父を怒らせたい(1)【電子書籍】[ おかくーこ ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
暴君で毒親な大嫌いな父が末期がんになり余命宣告まで告げられ、酸素吸入器をつけて家にいる。些細なことで狂ったように怒っていた父ががんになりどんどん大人しく小さくなっていく。
そんな父に主人公はまた在りし日の怒る姿を見たいと思うようになり、父に怒られていたことをあれこれ試していく。
そういうあらすじで全3巻。
3巻の生前葬がクライマックスとなり、生前葬のために奔走することではからずも父の足跡をたどるというダンドリとなっております。
絵の魅力。
やさしいタッチなれどディテイールが細かくしっかりしててこだわりが随所にある。
たとえば主人公の幼馴染?の酒屋のたまきが遊んでるゲームがなにかわかったりな。スイッチのTVモードだとブレスオブザワイルドやってて携帯モードだとBrotetoやってるなとか。質感のある家具や家、グレードもわかるね。
随所に「どうだ!」ってバンとくる風景もすごい。
舞台は大阪っぽい。関西弁の地域。大阪な感じはすごいある。
リアリティとマンガ的な記号とエフェクトのブレンド具合がいちいち魅力。椅子のメーカーが特定されそうなくらいなのにおひさまはざっと丸に放射みたいな。そこらへんの匙加減。自身の世界をモノにされている。
「この絵だからこそ」って決まり具合がとても気持ちいい。絵と話のシンデレラフィット(知らん言葉で使ってみたけど合ってますか)。
当然、キャラもこだわっています。
主人公の複雑な思いとその半年の波乱の生活で変わる気持ち。ずっと献身的にひょうひょうと父親の面倒をみてきた母親。父に嫌気がさして10年実家に寄り付かなかった姉や、まだ存命だった父の両親とか。
名前すらない主人公の仕事先の先輩なんかの設定も細かくありそうに思える。なかなか「食えない」キャラが立った言動を見せる。善人の悪も悪人の善もぼんやりした感じでいい。悪人らしい悪人はいないんだけど。
人の生死って崇高なことを語るでもなく、エモエモに泣き泣きの展開をするでもなく、でも、それでも、じわじわと「感動」は蓄積してはいきますが、それもドーンと爆発させるでなく、ってか、ことさらに、でも、うん、父は死んでいくのよ。
ま、ここらへんはね。おれも両親や奥さんががんで死んでるからね。ただ、こんな面倒みなかったなあってことに負い目を感じるくらい物語の母親も主人公も面倒みてるなあ。えらいわ。
男の子は面倒みないって本作にもあったけどそういうことなのかなあと。
主人公が生理の日なのに彼氏に求めてこられて「こいつとのセックスハマってないのになあ」と思いつつも嫌われたくない一心で応じて、ハマってないうまくいってないのを父親の病気のせいにするってシーン。
ずっとひょうひょうと主人公や姉に対応しつつ父親の面倒もみてた母親が唯一くらい涙ぐむシーンがとても刺さったな。
あと、生前葬が終わってからがとてもいい。物語のとどめの見開きも。
あんまりおもしろいのでKindleにあったエッセコミックも買って読んだ。こっちもおもしろい。
次回作を期待しつつ待望しつつ切望してます。

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