解剖、幽霊、密室 (ビームコミックス) [ サイトウ マド ] - 楽天ブックス
発売が近くなるとおれがフォローしてるひと、とくにマンガ家が毎日のようにリポストしだして、これはただごとではない、乗らないとこのビッグウエーブに!感覚のお気楽ミーハー根性で買って読んだけど、衝撃のおもしろさでした。
短編集「解剖、幽霊、密室」は3篇の短編が収録されており,その中の「怪獣を解剖する」がブラッシュアップされマッシュアップされリメイクされたのが上下巻になったのが「怪獣を解剖する」になる。これが3冊同時発売だったのです。
「複数住戸」
アトリエ用に部屋を借りた美大生の主人公。住んでいるうちに怪現象が次々と起こる。
コーヒーを入れようとお湯を沸かしたらもうカップにコーヒーが注がれているとか、ぬいぐるみが冷蔵庫に入ってたり。
でも、ある朝、洗面台の鏡に殺すだとか死ねとか書かれてた。
その後、アッ!が声が5回くらい出る転々展開。そしてバシッとビシッと終わる。
なんだこの恐ろしい完成度の話と展開は?
なんていうか、ネットフリックスオリジナルの金をたっぷりかけた1話完結30分オムニバスミステリの1話みたいな充実の内容。
ただ、誤解を恐れずにお気持ち100%でいわせてもらえば、絵と話が合ってないと思いました。
緻密な完成度の話に対しての絵のギャップといいますか。さっぱりした絵なんですよね。
それが必ずしも悪いわけじゃない。だけど、そこに気を取られて「あれ?」って思うの損じゃないですか?
それくらい精緻で完成度が高くて、なんていうかな、「メジャー」で「硬派」な話なんですよ。上記でネットフリックスにたとえたけど、「世にも奇妙な物語」レベルの制作費じゃもったいないくらいすばらしいよくできた話なんだよ。あ、ネットフリックスでいうなら「ブラックミラー」って傑作オムニバスシリーズに収録されてても1mmも遜色ないのです。
これはなんだと思いながら次の作品を読みすすめます。
「怪獣を解剖する」
発表の時系列だとこっちのほうが前ですが、こっちのほうが内容と絵が合ってる気がした。「複数住戸」はディティールが細ければ細かいほどおもしろさが際立つ話ですから。
地震のように天災として怪獣がやってくる世界。
海洋生物学者が浜辺に打ち上げられた怪獣を解剖する話。
毎話終わったあとひとことセルフ解説と参考メディアがありまして、なるほどクジラなんかを解剖する話に着想を得てるんですね。「大怪獣のあとしまつ」って映画ありましたね。おれはそれみてないんですが。
こちらのは、モヤッとしてる描画はそのままでもOKなタイプの話ではあるし、この題材をさらに長編にするというのはすごくわかります。はっきり書きますと上下巻の「怪獣を解剖する」のときにリアル方向の描画されております。
打ち上げられた怪獣に最初の刃を入れる「解剖式」みたいな「マグロの解体ショー」みたいな「入刀の儀」ってのがすごい。なんていうか、その派手でありながら、「日常」になっている、ショーになっている感じの生み出すリアリティがすごいし、こういう怪獣モノってなかったなと驚きました。
「天井裏に誰かがいる」
短編集としては最新作。
ひとり暮らしの老女が行方不明になる。完全に密室のなか消えた。 老女と仲がよかった。そして「心霊課」の刑事が事件として介入してきて、、ってこれまたホラー、怪異、ミステリー、アクションと全部入りで見事です。本作が1番ページ数が長い。本書の半分がこの作品です。
この3作でも絵の変遷が読み取れます。画風もけっこうちがいますね。
ただ、お話それぞれはまちがいなく「サイトウマド」が表現したい内容に沿っていってます。そして満を持して「怪獣を解剖する」上下巻に結実する。「密室」のキャラデザインや画風が上下巻版「怪獣を解剖する」 へとつながっていく感じですかね。
作者の底がみえないし刻一刻と「すごく」なっていくのを本作と「怪獣を解剖する」 だけでも感じ取れる。
さらなる傑作を待っております。

解剖、幽霊、密室 (ビームコミックス) - サイトウ マド

