2021年09月11日

東京ヒゴロ 1 松本大洋(小学館)

東京ヒゴロ(1) (ビッグ コミックス) [ 松本 大洋 ] - 楽天ブックス
東京ヒゴロ(1) (ビッグ コミックス) [ 松本 大洋 ] - 楽天ブックス

モーニングを創刊号から買っていたのです。それはたぶん、ヤングマガジンも、ヤングジャンプも、ビッグコミックスピリッツも、創刊号に間に合わなかったからで、中とじの雑誌をひとつ購読したい欲があったからです。どうせなら創刊号から読みたかったのです。そのタイミングに応えてくれたのがモーニングです。高校のときに出ました。
その間にモーニング(イブニング、アフタヌーン他)に描いたひとはだいたい覚えてますし、モーニングの賞などでモーニング生え抜きの作者はデビューから知っているという段取りです。
結局15年ほど買ってました。未読の雑誌が10冊たまって「もう無理だ」と辞めました。

そういうわけで松本大洋氏はデビューの野球マンガを描いていたころから存じております。そして小学館に舞台を移しての「ピンポン」。同じく創刊号から読んでいた「IKKI」での「ナンバーファイブ 吾」。あとは描き下ろしの単行本「GOGOモンスター」。
ここらへんが作者との接点のすべてです。

本作は書店で目にしました。昨今はとんと書店に行かなくなり反省することしきりのマンガライフですが、本作は目があった瞬間ビビビときて、かなり久しぶりに松本大洋氏を手にとったのです。

これが最高でしたよ。なんとなれば2021年でもベスト2くらいの衝撃。正直にいうと1位は「ルックバック」です。

主人公・塩澤は、30年勤めたマンガ編集の仕事を、自身が立ち上げた雑誌の廃刊に責任を感じ辞めた。
マンガから離れようといろいろと模索するも自分がマンガ好きであることに嘘はつけず、自腹で本をつくろうと、好きなマンガ家たちを訪ねる。

まずおもしろいこと。次いでわかりやすいこと。
おれの知ってる「松本大洋」とはちがい各キャラが饒舌に状況をなんとなれば説明口調でしゃべる。それが生き生きしておりおもしろくて、実にわかりやすい。すんなり入ってくる。
この明確さに驚く。あれ?松本大洋っていったらなんだけど、「お芸術」っぽいマンガを描いていたイメージあったよな。今年は小学館の日本短編漫画傑作集やちくま文庫の現代マンガ選集などを読んでるからちょっと「お芸術」なマンガには耐性があるし大丈夫やろと気構えて読んでいたので拍子抜けするくらいわかりやすくておもしろかった。

登場するキャラがいちいち魅力的。実直でありマンガに対するどろどろのマグマのようなパッションを持っている主人公。長年の友達でありいっしょにマンガを作り上げた売れっ子の長作。
彼に後釜をまかされたものの担当のマンガ家と上手くいってない美人編集。
主人公を慕っていたためにあてがわれた女編集に反目する描けないマンガ家。
そして主人公が本を自腹で作ろうと思ったときに毎回出てくるマンガ家たち。
このどれもがナイスキャラ。後半のゲストマンガ家がいちいち最高。

とくに主人公な。高倉健な。彼は実写映画化するなら同い年くらい(40代後半かしらね)の高倉健氏にする以外ないだろうってほどかっこいい。眼鏡のつるがおれてるのでテープを巻いてるがマンガには糸目をつけない。すべてのひとに対して礼儀正しい。そして率直。上記の友達マンガに「最近おもしろくない」と告げるときに涙を流している。ベタと思いつつも率直さや心情が伺え心を打たれる。
とてもかっこいい。そしてマンガに対してとても真摯で率直。見習いたい。かっこいい。しみじみかっこいい。

読んでいるうちに思い出すよ。おれもマンガ好きなんだなと。(さあ自分語りコーナーだ)
いろいろあったマイライフ、いろいろな目にあって、なんつか、ゲームってしみじみしなくなった2021年でさ。音楽はサブスクで聞いてるけど、前ほど情熱がなくなってる気はする。で、マンガばかり読んでいた。そして読んでも読んでも飽きない。おれの人生にはずっとマンガがあったなと思う。そして、あらためておれってマンガが好きなんだなあと感じる2021年であった。

と、本作のベタさとストレートさとパッションにほだされてついこういうことを語りたくなるわけですよ。

オススメしますよ。

そして2点。

本作、長作ってマンガ家がとくにそうなんだけど、東京の風景がいちいち古い。昭和からある喫茶店だったり古書店。主人公の家も古くてしぶい。スマホは出てくるけど、いちいちは昭和からあってもおかしくないオブジェクトが多い。長作は令和に似つかわしくない、四六時中タバコを吸ってたりするし。
これはおれの知ってる平成のはじめの東京だなと。

毎話最終ページは東京の遠景が映るななんて思ってたけど、これって、表紙の鳥の眼からみた風景なんだなと気がつく。主人公は飼ってる鳥と話している。イマジナリーフレンドみたいなものかと思っていたら、鳥とは全般的に話す能力があるみたいだ。これが今後どう関わってくる設定なのかはわからないけど、鳥の目でみた東京はとてもクールでホットだなと。

この物語は最後まで見届けたい。すぐにつづきを読みたい。こういう強い気持ちがあります。

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(このビシッと礼をしている感じ、高倉健さんって感じしないっすか?)



東京ヒゴロ(1) (ビッグコミックススペシャル) - 松本大洋
東京ヒゴロ(1) (ビッグコミックススペシャル) - 松本大洋























posted by すけきょう at 22:33| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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