アニメ化もした「団地ともお」が有名なお方ですが、キャリアはずっと長く、個人的にもっとも衝撃を受けたのは初期の短編集です。
「そっと好かれる」小田扉(太田出版)http://www3.plala.or.jp/sukekyo/comic/2002/c0209.htm#c161
「マル被警察24時」 小田扉(実業之日本社)
http://www3.plala.or.jp/sukekyo/comic/2002/c0212.htm#c291
2002年の感想文です。22年前ですね。デビューはもっと前で20世紀からマンガ業のベテランさんです。上記リンクの前のホームページに「こさめちゃん」の感想を書いていました。2002年3月でした。「今月の逸品」なんて毎月おもしろかったモノを集めたところにありました。
小田扉さんは短編のひとということがいいたいわけです。
小説でもマンガでも映画でも短編が好きなので小田扉さんはずっと好きです。おもしろい短編が読めるからです。
小田扉さんは最長連載であり代表作でもある「団地ともお」にしても、主人公のともおがモブでしか出演していない、物語にあまり関わらないひとたちが登場する回が数多くあります。なんならともおが主人公でもスピンオフみたいな読み切りが多くあります。
短編の上手なひとということがいいたいわけです。
でも、上記の「マル秘警察24時」のように最後盛り上がって終わる長編も多いです。近作では「横須賀しずえ」もいい最終回だった。
本編です。縛りなしのフリーダムな短編集です。全11話。毎話読み切りだけど8話から最終話はやや連作のノリ。
帯には「小田扉流異世界譚」とあるが、そういう縛りからも割合とフリーダムで、本作のテーマはフリーダム。あるいは、毎回1話はあるギャグ回の世にも奇妙な話かな。
髪が蛇の地蔵様があったから酔っ払ったいきおいで小便をかけたバンドの一行がその呪いで次々に銅像にされて、それが神奈川〜東京史跡を巡る旅になる「ゴルゴン地蔵」。
公園にあるぐるぐる回る遊具に乗ったら、飼い犬のゴローと中身が入れ替わってしまう表題作「ぐるぐるゴロー」
心優しいが顔つきが凶悪な電気屋店主がエアコン修理したおばあさんがその夜に殺されたから犯人と間違われ地獄に落ちるも真犯人を突き止める話「飛べ!八つ裂き光輪!」
そして8話からのゆるいゆるいつながりで進行していく連作で最終話まで畳み込んでいく。
準新作に「フランチャイズ!つくだ★マジカル」全2巻がある。
コンビニ店長のおばちゃんが魔王を倒した魔法少女だったというマンガ。これが全2巻でありながらとても精緻な物語になっている。伏線や謎をあちこちに散りばめている一大異世界叙事詩(的)なものになっている。
それらの反動なのか、本作「ぐるぐるゴロー」は各話の作りがシンプルで力強く非常に抜けがいい。スカーンとかっ飛ばした抜け味。台風一過の青空のような明瞭さ。
上記のナンセンス、馬鹿らしい、一発ネタ、思いつきからのひねりをなるべく控えて、風通しがよく、小田扉な味もしっかりあるよなあと。思わず、持ってなかった作品集を電書で買い足すくらい小田扉ブームが起こりました。
素直にワハハと笑える破壊力のあるネタが多いので(しかもわりにシモネタ)、笑ってスカッとしたいかたもどうぞ(初めて書いたなこのフレーズ)