成年は下のリンクから。
・成年コミックは、その特性から、読みきり短編が多く、それをまとめた作品集は、ポップスやロックのアルバムのようです。
・雑誌掲載がシングルで、それをまとめた単行本がアルバムって感じでね。
・だから、凝る人はいくらで凝るし、そこに思いいれがない人は、掲載順にザラリと並べて表紙だけ描き下ろして一丁あがりになってます。
・また、成年コミックは1冊あたりの単価が高いから、また、いろいろと凝ることができるんですよね。カバーはずした表紙も美麗なカラーイラストがあったりね(コアマガジンのとか)。
・おわかりでしょうが、本書は前者でおれも前者が好きです。ただ、後者がダメってことではないですからね。作品自体のクオリティが高いならばそんな細かいことはカンケイないですからね。そもまたポップスのアルバムと似たり。
・いきなり4話連続の「それでも僕らは…」でドギモを抜かれて、粋をこらした作品が続く全11作。前後編などを考えると実質6話。
・上記のアルバム理論でたとえると、おれはこの10ccの大名作があてはまると思うのよ。
・いきなり連作である「パリの一夜」からはじまっていながら、エバーグリーンな名曲というか、なんだってああもCM曲に起用してるんだ?でおなじみの「アイム・ノット・イン・ラブ」があり、ベストには必ず入る、おれ的にも10ccのベスト「人生は野菜スープ」なんてのも入っているという極上のポップアルバムのようなクオリティを持ち合わせているのが本作と思うのです。
「それでも僕らは…」
・舞台は近未来。少子化がいよいよ深刻になったので、政府は高校の授業に「子作り」を導入する。ローテーションで組み合わせが発表され、生徒同士でいたすわけです。
・そして妊娠すれば結婚。政府がかなり手厚く保護する。就職の斡旋、福利厚生など。
・男にとっては天国でありますが、そこをあえて女性にフォーカスを絞って展開します。
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愛のない男に身体をまさぐられるのなんて苦痛
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・3人の女子生徒と1人の男子生徒が登場します。彼女らはその男子生徒が好きなのです。できるならば彼の子供を宿り、結婚したいのです。その中の1人、ヤンキーでガサツなコのセリフです。彼女は彼としたいがために高校を追いかけてずっと実習時間をサボってました。すなわち処女のまま。
・そういう感じで全4話、物語としてもきっちり、エロとしてもきっちり、マンガとしても、キャラとしてもきっちりとまとめてくる「ラブでれ」のトラック1の「大作」にまずやられるのです。(つまり、これが10ccの「パリの一夜」にあたるってことででっちあげを思いついたと)
「宇宙こんにちは」
・テクノロジーが進んだ異星人だが、機械による生殖がアタマ打ちで、未だに昔ながらの生殖にたよっている地球に星のお姫様がみずからレクチャーしにもらいにくるという、ちょいちょいとみかけるアレです。
・前後編の本作がおもしろいのは、勃起したチンチンをみて、ビビってしまった姫がボディーガード役に、「おまえが先にやってみろ」と投げるところですね。「どんな痛みにも耐える訓練をしている」といってたボディガードは性的な愛撫には全然で、どんどんとトロトロになっていくのがタマランチ大統領ですよ。
「日常のメイドさん」
・公団住宅なのに、なぜかいるメイドさん。幼少からみてもらってましたが、いつしか、思春期になり、女性としてみてしまうメイドさんに迫ろうとしたら「これも仕事です」なんつってパクリとな。
・氏のブログ(http://k-eng.jugem.jp/?eid=247)にあったセルフ解説による「のらみみ」でいうところのキャラみたいなもんだというのに激しく合点。
・そして、本作通しての特長であり、おれが作者の名前を覚えた作品(ここには収録されてなかった)にもあったポイント「ガサツ」。それがサイコーなのが、「トモダチ以上」と「恋人未満」の連作です。
・気のおけないというか、しじゅういがみあったり、衝突している女トモダチ。その日も、しこたま飲んで自分の部屋にあがりこんでぐったりしてる。寝るのにジャマだってんで下着姿になった彼女に焦る男。「私じゃ勃たねーんだろオ?」と、いじわるく彼氏に迫り、手で発射させる。
・彼女はそれで「勝った」という満足感で寝ようとするが、彼は完全に火がついてしまうわけで、後ろからグッといくわけですよ。
・そいでも彼女は強がるのよ「キモチよかろ? 私ン中」ってね。
・カチンときた彼が「おまえだって感じてるだろ?」と隠すようにしていた彼女の顔をみるわけですよ。
・そんときの表情が!
・と、ガサツなキャラが「女」になる瞬間がすごくかわいくてエロいのよねえ。
・おれが気に入った単行本未収録もそのパターンでした。
・その「トモダチ以上」を受けての、次の日を描いた「恋人未満」がまたいい。処女じゃなくても初々しさってのは表現できるよなあと。今度は、「またしたい」ってお互いにいい出せずにじりじりする感じがねえ。
・そして、とりあえず「はじめて1回やる」ってことにイノチを削っている男向けエロマンガにおいての「2回目」で1本の作品を作るってのはなにげに画期的です。
・エロ描写自体は昨今のに比べるとちょい薄め。アヘシーンの真ん中に物語パートをインサートしたりもあるし。描写もデジタル化してますがベースはマンガマンガしてます。
・作者の趣味なのか、口淫シーンは少ないし、エロ的なバリエーションもそうたくさんはない。ああ、フェラはないけどキスが多いね。そうなんだよな、(男向け)エロマンガってそう思うとキスシーンってないんだよねえ。逆(女子向け)だと必須でしょ?
・ただ、上記のとおりガサツな女子描写がバツグンです。ガサツで不器用だけどピュアで一途ってね。そのかわいさにやられるって感じです。だから、エロよりもかなり萌え寄り。
・マンガとしての完成度は高い。しかしエロマンガとして読むと凡庸と映るかもしれん。「淡白」ととられても強く反論できない。
ツンデレの「ツン」とはまたちがった感じでね。「ガサデレ」だと語呂が悪すぎるから、表題作の「ラブでれ」なのかしら。
カバー裏のオマケなんかも込みで、細かいところまで隅々に気を配ってある「超良作」です。傑作や名作と正面きっていうにはちょっと不安なところはあるけど、大好きだし、ある点で、傑作や名作を超える点も多数見受けられるから「超良作」。
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