ショーハショーテン! 11 (ジャンプコミックス) [ 小畑 健 ] - 楽天ブックス
松本人志氏が映画を撮っていたとき、M-1を題材とした映画を作って欲しいなと思っていた。
松本人志氏なら1からM-1に出演する架空の芸人全員のキャラやネタを作り上げて、映画内にこれまでみたことない10組の新ネタの漫才を作り出しそれを映画にできるんじゃないか?と。というか、そんな映画おもしろいのかわかりませんが、作ることができるのは松本人志氏しかいないと思ってました。
本作はそういうことをしております。
11巻で完結しました。お笑いが好きでコンビを結成して笑−1(わらわん)ってお笑い賞レースの高校生版に出場して優勝を目指すという作品です。
登場するコンビのネタをだいたい全部描写してます。なんらかの「元ネタ」はあるって話ですが(あまりわからないし、いわれてもそうかあ?ってくらいアレンジしてありそう)、コツコツと各キャラとそのネタを作り上げて、バックボーンを語りつつも漫才自体もちゃんとおもしろく描いております。
原作は浅倉秋成氏。「六人の嘘つきな大学生」や「俺ではない炎上」など原作小説が立て続けに映画化している勢いがすごい作家。
くわえて2025年のキングオブコントの決勝に出場していたレインボーのジャンボたかお氏とお笑い甲子園に出場経験があったりします。
作画は小畑健氏。「ヒカルの碁」「DEATHNOTE」「バクマン。」などを描いておられるいわずとしれた有名ジャンプマンガ家。
小畑健氏の絵は「超絶うまい」って大前提がありながらも作品ごとに絵柄や作風を変えており、いつも最新作が「1番うまい」って状態のジャストオンリー鬼と思われますが、本作の絵がまたちょっと他作家より抜きん出ております。つかまあもっと書くと、おれはいま世界で1番マンガの絵がうまいひとと思います。
漫才をマンガにする。しかもネタに合ったキャラを創造し、ネタをマンガで読み笑えるようにする。それは原作もそうだけど作画のほうがより強い責任があると思われます。
本作においてちゃんと漫才を、ジャンプらしいバトル漫画として成立させているのは見事です。
とくにキャラ漫才と呼ばれている。漫才のネタの妙よりファニーな人間がファニーな動きをするキャラを描くことで起こる笑いなんてのは原作がどれだけ文字を重ねても描ききれないところがあります。そこをそれもう見事に描ききっております。
精緻なだけならAIなんかに任せておけってことだけど、マンガらしくデフォルメさせておいてなおかつリアルでもあり、それぞれをマンガとしてなじませる技術は、やっぱり世界で1番です。
全11巻。ここでこう終わるのかって感じもありますが、描ききってますね。
と、もう1点で世界一なところを。
マンガ、とくに少年マンガでエロを喚起させるのを目的としてないマンガにおけるおっぱい描画ってそれでしか得られないサムシングがあるという内容です。
物語のスジと関係ないところにおっぱいがあるという状態。これはリアルでもそういうところあるけど、「あ、おっぱいだ」って瞬間。そこにドキドキが発生する。そこにおっぱいは必要ないしお呼びでないけどそこにあるおっぱいはおっぱいなので目を奪われる。
現実にも起こり得る現象ですが、現実よりもマンガのそこにあるおっぱいは「エロ目的でない」ならば健全です。それをエロとか「いいもの(あるいは悪いもの)」と読み取るのは人間の業です。そしてそれがマンガの魔法でもあるのです。
少年マンガのそれはとくに強い魔法が発生します。
青年マンガや成年マンガはエロを連想させたり演出させるため、少女マンガは美を演出するためにおっぱいがあります。でも、少年マンガにはおっぱいは本来なら関係がないです。でも、おっぱいはあります。作者はなぜ描いたのでしょう?様々な理由があります。マンガ内に描いてある「線」には全て理由があるからです。だからマンガ家が描くのです。
マンガのおっぱいなんてたんなる曲線です。それは「女」であることを意図してるかもしれません。大きいおっぱいの持ち主であることを意図してるかもしれません。体型であったりエロスであったりいろいろです。
でも、少年はそこに「あ、おっぱいだ」と思いドキッとする。なぜドキッとするかというとおっぱいだからです。
だから、いいのです。
ということを改めて考えさせられるのです。ナイスおっぱい!おっぱいには魔法がある!
ショーハショーテンの主人公の世話役のおっぱいはとくに「健全」です。だからより純な気持ちで「あ、おっぱいだ!」と思うのです。
おまえはなにを言ってるんだ?ここまで書いて冷静になりました。でも、まあ、おっぱいはね、目に残るよね。しゃあないよね。マンガを読むってつまりマンガのおっぱいを目に残すってことでもあるから(ちがう)。
それを久しぶりに感じてます。少年のような澄んだ目で「おっぱいだ!」と思いました。
両者の次回作を楽しみにしております。小畑健氏のマンガの進化をとくに楽しみにしております。

ショーハショーテン! 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) - 浅倉秋成, 小畑健

