったから。
[むしろウツなので結婚かと - 菊池直恵/城伊景季 / 第9話 何してるの!! | コミックDAYS]
この最新作ではときおりバズったりと話題になっており「なるほどな」という逆発見があったりしました。
萩原弁天も絢爛豪華なイメージ。作者は「パプリカ」という長編のコミカライズも行っており、のちに今敏監督による劇場アニメ化も果たされているが、そのアニメ版のノリを経由したかのような弁天さはよかった。軽いバカ話の原作をブラッシュアップしてネオン装飾を施したことでよりバカをました。
ほかには田亀恋とは〜や畑中遠い座敷、伊藤五郎八空港の、適材適所としかいいようのない作品。これまた自作くらいの力量と熱量で仕上げてオラれてますよね。とくに畑中純さんすげえわ。
筒井3作品では1で蛭子能収氏がマンガを担当した「傷ついたのは誰の心」の作者本人による漫画化が興味深い。同じ作者でも解釈がちがうよなあ。蛭子氏もかなり忠実なコミカライズをしていることがわかるよなあとか。マジで筒井康隆氏マンガうまいよなあとか。
正直なところすでにして現在では少し古めな作品や印象はあります。だからこそ今また3はいいかな!というかぜひ読みたい!誰がどんな作品をどんな風に料理して3にするか。とても興味がある。