2024年01月15日

うみそらかぜに花 大石まさる 全4巻 (少年画報社)

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うみそらかぜに花 4 (YKコミックス) [ 大石 まさる ] - 楽天ブックス
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2023年はAIがいよいよすごいことになり、先日は、サラサラと描いたいたずら書きレベルの絵がAIのチカラで美麗なイラストに早変わりしていた。

※参照
絵がヘタすぎてもテキトーに描くだけでチョー美しい絵にしてくれるAIがスゴイ!→ マジで凄かった件「Akuma.ai」 | ガジェット通信 GetNews https://getnews.jp/archives/3463412

そうなると漫画家ってなんだろう?って思ったりするのです。もっとゲスいことをいうと「自分でもかんたんにマンガ家になれるのかな?」と思ったり。

「うみそらかぜに花」は2020年から2023年にかけてヤングキングアワーズに連載されていました。全4巻。

中学生男女による学園ラブコメ。連れ子同士が再婚して、再婚夫婦がラブラブなもんで長期の旅行に出かけたから、ひとつ屋根の下に暮らしていいるけど、そのことはみんなにナイショナイショという。
うーん、王道過ぎたために平成では避けられていたようなやつだなあって。
逆に言うと新鮮!ってことです。

描くはヤングキングアワーズの重鎮大石まさる氏です。単行本発売即買い作家20年連続ベスト3入り(おれ調べ)です。

SF&ファンタジー分野で描かれてますが、日常ネタも描かれていて、でも、割合とハイブリッドなものが多くて、それはつまりどういうことかというと、SFやファンタジーな世界で「日常」を過ごしているってシーンが印象深いです。どこの時代や世界でもひとは日常を送る的な。それがライフワーク的な? 信条的な? ただあえてそれをずらしていく冒険活劇も多いですし、だがそのなかでも「けれん」と「刺激」と「変化」が多くて飽きさせまいという工夫が多いです。

「うみそらかぜに花」はあえての「普通」がハマってます。
そしてイチャイチャドキドキのエロエロのラブコメではないんですよね。
スマホなんかをさわってる現代っ子。主人公ヒロインそれぞれの友達、そしてそれぞれの親。大石マンガの定番のおじいちゃんキャラにたくさんいる動物も全部全員愛らしい。
1巻1話学園マンガのセオリーではクライマックス中のクライマックスであるから大事に大事にしていたい学園祭からスタートしますし、これまた美味しいところであるヒロインが別の男に言い寄られるという、トリッキーすぎるスタートです。
そこから4巻まで1年間というところでしょうか。
夏休みが長くて自然と戯れる系の遊びが多いからいつもの「大石節」になってはいきますが、それはかなりウエルカムな感じです。

3巻で作者が病気による長期の休載だったり、その影響なのか4巻はあとがきで異例な謝罪があったり、そもそも全部書影載せておきますが4巻の表紙だけは描き下ろしではなくて1巻のある回の表紙に彩色したものになってます。
4巻はマンガの画風が変わって感じるほどになります。1巻2巻の画力で殴りつける感じが弱まってきます。ホントいろいろあったんだなあと思わせます。ただ、そういうこと抜きに4巻でキレイに終わっててます。さわやかに、さっぱりと。
だから、大石まさる初見にも、知っておられる方にもオススメできます。
とくにおれに似た年齢の方、すなわち、いい歳こいたおっさん。
本作に出てくる中学生たちをみている大石氏の視点は孫を見るそれです。その湯加減がとても心地良い。未読のマンガがヤマのようにあるのにその「湯」につかってたくて再読しまくってます。最初から最後までストーリーも絵も長さもキャラたちもホントいい感じなのよね。

最近になり、少し考え方を改めました。
マンガはおもしろければそれでいい。おもしろいマンガこそがえらいマンガと思っていました。
ちがいました。いえ、そんなちがってません。ちょっとちがいます。どないやねん。
最初の話に戻りますが、この分だと早晩AIは「おもしろい」マンガを生み出すことができそうだなと思えてきました。
売れている話、ネタの切り口、盛り上げる展開、手堅いキャラ配置、そして作画。これらを分析させると「おもしろいマンガ」はできそうです。
どれとはいいませんがそういうノウハウで「人力」で作られたマンガは数多くありますし、「それ」によりマネーを生み出すためのノウハウこそがマンガ躍進の原動力といってもいいすぎではありません。その作業の多くをAIに任せるだけです。これまでの作業とあまり差はないです。
それはまことにけっこうなことではあるけど、つらつらと考えるに、おれはその「おもしろい」マンガをそんなに持ってないし読んでないぞということに気がつきました。
逆説的ですが、最近の電子書籍(どこらへんが電子なのかいまもってよくわからないのですが)で安くなった昭和からのおもしろ追求マンガが安いので大量に大人買い(子供でも買うことのできる値段なんだよなこれが)したことで余計にはっきりしました。
昭和平成の名作と呼ばれる何十巻も続いているマンガがタブレットに全部収録されていて、手元においていつでも読むことができる環境にあってそれらを全く読んでないのです。あるいは読みはじめても途中で飽きます。
おもしろいマンガをなるべく買わなかったのは、おれはおもしろいマンガを買っても読まないことがわかっていたからなんだなと。えらいぞ昔のおれ。
じゃあ、おれよ。おまえが好きで買って手元においてあるマンガはどういうマンガじゃ?と。自問自答するわけですよ。
その暫定的な答えとして「楽しいマンガ」をおれは好きなんだなと。
『楽しいマンガ」の「楽しい」の表現がしっくりハマってない気がするんですよね。
「おもしろい」というざっくりの中にありつつも「楽しい」。そのマンガの中に居たいと思うような、っていうと、また微妙にニュアンスがちがってくるんですけどね。つまりは、作家性の強い作品、その人じゃないと描くことのできない世界があるというかさ。
前記のようないい湯かげんの世界ですか。
翻ってあたりまえのことをいっているような気がしますが。そしてそれはAIじゃ出にくいですよね。そのマンガのその世界に居たいかというとなかなか懐疑的だわなあ。

ところがそのいい湯かげんの楽しいマンガというのは限りなく個人的なものになっていくのですね。それは健全な気もしますが。

ということでおもしかったですよ。大石マンガこれからもずっと読みたいわ。
posted by すけきょう at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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