初老の娘と老母と老猫 再同居物語1 [ 松本英子 ] - 楽天ブックス
初老の娘と老母と老猫 再同居物語2 (Nemuki+コミックス) [ 松本英子 ] - 楽天ブックス
2025年は老いや死についてのマンガをたくさん読んだような気がします。
気がするとしたのは覚えてないからです。これもまた老い。
実際老いています。かなりひどめの大病で半年入院して退院したために老いにブーストがかかりました。
なお、入退院してた2023年は闘病マンガをようけ読んでいました。
いまの自分に即したものってなにかと集まる説。
全2巻。
「謎のあの店」「荒呼吸」「49歳、秘湯ひとり旅」などのお出かけ系エッセイコミックが得意の作者が23年ぶりに老母と老猫の住んでいる実家で暮らすというエッセイコミックです。NOTお出かけ、あるいは別の意味の「お出かけ」とはいえるのかもしれません。
それは「老い」がつきまとう人生の送り方。老いを生きるという旅というかお出かけ。
ってね。
本作、老い、そして「死」がとても身近。80歳の母と52歳の作者。なにかと体調が不安な母、作者も自身の老いを自覚する瞬間が増える。猫マンガも描かれてる作者だが、本作での老猫はあまりエピソードに出てきませんが猫も老いてます。
全2巻。2巻の終わりころともなると、母が83歳、作者が55歳となります。月刊連載で2021年から2025年まで。
1巻はタイトルとここまでの概要から想像できるものとあまり遜色がないです。編集の煽り文句である「共感の嵐」「わかりみが深い」等等。「老い」あるあるが多数。
ただ、徐々にでもあるが2巻からさらに「死」あるあるがグググと入り込んできてその説得力がすごいんだよね。
2巻冒頭から初のつづきでふたりの喧嘩がはじまる。やかんで湯を沸かしてるガスコンロの火が強いのがいやという母の訴え。些細なことだけど、長年親子をやってると「些細」な不満は限りなく積立られてひと財産になっていく。そして「もう一緒に暮らせないから私はホームに入る」と母が宣言する。
んまあ、「些細」ないざこざが頻発するのはそれが些細だからで、ホームに入る云々もよくあることでまたいつもの生活に戻るのですが、そのループは徐々に弱まっていくんだよね。
ネタバレ書きますが、初老も老母も老猫もどうにかなるわけではないです。マンガの間では。
ただ、全員が平等に老いていき不調が出てくる。
そしてその先には抗いようのない「死」が待っている。
この「死」のムードがマンガ中にあふれているのが2巻です。体裁は1巻同様、老いあるあるの風でいて、老い=死って事実がどんどんの腹の底に重く硬く育っていき「下」へと引っ張っていかれる感じはどんなホラーマンガより怖いよ。あと100年は生きようと思っているんだけどやっぱり死ぬのは怖いよな。
最終話、大晦日。年越しそばを茹でるのを失敗する。生そばを茹でるのは大晦日くらいで去年も失敗した。来年は忘れずにうまく茹でよう! 来年?
と、去年もそう思ったときに、「いま」どうなっているだろう?と想像していたことを思い出す。そして「来年」もそう思えますようにと。
こんな終わりです。
すっかりネタバラシしました。
でも、大丈夫です。あなたが思ってる何倍も胸にきます。素晴らしい描写です。ネタバレでも安心できると思います。
そしてあなたも「死あるある」にふれいろいろ思ってください。
って〆るつもりだったけど、これって自分が普通に死が近いから余計に身にしみてるだけで、まだまだ元気な方には上記のほがらかずっこけ老老エッセイコミックなのかもしれないよなあと。
そういう方はぜひ紙で買って(電書だと埋もれてしまうから)寝かせて置かれるといいですよ。で、人類平等の老いやニアデスになったときに読む直されるといいかもしれません。

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