成年コミックです。タイトルみてたらわかりますね。だから、折りたたんでから内容についての感想を書きますよ。
作者はキャリア30年以上のベテランです。成年コミック表記がついたり消えたりするけど、キャリアのほぼ全てはエロ系です。
竹書房とワニマガジン社で多く出版されており、竹書房版が若干マイルドで、ワニマガジン社は成年コミックがつく感じ。実際、その差はよくわからないんですけど。コンビニに置けるかどうか?
いま調べました。コンビニに置くことができるものはソフトエッチコミックというらしいです。勉強になりますね。出版社判断でコンビニ次第ってことみたいです。
コロナと東京オリンピックでゾーニングがどうたらこうたらでソフトエッチコミックでもコンビニの本棚では一掃されていましたが、やはりエロは強いですね。徐々に戻ってきています。ただ、コンビニは本棚自体がスペース縮小気味です。世知辛い話ですね。
そんな中でキャリア30年以上のベテランがいまなお現役で活躍されているというのはすばらしいことです。ずっと最前線で途切れることなく描かれてる方だと思います。でも、(ここで折りたたむ)
テスト直前に優等生からSEX誘われた件
いや、でもじゃないか(折りたたみ甲斐のないつながりだ)。
さきほど、ある同人誌を読みました。電書です。かるま氏とはちがう方です。これまで考えてもみなかったので虚をつかれたのですが、「ギャグが入ると抜けねえという読者に配慮して、ギャグ抜きの再編集バージョンを次ページより公開します」とありました。
エロマンガにおいては通常のマンガのセオリーは通用しないことが多いです。そのお話をさせていただきます。
エロマンガの最大目的はエロい気持ちになってもらうことです。もっとあからさまにいうなら、抜けるかどうかです。
そのために特化して細分化していきます。
そうすると不思議なもので、より抜けるように、技術を磨き完成度を上げたはずが、抜くためにはノイズとしかいえないものが紛れ込んできます。その最たるものが「笑い」です。
ゲラゲラ笑いながらだとチンチンが勃ちにくいからです。生殖行為というのは狭義ではけして笑いながらやることではないんですね(個人的には笑いあってキャッキャいいながら和気あいあいとするAVは好きなんですけど少数派のようです)。
だから、エロマンガ文化は、ストリップ劇場のように、前座にお笑いがいてから本番というふうに、はっきりくっきり分かれる傾向にあります。エロマンガ雑誌内のギャグマンガの位置づけですね。エロ出身のギャグマンガ家は多いです。いまは、ギャグマンガ自体がかなり零細になっているのでその現象は少なくなってきている気がしますが(というかあまりみてないのでわかりませんがどうなんでしょう?劇画狼氏とかに尋ねたらわかるのでしょうか)。
かるま龍狼氏は、ギャグとエロのハイブリッド化を推し進めている最前線に立ち続けているひとりです。
前記のようにエロと笑いは同居しにくい。どっちかに立つとどっちかが疎かになる。
かるま氏はキャリアのはじめのほうは「笑い」のひとでした。
純ギャグではなくて、エロコメというかコメエロという感じの画風でした。ドタバタしたギャグテイストの作品でエロ要素もあるということ。
それが急速にエロ度が上がりだして(おれ主観)きました。エロが追いついたと思ったらギャグもまたグイグイアップデートされ、気がついたら周りに誰もいない地に立っておられる。One and Onlyと。
エロとギャグ、どちらかに完全に分離してるものはめったになくて、エロと笑いの配合されたもの、そこらへんに強い信念のようなものを感じます。もちろんといってはなんですが笑いのない純エロ作品もあります。当初は作品集に1本という割合でしたが、徐々にバランスが変わってきており、半々あるいは、ややがギャグのほうが多いって配合になってます。
純エロでもちゃんと「オチ」があり、叙情的なトーンの内容が多く、そちらのほうも他が真似のできない味わいがあります。
いま、一線でやっていくときは、最近の絵のレベルに沿っていけないと成り立ちません。
シンプルにPCなんかによる技術の向上もありますがそれだけじゃなくて。
とくに、成年コミックはすごいです。ハッと気がつくと過去のひと、あるいは熱心なファンだけって感じに。
いわゆる美少女マンガってことになってから、ずっと、かわいい&エロいという二律背反する命題を解くために、顔はマンガ絵であり、身体はどんどんリアルになっていくという状態に加速がついてます。それでいて顔と身体に嘘がないように整合性のバランスを取らなければならない。
マンガって記号の象徴であり、リアルとファンタジーのバランスを取り続けてる歴史です。リアルに寄ってますがそれだからこそのファンタジーとはなにか?という哲学的命題における回答をたえず提示し続けなければなりません。しょっぱいことにこの回答は流行り廃りまであるのです。
かるま氏もご多分に漏れず、芯のところは変わりませんが、絵そのものは、どんどん「今」のエロのほうへと寄せてはいますし、21世紀あたり、そして、令和になってからまたギアを上げましたね。PC導入されたからでしょうか?わかりませんが。
近年だと「裸空間の世界とか」と「菜穂ちゃんはオナホ屋さん」あたりからの変化は大きいですね。
かるま氏は、もともと特殊な誰も描かないしそもそも考えることのできないシチュエーションや状況を描く天才です。だから当初より精緻で正確(そこでなにが起こっているのか把握できるって意味で正確)ではありますが、それもエロもアップデートされ続けてます。
それにより、独自のかるまワールドは健在でいて、ずっとエロくて笑えて抜ける作品になっているのです。
前作でありタイトル作ではありますが「菜穂ちゃんはオナホ屋さん」のオナホ屋なんて誰も考えつかないし、考えついたとして、それをエロマンガとしてやろうとしないし、そもそも「エロマンガ」として「商業誌」で成立させているのは全世界の全マンガ家でもかるま氏だけです。とてつもないことです。
エロマンガ界の鳥山明なんて称するひとがいるようですが、鳥山明氏はマンガは長く描いてなかったですからね。おれは続けているひとを評価したいです。
で、本作です。
単行本のタイトルではありますが本編では「妄想したり」。最初に収録されてますがこれがいきなりすごい。
だいたい1話16ページに7割8割のエロシーンって感じになりますと、逆に言うとエロ以外のところがとても少ない。でも、実際問題、そここそが大事。10割エロのほうがいいように思えるけどちがうんだよね。海外のエロ動画にはそこだけ抜き出したモノが大量にありますが、記憶に残らないよね。エロシーンも込みで記憶に定着するようなものはどうしたって「それ以外」も大事。でも、それでもエロが少ないと少ないわけで。なおかつかるま氏はわりと「それ以外」が多いし、なおかつ、「それ以外」がギャグだから、エロシーンのエロをやや中和してしまうしで、実はものすごい難しいことをされている。
「妄想したり」は成績のトップ争いをしている同じクラスの女子がテスト前に「テストが終わったらセックスしよっか」とぽそっと伝える。
これは成績1位の座を奪おうという罠。
ところが、男子の家で「テストの答え合わせしようか?」と提案。
ここで、凡百のマンガ家だと始まっちゃうじゃない?ところが、そうならない。でも、エロマンガになる。でも、「エロ」くならない。いや、エロいんだけどって、読むと意味がわかる構造になっている。コミックでは「その後」まで入った完全版になっている。
「淫マ便」はサキュバスのものではあるけどみたことないサキュバスの話だったりする。昨今の人気ジャンルであらゆるネタやシチュエーションやネタがあるのに、まだ誰も描いてないであろう内容であり、エロマンガとしてもすごいサービスになっている。
「再逢」もまた誰も描いてないところ。これも非ギャグ。高校教師が教え子に迫られてその気になってチューしたところを見つかって教師をクビになる。その教え子がちゃんと卒業したのでその報告にきてちゃんと抱いてもらうという話。これまたひと味ちがえどいい話だっせ。
ギャグ方面の白眉は「充血式チンポ」と「焼きチンポ」の冬のチンポシリーズ。世界でかるま氏にしか考えつかないしギャグとエロとして両立できない作品。
寒い冬に勃ったチンポが熱を持っていてカイロとなるのでバス停なんかで待ち合わせのときでもJKがサラリーマンに「寒いのでチンポ触らせてください」ってさわらせてもらい暖をとるというキテレツな世界の話。
「焼きチンポ」は焼き芋の容量で売ってるチンポを買う。家でお茶をいれて皿においてチンポを食べるという話。
んー。
それぞれのギャグやエロシチュは得意なパターンがあり、エロいことが当たり前の不思議な街での出来事でいうと過去にもいくつかあるが、わけがわからないって点ではかなり上位のものかもしれない。何度も書いてるけどそれがエロマンガってことがすごいんだよな。
歴史上、笑い死ぬくらいのマンガは存在する。
歴史上、興奮して手が止まらず腎虚になるかと思うマンガは存在する。
ただ、1作(1冊)の中でそれが同居してるマンガは数えるほどしか無い(個人の嗜好を配慮しての表現で実際にはないよ)。
かるま氏もその夢のマンガを目指してるわけではないだろう。ただ、そのベクトルはそっちに向いておられる。なおかつ、完成形として収まらずアップデートしつづけている。とても素敵なことだと思います。これからもファンを続けよう。
テスト直前に優等生からSEX誘われた件 (WANI MAGAZINE COMICS SPECIAL) - かるま龍狼