最終巻が出ました。超最高で連載がはじまり、話題を独占したまま、だいたい最高のまま駆け抜け、随所に話題をふりまいて、人気を維持し続けて超最高で終わりました。だから最終的な評価は超最高です。
マンガにおける終わり方というのを考えるのです。これまでは人気がある限り続けるというのが定番で、たぶん、いまも主流はそうなのかもしれない。でも、いくつかのマンガは終わることを許されるようになっている印象。本作はどうだったのかは知らないが、終わるべきして終わり、描きたいことは余すことなく描いた印象。そこが超最高でした。
他作品を引き合いに出すのは抵抗はあるんだけど、「鬼滅の刃」。いろいろと有名な本作ですが、本作の1番1位のところ(子供表現っすね)は、23巻1巻かけて完膚なきまでに終わったことだと思う。どこまでが連載誌にどのようなカタチで掲載されたのかは知らないし興味はないが、この圧倒的な「最終巻」はたぶん今後出てこないんじゃないかと思われます。あらゆる方向や表現で終わった。
ゴールデンカムイの最終巻もなかなかたどりつけないところまで行き着きました。
長いあらすじは複雑なので省略させてもらいますが、最終章に入ってからの一気呵成の盛り上がりと、オールスターキャストが一同に介しての大活躍。そして、最終巻ではベストメンバーが函館から札幌に向かう機関車で最後の死闘を繰り広げてます。この流れのローディング時間のない感じはすばらしい。
もともと、ゴールデンカムイの特筆すべき点は、1ページ先の展開が読めないことで笑いあった次の瞬間に銃を撃ってくるやつと対峙する。このテンポ、スピード。あとは博覧強記なあらゆる要素をぶちこんだ、作者野田サトル氏の頭と脚を巨人が絞った汁のような話です。彼のすべてがあります。昔のロボットアニメの「出力フルパワーにしろ」ってコンソールのつまみを無造作に全部回しきる感じでしょうか。
でもって、ゲームや映画や小説やマンガで散々こすられてる動いている列車での戦いを研究したおしこすりたおし、かつ、ゴールデンカムイらしさを抽出した上での決定版のような戦いよ。列車であることがすべて盛り込まれつつちゃんとそれらを盛り上げに使いつつヒートアップさせてます。しかも、戦いってことでいうと、函館の五稜郭でのひろいところからの狭いところとかのメリハリも効いている。流れとしては満点ですよね。いわれてみれば船上や飛行船など乗り物の戦いも数多く収録されていますよね。ほんとスキがないマンガだ。
最後の最後の最後の最後まで盛り上がり、各人かっこよく、そっれぞれの積み上げたキャラらしく、有終の美を飾っております(死んだり生きたりはありますが)。
物語も当然のことながらキレイにキレイに、このごった煮闇鍋の混迷の限りを極めた作品をきちんと終わらせてます。
名作っていわれるマンガも最終回覚えてないもんだぜ。そこらへんは島本和彦氏の「アオイホノオ」にくわしいけど、マンガ全体の99%おもしろければ最終回なんて些細なものはどうでもいいって文化は受け継がれております。
ゴールデンカムイも、最終回を迎えるにあたって、電書を期間限定で全話無料公開したりみんなで盛り上げたりもしていたなあ。
ホムンクルスやアイアムアヒーローや浅野いにお氏の何回聞いてもタイトルを覚えられないデデデデみたいなやつも次巻最終回や最終巻って帯や宣伝に出すようになったもんな。
時代は変わりました。それぞれいつ終わるかは別だけど、「最終章」突入なんて書いてますしね。
それぞれマンガやマンガ家の持ち味や個性や才能があるから一概にはいえませんが、おれは適切なタイミングでスパっとおわらせるほうがすべてめでたいんだなと。
野田サトルさんは次回作を描きそうだし、ちがう分野を攻めてきそうだし、それもちゃんとおもしろいはず。(しばらくはゴールデンカムイ関連のものを描きそうだけど)