ネットに掲載された1話がバズった。久しぶりのエノモトだ。すげえ作品だ。キンクスってユー・リアリー・ガット・ミーの?と思ったりしてた。どうせ単行本が出たらまんまと買ってまんまと読むのだろうと思った。その「まんま」が楽天ブックスから届いたのでまんまと読んだ。
先ず、明るさに驚かされた。1ページ。錦久(きんく)家に郵便物が届けられる。受け取る主。このシーンが明るいのだ。
そして、暗いことにも驚いた。4ページ。母の栗子がクラス会にタクシーを呼んで出かけていく家の前は夜。暗いのだ。
ビートルズの「ミート・ザ・ビートルズ」のジャケットを思い出した。
あまりにも明るくて暗いなと感じた。顔の右側だけ明るく、左側は暗く、見えない。片側から強力なライトをあてコントラストをはっきりさせ、白!と黒!って感じを出している。白いし黒い。明るいし暗い。
以降も日中シーンは明るいなと思い、夜のシーンは暗いなと思いながら見ていた。そのビジュアルに心を奪われていた。
思い起こせば。エノモトは、ゴールデンラッキーからビジュアルショックビジュアルをたくさんお描きになっていた。ただ、「さすが」になれたと思っていた。
いつものエノモトじゃん?っていわれるとちょっとはっきりした反論に自信がないが、それは最後にちょっとやってみよう。
そして次に内容です。本作は榎本氏の画業35年の記念に初の毎回16ページの「長編」連載に挑戦されております。なおかつ初の「日常から逸脱しない(あとがきより)」になっております。
錦久家4人(子供2人)と妻の父母他キャラを交えてのファミリーコメディ。
1話こそ、前記のようにバズった劇中劇をやるというかなり奇抜な話ではあるが、2話以降はあらすじを淡々と書くと、「2話、義父をデイケアに連れて行くときいっしょにいってしまって帰れない」「3話、長女の三者面談が最終的に六者面談になる」という感じです。もちろんそのままの話のわけがないですが、ちゃんと日常から逸脱しないストーリーにはなってます。
話は1巻のクライマックスに2話連続で「地元ささやか祭り」を描くところで終わります。これがまた前記のようにとても暗い。夜道を家に帰る錦久家一行といった話。まさに暗いマックス!なのです。
キャラです。いつも通りの魅力的な面々です。奔放でちょっとエロチックな妻の栗子さん、美少女だけどなんか抜けてる長女の茂千さん、元気だけどそそっかしい次男の寸助。小説家のスミオさん。彼が主人公ということかね。
やっぱり女性キャラがとてもかわいくて。寸助の担任の小山田先生、デイケアのケアマネ、歌手のマーサ・オクラホマなど、新機軸なのにとてもいい女性キャラを畳み掛けてきやがる。小説の賞の受賞式に花束を渡すためだけに1コマ映ってる名もなき女性キャラまで魅力的だぞ。
もうひとつエノモトマンガの初があるような気がするんです。
それは背景描写です。明るい暗いにも通じますが、物語でも軽く説明のある妻の実家のそば、どこかの地方都市。田舎ってほどでもないが帰り道は真っ暗になる程度の地方都市。
榎本氏も結婚して奥さんの実家がある広島に引っ越したらしく、ひょっとしてそこが舞台なのかしら?と思うほど、この物語の背景群はいい味出しているし、濃いめです。これまでのキャラにある「どこかにあるどこか」みたいなところではなく、きちんとした物語を紡ぐために設定した背景という気がする。
キャラだけじゃなくて背景まで見惚れるのです。
物語が、キャラが、背景が、濃密にからみあって日常から逸脱してないのに楽しいマンガ。そういうことがいえます。いいたいです。
最後に明るい暗いの反論。
1話がバズってたときとちがい紙の本で読んでしまったからかもしれないなと思いました。
バズったときはコミックDAYSで読みました。
ザ・キンクス - 榎本俊二 / 第1話 うれいらずたのぼー | コミックDAYS
このときにはさして明るいとか暗いの感想を持たなかったのです。でも、髪で読むと紙の白さが非常に明るく感じられたのです。
なんやらかんやらで8:2くらいの割合で電書を読むようになってます。でも、最近ここにきて電書になってないものや様々な理由で「紙の本いいなあ」って気になってきてます。
迷信とか気の所為であると思ってます、思い込んでますが、紙の本で読んだほうが「確実にわかる」と思えるのです。
他作者の本を引き合いに出して恐縮ですが(あ、もう余談になってます)、「令和のダラさん」というマンガ。電書で1巻を買い、2巻は発売日の0時を回った瞬間に買いました。紙書籍だと村上春樹氏やハリポタの新刊でもないとなかなかできないことですし(神書籍ってか)、多分書籍書店ではもうそんなイベントは行われないでしょう。だけど電書ならネット環境のあるところならどこでもできます。3巻もそうしましたし。
そして何万冊あろうと(今のタブレット性能だと4桁冊後半だと鈍牛になりますが)端末から呼び出せるって20世紀なら魔法ですよね。
あ、で、「令和のダラさん」は3巻電書で買い端末から何度も読み返してます。
ところが、先日、同人誌を買おうと思ったついでに本人によるダラさんの薄い本があって買ったのを読んだところ最の高だったんですよ。
それで紙の本は入ってくる喜びが大きいのではないか?と。
とくにビジュアルインパクトが強く感じられるのでは?と。
ま、老害っぽい言い草ですが、CDやハイレゾよりアナルじゃないアナログのほうがいいみたいな感じで。(タイポを直せよ)
そういえば「ザ・キンクス」は全アナログ作画だそうですよ。これがまたかっこいい。あれがアナログなのか。ほんと驚きの白さ(洗剤か)。
そして後悔するからなるべく「いいぞ」と思ったら紙で持っておこうと思ったのです。あの世まで持っていけるわけもないけど。
理屈じゃないんだよ!
余談2
好きなマンガがアニメ化したら妄想でOPとかEDをよく考えるのですが。
やっぱりザ・キンクスだからねえ。キンクスがアニメの主題歌って超かっこいいよね。
OPはこっち
Kirsty MacColl - Days
https://youtu.be/lYOp3F_Q8QM?si=jELe6dPKR-RYdtGV
EDはこっち
The Kinks - UK Jive
https://youtu.be/SwV5gONK7c8?si=5stOOU7cY71yrcym
(変なひねり方すぎましたか? ユー・リアリー・ガット・ミーとウォータールー・サンセットでもいいです)