2008年04月15日

「ヒャッコ」3巻 カトウハルアキ(フレックスコミックス/ソフトバンククリエイティブ)

・3巻目です。アニメ化決定です。最近は決定だけでもオビに載せるようになりますのね。

・1巻がまあまあで、2巻で「おおっ!」となって超期待の3巻でしたが、例によって期待しすぎたのでちょっと肩すかし。
・でも、実は肩すかしのほうが読み返すんだよね。「2巻があんなおもしろかったのに」って思いから、自分の感覚がおかしいのか、3巻からおかしくなったのか、どっちにしろ、そう思った原因はなにか?って。

・虎子さんをはじめとする個性的な面々による学園コメディ。

・これまでの特長どおり、新キャラが増えていきます。毎話1人づつってのは2巻よりにぶってはいますが、3巻では虎子さんの身内が登場するという展開になってきてます。
・あと、「あずまんが大王」からはじまった一連の「ネオ学園コメディ」ってのには定番であり、表紙にも載っている、とび級で編入してくるチビッコも登場。

・人多すぎ。かなり工夫されておられますが、人多すぎ。しかも、各キャラ、1芸=1キャラみたいになっており、お嬢様、百合、ヤンキー、ガリ勉、貞子、マッドサイエンティスト、ナニワの商人とか、わかりやすいのが目白押しで、そのせいで逆にキャラにふくらみを持たせるのが難しそうとおみうけ。

・3巻では、主人公虎子さんを、姉と兄を出すことで、ディグるカタチになっているのが特長かもしれません。
・これまでは、各キャラの登場編としての媒介としてのキャラだった虎子さんのかわいいところや意外なところを描写しておられます。虎子さんの株は急上昇する3巻ではあります。

・3巻というか、本作全部でのポイントはそのディグり方ですね。正直、そっちに掘り下げるか?と思いました。かなり予想外。

・さきほども引き合いにだした「あずまんが大王」。しばらくはそうでもなかったですが、ある時期から、鬼のように設定を練りこんでいきました。それをさらに練りこんだのが「よつばと!」の気がしますが、まあ、「あずまんが大王」で話を進めていきます。
「あずまんが大王」は各キャラの親や兄弟がほぼ出てきません。声や半身やポイントポイントで「居る」ってことくらいの情報しかないよう配慮されてます。
・これは、ごちゃごちゃを防ぐためでもあるし、いろいろな余地を作るためでもあるし、「あずまんが大王」において、親を描くことを「無意味」としたためですね。

・マンガを読んでいて、意外と忘れてしまうのは、マンガ内に存在するものはすべて「描こう」と作者の意図をもって描かれていることです。アタリマエのことですが、良作ほどその世界があまりにも自然なので、そのマンガの中で普通に起こっていることのように思えてしまうんですよ。
・もちろん、それはまちがいで、作者が考えて、ペンやペンタブを駆使して血を吐きながら描いているのです。もれなく血を吐いてます。

・だから、本作においても姉や兄がいて、なおかつ、複雑な家庭事情を描いたってことは、作者・カトウハルアキ氏がそれを必要としたから描いたってことです。

・さて、そこで読者の立場として疑問が生まれます。

「本作はどこに向かうのだろう?」と。

・家庭内のことがでてきたこと、虎子さん個人を深くディグったことで、ちょっと軸がブレてきた気がするんですよね。

・物語の本質というか、基本というか、テーマというかね。


ドタバタ学園スクールライフ


・カバー裏にはこう書いてあります。ドタバタ学園スクールライフに家族の事情を挿入するのはなくはないです。ただ、本作の場合、それがどのように作用する?ってのがみえてこないのです。

・読者が話の先を知ることはないと思いますが、読んでいるマンガがどういうマンガであるかは知りたいなとは思うのですよ。
・開始1分でジェイソンに惨殺される車寅次郎が主演の「男はつらいよ」ってのは想像つかないし、かなりそれって「男はつらいよ」じゃないでしょ? まあ、かなり大げさに誇張してますが、本作も3巻の展開でイマイチどのワクに入っているのか判断しにくい状況になったとは思うのです。それが正直なところ不安です。

・そしてそれでもおもしろいんだこれが。不安にはなるが、おもしろいってのは、「夕日ロマンス」のときにすでにそうでしたから。サラリと書くと「やっぱりこうなった」と思えばそれでいいんですよ。4巻ではどうなるかはわかりませんが。

・とくに3巻は前記のとおり虎子さんが萌え死ぬほどカワイイわけですし、兄と姉はともかく、新キャラのヒツギちゃんも手堅くカワイイ。トーマの慰めも、スズメの食いしん坊キャラ、アユミのパイオツなど、みどころもあるしね。

・いやまあ、だから、スチャラカでいくのか、シリアス交じりのストーリーが展開するのか、どの役を狙っているのかそろそろ決めろということですよ。三色かホンイツか決める段階だろ?って麻雀用語を使ってみましたよ。いやまあ、人気が出て、ずっとウヤムヤでいくって手もありますけどね。「ぱにぽに」みたいに。

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posted by すけきょう sukekyo at 17:59| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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