佐々田は友達 1 [ スタニング沢村 ] - 楽天ブックス
佐々田は友達 2 [ スタニング沢村 ] - 楽天ブックス
2巻のジャケットが素敵だったので、こりゃあ読みたいな。試し読みしておもしろそうだったら買おうなんて、ebookjapanをみると、試し読みできないんだよね?およよ。じゃあ、Kindleでって調べたら1巻をすでに持っているのです。なんだそりゃ?(買った覚えがなかった)
まあ、助かったなと1巻を読んだら衝撃的におもしろかったのですぐに2巻も買って読んでさらに衝撃的なおもしろさだったのその勢いでこの文章を書いている次第でござい。
高2の佐々田は物静かで地味で、どちらかというと陰キャグループにいれられる女子だけど、そこの面々と話が通じるほどのオタクでもない。はぐれ狼ポジ。学校があまり好きではないが、不登校になるほどの強い意志は持ってない。
だから帰り道が1番好き。道の木々や草花や虫やカナヘビを追いかけてます。かといって積極的な野生児やフィールドワーク大好きってほどでもない感じ。
それで今日もカナヘビを追いかけて林を抜けたら、同クラのスクールカーストトップのギャル系の高橋さんとバッタリ出会います。
次の日から高橋さんにからまれるようになります。で、以降、カースト間を超えた友情ストーリーが「はじまらない」。
そう、はじまらないんですよね。佐々田さんは1話ですでに先生に評されている。「ガード固め」で「ニコニコ流すタイプ」なんですね。
頑なにマイペースでパーソナルスペースを確保していようとするけど、先ほども書いた通りそれで波風を立てるまほどのメンタル強者ではないのですね。だから、殻にこもる。
で、名前呼びしてベタベタしてくる陽キャの代表である高橋さんに、笑いながらも「名前呼びするな」「あと距離が近い」とおずおずながらもいってのけるのですね。
ここらへんの感じがとってもいいなあと。最近好きなキーワードであるところの「雑魚」いなあと。
本作には「友達」ってタイトルがついているわりに、メイン登場人物の高橋と佐々田の接点が極小なことなんですよね。こんな接点のないの珍しいと思いつつもリアルだ。結局「人種」のちがう同士の異種交友は無理が出てくるんですよ。
高橋は根っからのパリピでひとがたくさんいるほど、みんなが騒いでるほどアガるし、全員がそれを望んでいると思っている。だから、コミュ症気味な佐々田を良かれと自分の仲間とのオケパに誘うわけです。だけど、佐々田はいろいろ考えた末(特に着ていく服)に「寝逃げ」するのですね。ひたすら横になって連絡をシカトする。
そして仲がさめて、そのまま夏休みで、まったくお互いを思い出さないまま、過ぎていくのです。
そのまま夏休みに突入で2ヶ月互いに連絡なし。ここがすごい。2巻の白眉。
学校だけの付き合い、同じクラスの間だけのつきあいってたくさんある。1回だけ休みに集まったけどそれっきりとか。
高橋も佐々田も詳しくは語られることのない他キャラも、それぞれまったくちがう夏を過ごしているんだよね。干渉し合わない。つるまない。つるむのはつるむ用の友達がいる。また高橋は短期間に何人もつきあったり別れたりしてる。まったく佐々田の関係のないところで。これがまた画期的だよなあ。
と、こんなに人種がちがうのに、クラスが一緒なばかりにひょんなことで関係が生まれる。
これが学校のいいところおもしろいところだなと。たまたま同じ年に生まれてたまたま近くに住んでいただけのひとを同じところに集めて何年もいっしょにおく。
その化学変化ってすごいよな。そりゃ「学校なんてクソだ」ってのから「学校サイコー」ってのから無数のその間って面々がそれぞれが感じているグラデーションがある。それをしてカーストといってるけど、底辺が上の方を取って代わろうとは思わないわけですよね。威張ってるのはいやだけど。
現実だと当たり前。だけどそれをあらためて考えさせるマンガなのです。マンガの青春群像劇だと集まったり、なんかの偶然で会ったりつながったりするじゃん。でも、学校でカーストがちがうひとは現実だとまず思考や行動範囲がまったくちがうからがっつりからむことがない。
そこいらをそれはそれは丁寧に描いているんですよね。しかも、平等に描いている。誰の夏休みもそれぞれに平等に尊い。上下はない。
高橋にしても佐々田にしても、主人公らしからぬ、読者からの共感を拒絶する苦味のあるキャラなのがまたいい。それぞれいいところもあるけど、上記のオケパぶっちみたいな読者がひくような、理解が難しいような言動をお互いにするんだよね。
高橋はどうしようもなく純度の高い陽キャでパリピ脳だし、佐々田はどうしてもコミュ症だし難儀なところがある。おれはどっちにも「わかるわー」ってところが少ない。
そんなこんな含めてあんまりやりすぎてもダメだし、ぬるくてすぐに仲間とか絆を連呼しててもダメだし、関係性に緩急つけすぎるのもちがうしって、つまり、さじ加減がいいんだよね。それをとっ散らかったものじゃなくて「マンガ」としてきっちり成立しているのもいい。その互いの、たまに交差する青春がいいんですよね。
全描画いい。とりわけ、さりげな心象描画がとてもいい。激エモ青春!ってほどじゃない、かといってクールってほどでもない。
また夏休みのような二元中継の構成も非常に巧み。
高橋みたいのと佐々田みたいなやつの理解ができたような気がした。とくに高橋。パリピの脳内や行動理由を知った気になれた。
おもしろかったです。3巻楽しみ。
佐々田は友達 2 (文春e-book) - スタニング沢村
佐々田は友達 1 (文春e-book) - スタニング沢村