2022年12月26日

70年目の告白 〜毒とペン〜 高階良子 秋田書店




実は作者について知りません。びっくりするくらいのベテランですから。タイトルの通りのキャリアのベテランです。
大御所漫画家の生い立ちからのまんが道。全3巻。
タイトルにある「毒」は毒親のことですね。
彼女の人生に立ちはだかり続けていた母親との軋轢を描いた70年のまんが道。
これがすさまじかった。
知ったのはTwitterだったのです。圧巻とフォローしていた漫画家の方々が書いていたので、ちょうどセール日と重なっていたので「ふーん」と軽い気持ちで買い、軽い気持ちで読みはじめたがこれが凄まじかった。すっかりやられてしまった。

オープニングは母の死。そして戦時中の空襲により母が自分を生むところにタイムスリップして出産前の母親描写から物語を今の作者が見守るところからはじまる。
家を伯母にとられバラック小屋に子供4人と暮らす。父親は仕事が忙しくてめったに家に帰らない。そこでいて母親にあからさまにいびられる日々。

マンガという生きがいをみつけても馬鹿にされたり書き溜めたノートを捨てられたり、「マジか」ってエピソードがつづく。
それでいて中学卒業とともに就職。住み込みの職場で仕事の合間に布団にちゃぶ台を置いてマンガを描くというエクストリームまんが道。

そして作者は漫画家として成功するんですよ。そうなると母親が寄生しはじめるというネバーエンディング毒沼。
アシスタントの前で主人公をdisり自分がえらいことをアピールするとかいびるのが止まらないまま、ついには精神を病んだりする。

毒親ってのがよくわからないのは、結局のところ親を捨てきれてなくていつか自分をかわいがってもらえるっていくつになっても思ってるから、絶望に絶望を重ねても暗闇の中に一筋の光を見出すって構造なんかなあと。作者も「今の」作者視点から分析されてるけど。

基本というか最初から最後までラスボスとして母親は立ちはだかっているのだけど、終戦から昭和平成という時代にはなんていうか別の敵も多いんだよね。
中学のときの牛乳のエピソードがとくに強烈だった。
クラスの牛乳が足りないっていったとき牛乳嫌いの同級生が手をあげて「私のをあげます」という。それをみていた担任が、作者に「あなたは生活保護でタダで給食を食べてるんだからこういうときはすすんで差し出せ」なんていうのよ。
で、それがショックで「自分は牛乳が飲めない」という自己暗示をかける。
なんかこういう強烈なエピソードが多いんだよな。
結局、母親が財産を管理するって名目で作者の稼ぎの大半を貯金してたものの、それは晩年にボケた母親のケアホームのためになくなるとか。

いやハードすぎね?と絶句する。

昔から大好きだったって理由でフォローした漫画家もときおり毒親の話をツイートするのを読んで衝撃を受けていた。
こういうのやっぱりあるんだなあ。

こういう「まんが道」もあるんだなと。凄まじかったです。
posted by すけきょう at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月20日

ようきなやつら 岡田索雲 双葉社


このマンガがすごい2023の18位。
各コメントを読んで気になったのが1位とこれでした。

短編集。webアクションで読み切り連作として発表されていたものに電子書籍として別に発売されていたものに描き下ろしを加えてグググググと完成度を増して1冊にまとめたようです。

妖怪系を主人公としての読み切りが最後のほうで集結といった具合。

かまいたちの子供がほしいただのいたちがかまいたちの奥さんとセックスをしてばかりいる「東京鎌鼬」と、他人の心が読めるゆえにクラスから孤立しているサトリが先生の尽力で心を開く「忍耐サトリくん」は、ギャグテイストが強くて(声出して笑ったよ)、そういう路線なのかと思ったら、「川血」からテイストが変わり「峯落」から”思想”が入っていき、関東大震災の日本人による東京での朝鮮人虐待を描いた圧巻の「追燈」。そして描き下ろしでグググとまとまるという段取りになっております。

読み応えがあり、それぞれテイストががらりとちがうのにきっちり引き込まれる。

このマンガがすごい経由だったのでタイトルでひいて買ったから読み終わるまで気が付かなかったけど「メイコの遊び場」のひとだったのね。これは全3巻読んでいたのにな。
そう気づくとあらためて似たところも多いのですが、タッチがちがうので気が付きませんでした。各話ごとにガラリと話がちがうし絵のタッチもちがう(でも、統一したものもある)ので気が付きませんでした。

読み応えのある完成度の高い1冊になっております。なるほどこの年を代表する短編集になっておるなと。





1970年代が舞台。いつも眼帯をしているメイコ。いつもひとりだったメイコ。そして「仕事」をしているメイコ。
あるとき地元の同年代の少年少女に誘われていっしょに遊ぶようになる。
彼女が眼帯をとった目に見つめられると「彼女の世界」に引きずり込まれ彼女の遊び場のおもちゃになる。そうされると「壊れる」。
ということで、前半は友達といろいろな遊びをやって、後半はその遊びでひと(ほぼヤクザ)を壊すという段取り。
ラストがいいんだよな。とってもいい。いまもどこかにアラフォーくらいのメイコがいるのかしらねえ。
posted by すけきょう at 10:20| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月19日

光が死んだ夏 モクモクれん KADOKAWA



このマンガがすごい2023のオトコ編1位です。
ここ10年はもうジャンプ無双といえるような状態ですよね。1位は意外にそうでもないと思いますが。今回もベスト10には6作品が集英社ジャンプ系です。おそろしや。
その中にあって1位で非集英社でデビュー連載作です(もっともデビュー連載が1位も多い気はする)。
なにより、書店で「目立つ表紙だな」と記憶して、なおかつ最初の10ページくらいの立ち読み用小冊子をパラパラと読んではいた。
それが1位になるので「あ、あれかあ」と読もうと思ったのでした。

既刊は2巻。

中学生。主人公よしきの親友の光は死んだはずなのに気がついたらそこにいる。それを指摘するとなにかが現れる。そして黙ってくれないと殺すことになると泣きながら懇願される。くわえて親友がいないことに耐えられないのでよしきは受け入れる。
ところがさまざまな怪異がおこりはじめる。

光の中身がちがう。くわえてそれ起因でいろいろと不気味なことが起こってるということ以外はのどかで穏やかでおバカな日々。

全体的にホラータッチのホラー漫画ということがいえますが、あまり人は死んだりしないし大きなことは起こらない。ただ、ずっと不穏な感じはある。でも、それはよくいうお笑いでの「言い方やん」的に「描き方やん」って。
だから、よしきと少しのひと以外にはその変化は伝わってなくて、光は相変わらずバカでひょうきんで人懐っこくてちょっとイケメンの「いいヤツ」で、よしきのことが大好きということになってる。

だが、よしきの動揺が全くおさまらないまま、話はいや〜な方向には動いていく。

光のほうのモノローグもけっこうあるのよね。こういうのセオリーとしては、ジンガイに変わった光は謎の存在としたほうがいろいろと話しが早いんだけど、光は自分がジンガイでありつつも思考パターンは生前の光としている。ただまあ光は自身がジンガイであることでの思考や記憶も同時にあって、そっちのほうはあんまりよくわからないようになってるかな。
そしてよしきのほうもモノローグはある。最近はこういうのがよくあるよな。
ラブコメなんてのはセオリーとしてどっちかの内面はみせすぎないほうが話が盛り上がるんだけどな。
本書もわかると思いますが、よしきと光のBLっぽさはある。たぶん、人気の秘密はそこかなと思いますよ。

作画では手の描画が印象に残りますね。痩せたオトコの筋張った、でも若いからみずみずしい手。2巻に光の手をとり指でなぞるシーンのなんともエロティックなことよ。
ホラー要素として活字で表現している虫の声の音。これが夏感と恐怖感を非常に煽っててタイトル回収感あるか。

いいクリフハンガーで3巻につづくし楽しみではあります
posted by すけきょう at 15:40| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月15日

2023 このマンガがすごいに推した5本のマンガのリンク

●1位 作品名:(このマンガがすごい内での順位18位)

鍋に弾丸を受けながら 青木 潤太朗/森山 慎 KADOKAWA: ポトチャリコミック

●2位 作品名:(このマンガがすごい内での順位 圏外)

「絶滅動物物語 」 うすくらふみ 今泉忠明 (小学館): ポトチャリコミック

●3位 作品名:(このマンガがすごい内での順位20位)

完結 ゴールデンカムイ 31 野田 サトル 集英社: ポトチャリコミック

●4位 作品名:(このマンガがすごい内での順位23位)

「たま」という船に乗っていた 石川浩司/原田高夕己 双葉社: ポトチャリコミック

●5位 作品名:(このマンガがすごい内での順位9位)

緑の歌 - 収集群風 - 上 下 高 妍 KADOKAWA: ポトチャリコミック

本書に書いた文章と同じことはそれぞれに書いてますので参照のほど。

※その他、新連載の未単行本化作品、海外作品、web掲載作品、選考対象期間以前の完結作品、マンガ関係本(ファンブックや研究書ほか)など、特記してお勧めしたい作品がございましたら、ご自由にお書きください。 

これも掲載されたので

ROCA いしいひさいち (笑)いしい商店: ポトチャリコミック


ということでした。今年も良いお年を。(まだ今年中にいくつかのマンガ感想文は書くかもしれませんが)

余談。
「このマンガがすごい」は対象期間が前年の10月1日から今年の9月30日までになっております。
その期間に連載されているかコミックが発売されたものが対象になります。
コミック派のひとは10月以降に発売されると対象外になるという弱点があります。雑誌やWEBで対象期間中に掲載されたものは取り上げてもいいんですけどね。雑誌で読まなくなって久しいのでコミックという形にならないと可視化できない。
だから、コミック派のためになるべく1巻を9月にねじこめるならそうしていただけるといいなと編集各位にお願いしたいのです。


posted by すけきょう at 08:30| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月14日

ふみちゃんの楽園 さとまる まみ (ふゅーじょんぷろだくと)

ふみちゃんの楽園【コミックス版】(1)【電子書籍】[ さとまる まみ ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
ふみちゃんの楽園【コミックス版】(1)【電子書籍】[ さとまる まみ ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
このマンガがすごい!に毎年ベスト5を書かせてもらうようになって5年ほど経つ。
ベスト5は前の年の10月からその年の9月末日まで発売された本が対象。
だいたいいつも送ったあと、「あ、これ惜しい」と思っていたのと出会うんだよね。本作もそのひとつ。

書けなくなって田舎の家に引きこもるような生活を送っている。彼氏が身の回りの世話をやっており、ふみちゃんは彼の作る料理や田舎の自然を満喫してはセックスをする。そう、セックスマンガなんですよウフフ。

理解ある彼とスローライフと自然とセックス。ふみちゃんは食べたいときに食べ、寝たいときに寝て、したいときにそれが昼でも野外でもセックスしたり自分の欲望を叶えているのです。彼は甲斐甲斐しく料理したり家事したり近所の人とコミュとったり。田舎の面倒なところ彼は楽しんで請け負ってくれてます。今年の流行語大賞にノミネートされてもおかしくない「理解ある彼くん」ですね。そりゃ楽園だわ。

本作を知ったのがTwitterのTLで今年1番の衝撃を受けたなんてあって「ほぉ」と思いながら手に取った次第。
表紙や内容を想像するにエロマンガじゃないのかな?と思いつつ読むとエロマンガではあるわけよ。
そんでもってそのアカの前後を読む限りそのツイートは女性っぽいのよね。そこにおれも衝撃を受けたのです。

なぜか?このエロマンガがおれにも「ちゃんと」エロいからです。

で、先程のTwitterの方が衝撃を受けたということは、もしかして男女ともにエロいエロマンガってこと?と思って。

ふみちゃんは奔放にいつでもどこでも彼氏をセックスに誘うし、彼氏もちゃんとつきあいますし、そのシーンもなんていうかちゃんと描いてます。女性エロマンガ特有のっていえるほどはみてないが、省略されていそうないろいろなシーンをちゃんと描いてるなあと。まあ、もしかして今の基準だと当たり前なのかもしれませんが。
それでいてこっちは今の基準のも多少は読んでいるから断言はできるのですが男性向けのエロマンガにもひけをとらないんですよね。まあ、シンプルに3文字で「抜ける」。

田舎でのセックスライフということで野外でいたす話が多いです。

ひきこもりぎみで人間嫌いぎみ(実際ふたり以外の登場人物は少ない)のふみちゃんが、村祭りがあるから行こうと彼氏に誘われたのに行かないと駄々をこねます。
で、彼はふみちゃんを浴衣に着替えさせて村祭りを見下ろす高台でレジャーシートを敷いて花火をみるのです(ここで食べるのがサンドイッチってのがいいよな)。
で、花火の下でセックスをする。
と、こういう感じです。

男女ともにエロく感じるってのが興味深くてさ。
男にはやや物足りないってひとがいそう。同じふたりだしセックスにすごくバリエーションがあるわけでもなく、ごくごくノーマルにセックスしてますからね。ふみちゃんが巨乳のバインバインってこともないし。
女にはたぶんえげつないシーンではあるけど下品ではないってのがあるのかもしれないな。
たとえば、射精シーン。たいてい中に出しててそれは「ビクンビクン」で表現してます。
そういう随所にある「汚い(と思われそうなところ)」描写を排除したり、はじまる前は必ず見つめあってチューしてからはじまるし、終わりもチューだし、やさしく声をかけるとか。なんか勉強になります。

エロ描写ばかりじゃなくて自然描写や料理描写もいいんだなこれが。

で、話が展開あるでなし、うまいもの、気持ちいいもの、心安らぐものであふれてます。まさにタイトル通り。他になにがいる?と思った。だから、2巻もあんまり余計なほうに展開しないでほしいなとは思いましたよ。

あと女の人は本作は抜けるのかどうかちょっと知りたいのでこっそり教えてください。


ふみちゃんの楽園【コミックス版】(1) (Bebe) - さとまる まみ
ふみちゃんの楽園【コミックス版】(1) (Bebe) - さとまる まみ
posted by すけきょう at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月13日

「たま」という船に乗っていた 石川浩司/原田高夕己 双葉社


たまという一世を風靡したバンドの自伝を、「たまのランニング(松本人志命名)」でおなじみの石川浩司氏が書いたものをコミカライズ。

藤子不二雄A氏のタッチをベースにあちこちのパロディを盛り込みながら、1981年から物語はスタートする。昭和56年。びっくりするくらい昔に感じる。おれももう生きてる年代だし、そこに暮らしてたんだけど。
貧乏な学生(から無職)が音楽活動をベースにだらだらと集まったりのほほんとおもしろおかしくやってるさまを描いてます。
まあ、実際のところ「お兄さん」たちではあるけどかなり個人的には離れてる生活に感じた。どくだみ荘やら男おいどんやらの世界。
貧乏バンドとして楽しくやってる自由な日々。でも、たまとしてもずんずん頭角をあらわしていく。

本作はそのまま全国区になるイカ天に出るところまで描いてます(まだつづきます)。

そのイカ天出演シーンに衝撃を受けた。

(45) たま イカ天初出演 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=k9zjWv43bdA



こういうのいつまでも残っているわけじゃないんですが、このたまのテレビ初出演のシーン。これの「完コピ」が本作のクライマックスに用意してあるんだよ。これが衝撃で衝撃で。

これを見てからでもいいし、マンガを読んでからでもいいからみてほしい。すごいから。マンガの可能性を感じるから。

前記の通り、基本藤子不二雄Aタッチのマンガマンガしたものなのにリアルさと迫力と臨場感がすごいんだよ。思わず動画とマンガと10回くらい見比べちゃったよ。

マンガで音楽を描写する。いまアニメで「ぼっち・ざ・ろっく」などが流行ってていつつもマンガで音楽を描画するってのは問題なんだよな。
本作はそれに大きな風穴が開いた気がしたんだよ。
今年大きな衝撃を受けたよ。

音楽が聞こえたし、動画をみたらマンガにみえたよ。この感覚をみんなわかってほしいわ。

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posted by すけきょう at 10:17| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月12日

ソアラと魔物の家 山地 ひでのり 小学館




既刊2巻。
魔法と剣の世界。孤児だった少女は魔物と戦うために軍に拾われ鍛えられ強くなり、いよいよ初陣におもむくというタイミングで魔王軍が休戦を申し込んでくる。少女はお暇を出される。急に自由になってもやることがない少女、ソアラさんは放浪の旅に出る。そこでドワーフ3人組と出会う。彼らは魔界建築士だった。ソアラさんも巻き込まれ、魔物たちのために家を作るという、劇的ビフォーアフターな話。

ゴブリンの家を作り、スライムの家を作りってやる。魔物も家があることで心が穏やかになるという。

そして2巻で物語が進行していくのよね。これがまたいい感じのストーリー。
ネタバラシしていいんだろうか。微妙なところですが、2巻冒頭で魔王軍の魔王の家にいくわけです。そこからこの物語のミッションがみえてくるという。ずっといろいろなモンスターの家をまわるビフォーアフターな1話読み切り展開かと思ってたんで、やや胸熱な展開に意表をつかれました。

見開きで家の断面図で細かい注釈を読むのはもう少年の心に戻りまくりで楽しいし、そういう絵がドーンと出てくることは鬼のように描き込まれてるってことだしな。実際、見惚れるくらいすごいです。鳥山明風ということもいえるかもしれませんが。

個人的には電書で買ったのですが紙の本で欲しかったと思うくらい。紙の上に印刷された絵をみたかったと思うくらい美麗で精緻な書き込み。

小学生男子に読んでほしいマンガ1位だよ。
posted by すけきょう at 09:13| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月11日

恋とゲバルト 細野不二彦 講談社


前作「バディドッグ」は実際細野不二彦のキャリアの頂点にあると思っていたしぜひとも最終巻もここで取り上げたかったのになかなか無念なことになったのが2022年の後悔のひとつです。

そのバディドッグの感想文で細野不二彦氏には異世界ものを描いてもらいたいなあとそのことも書いていたんですけど。その理由も。

と思ってたら本作です。本作は異世界ものではありませんが、限りなくIFの世界の物語です。

舞台は昭和。学生運動がはなやかなころ。左翼の学生に対する用心棒として主人公は雇われる。そして学生が暴れた時には猿面をつけて現れ木刀で学生を蹴散らす。
ところが、左翼学生のほうも用心棒を雇う。ヌンチャクを振り回す赤いヘルメットの学生。
それとは別に主人公は殺伐とした学校の裏庭に温室で花を育てていた清楚な女性と出会い一目惚れ。これが実は上記のヌンチャク使い。

そして主人公は、一方では敵、一方では恋焦がれるひとと出会い運命の歯車が回りはじめる。まあそういう段取りになってます。

1巻のAmazonでのレビューで学生運動の流れが史実とちがうってお怒りの方がいらしました。
学生運動の時系列かディティールがちがうのかわかりませんが、その不満をとうとうと挙げておられました。
だから、本作はIFの世界の物語なんだよと思ったのですよ。架空戦記とか。

この舞台のこの時期のこの話ということはとても重要かと思われますけど、それはエンタメを上回るほどのことはないんですよ。
この舞台のこの時期のこの話といえば、山本直樹氏の「レッド」というモデルになった当人が「まんま」とおっしゃってたものがありますが、それと比較してどっちが優れているかとかは当時流行の言葉でいうところのナンセンスってやつですよ。

1巻に「これはこういうマンガです」という宣言代わりのメッセージが多数盛り込まれてます。

まず「昭和」があります。学生運動の歴史以外にも昭和文化が爆発してます。そしてそれらがストーリーにからみついていきます。
マンガが出てきます。やけにリアルな東京の風景が現れます。そこに当時生きていなきゃわからないディティールも描かれてます。食堂の吸い殻がいっぱいではみ出てる灰皿とか阿片窟みたいなジャズ喫茶、などなど盛り込みまくり。そこに当時の炭鉱の様子とかキーとなる話も盛り込んでいく博覧強記の無駄遣いな作風はいつも通りなんですけど、本作、明らかに作者ノリノリのところがあります。
でも、それは今はないということではたまたままだ生きているひとがいくらかいる「時代劇」なんですよ。

あと、本作、ヒロインの友達がシェークスピア研究会に入っててオフィーリアやらハムレットを演じるし、いろいろと本編にも関わってくるのよね。
そうだよ、このドラマの主人公とヒロインの間柄って「ロミオとジュリエット」じゃないか。
1巻での図書室の出会いなんてとても美してロマンティックですよ。これはなにかネタもとがあるんでしょうか。おれははじめてみた演出ですね。

もうひとつ。上記のとも関連はあるけど、他になんていうか隠しネタが大量にばら撒かれていると思ったんですよ。
これまた1巻にあったんですが、物語のキーとなる左翼を率いている優男が音楽室でピアノを弾いている。
「この曲なんですか?」「サティスファクションさ」ってシーン。そのあとローリングストーンズの同曲がこのころ発売されたけどあまり人気がでなかったって記述があるけど、それよりも、おれは手塚治虫氏の「火の鳥」を連想したんだよな。未来のほうの物語で音楽室で電子エレクトーンを駆使してサティスファクションを演奏しているシーンで同じやり取りがあった。
なるほど、そういう遊びが随所にあるんかなと思ったりした。
主人公が所属している学生寮の仲間はバイトくんとかどくだみ荘に出てきたモテないやつらだしな。
たぶん、これまでもあったんだろう、こういう作者がほくそ笑んでるような小ネタもいつもにまして多いような気がする。

それでいてこれらの要素がすべて物語の邪魔をいっさいしていない。

なにもわからない読者にとっても、運命に翻弄されるふたりと昭和学生運動時代の大学を舞台とした血湧き肉躍るアクションマンガとしても十二分に堪能できるようになっている。エンタメっすよ。エンタメ。細野不二彦氏はいつだって純度の高い娯楽を提供しようとされている。おれは本当に尊敬してます。

ただ、細野氏の弱点というか、細野氏が「現代」を描こうとするとどうにもズレが生じるんだよね。そこが歯がゆい。前作の「バディドッグ」だと主人公の女子高生の娘が稀勢の里のファンからくる大相撲ファンとか。いや、そういうひといるかもしれんけどさ、なんかちがわね?って。この感覚はかなり大昔からあるので、細野氏の作風芸風とは思ってわかってるけど、なんかファンゆえにそこのところに「一見さん読者にダサって思われないか」とか無意味に気をもむのよね。
だから、細野氏の時代物は時事ネタがないから安心して読むことができるんだよな。失礼な話でもうしわけないのですが。
同じ理由で上記の異世界モノもいいのかなと思ったのですよ。でも、昭和を描くのが1番無駄がないよなと。

本作のアクションや主人公美智子さん(すごくかわいい)他の筆がノリにノっておられ、細野不二彦氏はキャリアの何回めの頂点におられるのかわからんくらい充実した読み応え満点の内容。極上の純エンタメが堪能できる。
話はいよいよと佳境に入ろうとしているのだけど、今のところ5巻で一部完になっているのが悩ましい。早く続きが読みたい。





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2022年12月10日

令和のダラさん 1 ともつか治臣 (KADOKAWA)


田舎が舞台。山の奥の立入禁止地帯。怪しげな祠がある。そこには山の守り神として妖怪が奉ってある。
そこに美少女弟と美少年姉が入り込んで遭ってしまう。それがダラさん。
腕が何本もあって裸で下半身が蛇の女の妖怪。
そいでおどろおどろしいのかと思いきや、日常ギャグ。いや、おどろおどろしさもあるが日常ギャグ。この姉弟の肝が座ってて、ダラさんも律儀に受け答えするうちにギャグのテイストになっていくという。
そういうことでもわかるようにみんないいキャラなんだよね。愛すべきひと(ま、ひとり妖怪だが)ばかり。
後ほど出てくる、26歳独身で弟(11歳)を狙ってる在宅勤務のこじらせ女性や、弟とのオタク仲間であり教師でありながらもコスプレ用の服を作るのが趣味ってひとがダラさんの服を作りまくったり。
と、今のところはダラさんの陰惨な過去編と令和のいまののほほんとしたライフって感じで展開してます。
ダラさんは姉弟の影響でコーラが大好きだったりカップヌードルを温かいお供物はレアって喜んだり、山で拾ったケータイで姉弟と連絡をとれるようにしたり。

絵は極上。シリアス画もデフォルメも背景もその他も含めて最高最高。デフォルメ画の姉弟の口元がとくにかわいい。

いや楽しい楽しい。2巻も楽しみじゃ。

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2022年12月09日

運命の巻戻士 木村風太 (小学館)




コロコロコミック連載のハードSF。既刊2巻。
主人公は時空警察特殊機動隊。
不慮の事故や事件で亡くなった人を時間を巻き戻して救う超精鋭部隊。通称“巻戻士”。

つまりはリプレイもの。同じ事件のシチュエーションを何度も何度も繰り返すことによって少しづつ改善していき、救助したらミッションクリアという。

1話では銃をもったコンビニ強盗に1発当てさせては次に弾道を避けてってのを繰り返して全弾撃ち尽くしたところで逮捕確保って作戦をとりますが、途中でやめます。なぜか?

2話は無人島の流れ着いた少女。2日目に病死するのでそれまでに200km離れた島まで移動しなければならない。この鮮やかでいて「コロコロ」で美しい解決策。

毎話完結ということではなく3話からは主人公が巻戻士になったわけであるCASE999というミッションになり、さらに2巻がすさまじかった。
3話からのつづきから、アクションギャグ描き込みの密度も仕掛けも超大きい空港ミッションがはじまります。古今東西のハイジャックものを見尽くしてもなお鮮烈な感動がある新機軸。

コロコロでいながらハードなところはハードだしグロなところはグロなところもすごい。そこがハードSFの由来っすよ。いやちがう。
SFとしてもシンプルでいながらよくできたリプレイの設定です。

書き込みもすごい。空港で飛行機でミッションですよ? どんだけの描き込みになるか想像はつくでしょ?それをやってのけてます。すごい。

しかも、コロコロっぽく熱血少年なんですよね。
ぷにるもいいけど本作もいいですよ!
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2022年12月08日

タイのひとびと 小林 眞理子 ワニブックス


タイの旅行記。タイの美味しいものやタイのひとに親切にされたこととか。
おれ最初ベテラン漫画家さんだと思ってたんだよね。小池真理子だわな。ちがうわ。しかもそれ小説家だな。

さっぱりした本人の似顔絵とタイのひとびとの絵、そして精緻な背景画。なんかツールと使っておられるのかしら。写真を線画にするやつとか。マンガはどうもiPadで描かれてるようですし(マンガ内に現地の外で描くシーンがいくつかある)。

エピソードからして頻繁にタイに訪れてらっしゃるようですごくベテランだけど言葉が難しく、食事の時とか試行錯誤なところがおもしろい。
レストランでメニューの1番上ならたいていメジャーなものだろうからって一か八かで注文したらペプシが出てくるとか、食い合わせが悪かったのか駅で吐いたらビビるくらい丁寧に介抱してもらったりとか。

タイは基本親日のようだし、なんとなれば少し憧れがあるみたいで基本的にモテるみたいですね。1回目にきたら「日本人?」と聞かれてそうだと答えたら2回目にきたときにカタコトで「いらっしゃいませ」っていってもらえたりしてな。ええのお。

本作を知ったのが、ネットでバズった綾波レイみたいなツンデレ少女がいるレストランにいった話だったけど、なぜかそれが収録されてなかったんだよな。いまでもネットで読むことができたんでそれはそれでいいんだけど、おれみたいにその記事きっかけで本をよんでみようってひとは、気に入った曲がアルバムに入ってるだろと買ったらシングルにしか収録されていない曲だってわかる程度のショックはないでしょうかね?まあ、それに匹敵する可愛いタイの方々がたくさん登場しますけどね。
https://hint-pot.jp/archives/150395/2/


余談。
タイの方々って雪にすごく憧れを持ってるそうです。おれみたいにガッツリ雪国在住はいったらモテるのだろうか。そういや、仕事場にいるベトナム人は冬になんだかすごいの着てるよ。むこうの国じゃ着れないようなモコモコのダウンとか。
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2022年12月07日

ウィッチウォッチ 篠原 健太 集英社


最新刊は8巻です。ちょっと遅いのですが、7巻で主要キャラが出揃って本格スタートという形になったのでまあいいんじゃないかと思います。
そして8巻までずっとべらぼうにおもしろいです。
「スケットダンス」「彼方のアストラ」という2作品とも名作でありつつアニメ化も決めている作者による最新作です。

魔女のニコを護衛するために鬼の男がニコと同棲する。その後、入居者が増えていき、天狗に、狼男に、吸血鬼って具合に6巻で4人。ということで5人で同居しております。これが固定メンバーというところか。
ニコは1000年に1度の特別な能力を持つ魔女で彼女が襲われるという予言がありましたので4人でなにか災厄からニコを守ろうと。だから、タイトルに帰結するわけです。

「彼方のアストラ」から知って「スケットダンス」を読んだのでにわかなんですが、「スケットダンス」にはいろいろと驚かされました。これって「こち亀」じゃんって。
その細かいキャラ設定、変幻自在の引き出し。ギャグと油断したらドシリアスな展開。アクションも豊富。と、なるほど、彼方のアストラの幕の内弁当かっていうくらいの詰め込み具合、サービス精神は、作者の芸風なんだなと感心しました。

本作はスケットダンス路線でありつつも、ニコの魔法が織りなすドタバタがさらに盛り込まれていて、スケットダンスではわりと封印気味であった、時事ネタやジャンプのパロディなどさらにもりだくさんな内容になっており、毎話今度はどうなる?と思ったりしてました。

ユーチューバーネタやヴィンテージジーンズ、デスゲーム、おじさん構文、同人誌即売会、現在のヤングがどう思うのかは実際のところ知らないですが、現在のヤングも楽しめるコンテンツが盛りだくさんの、「雑誌」のタイミングで読んで、「ああ今週もおもしろかった」と思うマンガですよね。そういう意味でも王道。時事ネタの意味がある、ジャンプ他キャラの内輪ネタの意味がある王道。でも、コミックで読んでもちゃんとおもしろい。そうところは優れている。熟練の味わい。








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2022年12月06日

異世界ありがとう 荒井小豆 ジアナズ (小学館)




異世界ものです。既刊は2巻。

おっさん2人が同窓会で出会ったけど2次会で死にました。そして美少女エルフと愛嬌のある小動物的なかわいさのある少女として転生しました。
そしてもう働かなくていいんだから異世界を満喫たろう!冒険したろう!って感じ。

本作は、メタネタや現実ネタがあり、なんだかあやふやな異世界。どこまで動物的な野蛮な住人。かと思えば、みょうに整った街の人々やギルドのシステム、神様の存在など、異世界ネタを知ってる人ならすっと入れますが、なれてないとやや敷居が高いかしらね。でも、ふたりのやりとり等、基本はコメディ要素の強いかけ合いで進行していきますね。
1巻前半はふたりでモンスターとはいえないくらいの動物をやっつけたり、異世界のお約束であるステータスをみようとしたり、魔法を発動させようとして、とても楽しいけど、そこからひとに会うんですよ。で、2巻では街にもいきます。そこから1巻前半部とはだいぶ毛色が変わってきます。

2巻ピンチに落ちて助けられます。そしていっしょにパーティーに行かないかと先輩異世界転生者に誘われます。そのかわりやるけどねって。

そこらへんからかなりノリがちがってるなあと。つまらなくなったってのではないけど、おもしろさの質が変わってきたかなと。あといろいろあってウジウジ展開になるのよね。あとは細かい設定なんかも。それもどうやら2巻で終わったみたいなんで3巻からはまた毛色が変わりそうな予感なのよね。

異世界ありがとう=水曜どうでしょう

って感じなのかしら。ノリが近いってところもあるよな。

ぶっちゃけ、センス一発なところがあるから合う合わないが強めではありますが、さいわいおれは合います。3巻も楽しみ。
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2022年12月05日

友達以上恋人未満  yatoyato (集英社)






ジャンプ+って攻めてるよね。いまさらだけど。なにが攻めてるって載っているマンガの幅よね。

元AV女優が主人公。いろいろあって引退してひっこんで田舎で引きこもりをしている。
親に無理やりお見合いをセッティングされてあったのが元AV男優で何度も「お仕事」した男。
そしてはじまるプラトニックラブコメ。
ありそうでないけどどちらかというとヤングジャンプっぽい設定ではあるよね。

ジャンプ+のレーティング基準はどうなってるの?って心配する向きはいるかもしれないが、これがあっと驚き全年齢向き仕様。エロくないっていうには主人公はトランジスタグラマでいいものを持ってらっしゃるし、けっこうエロい服着てるしなあ。あんな胸元開ける服をいつも着てるか?っていうかそこがサービスなのか。で、ま、回想シーンとかでそのシーンの前後も出てきます。エロいかどうか最近はすっかり現役から遠ざかっているので判断しかねますが、ひとつ強くいえることは、この絵なくして本作は成立しないってことですね。それくらい絵の魅力がエグいです。

太い主線で描かれていてデフォルメとリアルのはざまのようなタッチなのに、人物も背景もひどく魅力的。というか完全におれ好み。とくにカラーが素敵なんだよなあ。

ストーリーのほうは王道ラブコメでいて、設定を忘れないような作りになっており、ちゃんと元AVってのや、AVをやる前は女優でくっていきたかったとかそういうのもからませつつ手堅く楽しく展開していきます。
このふたりがプラトニックってのもおかしな話だけど基本ふたりとも真面目に仕事としてAVをこなしてたんだろうな。そこにエロいものや爛れたものを読者が感じないように繊細に注意を払っております。

メディアミックス化(死語かね)するとしたらアニメがいいか実写ドラマがいいか。実写にしてもエロありのVシネマ的なものが安易だけど、坂とかのトップアイドル的なひとがやるのもいいかもなあと(原作はエロないんだし)。でも、絵に惚れてるんだからアニメで動くのもみたい。どう考えてもそこらの実写女優よりあの絵にふさわしい声優が声をあてたほうがいいに決まってるし。って妄想を暴走させすぎですね。
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2022年09月23日

月出づる街の人々(1)酢豚ゆうき 双葉社

連作短編という感じでしょうか。1話読み切りですが話やキャラはつながっている。

高校生がメインの登場人物。この世界はいわゆる亜人が登場する。フランケン、透明人間、狼男、メドゥーサ、ナーガ、ドラキュラなどなど。

なにかするわけでもなく、イメージとして近いのは、「僕のヒーローアカデミア」のようにそれぞれが個性としてどこかに属しているという感じで、それもまた血ではないんだよね。だから、メデューサの子供がフランケンだったりする。個性だったり特徴としてのフランケンだったりメデューサだったりする。そんなゆるゆるな世界。ここでけっこう好き嫌いが出そうな気はしないでもないがおれは気にはならなかったわ。

第1話。透明人間少女と狼男少年。雨の日に傘を貸して自分は狼に変身して帰った少年と少女との交流。図書室であって狼となった少年の毛づくろいをする。少女はペットセラピーと親が犬アレルギーで飼えなかったので嬉々として狼にブラッシングするけど、そこはそれ狼男は思春期なわけで女の子に毎日ブラッシングされたらモヤモヤするよなそりゃ。

第3話がネットで知った透明人間少女とメデューサの話。メデューサは髪の毛が生きた蛇でできているのよね。それぞれ名前をつけてかわいがってる。頭から生えてる蛇を飼ってる感じね。透明人間少女は彼らを餌付けさせてもらうのが趣味になっている。で、メデューサにおいての「抜け毛」ってつまり蛇の寿命でもあるのよね。ということで蛇が死ぬ話です。感動ですし、こんなメデューサの話をみたことないなあと感心しました。

かように身体的な特徴の差異をベースに多感な時期の少年少女を描いております。柔らかい描画もあいまって読後「いいなあ」と思うやさしい味の世界が広がっております。「なんじゃこの世界」とも思いますが。ここまでわかりやすくそれぞれの個性があったら逆にみんながみんなに寛大になってやさしくなれるんんだろうなあとも思いましたよ。

「フランケンの糸」なんて話は作者にしか思いつかないだろうなあ。これまでにみたことないアプローチのフランケン像。



ほっこりしますよ。2巻楽しみです。

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2022年09月20日

われわれは地球人だ!(1)高橋聖一 双葉社




ということで全2巻ちゃんと2回レビューしてますよ。名作だからね。

本作はおれと同じと思ってる担当編集のラブコールに応えて描いたものですよ。


女子高生3人。それぞれの理由あって次の日にオープンの日本一の巨大ショッピングモールに侵入する。するとショッピングモールは地球を飛び出し広大な宇宙の旅に出る。1巻の残り1/3くらいでタイトル通りのことが起こる。よその星に着陸するのですね。そして現れた方々にいうわけです。


1巻は設定とJK3人の個性と友情を楽しむって感じではあります。ショッピングモールはゾンビ戦なんかでの籠城の基本となってますが、本作はゾンビや外敵はいなくてなおかつ中身がなくなるなんてサバイバル要素もなく(電気水道インフラもなぜかつながっている)、どちらかというと閉塞した孤独な感じは映画「シャイニング」を思い出しますね。

そして、地方JK3人にとって「世界」ってまさにショッピングモールのなかそのものだよな。JKにかぎらずか。あらゆるものがあるし、これが「我々の世界だ」と紹介することができる。だから「地球」のすべてを携えて宇宙を旅するわけです。本編でもキャラがそういうことをいってます。


すごく律儀で精緻な描画。それこそ前作よりさらに背景などは細かく細かく描画されている。あのなんでもあるショッピングモールを余すことなく細かく。それでいて宇宙も。宇宙人も。


2巻からが本番となりそうなので2巻を読んでから書こうとも思ってたのですがこれはいま紹介しなくてどうする?って思ったので取り急ぎ。作者が想定している内容まで描けますようにと願います。あとがきマンガにも登場された双葉社の平田昌幸さん(本作ができるきっかけになった編集)にとくに願います。

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2022年08月29日

ROCA いしいひさいち (笑)いしい商店

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がんばれタブチくん〜おじゃまんが山田くん〜隣の山田くんホーホケキョで、朝日新聞で「ののちゃん」を連載中のベテランでレジェンドなマンガ家による同人です。



ここらへんより入って通信販売でどうぞ。1冊1000円で送料500円です。

これは、
ポルトガルの
国民歌謡『ファド』の
歌手をめざす
どうでもよい女の子が
どうでもよからざる能力を
見出されて花開く、
というだけの
都合のよいお話です。

海辺の街に住んでいる吉川ロカさんがファドを歌い、皆の心をつかんでいくというお話です。

10年にわたりあちこちで描かれております。

いしいひさいち新境地などと話題になっておる作品ではありますが、実際のところ、キャリアをドーナツブックスほかのシリーズでわりとつぶさに観察していたものとしては新境地なのが通常運転すぎて、本作がとくに画期的に新境地とは思えなかったんですよね。

ドーナツブックは双葉社から出されていた新書サイズの4コマ集であちこちに描かれたものを再編集したその都度のベストセレクションな存在でクロニクルみたいな感じですが、これが毎巻新境地というべき、4コマに革命が起こるような作品集なんですよね。
B型平次シリーズ、さがしやケンちゃん、ノンキャリガールなどなど。もちろん、出世作のバイトくんにしろタブチくんにしろ、そのジャンルを築き上げたくらいの画期的なものではあるのですよ。そもそもがこのドーナツブックスにしても新書サイズ1ページに4コマ1本というスタイルが斬新で(だから買いはじめた)したし。

だから本作もいつもの「新境地」ではあるなあと思いました。

ときおり拝見する文章や、雑誌(漫金超など)、いしひさいち読本的なもので、博覧強記な方というのは存じ上げてましたが、それをファドに注力されてる感じ。それが端々からこぼれ出る感じ。音楽理論でROCAがすごいことを表現してるのがすごいよなあ。引き合いにだされてた実在のミュージシャンも興味深かった。

4コマをベースとして展開しておりますがときおり「2コマ」打ち抜きのハッとするシーンにぐっとくる。ストーリー4コマということか。きちんと4コマで1笑いあるところはベテランのなせる技。サザエさん等を引き合いに出すまでもない、4コママンガの登場人物の時間が流れないという基本から逸脱したロカさんの成長物語。そこもストーリー4コマっぽくはある。このあたりは熱心に読んでないので今もどれくらいの割合や規模で描かれてるのかわからない。4コマ雑誌がつぶれるとか、そのわりにアニメ化が決まったとか、いろいろあるようですが。

そして重要なキーワード「サウダージ」。ここでも出た。

鍋に弾丸を受けながら 青木 潤太朗/森山 慎 KADOKAWA: ポトチャリコミック http://sukekyo.seesaa.net/article/490920336.html?1661740849

本作でも、鍋に〜でも、ひとことでは簡単にいえない複雑な感情表現だそうです。なんかわかったようなわからないような、まだおれには難しいのかもしれない。

1回読み、そして感想を頭に思い浮かべてから、またファドの有名な人(らしい)アマリア・ロドリゲスなどをYou Tubeで聞きながら本作を読み返す。そして発見する。、

最大の特徴は、吉川ロカの生地であり、友人の柴島美乃とともに育った地元の港町の印象がすごく強いこと。それこそ、誰(京アニ?)がいつからはじめたかわからない女の子萌えアニメにおける聖地巡礼に行きたいくらい魅力があるところに思ったのだけど、読み返すと実際のそのシーンが少ない。不思議。というか、それはすべてラストシーンに集約されていたんだね。あのシーンを読んだときに感じた潮風はなんだったんだろう?そして感動とかエモいってシンプルな言葉で足りない複雑ななにか。これがサウダージなのかはわからないが忘れられない2022年でも強烈なマンガ体験にはなった。

ファドとこの街のロケーションがまたぴったりなんですよね。ファドって港町の音楽やなあと。おれの感覚なのでちがう可能性も高いのですが、そうなってしまいました。それはもういしい氏のせいです。

あ、あと、いしい作品にしてはわりとダイレクトな下ネタがあったかなーとも。

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柴島美乃(2コマ右側)の目の描写がすごい

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posted by すけきょう at 12:33| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月22日

完結 ゴールデンカムイ 31 野田 サトル 集英社


最終巻が出ました。超最高で連載がはじまり、話題を独占したまま、だいたい最高のまま駆け抜け、随所に話題をふりまいて、人気を維持し続けて超最高で終わりました。だから最終的な評価は超最高です。

マンガにおける終わり方というのを考えるのです。これまでは人気がある限り続けるというのが定番で、たぶん、いまも主流はそうなのかもしれない。でも、いくつかのマンガは終わることを許されるようになっている印象。本作はどうだったのかは知らないが、終わるべきして終わり、描きたいことは余すことなく描いた印象。そこが超最高でした。

他作品を引き合いに出すのは抵抗はあるんだけど、「鬼滅の刃」。いろいろと有名な本作ですが、本作の1番1位のところ(子供表現っすね)は、23巻1巻かけて完膚なきまでに終わったことだと思う。どこまでが連載誌にどのようなカタチで掲載されたのかは知らないし興味はないが、この圧倒的な「最終巻」はたぶん今後出てこないんじゃないかと思われます。あらゆる方向や表現で終わった。

ゴールデンカムイの最終巻もなかなかたどりつけないところまで行き着きました。

長いあらすじは複雑なので省略させてもらいますが、最終章に入ってからの一気呵成の盛り上がりと、オールスターキャストが一同に介しての大活躍。そして、最終巻ではベストメンバーが函館から札幌に向かう機関車で最後の死闘を繰り広げてます。この流れのローディング時間のない感じはすばらしい。
もともと、ゴールデンカムイの特筆すべき点は、1ページ先の展開が読めないことで笑いあった次の瞬間に銃を撃ってくるやつと対峙する。このテンポ、スピード。あとは博覧強記なあらゆる要素をぶちこんだ、作者野田サトル氏の頭と脚を巨人が絞った汁のような話です。彼のすべてがあります。昔のロボットアニメの「出力フルパワーにしろ」ってコンソールのつまみを無造作に全部回しきる感じでしょうか。

でもって、ゲームや映画や小説やマンガで散々こすられてる動いている列車での戦いを研究したおしこすりたおし、かつ、ゴールデンカムイらしさを抽出した上での決定版のような戦いよ。列車であることがすべて盛り込まれつつちゃんとそれらを盛り上げに使いつつヒートアップさせてます。しかも、戦いってことでいうと、函館の五稜郭でのひろいところからの狭いところとかのメリハリも効いている。流れとしては満点ですよね。いわれてみれば船上や飛行船など乗り物の戦いも数多く収録されていますよね。ほんとスキがないマンガだ。

最後の最後の最後の最後まで盛り上がり、各人かっこよく、そっれぞれの積み上げたキャラらしく、有終の美を飾っております(死んだり生きたりはありますが)。
物語も当然のことながらキレイにキレイに、このごった煮闇鍋の混迷の限りを極めた作品をきちんと終わらせてます。

名作っていわれるマンガも最終回覚えてないもんだぜ。そこらへんは島本和彦氏の「アオイホノオ」にくわしいけど、マンガ全体の99%おもしろければ最終回なんて些細なものはどうでもいいって文化は受け継がれております。
ゴールデンカムイも、最終回を迎えるにあたって、電書を期間限定で全話無料公開したりみんなで盛り上げたりもしていたなあ。
ホムンクルスやアイアムアヒーローや浅野いにお氏の何回聞いてもタイトルを覚えられないデデデデみたいなやつも次巻最終回や最終巻って帯や宣伝に出すようになったもんな。

時代は変わりました。それぞれいつ終わるかは別だけど、「最終章」突入なんて書いてますしね。

それぞれマンガやマンガ家の持ち味や個性や才能があるから一概にはいえませんが、おれは適切なタイミングでスパっとおわらせるほうがすべてめでたいんだなと。

野田サトルさんは次回作を描きそうだし、ちがう分野を攻めてきそうだし、それもちゃんとおもしろいはず。(しばらくはゴールデンカムイ関連のものを描きそうだけど)

posted by すけきょう at 13:23| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

鍋に弾丸を受けながら 青木 潤太朗/森山 慎 KADOKAWA




振り返るとネットから話題になっているマンガというのは増えた。というか、ネタ元としてネットをかなり活用してるからだ。それが本からでもなく本屋からでもないというところに危機感と罪悪感のようなものを覚えるが、そんなことは知ったことではないというばかりに日々のSNSや情報サイトから新作話題作の情報は入ってくる。
正直打率はそんなでもないが、本や本屋のバッターボックスに立ってはいないので比べるまでもない。おれの住んでる町は本屋を開くと町から補助金が出るくらいだが本屋ができる気配はないままだ。

まあ余談。

本作はその流れのままにネットで知ったものだった。

・世界でも危険なところのメシは美味い
・作者は世界の人間がすべて美少女に見える

この2点の「フック」から注目された。それでおれも知ったので、フックは不要といえないのですが、美少女はともかく(じゃなきゃおっさんだけだし)、危険なところってのはあまり関係ないような気はする。日本以外はたいてい危険なところってことになってるし。(本作はその例外が現れるが)

失礼ながら原作者のことは存じ上げてないのですが、小説家であり漫画原作者であり仕事で釣りをしに全世界を飛び回っている様子。その釣り仕事の合間に食べる食べ物を紹介するのが本作になるのか。
今のところは、1巻2巻で、アメリカ、ブラジル、ドバイってところでしょうか。

本作は人生観を揺さぶられる。揺さぶらされ続けているよ。毎エピソードううむと唸る。そしてオノレの人生を振り返りフウとあらぬほうを眺める。

1巻2話。アメリカ・シカゴのイタリアンビーフからそう思う。ありったけの薄切りの牛肉を挟んだパンを、その肉を焼いたときに出てくる肉汁に浸してシナシナベタベタになったサンドイッチを縁側でスイカを食べるように食べる。アメリカ在住のイタリアンマフィアが開発した安価でごちそうをたくさん食べるための食事。

1巻3話。ブラジル・アマゾナス。もらったフルーツジュースが禁断症状が出るほど美味い。これなに?と尋ねると「アバカシ」と答えが。何だそれ?と思って持ってきた果物がパイナップル。完全に熟したパイナップルというのは現地でないと真の味がわからないと。アバカシを振る舞ってくれたブラジルの友達が1番美味いジュースはオレンジです。つまりそれも。

この2つのエピソードに感じ入るものがあったのです。以降も同マンガでは「現地でないと食べることのできないうまいものがある」「現地のひとは1番うまい食べ方を知っている」と。この2本の柱を軸にエピソードが展開されています。

もちろん、上記のイタリアンビーフもアバカシも食べてみたい。そして「サウダージ」も味わってみたい。本作のほかにも最近もうひとつサウダージという言葉をみかけた。たぶん、2022年のおれのキーワードはサウダージだと思う(からもうひとつも早急に紹介しますj)。

ただ、イタリアンビーフがうまそうでもアバカシのジュースがうまそうでも、「そこ」に行けるのかというとその可能性は限りなく少ない。劇的に所持金が増えて劇的に健康にならないと叶わぬ夢ではあるなあと。

そう考えると、どこでおれの人生がこうなった?ということで人生観が揺さぶられるのですよ。理由はどうあれ、感情を動かされることで感動になるわけでかなり感動してるんですよね。

2巻ではその余韻や「思いにふける」がどんどん強く重くなってきている。それはつまりマンガとしての深みが増してるということなんだろうか、おれのシンクロ率が高くなっているからなんだろうか。ただ、マンガにおいて「おもしろい」ってこういうことだからさ。それはおれがいわゆる釣行記的な本(オーパ!とか)や紀行文(深夜急行とか高野秀行氏の著作とか)
にふれてこない人生だったので、新鮮だった可能性も微レ存。

最新刊2巻描き下ろしのグリルドチーズ。これがすごかった。

アメリカの食べ物屋にたいがいあるらしい料理。フライパンにバターをしいてチーズを挟んだパンを焼くってだけの料理。誰でもできるし家でもできるけど、非常に奥深い料理ということを滔々と語られておる。それはいわば日本における卵がけご飯だと。生卵を食べることができるのは日本だけってことを抜きにしても、日本人は心のどこかに「日本人が1番うまい卵がけご飯の味を知っている」って思ってるように、アメリカンはグリルドチーズの「正解」を知っているという感覚。この説明の腑の落ち方が異常なんだよね。

グリルドチーズにしてもアメリカにいって絶対に食べるかっていうと1回や2回じゃ食べないよなあ。だから日常的にアメリカにいって、「そういう店」にいかないとね。そしてそのうまさに目覚めないと。そういうところが素直にすごくてすごいからこそ自分の人生の振り返りという反動がくるわけで。

そしてそのことがまた感情を揺さぶらされる。と、まあ、かなり個人的な理由ではあるが本作は心に残るマンガとなった。ただ、ここまで変な方向からの入れ込み方をしてない娘も楽しいしおもしろかったと感想をよこしたのでマンガとしておもしろいのもまちがいないのですよ。


「鍋に弾丸を受けながら」(森山慎/青木潤太朗)のイタリアンビーフ : マンガ食堂 - 漫画の料理、レシピ(漫画飯)を再現 Powered by ライブドアブログ https://mangashokudo.net/entry/blog-entry-662.html

余談ですが。
こういう料理再現や「本物」の写真ってあまりみたくないって思うんだよな。マンガで完結してるし、なんか夢が壊されたってんじゃないけど(それいうなら登場人物はみんなおっさんだし)。でも、イタリアンビーフはやっぱり食べておきたいなあ。
posted by すけきょう at 13:20| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年07月30日

トモちゃんは女の子! 柳田 史太 (星海社)


アニメ化記念ってことで。
2015年から2019年までTwitterからのWEBサイトで連載されてました。コミックは全8巻。
とはいえ、存在は知っていたものの読んだのはわりと最近でまとめて読みました。おれ的には最近のあるあるの電書でセールだったからです。
そういうことで本作もアニメ化前後でセールになる可能性が高いからチェックされておくことをおすすめします。これまた最近のあるあるですが電子書籍用の特典もありますし。

トモちゃんという男勝りな女の子が幼なじみの男に惚れてますが、男は幼い頃からライバルとして親友として切磋琢磨(おもに空手で)してきたので、むこうはかけがえのないものと思ってますがその質がずいぶんちがうというラブコメでおなじみのやつです。
1ページをワイド画面の4コマで区切って展開するというパターンです。高校生ですね。学園ラブコメ。

本作の最大の特徴は、昭和からある男勝りの女の子とニブチン(死語か)の男の子のすれちがいラブコメってベタ中のベタであり、なおかつかなりミニマリズムな内容、それなのにこんなに時間が経ったのにアニメ化になることも納得の高品質ということなんですよね。

ラブコメとは、
突き詰めるとキャラは2人でいいんですよね。それになにを加えたら独自性が出せる?もっとおもしろくなる?ということでキャラが増えていったりシチュエーションが複雑になっていきます。
そしてラブコメのストーリーのゴールは両思いになりばいい。ストーリーもキャラも目的も実に明確です。ただ、現実の「複雑」をいかに盛り込むかで味わいが変わるという。ま、ここまで極端なことをいいだすとみんな同じになりますかね。バトルマンガスポーツマンガは戦って勝てばいい、ギャグマンガはいかなる手段を使っても笑えることができればいい(だから1番好きなのかもしれない)。

本作はすごくシンプルでミニマムなんですよね。必要最低限といえるくらいストイックに展開する。それは連載媒体が4コマというのも関係しているし、Twitter連載というのも関係しているのかもしれない。

ただ、それでいて最大限のおもしろさを引き出していることに驚く。それぞれこれでもかって少数のキャラを立たせながら最大限の活躍をする。

やっぱなんのかんのいってキャラクターよ。とくにマンガはそれ。

本作は学園マンガであるわりには、学生より、それぞれの親や各キャラの過去にフォーカスし展開していくところが特徴。
親を描写することでどうやって彼女らのキャラが形成されたかの説得力をもたせてるし、「幼なじみ」の幼いころを丁寧に描くことでよりキャラに愛着が湧くから。だから主要キャラは両親を描いてる。これ実はなかなかできないこと。だって老け顔を描けないプロのマンガ家って多いもの。極端なこというと女の子しか描けない人も多い。
作者は老若男女見事に描き分けておられます。カバーをめくったあとのおまけ絵には毎回ニヤニヤするよ(電書でもみられる)。

主要キャラがそれぞれとても強い(物理でも精神でもキャラでも)ので凡百の同級生先輩後輩じゃ太刀打ちできないというところもあるんだろうかな。

この少ないキャラを磨きに磨いて立体的に「存在」させる手法がすごい。
エピソードそれぞれも的確でシンプル。はじめてのデートとか、親友とのいざこざとか。基本エピソード毎に「原点復帰」なポジションに戻るけど、その後少しづつ気持ちが進展していく。これもまた王道ですが効果的。

つまりは、
今頃アニメ化が決定するには遅すぎてもったいないくらいよくできたラブコメではあるのよね。ラブコメとするより各キャラの成長物語ってのもこれまたベタではあるが、それも大成功ですし。8巻にわたってきちんとベストのところに着地して大団円です。

そしてふと思い出すとシンプルに「いいマンガだったな」で終わる。最高の読後感です。

アニメをみてからでも遅くないですが、「いいマンガ」だったということを頭の片隅にでも置いておいてください。

あとひとつ書くことがあるとするなら、脇役のキャロルとみすずはなかなかみないグッドキャラで彼女らの存在や言動がかなりマンガをおもしろくしていたし、アニメでも双方の中の人の演技や作画を期待されるところですね。















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