3巻を読んで思ったのが「山田が気持ち悪い」ということです。市川じゃないですよ。山田のほうです。読モで中学生とは思えないボディでかわいくてたまにテレビも出て映画の出演も決まってる山田ですよ。
市川クンは中2病をこじらせてるわかりやすい中2です。彼は中2と非モテとコミュ症をこじらせて、クラスで1番目立つ存在である山田を殺そうなんて思ってました。でも、いろいろあって1巻で気がつきました。「おれは山田が好きなんだ」って。
で、本作は市川の心の声のみ読み取ることができるのですが、みた限りだと、2巻ではどうやら山田も市川のことが好きになっているみたいです。どこかはっきりとしたものがないのがリアルですが、図書館でおやつを食べるのがバレそうになり手を掴んだ前後とかかね。
真理なんですが、好き同士であっても、恋人でも、結婚していても、親子でも、その愛情は等しくなることはありません。
同じ10点満点の10点同士になるのは一瞬はあるかもしれませんが、それは徐々にずれていくのではないかと思うのですね。つきあわないともっとその数値はいろいろとちがいます。
市川は何点かわからないですが山田が好きです。ただ、向こうが好きであるはずがないと思ってます。その点では中2らしいけど賢明でもある感じ。
ところが山田はそうはしなかった。気づいてからずっともう自分の「好き」を止められない。で、どんどんギュウギュウと距離を詰めてきてる。それに市川は戸惑うばかり。なぜなら自分を好いてくれているわけがないと思ってるから。というか、思い込みたがっているから。でも、最新作(4巻収録するだろう)で、「気持ちが伝わりそうで怖い」なんて思ったりもしてる。
この山田が必死ですごい圧なんですよね。それにおされて思わず「気持ち悪い」という感想を持ってしまったわけです。
つまり、その山田の圧が伝わってくる筆力ってことなんですね。
実にここのところ、2人とも中学生でいろいろと未熟なのに手探りで不格好で気持ち悪い、しかし、ピュアな熱があるところがすばらしいのですよ。2巻のときも書きましたが。
そして、1巻2巻3巻とそれぞれの熱量を繊細な注意を払ってコントロールされてるなと確信しました。巻ごとのそれぞれのそれぞれに対する思いの点数がちがうなと。これ実際問題適当な感じありますよね。まあ、ちょっとアンフェアではありますが、作者のTwitterによるショートコミックでの「僕ヤバまとめ」はそこらへんの熱量がけっこうまちまちです。
[僕の心のヤバイやつ / Twitter]
これだとショートとかギャグを優先してるからその熱量にわりにムラがあるのでよくわかるんだよね。
それがどんな作品であれ、作者による多少のコントロールがあるので、年齢とは合ってない手練れ感があったりしますよね。また、そのほうが効果的なんですよね。対比によって、より片方が幼い感じを演出しやすくなって。つまり、マンガをコントロールしやすいから。本作はその逆です。どうなるか先が読めない。そらもう熱々のデレデレではあります。ただ、それだけにとどまらないかもしれないという不安定さがあるんですよね。もちろん、ベテランの作者のことですから、きちんとコントロールしたうえでの不安定さを演出しているし、そもそも、この2人が別れるとかそういう衝撃展開を期待して読んでいるひとは誰もいないのでまったく意味のないj杞憂ではあるんです。純粋に「このふたりはどうなるんだろう?」というハラハラがいいアクセントと緊張感になってあるんだなと。
実際、そこまで穿った読み方をしなくても、イチャイチャしやがってええ!でもいいんですよね。でも、その差こそが「このマンガはなんかちがう」の重要な味付けになっているんだと思うのですよ。
たぶんに、それは、新作のたびにTwitterほかでバズることでもわかるような気はします。
あと、これこそはと思ってた特装版はやっぱなー。ああいうの本来、東京三世社や成年コミックのおまけコーナーに「単行本発売おめでとう」で書くものでさあ。小冊子で別料金でやる必要はあまりないなあとの思いは強固になりました。