2024年06月27日

それでも天使のままで 小骨トモ 双葉社

それでも天使のままで (アクションコミックス) [ 小骨トモ ] - 楽天ブックス
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おもしろいけど何度も読めない本ってありますよね。本作のことです。
何度も読めないわけを書いていこうという趣向です。心に深く刺さってダメージが深いからです。しまった。すっかり書いてしまいました。

以下蛇足です。

4編収録されております。学生さんが主役の話ですね。

「リカ先輩の夢を見る」
https://x.com/Kobone_Tomo/status/1804063903879700671

映画少年が名画座で映画に感動して涙している。上映終了後にリカ先輩も涙していたのを見かける。学校に馴染めない少年。ふざけあってる同級生が幼稚に見えるが、その幼稚にバカにされてる屈辱。そしてリカ先輩に呼び止められて映画の話をしようと誘われる。先輩はバンドのボーカルが好きだから興味を持ってみたいといってたのだけど、ひとしきり映画の話をした少年は、わかってくれるひとがいたと救われた気持ちになった。次の日、少年はおすすめのDVDをもって先輩を尋ね話しかけようとしたら先輩と同じクラスの陰キャが話しかけている。先輩の話を立ち聞きしてその映画をみにいったから話をしたいと。でも、先輩はキモがる。少年は声をかけられなくなる。
後日、少年と映画をみにいく。先輩はバンドのボーカルに少年から尋ねたおすすめ映画をリプしてる。そしてあくびを噛み殺しながら意識高い映画をみてる。
少年はブチギレてリカ先輩を断罪する。
「お前なんかに僕”ら”の気持ちはわかるもんか」
「お前”ら”なんかに…! 映画を観る資格はない」
(”ら”の””はおれがつけました)

そして少年は逃げ去って勝どきをあげながらも泣き崩れる。

どうよ?意識高い映画鑑賞をする眼を持ってるってことでなんとかちっぽけなプライドを支えていた映画少年をズタズタに引き裂くマンガは?
”ら”のつけるところのすごさよ。いろいろな方面に溜飲を下げている。この身勝手さが思春期の厄介なところだよな。

次の作品はバンド。その次もバンドで、最後はマンガがキーになってます。

他人の心より、自分のプライドと好きになったものを通じて良くも悪くも歪み、そして多少学習する。そういう思春期に標準装備のダルさ。その「ダルい」をおさえてた蓋を開いてまざまざと思い起こさせる作品集です。
大きな石をひっくり返したらその下でうごめいている虫か、酒造りの大きな樽をかき混ぜたら醸造してるどろっとした液体の底から浮かび上がるあぶくか。

共通点として体液大サービス描写ですね。人間、こころが動いているときは体液が出るし、思春期はとくに代謝がいいので期間限定増量キャンペーンで体液が出ています。涙、汗、精液、その他。
だから、すっかりキャンペーン終了して久しいおれもその体液描写にあてられてなんだかわからんが汗がだくだく出ます。デトックス効果があるのかその逆なのかはわかりませんが。うろたえる。そうだな、読むたびにうろたえてしまう。

なんつか。10代20代って毎日何本もフラグが立ったり折れたりしてるなと。このマンガのキャラもどういうルートを通ってどういう未来に向かうのか、それがグッドエンドなのかバッドエンドなのかわからないけど、フラグが立ったり折れたりしてるなあと。
「リカ先輩の夢を見る」にしても、映画少年がヲタキモいって避けられるエンドも、映画少年とリカ先輩がいろいろ妥協して(少年は性欲と色と映画ヲタと自分に洗脳させようようとして、リカ先輩はバンドのボーカルにセンスいいと思われたいための専用コンシェルジュとして)関係を続けるエンドも、さらに妥協してつきあうまでもあったりとか、いろいろあるけど結局自意識大爆発大自滅エンドを選んだわけで。
そこらも含めライフ・ゴーズ・オンだけど、その自爆で読んでるこっちも巻き添えを食らって破片が胸に刺さって痛い痛いとなるわけなのですよ。

ということで心にハンカチをご用意して読んでください。


それでも天使のままで (アクションコミックス) - 小骨 トモ
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posted by すけきょう at 00:44| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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