2024年12月31日

ALL THAT ダンジョン飯

【全巻】ダンジョン飯 1-14巻セット (ハルタコミックス) [ 九井 諒子 ] - 楽天ブックス
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ダンジョン飯 Blu-ray BOX 1《マルシル 1/7スケールフィギュア付き完全数量限定版》【Blu-ray】 [ 九井諒子 ] - 楽天ブックス
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この文章のまとめ。

ダンジョン飯最高。原作を読みましょう。アニメを見ましょう。

これでAI要らずですね。

以下はそういうことを長々と書いてあります。

ネタバレありで後半をやりたいのでそこから折りたたむ段取りでよろしくおねがいします。

ダンジョン飯は2014年2月15日 - 2023年9月15日に連載されて全14巻です。2024年1月から連続2クールで6月までTVアニメ化されました。アニメ1期の方は8巻に到達したところでしょうか。

最終巻14巻も2024年に発売。くわえて「ダンジョン飯 ワールドガイド冒・険・者バイブル完全版」と「デイドリーム・アワー」という公式副読本が2種発売されました。

これら全てどうかしてるくらいデキが良いです。非常に困る。毎週やっているアニメをみるたび、「このあとどうなったっけ?」とそこから最後まで原作を読む。原作やアニメやガイドに対してのSNSの声をずんだもん他に読み上げてもらうYouTubeのまとめをみては、アニメや原作やガイドを読み返している。止まらない。それらが毎回いちいちとてつもなく楽しいのです。
アニメが終わってもまだ終わってない。ロスになってない。相変わらず、原作読んで、(サブスクで)アニメ見て、SNSのファンアートとセルフのファンアート(らくがき本)を眺めて回るサイクルが続いている。
作者の本は商業本(同人を出されてるかは知らない)に関しては全部リアタイかそれに近いタイミングで買って読んでいます。好きな作者ですし読む瞬間はワクワクしてます。
ただ、「好き」や「熱」に関しては間違いなく今が最高です。「ダンジョン飯」が終わり、アニメも終わって(早く2期やって)、2024年ことあるたびに思い出したりしてますし、なんなら読み返したりもしています。読まずじまいで10年20年って本もたくさんあるというのに。

あらすじ
RPGな中世ファンタジーの世界。妹がダンジョン深くドラゴン戦で食べられてしまう。妹は最後の力を振り絞ってパーティーを地上に転送する。
兄のライオスは協力してくれる仲間とともに再びダンジョンに挑む。ただし着の身着のままで転送されたもので金も装備も心もとない。だから、道中の魔物を食べながら食費や時間を節約して進もうとする。

このあらすじを軸に進行していくことになります。

その基調となるあらすじは4巻までで収拾されるのですが、そこからも物語は続いていきます。そういう冒険物語です。

1巻からリアルタイムで発売のたびに買っていたのですが、14巻で終わり、アニメをみたらとってもいいもんだと、評価がさらに上がりました。なぜそうなったのかということを以下ネタバラシもなんもかんもで書いていきます。全14巻読んだひと+公式ファンブック2冊の内容も含めて書いていきますので、ネタバレされると怒りの熱で空に浮かんでいくタイプのかたは注意してください(足に重り等)。

追記より続きます

ダンジョン飯 1巻 (HARTA COMIX) - 九井 諒子
ダンジョン飯 1巻 (HARTA COMIX) - 九井 諒子
アークライト モンスターイーター 〜ダンジョン飯 ボードゲーム〜 (2-5人用 45分 10才以上向け) ボードゲーム
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ダンジョン飯 Blu-ray BOX 1《通常版》 [Blu-ray] - 宮島善博, 熊谷健太郎, 千本木彩花, 泊 明日菜, 中 博史
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つづきです


竜の学校は山の上 九井諒子作品集 [ 九井諒子 ] - 楽天ブックス
竜の学校は山の上 九井諒子作品集 [ 九井諒子 ] - 楽天ブックス
九井諒子氏にとって本作は最初の長編になり、以前に作品集を3冊発売されていますが、そのいずれも短編集になっております(同人での活動は存じません)。
それまでの3冊の作品集は、ファンタジーやSFを題材とした、短編やショートショートで引き出しの多い様々な展開がありながらも切れ味鋭い作品群でした。

ざっくりした話。
雑誌連載によるマンガ(コママンガ)の形式は大きく分けて2種類あります。
ひとつは、ストーリーが連続しているもの。もうひとつは毎話終わる、1話完結もの。
例えば「ONE PIECE」が前者で、「ゴルゴ13」が後者ですかね。

そういうことでダンジョン飯は最初は1話完結のフォーマットで展開していたのです。
1巻から3巻まではほぼ毎話読み切り。4巻の対レッドドラゴンって序盤の山場であり、1巻1話を基本につづいていきます。

『ダンジョン飯』原作者:九井諒子インタビュー。完結後だから語れることをたくさん聞きました https://news.denfaminicogamer.jp/game-gene/240809d
このインタビューを読んだのがこの感想文を書くきっかけとなりました。いろいろなことがわかりとても勉強になります。

九井氏:
テーマに「食育」を置いて、ざっくりとした作品の流れも考えました。さらわれた姫を助け出し、悪い魔法使いを倒し、ラスボスも倒し、王様になる……骨組みはかなりシンプルに。

でも、実際にそれを計画通りに進めようとした時に「いや、こんなに軽くやれないなこの話……」と気づきました。最初はもうちょっと軽いノリでササっと描けると思っていたんです。

広井氏:
最初、レッドドラゴン戦を1話で終わらせようとしてましたよね?
こっちはもう「終われるかーっ!」って(笑)。

一同:
(笑)。

九井氏:
実際に1話で描こうとしたらすごくダイジェストっぽくなってしまい……この「思っていた話をやるためには、思っていたよりしっかり描かなきゃいけない」ということは、予想外でしたね……。


このインタビューで驚いたのは、すごく完成度が高くて精密に組み立ててられているこの物語が複雑な経緯をもって随所を変更し作られていることですね。
とくに、衝撃的だったのが物語最初の大きなポイントであり、以降のはじまりでもあるドラゴン戦を1話で片付けようとしていたことに驚きました。
以降も基本1話読み切りのペースを守ってます。

ところが、
ところが、なのです。
本作、物語が全ての要素でシフトチェンジしていくんですよね。
インタビューを読んでいると、「必要にかられて」とありますが、
単行本を発売日に買って読んでいるうちはあまり気にもしなくて、途中中だるみ(伏線となります)したけど大団円だったし、最高だったけどなあと。

その違和感はアニメ化によってわかるのです。

アニメがはじまって4話くらいまであまり反応が芳しくない。YouTubeの逆張り大好き目立てばなんでもいいボクチン頭いいでしょチャンネルとか一家言あるオタク評論家が、「原作はいいけど、アニメはちょっとなあ」ってわざわざ動画つくって言及していました。

彼らとはちがう理由ではありますが、イマイチとはいいませんが、アニメには違和感ありました。「まあ、アニメ化ってそんなもんだろう」なんて思っていました。

ところがその原因はアニメのほうではなく原作の方にありました。

アニメは律儀に1回ごとに原作2話分(たまに3話分)を収録して、単行本でいうと8巻52話までたどりつきました。これまた連載当初からアニメ化が決まっていたくらいの据わりのいいところ。

原作のいくつかのエピソードを省略しつつもかなり忠実にアニメ化していました。原作のあの場面が動いてる!喋っている!という歓びが随所に見受けられました。

この一定のテンポというのがミソで、アニメは1話の時間が決まってます。30分アニメで本編平均23分でしたか。CM前とあとのAパートBパートがそれぞれ10分30秒程度。
ところがマンガは毎回同じページで連載していても、中身がちがうわけです。
コマの割り方、セリフなどの文量でもかなりちがいます。

マンガの方も基本では毎月の「読み応え」なども調整するんでしょうが、それは一定のものではありません。

おれはスポーツマンガを積極的に読んでません。その原因はひとえに試合に時間がかかりすぎじゃってことです。1回の連載中に5人死んでるマンガと同時掲載されてる野球マンガはピッチャーが投げたボールがまだキャッチャーに届いてないってことはざらに起こります。そうなると、スポーツマンガは物語の進行度他で損だと思いません?ということであまり買わないのです。単純に1冊読み終えるのがものすごい早いマンガは損です。スポーツマンガと永久バトルマンガはその傾向が強いです。

で、ダンジョン飯です。
前記の通り、連載開始時は淡々と「本題」に進めたいという意思と、1話に湧き上がった小ネタを盛り込みたい意思と、短編を描いていたことへのコンパクトにすっきりまとめたい意思を強く感じられました。

その傾向はレッドドラゴン戦までつづいてましたが、そのあと、単行本でいうと5巻以降かなり変わる。

ダンジョン飯 ワールドガイド 冒険者バイブル 完全版 (ハルタコミックス) [ 九井 諒子 ] - 楽天ブックス
ダンジョン飯 ワールドガイド 冒険者バイブル 完全版 (ハルタコミックス) [ 九井 諒子 ] - 楽天ブックス

ダンジョン飯ワールドガイド
本書はあらゆる設定を列挙してあり、美麗なイラストとショートコミックをたくさん揃えた世界最高のファンブックです。
本書138P「迷宮プレイバック」によると、1話は3/15にはじまり、最終話は4/27に終わってます。1ヶ月とちょっとの出来事です。それを10年間14巻で描いております。小中の夏休みくらいの期間の話ですね。それで世界が滅亡の危機に陥り、ダンジョンの主が3回も変わったのですね。

3/24に地下5階のファリンを食べたレッドドラゴンを討伐しております。ここまでで4巻。ここで長尺を作ってのドラゴン討伐でシフトが変わっております。
4/3が運命の日で、ファリンキメラが登場。そしてメインの登場人物が介し、大幅なシフトチェンジになります。ここで時間軸も変わっていき、2つの物語が別の時間軸でうごきはじめることになります。物語のテンポも変わり、別のキャラの冒険譚を描くことになります。
4/8までがアニメ1期。24話分。単行本にして8巻。
4/12で4/8に思いついた方法でファリン討伐に成功する。そしてダンジョン主と対決して勝利。ここで再びシフトチェンジ。ライオス一行と別に行動していたカブルーとミスルン一行がカナリア隊と同行する。
4/13このドタバタでマルシルが主になる。ここからまたマンガのテンポや展開が異なっていく。
4/15マルシルを説得したと思ったらライオスが最強の敵を倒し、さらにダンジョンの主になる。
4/16妹を救う。実にダンジョンの物語はここで終わります。ここから最終話の4/27まではダンジョンの外で妹を食べるという宴がはじまります。これがまるまる14巻です。だから冒険譚は1ヶ月の出来事か。ちょっとこうやって改めてみると呆然としてしまいますね。
しかも、ドラゴンを討伐する話〜ダンジョンマスターと戦う話〜ドラゴン化した妹を助ける〜ダンジョンマスターになった仲間を助ける〜自分がダンジョンマスターになる。この怒涛の展開をそれに応じたテンポで描くことになっているのです。

これが「シフトチェンジ」です。自動車の運転のそれですね。じっくり描きたいときはギアを落とす、軽やかに進みたいときはギアを上げる。

はじめから全部考えてましたよ!って風にしか感じられなくて、どこからどうなったかって、完全解説!のつもりで読み返しましたがやっぱりよくはわかりませんね。後半につれてどうしても重くなってはいくんですが。そりゃそうですね、世界の命運がかかっているわけだし。
ただ、これは実際にあった出来事を原作にコミカライズしたんでしょう。そうとしか思えない。
つまりそういう結論になりそうです。

ここまで書いておいてなにをいいたいのかというと、つまり、こんな複雑で精緻で濃い内容なのに、「ちゃんと」軽くておもしろくしているということなんですよ。
エンターテイメントってのはつまりそれなんですよ。歴史書にエンタメ要素が加わるとそれはエンタメ、娯楽になる。
本作はまごうことなき娯楽作です。しかも、ベースがしっかりしているし、「食育」というテーマに沿っている。
エンタメが優れているのは、テーマやメッセージが伝わりやすいってことなんですよ。きっちりとおもしろさと底に流れるメッセージ「生き物は食べる」ってのを過不足なく描ききった。
この「過不足なく」ってのが大事なんですよね。そこが「ちゃんと」にもつながる。
おもしろい物語を描けるひとと「ちゃんと」や「過不足なく」を両立させてるひとって稀有よ。だって、おもしろければ「ちゃんと」や「過不足なく」が伴わなくてもいいから。漫画の神様をはじめ、熱狂的な信者がたくさんいる作品だって、過分だったり不足はあるし大名作なのにラストがわからない、記憶に残ってない作品も山のようにありますしね。そしてそれでも名作ですしね。
だが、ダンジョン飯は奇跡のようにそれを成し遂げた。しかも、10年14巻というボリュームで破綻を出さずに「ちゃんと」「過不足なく」成し遂げた。

すばらしい以外になにがあるんでしょうか?

では、すばらしい以外にあるものを紹介します。

九井諒子ラクガキ本 デイドリーム・アワー (ハルタコミックス) [ 九井 諒子 ] - 楽天ブックス
九井諒子ラクガキ本 デイドリーム・アワー (ハルタコミックス) [ 九井 諒子 ] - 楽天ブックス

九井諒子ラクガキ本 デイドリーム・アワー
本作は本人によるダンジョン飯のファンブックです。ラクガキ本です。ワールドガイドがいちおうガイドという枷がついていたのを外して、商売っ気のあるものとそうでないもののバランスがおかしい、画集までいかないキャラのおもしろイラストやコスプレ、ショートコミック、二次創作、つまりそれを総じてラクガキ本としているわけです。
個人的に、画集や設定集やラクガキ本やファンブックや二次創作には全く意義を見出していない人生を送っていただきました。だが、本作は(以下省略)。

本作を読んだから落書き本やワールドガイドが楽しい。そしてワールドガイドや落書き本をもとに考えると原作がまた楽しくなる。
VSパッタドルって日本OLみたいなことやってるエルフのパッタドル(87歳)が日本で熱いものを食べるというシリーズ。
ライオスとカブルーとシュローがお好み焼き屋で試行錯誤してお好み焼きを作ったり、お互いのコスチュームを交換したりとか「キャラとはなにか」まで考えが及んだりもする。キャラ設定も抜群なんだよね。
そしてしみじみと、絵がうまいなあと。
声優が演技するときやっぱりキャラの表情に合わせて声優の表情も変わる。描画もそういうところあるよね、きっと。
それでいうと九井諒子氏はずっと楽しそうに描画されておられる気がする。とりわけマンガ家がだいたい好きな落書き(そもそも落書きが嫌いなやつはマンガ家にはならないだろ)だと何十倍も楽しそうに思える。もしかしたら血反吐もんで描かれているかもしれないが、「楽しい」とおれは思いましたよ。
なおかつ、本作読んでいて強く思った(つまり強い推測ですので念の為)のは、九井諒子はキャラに愛があるというより、キャラを公正公平平等に描くよう心がけておられるように思えた。
思い入れのあるキャラやパーツなど、すなわち、女の子やおっぱいをひとより上手に掛けたらお金がたくさんもらえる世の中ですが、ダンジョン飯もこの落書き本もワールドガイドもキャラをまんべんなく描いているなあ。パッタドルみたいにひいきされてるのも確かにいますけど。
個人的にはクリスマスのプレゼント交換会で、贈るものと、それをもらったのをセリフのあるキャラ全員分用意してあるのが圧巻でした。
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さて長くなりすぎですね。こんなもんで。原作読んでアニメ見ましょう。何回も繰り返しましょう。
EDの絵は九井諒子さんの描き下ろしで、それぞれのキャラの前日譚なのがいいです。

グルメコミックの新展開となるか〜ダンジョン飯: ポトチャリコミック http://sukekyo.seesaa.net/article/413719969.html?1423382216
ダンジョン飯 4巻 九井 諒子 (KADOKAWA ビームコミックス): ポトチャリコミック http://sukekyo.seesaa.net/article/447153813.html?1487498378
ダンジョン飯 5巻 九井 諒子(KADOKAWA ハルタコミックス): ポトチャリコミック http://sukekyo.seesaa.net/article/453053721.html?1503914824
ダンジョン飯 6巻 九井 諒子(KADOKAWA ハルタコミックス): ポトチャリコミック http://sukekyo.seesaa.net/article/458778547.html?1523625056

ダンジョン飯 ワールドガイド 冒険者バイブル 完全版 (HARTA COMIX) - 九井 諒子
ダンジョン飯 ワールドガイド 冒険者バイブル 完全版 (HARTA COMIX) - 九井 諒子
九井諒子ラクガキ本 デイドリーム・アワー (HARTA COMIX) - 九井 諒子
九井諒子ラクガキ本 デイドリーム・アワー (HARTA COMIX) - 九井 諒子


ダンジョン飯 まいにち魔物飯万年日めくりカレンダー
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posted by すけきょう at 15:26| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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