・だいたい登場人物は女性。そしてだいたい女性が好きな女性ということ以外は学園マンガです。
・カップルから、告白前、無意識、覚醒寸前など、いろいろな女子を取り揃えてますが、きちんとベクトルは「百合」にむかっております。それでいて、ウツワとか物語の進行は、学園コメディ、とりわけ「あずまんが大王」を代表とする女子メインのほがらかなやつです。
・物語が進むにつれ新キャラも増えていくのですが、2巻「その8」から登場する腐女子キャラがすごかったのです。
・みかけは「ぱにぽに」の都さんみたいなんですが(わかる人が少ないですね。えーと、ショート&横分け&デコ出し&ヘアピンにメガネです)、彼女自体は普通です。普通の腐女子です。いや、普通の孤独な腐女子なのです。
・彼女自体、2巻では物語全体の重要なキーパーソンなのですが、彼女メインの「その9」が超強力でね。ちょっとここについて語りたいよボクは。
・彼女は小説を書くコです。ある小説家の熱烈なファンで、ファン同人を出したい。ただ、小説家はマイナーなのです。なおかつ、ちょっと百合がかった女性の友情を描く作風で、これまでの同人仲間からは、話が合わなくてはじかれている腐女子人生です。
・そうやって悶々としながら、静かに高校生活をおくっているとき、その作家を知っているこの物語の主人公に出会います。そして、一気に同人魂に火がつくのです。「いっしょに同人を作ろう」「トモダチとはじめて同人を出す」ってんで、もう舞い上がって睡眠時間を削ってオリジナルを完成させます。
・ところが、主人公は覚えてなかった。あまり本気にとってなかったのです。そこで、これまでのないがしろにされてきたオタク人生がフラッシュバックし、家に帰ってついに彼女は号泣するのです。
・もうなんつーか、不遇だった自分のオタク人生とシンクロして胸がいっぱいになるですよ。その後の展開も含めて、すごくクるんですよね。おれも1人で舞い上がって、「まわりも絶対によろこぶはずだ」なんて1人相撲をとっちゃあ、彼女のように打ちひしがれてたものです。
・そして「その10」での「救い」も含めて、なんつーか、もう完全にハマってるなあとしみじみと思うのです。
・季節は夏で、ほぼ女子(1人女装男子がいる)ってことで、水着も多いんですよ。なんたって3巻予告に「学園マンガの「美味しいところ」ハズしません」なんてあるくらいで、ベタに丁寧に学園モノのイベントをトレースしていってます。ま、合宿ネタの展開は相当変化球でしたが。
・なお、3巻は秋で運動会とかありそうです。
・話というか技術で舌をまいたがの「その12」。これは主人公と、彼女が恋焦がれている「親友」とのほぼ2人の話です。
・主人公はもうラブラブですが親友というカンケイが壊れるので告白できない。相手はでも無意識ながら主人公に恋しはじめているという仲で、主人公が田舎の墓参りにいき連絡がとれない状態の話。まあ、よくある「すれちがい」ネタです。
・よくあるからこそ、凝ることができるわけで、後半の処理は本当にすごかった。1コマ1コマの演出がすばらしくてね。相当文字数を費やして説明したいくらいです。
・白眉は152pの1ページぶち抜きです。遠く離れている2人はともに喧騒の中にいます。1人は村祭り、1人はにぎわう都会の街中。それを「喧騒」つながりで1ページにいっしょのコマに描いております。だけど、2人はすれちがっています。お互いに気がついてません。1人はしつこく連絡をとるのはアレだと思って遠慮してますし、1人はケータイが壊れたと思ってます。ところがケータイは復帰したし、1人は「もう1度だけ」と立ち止まります。つまり、すれちがった後、「ふりかえった」のですよ。そして、振り返ったから2人はお互いをみつけることができた。それを場所を飛び越えて描いてます。あと「空」の演出なんてのもありますけど。彼女の声は空を通して主人公の耳に届いたと。
・いやほんと石ノ森章太郎氏の「竜神沼」じゃないですが、マンガ演出のお手本のような1本です。すみずみまで配慮されてます。
・おもしろかった。地力があるかないかは2巻を読めばわかりますよね。1巻がおもしろいってのは意外にどんなマンガ家も達成できます。ポイントは1巻の好評を受けての2巻ですよ。作者初2巻だそうですが。
・3巻もキタイです。ただ、この物語はどう「終わり」を処理するんだろう? 物語内にいくつかある恋は成就するのだろうか。そして女性同士で成就するってのはどういうことなんだろう?とは思う。
オススメ
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