「パンダ探偵」の澤江ポンプ氏の初短編集。
[パンダ探偵社 1 澤江ポンプ(リイド社 torch comics): ポトチャリコミック]
作者は直腸がんになり療養しつつということで(本作のあとがきマンガにありました)、パンダ探偵はどうなるのかわかりませんが、これまでの短編集が出ました。
これがとてもおもしろい短編集です。10年という歳月で描かれており、なおかつ、商業誌掲載のものから、Twitterに発表した身辺雑記的なものと、雑多という意味では恐ろしい幅があります。川といいつつ黄河とかナイル川ってくらいの幅です。絵柄もかなりな幅。というか、全作品ちがう気がするな(日々試行錯誤されてるような)。ジャンルもSFからコメディ、ホラー、アクション、ガロ的なのや、ナンセンスギャグ、感動巨編(短編集だから巨はねえか)などなど。
ただひとつすごい狭い幅があります。前記の通り「おもしろい」ことですね。「おもしろい」以外の評価の幅がない。みんな「おもしろい」んだ。
「あー、これおもしろい」「これいいなあおもしろい」「いや、すげえいいなあ」「お、これもかなり」みたいにおもしろがっているうちに終わってしまうという。
ただ、メリハリはある。
妻が裸族の話「ハダカヨメ」からはじまり、不思議少女がやってくる「夜明けの未来ちゃん」、プロレスアクション巨編「レッツインテリ」、ガロに載っててもおかしくない「煙街」、本来はパンダ探偵に載せる予定の「はっぱの人」。
そして、ラストはやっぱりこれになるだろうなあって「サイコンクエスト」で終わる。
うんおもしろいおもしろいおもしろい。いつでもどこからどう読んでもおもしろい。すごいおもしろい。
と、おもしろいがたくさんつまった短編集です。2020マンガ短編集でもトップになると思います。このレベルの短編集は今年はもうないだろう。気が早いですが。