ネルノダイスキ氏の3作目。
「ひょうひょう」「いえめぐり」ときて本作は300ページオーバーの大作。アタシ社から取り寄せて届いたのを封筒から出したとき「でかっ!重っ!」と思いましたよ。
【豪華特典付】ネルノダイスキ『ひょんなこと』 | 夫婦出版社アタシ社 WEB SHOP https://kamitoatashi.fashionstore.jp/items/80232578
いきなり「はなしは変わるけど」ですが、アタシ社から買うとほんと豪華特典付きなのでオススメですよ。「いえめぐり」の本書に収録されてない小冊子がついている。送料はかかるけどこっちのほうがオススメ。
また「はなしは変わるけど」。
300ページオーバーで14本の短編集。何度か読んでひらめいた。ネルノダイスキ氏の作品はミュージシャンのアルバムみたいだなと。
「ひょうひょう」はデビューアルバム。メタリックジャケット。業界震撼の歴史に残る1st。
「いえめぐり」は2ndアルバムにしてコンセプトアルバム。家を内見するというコンセプト・アルバム。星新一氏のノックの音から始まる連作短編集を連想。メジャー・デビュー感ある。
そして本作「ひょんなこと」は3ndにして驚愕の2枚組大作です。デビューアルバムのように短編集でありながらも「流れ」を感じさせる堂々としたゴージャスでおなかいっぱいになる読後感。それでいて代表作たる完成度も備わっている。
ひとり暮らしの主人公が仕事帰り豆腐と大根買ったけど、忘れてそのままにして寝てしまったら、翌朝、豆腐と大根がフュージョンして謎の生物が生まれるという「T&D」。ポップでキャッチーなオープニングナンバー。
続いて「NecoとTaco」。これがキラーチューンかしらね。シングルカット。疾走感がありつつもスケールが大きいキャッチーな作品。
以降も水木しげる&諸星大二郎みたいな不思議な世界の「きんき」、益虫の蜘蛛がエスカレートしてお手伝いさんみたいになる「夏の騒動」、迫力&インパクトの「M1」、ロードムービーな「鯰を助けた猫」、いつもの猫キャラ以外の「ガール・ミーツ・石」なんかは、アルバム内にゲストボーカルを招いた、Featuringってなノリですな。
そして「T&D」と同じひとり暮らしの主人公が帰宅してはじまるラストナンバー「MELTRIP」。本作を締めくくるにふさわしい壮大な作品。
充実した読み応え。相変わらずどうやって描いているのか想像もつかない絵。ページ単価もカロリーも非常に高い。安易に精緻ってのとちがうんだよな。いまや写真を取り込んでPCでちょいちょいと加工したら「精緻」はできるからな。1コマに大量の時間を費やして一本一本線を引いて描いているだろうなあと。
ネルノダイスキ作品で1番好きなのは全作「マンガ」なことです。マンガの定義もますますよくわからなくなっている昨今ですが、その中にあって堂々とマンガと言い切れるど真ん中を貫く王道のマンガ。しかも、ジャンルに幅があって、それなのに独自の味があって、完成度が高くて、おもしろい。
ペンネームのネルノダイスキのネルは寝ると練るにかかってるそうで。
なるほどどんな手間をかけて作ったのか、どう練ったのか、いつ寝たのか、想像もつかないものになっているなあと。
河原の土手が舞台によく登場しますが、斜面の草を1本づつ丁寧に描いているんですよね。フローリングの床の木目、電車の座席の線なんてのも描いてある。1本づつ。なんでもボールペンでフリーハンドで描いているって話ですが、ちょっと途方もなくて信じられません。
それがちゃんと真似のできない味につながっているのもまたすごいですし。
まだ今年も長いけど、2024年の1位って思っています。こういう各種の賞レースに合ってるような合ってないのかよくわからないところもまたおもしろいですね。本当唯一無二。こんな新しいのに電書でないのもまたおもしろくて唯一無二。
手元にあって良かったと思う1冊です。あなたにもそうであってほしいと思う1冊です。
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