2012年06月14日

「アイアムアヒーロー」 9巻 花沢健吾(小学館)

花沢 健吾¥ 590



東京にゾンビが出たぞ、ワーオ!そりゃ大変だマンガの9巻目です。
実際のところ1巻のあらすじも9巻もほぼそれです。
ほとんどなにもわからないゾンビがいる世界に放り出された状態で主人公たち、そして「別の」人たちが右往左往しております。

そう、9巻では「台湾・アジア編」が挿入されております。
エリートマンガ編集部員と売れないマンガ家が「取材旅行」と称しての不倫旅行をしております。そこでワーオ!が起こるんですね。

「物語」ということを考えました。
終わってから振り返ってみると物語は1本の線のようなものだと思います。
GPS装着で移動したルートをあとでみるように、紆余曲折などいろいろありますが、結局のところ1本の線としてたどることができます。
そしてだいたいにおいて主人公がその線をひいてます。
線をひくということはどういうことかというと物語に「最後」までいるということです。主人公のおもな役割はそれです。

「鈴木。この先どーっすっかあんたが決めてくれ。
今のところあんたと一緒にいるのが一番安全そうだから、
あたしはあんたの考えにあわせる」


本作の主人公鈴木英雄と同行している女性のセリフですがつまりそういうことなんですよね。
ただまあいっしょにいると「安全」ではあるけど、物語を盛り上げるなどの理由で殺されたりする危険も高まるばかりなので、物語と関係ないところで解放されるのも重要でしょうね。
とくにこの物語は、鈴木と行動を別にするヒト(することになったヒト)、そして、「いっしょにいない」ヒトは基本的に死んでいきます。じゃない場合は生死不明か。
「そういう」物語ですから。

「スーパーマリオブラザーズ」というゲームをご存じでしょうか。
クッパ大王がピーチ姫を拉致監禁します。それをみて配管工のマリオが奪還を目指すという「物語」です。
クッパ大王のお城までは敵やさまざまなワナが待ちかまえているのです。
「物語」ならば、マリオは主人公だから1−1から8−4の最終ステージまで1回も死んでないということになるのです。命は基本的にひとつですし。
ただ、スーパーマリオブラザーズはゲームなのです。それはどういうことになるかというと、ピーチ姫のもとにたどり着く前に罠や敵になぶり殺しにされたマリオの死体が膨大に存在するわけですね。つまり「物語」の遂行に失敗したなれの果てです。
ゲームとは物語を遂行するために試行錯誤し切磋琢磨するものという定義もできます。

安全地帯無き場所では、誰もが主人公となる


9巻の帯裏にあるコピーです。
「アイアムアヒーロー」において主人公鈴木英雄は生き残ってます。
ヒーローになるんだとの漠とした思い。たまたま持っていた散弾銃。物語のキーを握っているかもしれないヒロミちゃんとかのポイントはありますが、どこで死んでてもおかしくないんですよね。
主人公だけに危機百連発ですけど、そのたびの優柔不断だったり「いのちだいじに」にもほどがあるだろうという感じですが切り抜けてます。
なぜ死なないのは主人公で作者が生かしてるからという元も子もない理由はあるのですがつまりは、「そういうこと」になるわけです。
逆にゲームだったら鈴木の死体は山のようになっていたでしょう。

となると、主人公がほかの人の「物語」だったらどうかな?と。ま、それに対する答えは9巻にあります。すべてではないと思いますけど。例として提示されたのが「台湾アジア編」とはいえます。

そう考えるとタイトルが非常に興味深いんですよね。

アイアム「ア」ヒーロー

アなんですよね。単数を表すAです。

彼のみがヒーローたる物語なのか、彼のみが生き残るのか。あるいは?とどのような意味の「ア」だろうかと。

そして、そう感じざるを得ない絶望的で現実的で写実的な背景が恐怖に格段と説得力をかもしてますね。

Twitterでベテランマンガ家さんが本作を名指しで「こんなのはマンガの背景ではない」という批判をされてました。
実写背景を取り込んでCG処理したのをさしてと思われます。
限りなく「そこ」がどこか特定できるようなくらいのもの。
つまりは、そこにいかないと描けないなんて状態になっています。1枚の風景にも複数の資料写真が必要なような。
そう考えると、本編、とくに9巻の「台湾アジア編」はちがった味わいが生まれますよね。
取材旅行としてデジカメに写真を撮りまくる編集員は、花沢氏自身、あるいは同行した編集にもなるわけでね。
もしかして、本当に花沢氏の担当が不倫旅行にいったときの写真をデータに使ってる?とか穿ったりな。もしくは、そういう「てい」で担当編集をモデルにしてたりとかな。

「物語」本編とははずれたところの、「もしゾンビが日本中にいたら」って目線での取材や視点で「実際」に旅するのは絶対におもしろいですよね。それをマンガ化するのはまた全然別と考えてし。
そして、取材をもとに冷静に展開したら絶望的なことになったんだなと思ったりします。ときおり熱いですけど基本は淡々と展開していきます。この淡々がコワいなと。
んまあ、ゾンビウイルスが蔓延してなくてよかったなと。
そして9巻オビのピース又吉氏のコメントのように臆病な英雄を見守ろうと思うのです。

個人的な話。
「台湾・アジア編」がねちょっときたのよ。なぜか?ってえと、開始2ページ目の見開きのコンビニがある雑居ビルの背景描写。
おれ、まちがいなくここを歩いてる!って思った。まちがいなく台北、そして、ひょっとしたらホテルもいっしょか?と思ったりも。
おれの推論に間違いがなければあそこらはそういう繁華街というか高級ホテルが立ち並ぶ随一のところです。六本木とかそういう感じ?
だけど、雑居ビル下のアーケードが非常に暗くて怖かったです。22時くらいでしたか。
その記憶がサーって蘇り、なおかつ、「そこ」を使用されたのがすごくうれしいんですよね。
本当、ただ、灯りがないから暗いというより、「なにか」が暗くしてるのではないか?なんて思えるところで、いろいろとビジュアルの記憶が多い台湾旅行でしたがこれが1番でしたね。それがあった。

写実的風景はそういう思いも寄らぬセンスを喚起させるところもあるなと思ったのです。
9巻後編のいかにも山道にあるお土産物屋での攻防。
地元産の置き野菜とか、漬け物を売ってるタルの写実にゾクリとするんですよね。それはむしろ見開きで富士山をバックに立ってる英雄よりよほど。
posted by すけきょう at 08:15| Comment(2) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月01日

「電波の城」15巻 細野不二彦(小学館)

細野 不二彦¥ 550



・デビュー作より知ってます。
・高千穂遙氏の原作「クラッシャージョウ」のコミカライズ。
・そのあと、「どっきりドクター」「さすがの猿飛」「Gu-Guガンモ」と立て続けにヒットをとばしておられます。
・正直なところ1番のファンではありません。だけど、「愛しのバットマン」という野球マンガ以外は単行本を書店でみかけてらほぼノータイムで買い揃えてきてると思います。いつでもどの作品も単行本1冊の価格分のおもしろさは確実に保ち続けている作家だなと思いますし、かつての1番で単行本を買わなくなった作家、思いきって名前を出してみますが、高橋留美子氏とかとちがい、実に今も確実に新刊をおさえてます。
・単行本購買の歴史がもっとも長いのではないかと思う作家のひとりです。

・なにがそんな魅力なのでしょうか。

・ひとつ考えられるのは、おれの加齢に比例して、その内容が移り変わっているからということです。
・おれが成人したころにちょうど青年コミックに主軸を移しておられます。さきほど引き合いにださせていただいた高橋留美子さんなんかはずっと少年誌ですものね。

・おれの感覚だと、週刊少年サンデー時代でのファンを切り捨てるという言い方はなんですが、脱却されているような気がします。

当時の「さすがの猿飛」でのブームや人気は、「うる星やつら」のラムちゃんと同じで、当時はそんな名前なかったけど、「萌え豚」どもをブヒブヒいわせてました。魔子チャンサイコーって。そう、当時は美少女絵師として名を馳せてました。今もとてもカワイイ女性を描きますが。
・本人や関係者じゃないのでわかりません。
・(美少女絵師としての)人気は長続きしないと考えられていたのか、徐々に、そういうウケを弱めていっての戦略的青年誌展開だったのか、トライされていたけどうまくハマらなくなったのかわかりませんが、ともかく変質されました。
・それでいて、青年誌においても「ギャラリーフェイク」などのヒットをモノにされているんですよね。

・青年誌に移ってからメインにされておられた1話完結の読み切りで、話や謎がゆるやかにつながり展開していくという、ビッグコミックがオトクイのパターン(まあ有名なのは「美味しんぼ」かね)を手がけておられます。
「ギャラリーフェイク」や「ダブルフェイス」など。
・本作「電波の城」はそのパターンではなく、話はしっかりと連続しつながっていきます。

・謎の美女天宮がテレビ局という電波の城でのし上がっていくサクセスストーリーです。
・3つの視点が存在するマンガで、1つはずっと未来に書かれたこの美女の回想記。そして、最初は天宮が所属しているプロダクションの社長、そして、彼女の過去がうっすらとわかってからは彼女自身の視点で物語が展開しております。3つの視点ですが2つで進行しているわけです。

・1巻よりそのおもしろさが衰える気配がありません。
・現在、彼女が念願の地上波ニュースのキャスター(スポーツリポーター)になってからのおもしろさが尋常じゃないんですよ。
・これがまた思いきって名前を出しますが、浦沢直樹氏のように「今がおもしろければいいだろ」っていう整合性や物語が破綻しかかっても「細けえことはいいんだよ!」の精神で突き進むのとは反対に位置しており、多量の取材や資料や「引き出し」をベースに綿密に伏線が貼られており、それらがどんどん結びつきかつ展開し、もつれてまた別の展開や謎を生み出していってますし、それは天宮の過去とその秘密を知ってるニュースキャスターとのじわじわとした攻防のなか最高潮のボルテージになっております。
・ただただこのおもしろさが信じられないんですよね。まだおもしろい、さらにおもしろい。
・もしかして、ここにきてまた細野氏は最大の黄金期を迎えているのではないかと思うようなすばらしさ。
・惜しむらくはネタ的にシビレるところが多いので、他メディア化しにくいところでしょうかね。業界ネタ他。
・それこそ今深夜アニメでやればいいと思うくらい、いろいろアレだった問題作でカルトな人気があった「東京探偵団」のように。

・そして特筆したいこと。

・ライフワークといいましょうか。細野氏はその長いキャリアのなかでメッセージを発しておられる気がします。
・そしてことあることにそれをとくに強烈に出してる作品を発表します。さりげないけど強烈なのでココロに残ります。

・スピリッツに連載していた「あどりぶシネ倶楽部」という名作。
・大学生の映画研究部の話です。
・ある回で彼らがSF映画を撮るために、いわゆる「げんしけん」というか、特撮研究部みたいなところに協力をたのむという回があります。
・引き受けた部長は、当時はやっていた楽屋ウケやパロディを満載にした宇宙の風景を冗談半分に作ります。マクロスのバルキリーやラムちゃんを隠れキャラにしているような明るい宇宙を。
・でも、映研の彼らはマジメなハードSFを撮るつもりなので困るわけです。
・そうしたら、地味でいつもコツコツとやっているオトコがこっそり趣味半分でそういうハードな宇宙背景と特撮のミニチュアを作っており、「できればこれを使ってくれ」なんてたのみこむ。映研のメンバーはウエルカムで受け入れるという話。

「努力する職人は報われる」

・このメッセージをあらゆる作品で発しておられるような気がします。
・それこそ「さすがの猿飛」(あるいはそれ以前)からずっと。
・努力だけじゃなくて、職人ってのもまたポイントなんだよね。自分の仕事にほこりを持ち、たえず切磋琢磨し向上をめざしているヒトは絶対にいつか報われるし、救われる瞬間がある。

・それの最新作が本作にもありました。

Report154「最後の一葉」

・この回は相当異質で、上記のとおり続いていかずに1本の独立した読み切りのようになっております。もちろん、大局ではつながっております。でも、たとえば、ドラマ化なんてするときには削ってもかまわないようになっております。

・物語の語り部である回想録の筆者の話です。主人公の天宮が1コマもでてきません。
・彼は天宮と同じテレビ局にいましたが有能すぎたためにスポンサーを激怒するようなネタを扱い、左遷されケーブルテレビ局にいます。
・ただ、そこでも独自の取材力を活かして、ばりばりとスクープをモノにして有名になっていってます。
・その彼が目をつけたのが柔道や剣道の学業の必修化問題。
・この取材にどうしても大臣のコメントがほしい。
・だから、昼行灯みたいにしてる同じ部の先輩にコネをつけてもらう。
・先輩は引き受けたのですが全部おれに仕切らせろといいます。
・資料やら全然目を通さないし、大臣にもずばりと本質をたずねない先輩にイライラしつつもいわれたとおり後ろで黙ってビデオカメラを回し続けていると、、、、

・この「短編」がすばらしいを通り越して驚愕。アゴが落ちるくらいの完成度なんですよね。
・あのセリフ、あの表情、あの展開、すべて完璧。いや、それ以上。
・トムとジェリーってカートゥーンアニメで崖の上から落ちたトムが足の下から順番にふるえていって脳天までふるえたところでバラバラに砕け散るみたいな衝撃がおれに襲いかかりました。
そして前記のメッセージがジーンとしびれてるおれに刻みつけられます。

「努力する職人は報われる」

細野不二彦恐るべし。

・おれがずっと彼のマンガを書店でみかけてはノータイムで買い続けている理由がわかったような気がしました。
「おもしろい」だけじゃない、「よくできている」だけじゃない、「なにか」を垣間みることができました。
・まだまだ長いつきあいになるなと思いました。
posted by すけきょう at 06:44| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月28日

CATCH&THROW [キャッチ アンド スロー] とよ田みのる(小学館)

とよ田 みのる¥ 600



・短編集がすきだ。
・60冊以上読んでも「ONE PIECEを読んだ」としかいえないなら、1冊で5本の物語が収録されている本作のような短編集を読んだ方がお得だから。
自分の中の「物語を読んだ数」が1冊でいっぺんに5カウントされるじゃない。そして、好きなキャラも5本に5人以上できたら幸せじゃない。

「漫画家になってからの憧れ、
短編集がやっと出せました!!
お気軽に楽しんでくださいませ!!」

そして、こんなまえがきを書く漫画家さんがキライなわけないじゃない。
もともと大好きな漫画家だけど、さらに倍率がドンだよ。

そして、こんなまえがきを書く漫画家さんの短編集がつまらないわけがないじゃない。

・メデューサの末えいが宿敵のペルセウスの末えいを倒しに日本の高校に転校してくる「素敵な面倒さん」
・南の小さな島にきたハーフの女の子とのフリスビー(商品名)を通しての交流を描く表題作「CATCH&THROW」
・町で1番不幸な少女が合わせ鏡に「ヒカルちゃん助けて」と願うと現れて「幸せにしてあげる」という「ヒカルちゃん」
・よしづきくみち氏による原作で、月に迷い込んだ少女がと月星人の交流を描く「等価なふたり」
・おかしな片桐くんにからむ金子さんの話「片桐くん」

・もう掛け値なしの珠玉。どれをとっても最高。

・と、
・こんな自分はイヤなんだけどさ。
・デビュー作の「ラブロマ」の、えらいネガティブなレビューを読んだことがあるんです。もうくわしい内容もどこで読んだかもわからないんですけど、すんげーイライラしたことはなんとなく覚えてます。
・そのレビューを書いたヒトにこの短編集(あるいはこれまでの名作)をみせていいたいですよ。「どうだ?」と。
・こんなすばらしい短編集を読んだことがあるか?みたことがあるか?と。
・ネガティブな感情の発露でもうしわけないです。それこそ、上記の作者の引用「お気軽に楽しんでくださいませ!!」に反するし不粋であることは重々承知してるし、そもそも、おれは関係ないですけど。でも、本作でのこの突き抜けた晴れ晴れとした気持ちはなんだろうと。

・とよ田みのる氏の作品は、気持ちのいいキャラが気持ちのいいストーリーを駆け抜けて、とびきりのカタルシスをくれるという作品ばかり。
・いったらなんだけど、手塚治虫氏なんかでおなじみのスターシステムを使っているのかと思うくらい、おなじみのパターンをもったキャラが頻繁に登場したり、テーマもボーイミーツガール的なものが多かったりと思います。
・でも、読んでも読んでも飽きないのならばそれはなんの問題もないんだよ。むしろもっともっと読ませてくれと願ってる。
・ああ、大ファンだからな。

・そして短編集がスキなのは心おきなくオススメできるから。1冊で済むからな。本作はたくさんのヒトに読んでほしい。

・あー、でも、短編集だと読んだ気がしないなんてのもいるんだよなあ。まあ、そこいらの方もお気軽にどうぞ。

・そして。
・面倒さんのパンツみてー、キャッシーとフリスビーしてー、ユカリちゃんにお茶いれてもらいてー、みのりの笑顔みてー、金子さんに腹パンされてーとか、そういう話で盛り上がりましょう。

オススメ
posted by すけきょう at 07:29| Comment(2) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月31日

STAY TUNE!〜音楽と漫画と人

戸田 誠二¥ 924

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・自身のWEBマンガが話題になりそれをまとめた本で商業デビュー。
・そのときから作風はあまり変わってないような気がする。全部読んだわけではないんだけど、「ショートショートの奇才」なんてオビにも書いてありますね。そして反動で現在は長いのを描いてらっしゃるそうですが。
・WEBで最初にみたときは衝撃があった。PCのモニタ上でのマンガの「正しい」あり方というのを提示させられたような気がした。
・すなわちそれショート。
・今となってはタブレットの台頭や読者のほうの「なれ」もあるけど、PCでマンガを読む、小説を読むということにはなんだか抵抗があった。

[COMPLEX_POOL|Top]

・今でも作品を読むことができますね。つい読みふけってしまった。ネット上に等しくある「おもしろ」。それをマンガで表現するにはショートがいいなと今でも思う。スクロールもページをめくるのもちがう。ネットでマンガの場合は1枚1話が1番効率がいいし、しみる気がする。それは新聞の4コマや1コマみたいなものに近いかもしれない。その場に応じたやり方。ネットとマンガの組み合わせはそれがいいなと。

・たとえばコンサート会場など、たくさんヒトがいる中に佇むと、「ああここにいるヒトたちそれぞれに家族があって知り合いやトモダチや恋人との間に「なにか」があるんだろうな」と思ったりする。ドラマですか。
・戸田氏はそれらをマンガにカット&ペーストされているような作風と思う。

戸田 誠二¥ 780

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・それの「最新作」が同時発売の「東京メイト」ですね。デビュー作であり南伸坊氏が装丁したことが強烈に印象に残っていた「生きるススメ」も「それ」です。

・本書「音楽と漫画と人」はタイトルの通りです。その「ヒト」のドラマを音楽と漫画の「ヒト」に特化しております。基本音楽はロックなのかね。もともとが「音楽と人」という音楽雑誌に毎号2ページで6年間69回(ロック回)連載されていたことですし。

・10代20代には多くのヒトが憧れる職業であると思うんですよね。ミュージシャンとマンガ家。今はまたちがうのかもしれませんけど、おれのときはど真ん中でした。クラスにそれぞれ何人か「志望」がいました。おれもどっちにもなりたかった。ちょっとだけ目指した。ダメだったけどさ。

・そんな彼らの人生の一瞬をスパっと切り取って味付けも最小限にさっと盛りつけた感じ。
・とはいえ、「一瞬」は無限にあるわけで味わいもまたそれに準じるわけです。
・2ページなので「一瞬」で読むことができる。でも「一瞬」の2ページに油断すると涙するわけです。そこいらはなるほど奇才だなと。

・作者自身あとがき対談において、前半と後半と変わったとあるように、前半は音楽家やマンガ家に「なる」ことを目指してる方が多く出演され、後半は「続ける」または「終える」ことを描いておられる気がしました。

・それこそ幅広くいろいろなスタンスの方は登場しております。成功、挫折、ファン、スタッフ、怒り、悲しみ、笑い、苦しみ、それらを2ページで。
・出演された方はいろいろな方です。
・でも、共通点はただひとつ。音楽やマンガへの愛があることですね。

・1番スキな話は「教えて」。
・仕事で彼女との用事を断る。「しょうがないだろおれだけ休むわけにはいかないから」と仕事につく。彼女も電話をきって怒って歩いてる。
・仕事をしている彼氏、街でふと書店に立ち寄る彼女。
そこにモノローグ「人類がいつ風景を 音を美しいと感じるようになったのか そんなムダなことを考えるのを いつやめたんだろう」
・彼女はふと買って読んだマンガに涙し、彼氏は仕事の合間に入ったラーメン屋のテレビでのミュージシャンの演奏に手を止めてみている。

・しみじみとコレだよなと思った。ことあるごとに「卒業」の機会はあった。いまでもたびたびある。また基本的にそうならざるを得ないわけです。家族が増えるとか、金銭的に苦しいとか、「ガキっぽい」からとか、外側から内側から「卒業」を促されます。
・でも、「スキ」なものは止めないんだよな。というか、そういう人生、「止めない人生」を選択し続けているなと思ったよ。
・まさにそういう話もあった。「選択」。たぶんに、おれなんかより、マンガ家になる、ミュージシャンになるという道を選択したヒトは覚悟してるし迷いも多かったし、卒業をつきつけられていることなんだろうな。
・まあ、多くは挫折したりしてるわけですけど、卒業せずにいる方はまだそこで歌ったり描いたりしてるわけです。

・中二病というコトバがあります。思春期の少年少女がかかる自意識過剰な言動をしての造語です。
・この病原菌の多くがマンガや音楽(ロック)から発見されていることは大学の研究機関の調査結果を待たずしても周知の事実として知られております。
・考えると、中2病の重篤な症状は「それを作り出す」、すなわち病原菌の発生源になることですよ。そう、ミュージシャンになりマンガ家になること。そして、世に中2病を蔓延させるんですよ。
・つまり、中2病はその症状の果てに中2病そのものになるわけですよ。
・ただ中2病になってもバイキンマンのように悪さをしてアンパンマンに殴られはひふへほ〜と飛んでいく毎日を送るわけじゃなく(ときおり「そういうこと」があるのが中2病ならではなんでしょうけどね)、毎日悩み、もがき、そして全部放り投げそうになったりもするわけですよ。
・本作内では穴を掘って出た土でほかの穴を埋めるとしてます。それを音楽でしかできない苦しみをグチっておられますね。

・死ぬまで中2病でいいんだし、卒業しなくてもいいと思わせる。この妙な高揚感。
・中2病の発案者とされる伊集院光氏(今は自身が思ってるのとちがう意味なので興味がないそうです)は、ラジオなどでよく「おれら」という3人称を使用されます。同じ学年ですし勝手に親近感を持ったりしておりますが、この「おれら」だけは違和感がいつもあります。伊集院氏の根っこにある体育会系のところが出てますし、仲間やスタッフとの和を重んじておられるところなんだろうなとは思います。おれはそういう団体作業みたいなこととはとんと無縁な人生を送ってきたのでそういうところが弱いのだろうなと思います。

・でもね、今回は使いたいなと。

「おれら」はこのままでいいんだぜ。STAY TUNEでSTAY TUNI(中2)なままでいくだけいくしかねえんだ。
・これからもマンガを読みまくってロックを聞きまくって、耳が聞こえなくなっても目が見えなくなってもそのシーンその音を思い出しながら死んでいくんだ。それはとってもステキなことだ。

・あらためてそういうパワーを本書からいただきました。ありがたい話です。

オススメ
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2012年02月18日

究極の萌えマンガ〜世界に大自慢したい日本の会社

こせき こうじ¥ 630



・究極の萌えとはなんだろう?と、つかみだけのタイトルなので早めに処理をしておこう。
・つきつめると、恋愛感情を抱くこと、具体的にいうとココロをつかまれること。そういうことを思わせるキャラがいるマンガですね。
「陽射し/吾妻ひでお」、「あんどろトリオ/内山亜紀」「すすめパイレーツ/江口寿史」なんかがパッと思いつきます。パイレーツは終わりくらいに1話だけ登場した魔女ですね。江口寿史氏のマンガであんな気持ちになったのは後にも先にもそれだけです。
・で、このなかだと「あんどろトリオ」なんかは出オチみたいなもんで、表紙絵のかわいさに思わず立ち読みですませていた週刊少年チャンピオンを買ったくらいです。しかも、買うときにすごく恥ずかしかった記憶もありますし、このことがおれの人生でけっこう大きめの進路変更になったデキゴトだったのかもしれません。
・と、まあ、余談。
・で、本作。久しぶりにキャラにココロをつかまれたなと思いました。そりゃあ、いうても中学生のころ(上記3作品の出会いは全部そうだね)から、かなりマンガを読んでいるし、読んでいる以上はスレてきてもいるわけです。だから、おいそれとそんなこともならないし、あとなんていうか、以降は恋愛感情というより劣情をもよおすわけです。そこらが混同してよくわからなくなるんだな。萌えの感情とエロいって気持ちは根っこはいっしょかもしれないけど微妙にちがうと思うんだよね。

・マンガにくわしい方ならこせきこうじ氏はジャンプ系列で活躍されているしご存知と思いますし、彼の絵柄も想像つかれるでしょう。
・あれ?「ああ一郎」とか「県立海空高校野球部員山下たろーくん」とか描いてたこせき氏ってこんな女性描写上手かったっけ?と記憶をたどるような。そういえばジャンプOB作家再生工場誌だった「バンチ」だとどうたったっけかな?とか。

・本作は、大ヒット書籍のコミカライズです。日本のすごい会社のルポマンガですね。
・採算度外視でカラダの不自由なヒトのために服飾を作ってる広島の「ハッピーおがわ」
・砲丸投げで世界中のアスリートから注目されてる埼玉の「辻谷工業」
・3坪の敷地面積で年に3億の売上をほこる吉祥寺の羊羹屋「小ざさ」
・など、6社6話の実録です。社長がすごいヒト、やってることがすごい、創り上げる商品がすごい。毎話、話を伺う狂言回し役のエヌ氏の超オーバーな「マンガみたい」動きといつしか読者もシンクロしていっしょに感動し泣いてるというものです。
・こせき氏といえば、一生けん命やることにかけては天才の少年が主人公で奇跡を呼び起こすというマンガが多いですが、エヌ氏のキャラはその芸風のまま、社長の逸話をきいては泣いて叫んで感動してるんですね。
・それが大げさじゃないんだよ。本当にすごい。
・たとえば「ハッピーおがわ」の社長は、親が病床で寝たきりになったときに「オシャレな服が着たい」といったのをうけて試行錯誤していたけど、結局間に合わなかった。それがずっと悔いになっている。だから、すべてのクレームは受け取るし、その上で返金に応じるし、改良もする。色のバリエーションもアホほど作る。

・しかも、実に、毎話、基本のノリはいっしょだけど、いろいろなテクや見せ方を模索しておられます。真剣勝負のヒトには真剣勝負で応えねばとばかり、ベテランこせきこうじ氏もあらゆるテクニックで「読みがい」のある話を描かれてます。
・それが萌えにもつながったんじゃないかなと。女性キャラは「かわいく」なければとばかり。

・そして、本題。「日本理化学工業」の話になるのです。
・この会社はチョークをつくってる会社で、社員の7割が知的しょうがい者だそうです。
・話は昭和35年に2人の少女に「はたらくヨロコビをおしえてあげてほしい」と養護学校の先生に土下座されてしぶしぶ2人を雇うわけです。
・そして、その子らの一生懸命ぶりに社員が「辞めさせないでくれ」と社長に嘆願して次第に増えていったと。
・この少女2人の描写がすげえんだ。ただただ愛おしい感じでね。
・絵で萌えるのと、マンガで萌えるのはちがうワケで、たぶんにpixivのランキング上位や、タンブラでリブログされまくってる萌え絵と比べるのはナンセンスで、その話にその絵でそのキャラでコマのなかでいきいきと活躍されていることにココロをつかまれるワケですから。

写真.JPG

・この少女の笑顔がなぜこんなにココロをつかまれたのかは、本作を読まないかぎりわからないのです。それがマンガの持ってる魅力だなと思います。

・そして、半円状の線、いわゆる「ニコ目」をカワイイと感じる技術を持ってるのも日本人として誇るべきスキルだなと。

・萌えなんてのは個人の感覚によるところが大きいのですから大上段に「だれもが萌える!サイコー!」なんていうつもりはないです。でも、本作がマンガとしておもしろいこと、こせきこうじ氏の円熟味をたっぷり堪能できること、そして登場する会社がスゴイことはもうけっこうチカラを込めて断言できますよ。

オススメ

・あと、「小ざさ」の店主の少女時代もまたカワイイねえ。

余談コーナー。

[こせきこうじ先生直筆色紙【こせきこうじ&あーちゃん色紙19】 - 新潮社公式ショップ|新潮オンラインショップ|]
直筆の色紙を売っておられるのね。一時期路上で絵を売っておられたなんて話題にもなられてましたが。ここの少女もカワイイね。

[小ざさ]
「小ざさ」の羊羹は並ばないと買えないけど、モナカはいつでも買うことができるし、ネットでも取り寄せられるのです。本書読むと買いたくなりますよ。

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2011年11月03日

「日本をゆっくり走ってみたよ〜あの娘のために日本一周〜」2巻 吉本浩二(双葉社)

・2巻完結。この日を待っていた。なぜなら「ポトチャリコミック」で書くことができるから。
・思いきりなことはネタバレも含めて書きたいので「つづきを読む」以降にさせていただきます。ここでは軽い概要と感想を。

・作者が主人公。36歳。マンガ家。連載マンガがすべて終わりポカンとスキマがあく。
・そのスキマに、スキだったけど、告白できずに、郷里に帰ってしまったEさんに会いたくて矢も盾もたまらなくなる気持ちが入り込む。でも、ただ会いにいったら気持ち悪いと思われる。そうだ!日本一周する途中に会いに行くんだってことにしよう。と、いう主な理由で日本一周にでかける作者なのでした。

吉本浩二¥ 680
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・話題となった手塚治虫すげぇ!マンガと同時期に発売され、「昭和の中坊」からのファンとしては、お、また活躍されておられるなと、うれしくなったのです。吉本氏は富山県出身というのもありましたけど。

「週刊プレイボーイご推薦! 今、日本で連載されている漫画のなかで最高の漫画かもしれない!」

・1巻のオビにはそう書かれてました。1巻読後おれはそれにすごくうなずいたのです。そして2巻を読み終わっても。
・まあ、2巻完結なわけで現在連載はされていないのですが。

・バイクで日本中をまわりつつも作者はいろいろなデキゴトが起こります、そして考えます。そして、2巻でよく描かれてましたが、作者はどうもヒトを惹きつける能力があるみたいで各地でいろいろなヒトに話しかけられます。その交流も描かれてます。
・大学時代からの友人が全国にいるので彼らに会いに行くというモチベーションもあります。もちろん友人と出会ったときのことも描いてあります。
・マンガ内じゃおどおどキャラに描かれてますが実のところすごくリア充なんですよね。また、行動派でもありますが。だいたいが日本一周してますしね。道中はちょいちょいと孤独に耐えたり負けたりもしてますけど。

・Amazonの1巻に☆を1つだけの方がいました。

バイク旅モノだと思って購入したら期待はずれ。
気の弱い30男の反省文っぽいマンガが綴られておりました。


・そういうマンガです。まあ情弱乙といったところではありますが、おれのこれまでの説明でもかようにとられる方がいらっしゃるかもしれないと思いましたので念のため。

・本作にもバイクの爽快なところは描かれてると思いますけど、実際問題、バイクは不便な乗り物で、爽快なところと引き換えにすごく大変な目にも遭います。
・とくに1巻ではそのへんの苦労を丁寧に描かれてました。エンジンが不調で延々と待ちぼうけくらったり、足をひねってずっと大変だったり。雨とかな。そっちのほうが強く描いてあります。そりゃあはじめてのバイクでの長期の旅です。「不便」を感じないのはウソですよ。

・ただ、本作のキモはバイクじゃないと思うのです(以下続く)。

吉本 浩二¥ 880
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2011年10月15日

「ドリフターズ」2巻 平野耕太(少年画報社)

・本書にあった2文字「狂奔」ね。まさに読むものをそれに駆り立てるマンガです。ああもうほぼ書くことがなくなった。最後の1行じゃんこれ。

・ということで仕切りなおし。

・世界史日本史の「超人」たちがファンタジー臭あふれるモンスターと妖精がいる中世RPG的な異世界に召喚され、「漂流者」と「廃棄物」とチームに分かれて戦うというあらすじです。
・そしてもうしわけないことにおれは歴史がからきしでさあ。織田信長やらジャンヌ・ダルクあたりはさすがに知ってるけど、ほかは「ああ」みたいな。また、ベタな方向より渋目の「非業」な、あるいは、「栄光なき天才たち/森田信吾」な感じの方が多くてな。こっち方面の話はできない。
・とはいえ、それぞれの人物をウィキペディアで調べて「ほー」って感心したりはする。思わずそういうことをするチカラがある。エロ同人で気に入ったキャラの原典にあたりたくなる感じでしょうか。
・2巻では山口多聞氏とか調べたわ。大きな鳥に乗って爆撃する指揮をとっていた。Amazonのレビューで「おれは歴史好きだから大爆笑した」みたいなことが書いてありました。
[山口多聞 - Wikipedia]

・あと、こんなのもある。

[【平野耕太】ドリフターズに出てきそうな歴史上の人物まとめ - NAVER まとめ]

・そりゃあもう歴史好きにはたまらないだろうな。「なんでもあり」(もちろん、そうみせかけていてきちっとルールがある)なんだから。

・ということで、2巻クライマックスでは、本作の物語牽引役である島津豊久氏と炎の魔術を駆使するジャンヌ・ダルクとの対決がはじまってます。

・そして、おれは作者について思うわけです。
・平野耕太氏は早い段階でもう「あがり」な立場にいらっしゃる気がするんですよね。あがりというコトバが適切なのかわかりません。えーと「アウトオブ」な、あるいはニュアンスとして誤解されそうですが「浮いている」とか。
「なにを描いてもOK」な感じをすごく受けます。それはすごく早い段階から。
・たとえば、荒木飛呂彦氏や秋本治氏のように、人気取りレースに参加免除なイメージありますよ。
・そしてそれはどうしてかというと確実な定評があるからと思います。
・ちょっとフレーズとしてどうかと思いますが(こればかりね)、確実な「取れ高」、すなわち金を出すファン層がみこまれるマンガだからと思います。
・それは1行目に書いた「狂奔」。読者を狂わせ奔させる。とくに、奔ですよ。奔放で奔走ですよ。ウキャーと叫びながら、窓から飛び出してかけ出していきたくなるくらいのおもしろさが。

「大師匠さま
えらい事に
なりました

連中完全に
常軌を逸して
います

しかし
その考えに

魅かれます


この作中のセリフがすべてだったりします。
大好きな人たちが大好きなところで思う存分大暴れしてます。
そのセリフを「事実」にするためにヒラコー先生はイノチを削ってるサマがありありとわかるわけです。「魅かれ」るキャラをガシガシ描いていきます。

黒ベタに目だけがギョロリってヒラコー氏18番の「決め」も乱発するくらい「これしかない」ってクライマックス100連発な状態をてんこ盛りにして目の前に差し出してきます。
・各ページ各コマ各セリフにココロが震えます。おれがもっともふるえるのはセリフです。コトバの持つチカラを本作であらためて思い知る。実に思い知る。
・前作「ヘルシング」でのネットでは超有名なあの演説。アレにココロを射たれたヒトは多いでしょう。それはたとえヘルシングを読んでなくても。(参照:[諸君、私は戦争が好きだ]

・長い文章をさらさらと読ませるチカラ。短いセリフに多くを感じ入らせるチカラ。そしてセリフのないところの効果。いちいち引用したい気持ちでいっぱいにさせるほどミゴトです。いちいち朗読したくなるほどミゴトです。
・それは、たぶん、歴史に詳しかったりオタク知識に詳しかったりその歴史人物がスキだったら100倍でも1000倍でもでしょう。
・というか、つまり、それぞれの歴史ファン、有名人ファンを相手にして「これしかない」をやってるわけです。その緊張感や気概はやっぱりハンパじゃねえよな。けっこうなプレッシャーもあるよなあ当然。織田信長はあんなじゃないとか。ジャンヌ・ダルクはもっと巨乳だとか。
・もうあんまりおもしろくて読む手が止まるくらい。最近はおれのそういう感動の容器はすぐにいっぱいになるから勿体無くてすぐに読めないんだよね。冷却期間が必要なんです。寸止めオナニーみたいなもんですね。

・そして思うよ。たまらなく「ソース味」だなって。
・あれっすよ、「孤独のグルメ」で出てきた「男の子はソース味」ってやつよ。
・長い列順番待ちの洋食屋。大盛りじゃ効かないくらいフライが山盛りの「ミックスフライ定食」しかない。そして客はほぼ野郎。男らは黙って列をなして待ち、しかるのちに黙って出てくる揚げたての「それ」にしこたまソースをぶっかけてあとは豚のようにフガフガと食う。そして黙って出ていく。それは毎回まんまと美味くて、まんまとまたこなきゃとココロに誓うことになる。そしてまんまと満腹。

・ノるソるはけっこうあると思う。たとえば、ぶっちゃけ、女性がフガフガいってる図式が想像つかない。
・そしておれは狂奔中。
・3巻は待ち遠しい。でも、まだ2巻を読めばいいかって気にもさせる。そういう「反芻」のチカラもまたハンパない。

・2種類内蔵してるような気がするんですよね。熱量で一気に読ませるBPM160くらいの「一気呵成」のと、じっくりと歴史ネタやセリフの妙などを検分するのと。両方対応。

・しかしどうなる? 実に、ヒラコー先生、未完も多いでなあ。それが心配。おれが死ぬまでに終わって欲しいと思うよ。というか終わるまで死ねないよ。きちんと描いたらすごく長そうよ。

オススメ

平野 耕太¥ 560


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2011年07月17日

「銀の匙 Silver Spoon」1巻 荒川弘

・圧倒的だな。
・けなすつもり、あるいは2発目(3発目)のまぐれはあるのか? そういや中国武術マンガは途中で読むの止めたよなあ、なんて読みはじめると、その圧倒的さにクチをパクパクするしかなくなる。
・いうことがない。「よかった」以外のコトバがない。

・でも、この段階からいろいろいうのがプロのマンガダイバーってもんよ。だれかが「許してください」ってあやまるまでマンガダイバーって使い続けてやるぜ!

・北海道の農業高校の酪農科学科に入学した1年生の目からみた酪農高校マンガ。

・いろいろと規格外の農業高校のすごさ、しかも、北海道のそれはさらに規格外で、普通の中学からわけあって編入してきた主人公は翻弄されつづけているわけです。
・そこをコメディ、シリアス、絶妙のバランスで展開し続けます。コメディ配合が多め。

・ああそうかと。ぼかぁ気がついたんだよ。

吉田 聡


・これが週刊少年サンデーで連載されていたじゃないか。
・学園部活動マンガの大金字塔でありますし、荒川弘氏に相当な影響を吉田聡氏は与えております。とくにギャグ方面のノリやセンス。

・本作が週刊少年サンデーで連載されているということ。おれには無関係とは思えないですね。
・サンデー側はなにをのぞんでいたのかわかりませんが、荒川氏がこれを出してきたということがしびれるなあと。ダークファンタジーでなし、中国任侠アクションでなし、コレなんですよね。「かつて」の王道である学園日常コメディ。
・ま、本人にきくと全然ちがう答えがかえってきそうですけどね。

[銀の匙 Silver Spoon]


・いろいろと上手い点があるんですよね。
・でも、おれが1番と思うところは、キャラの「把握させ」能力です。
・基本主人公にカメラをすえ、彼と彼の目線で話を展開させつつ、次々と新キャラが登場する。考えぬかれた「わかりやすい」キャラ。
・格ゲーのキャラクターデザインによると、シルエットでもだれか判別ができるようにするそうです。
・ここんところのマンガ家はどうにもうこうにもこの「把握させ能力」が弱い。んまあ、リアル志向だったり、大作志向だったりして、どうしても大人数のキャラを登場させたがり、なおかつ、物語を進行させるのに気を取られ「このキャラの設定がこうなのは当然わかってますよね?」という前提でグイグイ話が進んでいく。
・で、そもそもの話もキャラも魅力がさほどない。こんなのばかりよ。

・荒川氏もキャラは多くでてきます。すごく正直、「ハガレン」の場合、もうちょっと省略してもいいんじゃね?ってキャラも多いですが、あまり気になりませんでした。なぜなら、イニシエより伝わる必殺技、「別に無視しても大丈夫」があるからです。

・本作、1巻にかぎっては、主人公以外の顔も名前も覚えてなくてOKです。主人公も名前はあまりカンケイないです。物語をタンノウするには知っておいたほうがおもしろい。でも、なんとなくで大丈夫ですって親切設計。
・なおかつ、ややギャグ方面にシフトするかのようなワキキャラのデフォルメ具合がまたきっちりとキャラを把握させていく。タマコさんを筆頭に。

・あと、上手いのはテーマのさりげない提出。たぶん「イノチを食らう」ってことなんだろうと思うよ。酪農ってのはそれがすべてだからね。ヨソのイノチをちょうだいすることで自分の血肉となり生きる。「食」のシーンが多いのは偶然じゃあねえよな。それもタイトルにつながってくるし。
・そしてそれは「鋼の錬金術師」にもつながってくる。ハガレンでの重要なテーマ「等価交換」ってのはまさにそのことだからな。よくできてるよほんと。前の作品にも思いをめぐらせる。ちょうど完全版が刊行されてるしな。

荒川 弘¥ 714
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・そしてさらに荒川氏のエッセイコミックにあたるこれにもつながる。氏、自身の農業高校時代のマンガにもリンクしていくわけだよ。
・そう、荒川氏本人にも興味がつながっていくんだよな。
・空手の有段者で妊娠出産時にもほとんどハガレンの連載を休んでないという鬼神のごとき彼女は、リアル「銀の匙」を過ごしております。
・おれがすごく謎なのは、その生活のどこに「ハガレン」を書かせるような教養やエンターテインメントが入り込んだのだろう?と思ったんですよね。少なくとも「百姓貴族」には書いてありませんでした。

・で、つまり、作者にはみじんほども関心がないのかしら?と、相変わらず、キャラに色気がありません。具体的にいうとセクシャルな部分での魅力が感じられません。もしかしたら女性は男性キャラに色気を感じ取ることができるのかね?
・だから、荒川氏はラブコメ、もっといえばエロコメは絶対に描くことができないだろうなあ。絶対だよ。万が一あってもおれの琴線に触れることはないな。

・そう、本作「銀の匙」で最大の不満点は女性キャラに魅力が足りない。ヒロインはなんだか記号みたいだ。一応、主人公が惚れてつられて馬術部に入るきっかけになってるのに、おれだったら「あんな女」でスルーできるくらいだ。もうちょっとこうなんていうか、なあ?
・まあ、タマコさんは魅力的だけど、セクシャルという意味じゃないし。
・コレに関してはもうしょうがないです。それをカバーして大きく上回るほど「おもしろい」から。あきらめてます。

・Amazonのレビューにびっくりするほどの安定感とありましたけど、たしかにそのとおりだったなあと。もう看板背負ってる風格あるもんなあ。そりゃあそうか。

・あんまり長くなさそうな気がしました(ガンガンがほっとくわけないから)。そういう意味での「期待」もこめて。

オススメ

荒川 弘¥ 440
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posted by すけきょう at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月01日

「遠野モノがたり」小坂俊史(竹書房)

「4コマ史上に残る名作「中央モノローグ線」に続く物語。」だそうですよ。オビより。

・4コマ史上に残る「中央モノローグ線」は、中央線を舞台として各駅に住んでいる女性の独白で4コマが展開するという作品でした。
・本作はその登場人物のひとりが岩手県遠野市に引っ越してはじめる遠野ライフなワケです。
・読んだこと無いけどタイトルは有名な柳田國男氏の「遠野物語」と、モノローグのモノをかけてのタイトルになるわけです。

・主人公、とはいえ、本作、メイン登場人物は4人いて、昨今の4コマ風潮に合わせて全員女性なんですが、そのうちの引っ越してきたイラストレーターさんがメインでしょうかね。
・イラストレーターは、ネット、すなわち電話が通じるところならどこでもシゴトはできるということで、それを実践してみたわけです。縁もゆかりもないまったく住んだことのない遠野市にポーンといってみたのですね。
・だから、彼女はストレンジャーであり観光客であり地元民でもあるというスタンス。

小坂 俊史¥ 780


・前作にあたるわけでもないんですが(多作でらっしゃるので)、この作者が登場する紀行エッセイ4コマにおいて、自身が遠野市に引っ越すというアクシデントが発生しております。そして現在もいらっしゃるという。
・ということで、つまりイラストレーターは「作者」が色濃く投影されておりますよ。
・そういうことでのネタ出しはポンポンってことでもないでしょうけど、通常のモノとはちがったところから生まれてそうな気がします。そして、そのネタはちょっとちがった手触りがあるような気がします。
・読んでるこっちとしてはちょっとちがうよなとは思います。
・そもそも本作に大爆笑ってのはないですし。そしてさらにそもそも小坂氏の作風は笑死って感じはないですし。

「中央モノローグ線」「わびれもの」、そして、重野なおき氏との共同著書であるところの「ふたりごと自由帳」にも通じる、小坂氏のもってる情緒といいましょうかロマンというかリリシズムというかそういう「湿っぽい」ところ。そしてそれをストレートに表現することのテレを隠すためにほどこした様々なモノ。それにより、「小坂俊史」になってるなあと思う。そしてそれは他の作品よりかはナマの小坂俊史に近いなと。

・たとえば、主人公は神社や旧跡をめぐるのが趣味で、卯子酉(うぬどり)神社というところにいきます。縁結びの神社で100円で売ってる赤い布に想い人の名前を書いて神社に縛り付けると両思いになれるという。ヤナギダのほうの「遠野物語」にも書いてあるくらいな由緒正しいところで。
・この赤い布、緑の木、白い雪で、クリスマスカラーということで、クリスマス気分を感じるとかね。

・主人公は風情のある川のむこうの国道にあるパチンコのネオンで夜の帳が下りないことにいらだちを覚え、いつになったら終わりなのかわからない冬にビビり、雪かき用のスコップを買うことでまた一歩地元民になれることをよろこんだと思う反面、田舎ではどうしても必要にかられるクルマを買うことで「動き」が遮られることを危惧する(引っ越しや処理に困る)。
・地元民の子供がほぼ標準語なことに軽く落胆し、反面、お祭りに積極的に参加するサマをみて感心する。

・主人公以外のメンバーも似たような感じで、遠野市と自分を対比している場面が多い。

・あと、両者のちがいというか、小坂氏の作品は「わかってほしい」ってキャラが登場し、重野氏は「わかりたい、知りたい」ってキャラが登場しますね。
[「ふたりごと自由帳」小坂俊史&重野なおき(芳文社) |ポトチャリポラパ/コミック/2007年7月]


・このときも書きましたけど、小坂氏の心情を描くモノにはこのテーマがいつもあると思う。そして前記のようにナマな分、本作は強く出ている。
・遠野市を主人公と考えるなら、各キャラがそこのどこに立ってるのか。それらを探りつつも「ワタシはここにいる」とひっそりと主張している彼女らを遠野市は暖かくも冷たくもなくただ「そうかね」と受け入れているような感じがします。

・これはたぶん作者の一生のテーマになっているのではと思います。作者自身あとがきで「僕はまだなぜ自分がこの町に来たかさえもわかってないのです」とあるくらいで。

・本作では登場した各キャラにはきちんとした「オチ」をつけてくれてます。とりあえずではありますが「オチ着く」ところをきちんと描いてくれているんですね。そして最終ページ思わず落涙。
・いや、ま、自分に重ねるってんでもないけど、立っているところ、住んでいるところってのはときおり考えるよなと。

・読前にちょっとゲスな勘ぐりしてた、2011年3月11日の地震のことはあるのか?と思ってましたが、それに関してはなかったです。むしろ変なトーンになるのでなくてよかったのかと思いましたし、ない状態で、今出すのはむしろ意味があることだなとも思いました。

・自分が住んでいるところと同じ雪国シンパシーということで、前作「中央モノローグ線」より好きです。田舎ネタはもちろん、雪国ネタもわかるところが多いですし。

・あと、登場キャラでいうと座敷わらしさんが好きです。彼女は幸せになってほしいところです。

・4コマ史上に残るとかそういうこととちがう場所にある名作とは思います。前作も含めて。

オススメ


小坂 俊史¥ 780



参照
[卯子酉神社]
小さいんだなあ。そいでマンガのほうの描写の正確さにおどろきます。
posted by すけきょう at 17:04| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月25日

「ベルとふたりで」3巻 伊藤黒介(竹書房)

・こういう感想文を書くとき、ポイントとなる1フレーズみつけてそれを核にふくらませるってやり方があります。
・それでやろうとすると本作は非常に難しい。1巻から漠然と思っていたけど、3巻になりさらに強くなりました。でも、なんとなく書きはじめたら出てくるってのも、おれの場合よくあるやつです。

・グレート・ピレニーズのベルと元気小学生すずとの7歳同士によるほがらか日常4コマです。
・ベルは大きな犬で二本足で立ってかしこい動きをします。
・すずはアタマの悪い学力と言動のクレヨンしんちゃんが女子になったようなハイパー小学生です。ケツだけ星人とかはしませんが。

・同級生や家族など毎巻キャラは増えていきます。3巻では旅行作家の父が登場して、碧眼金髪なれど大阪弁しかしゃべることのできない少年など。

・基本は「かつて」のストーリー4コマのように、1回1話でユルくストーリーはつながり展開していきますが4コマは1本づつ独立して起承転結というやつです。これが現在基本なのかはわかりませんが、「けいおん!」などいくつか読んだ分には、4コマで落ちてないのもありますので念のため「かつて」と。
・たとえば、3話は年末大掃除の話です。ベルやすず、母の妹の巨乳が、逃げまわったり失敗したりサボったりしてるのを母親が怒りまとめながらも大掃除をするって話です。
・庭を掃除してると、ベルが家のいろいろなものを埋めたのを発見。いろいろなものを埋め込んでしょうがないなあと思ったら、すずの13点の答案や母のお気に入りの割れたマグカップなんかが出てきて、すずが逃げるって4コマです。んまあアットホーム。

・さて1行目に戻ります。本作を読んでポヤポヤと浮かんできたフレーズは「芯食ってる」です。
・なんていうかな、腰を落としてかまえ躊躇なくフルスイングしてジャストミートしてるわけです。いや、野球知らないんでこれらの単語に自信ないんですが。

「よつばと!」をひきあいにだしましょう。これも芯食ってる日常マンガです。これとはまたちがうアプローチではあります。けど、同様のフルスイングによる風圧を感じます。こういうときに使うコトバとちがいますが「容赦ない」感じでブンと振り抜いてます。

・毎話、ほがらか&ドタバタしてるんだけど、そのガチ度がちがうんですよね。渾身のチカラでもってほがらかドタバタしてるわけです。
・すなわち芯食ってるほがらかドタバタなんですよ。
・腕の力こぶに太い血管が浮かび出るようなイキオイで、ほがらか&ドタバタで、なおかつ、ゆるゆるとやってるのです。
・矛盾してますがそうなんです。
「こちとらゆるゆるだオラァ!」ってな。
・デフォルメも雑な描画にみせるところも渾身のチカラで「抜いて」みせてる感じがします。全力でチカラを抜いている。

・また「よつばと!」。あのマンガの精緻な描写に、最新刊が発売されるたびに「雑誌掲載時にさらに描き足した」ってニュースサイトで話題になります。では、はたして「よつばと!」においてあれだけの精緻な描写というのは必要か?という疑問が浮かぶのですよ。

・マンガは「必要」なものを描けばOKです。点2つに棒1本をまるで囲めばヒトの顔です。コマを横切る直線は、水平線にも地平線にも地面にもなりますし、それにデコボコがつくと街の背景になります。
・それでふきだしにセリフが入ると、それはマンガになります。
・でも、それだとおもしろくないし個性がでないからほかにいろいろと足します。人物はたくさん登場し、背景はいろいろと描かれ、「おもしろ」くなります。

・それぞれのマンガには決まった「おもしろ」容量があります。そこに達した時点で、そのマンガは「おもしろ」です。
・これは正解はないですが、基本、ジャンルによってその必要量はちがうと思うのです。

・棒人間が殴り合うバトルマンガはつまらなそうですし、丸を2つならべたものを胸とする成年コミックもあまり読みたくない感じです。

「よつばと!」も「ベルとふたりで」も、おれ判断だとその容量はカンタンに満たしております。そしてさらにオーバーフローです。洗面台の上のほうにある楕円のアナから「おもしろ」が流れでてる状態です。
・だけど、「デカ盛り」の店なんかで皿からあふれるほどに盛りつけられた料理は、それ自体の味とは、また別の「おもしろ」が生まれてくることはおわかりですよね。
・前記のとおり「よつばと!」は「ここまでやる?」ってくらい書きこむことで、本来のほがらか未就学児マンガに、ちがった意味やおもしろが生まれております。そして、その「おもしろ」自体が、従来持ち合わせていた必要量のおもしろにプラスしてます。
「よつばと!」の内容は「クレヨンしんちゃん」の絵でも成立しますからね。絵の優劣ではなくて制作に必要な実時間の話です。どう考えてもちがうでしょ? でも、長い長い時間をかけて背景やふーかの水着姿を描いたりするわけですよ。
・んまあ、「よつばと!」読んでてアタリマエみたいなこと書いてもうしわけないなと思ったりもするんですけどさ。

・で、「ベルとふたりで」ですよ。

・こちらも「おもしろ」があふれています。「よつばと!」とはちがったものが。
・こっちはさきほども描いたように、すごく4コママンガということを意識されております。
・4コマなんだから、読者に「重」と感じさせてはいけないとか、気軽にアハハと笑えるものとか、そういう作者内のシバリがあり、肩のコらない作品として老若男女楽しむマンガとしてそこにあろうと全力で考慮されてます。

・でも、なんつーか、「ちがう」んですよね。それが気軽に繰り出されたものじゃないことは読むとすぐわかる。
・おれが超一流のマンガダイバーだからわかるというのではないです。たぶん、多くのヒトが読んだあと「これちょっとちがうな」と思わせるなにかがあります。その「なにか」を表現するのが難しいってことなんですよ。
・そこで超一流のマンガレビュワーとしては「芯食ってる」と表現してみましたよ。「ほがらか」や「ドタバタ」の「当たり」がちょっと尋常じゃないんですよね。場外ホームランといいますか。
・もっと曖昧な表現だと、「なんかヘン」なんだけどね。それは悪い方にヘンじゃないのは確かな感じの。
・それは、琴子という全盲の美人女子高生が準レギュラーとして登場してるとか、あとがきに都条例にモノもうしてるって、わかりやすい「なんかヘン」アクセントを抜きにしてもですよ。
・あと、おれが「げろこ」ちゃんがスキでスキでたまらないことを抜きにしてもですよ。

・なんつーかな、全身全霊をこめてほがらかを描いてるってことにヘンな凄味が生まれてるんですし、その「味」は上質だけど、上質で片付ける以外のなにかなみなみならぬ覚悟とかチカラを感じさせるんですよ。まあ、「なんかヘン」な。

・このマンガ、けっこう昔ながらのマンガではあるけど、キャラの造形なんかは「今」ですよね。様々な「かわいい」女性キャラが登場しますが(半分は小学生ですが)、万能タイプの美人が1人もいなかったりします。昭和の委員長キャラといいますか。
・そいで、女子ばかりじゃなくて、オトコも多いし、犬も猫も多いし、バリエーション豊富。
・それらはまったく見失いませんしね。そして魅力的。

・結論。
・渾身のチカラをこめた上質のなにかヘンなほがらかドタバタ4コマでおもしろいなあ。
・あと「げろこ」ちゃんカワイイなあ。げろこちゃん、おれが大学時代スキだったさとこちゃんに似てるんだ。

オススメ

[Amazon.co.jp: ベルとふたりで 3 (バンブーコミックス): 伊藤 黒介: 本]




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2011年01月28日

「平凡倶楽部」こうの史代(平凡社)

「日本語のロック」
・本作を読み終えたとき浮かんだモヤモヤしたものはこのコトバで結実したので、それを手がかりに書き進めてみますよ。

・さて、本作。
・最大のポイントはオビにある小さい小さいコトバ「コミック・エッセイ」です。
・コミックエッセイは、最近、コミックの棚にいないよね。すっかり1ジャンルできて別のところにまとめてあります。
・もともとそういうマンガはあります。「王様のブランチ」において、文芸書部門でランキングするようなマンガ。たとえば、「ゴーマニズム宣言」。たとえば、「ダーリンは外国人」。「ぼくオタリーマン」「だめんずうぉーかー」などなど。
・別にコミックエッセイじゃなくても、「あたしンち」とか「毎日かあさん」なんかもそうだですね。
・これらのコミックと、コミック部門で集計されるものとのちがいは正直なところわからない。もっといえば、成年コミックや、アンソロジー、同人誌なんかもランキングで表したらどうなるんだろう?って気がしないでもない。ま、オリコンの演歌ランキングとかと同じかしらね。

・そういうこととは別の差異が本作にはあります。それを読み解くポイントが「日本語のロック」です。

[日本語ロック論争 - Wikipedia]

日本語ロック論争(にほんごろっくろんそう)は1970年代初めに起きた日本語とロック音楽の関係性についての論争。別名・はっぴいえんど論争。

・へー、はじめて知った(おいおい)。

・えーと、おれの解釈というかフォルダに入ってることは、日本語は1音1文字だからもともとの英語の歌詞をのせていたロックと相性がわるい。そのままの内容は歌えない、すなわちバランスが悪いということで、そのことに関しては上記リンクで内田裕也氏が指摘して以降ずっと内在してる問題ではあると思う。たとえば、ヒップホップだったり、洋楽にいっさい影響がない世代がロックをはじめたりしたら、ときおり蒸し返されていた気がする。インディーズ、イカ天ブームやら、ヴィジュアル系やら。

・まあ、ミュージックマガジンっ子だったんで、それを「問題」としていたのは、その周辺だけだったのかもしれないけどさ。

・結論としては、ロックの音は洋楽からいただいているけど、日本語の歌詞は、独自に発達していったんじゃないかなと。
・だからたとえば、ビートルズの日本独自の編集盤である「ラブソングス」という、「ラブソング」を集めた2枚組のベストアルバムをつくろうとするときに、日本側の選曲にNGが出たらしいんです。
「ブラックバード」なんかを候補に入れてたらアメリカ側で「そりゃラブソングじゃねえよ」ってNGがきて、たとえばカバーの「ワーズオブラブ」が収録されたりしたそうで。

・やばい。そろそろなんの話をしていたのかわからなくなりそうだ。

・本作はその「コミックエッセイ」を独自で解釈し発展させた、たぶん、極北の書ではないかと。「コミックエッセイ」って輪っかをつくってなかにいろいろと入れていったら、輪の端っこの線の上に立っていそうな気がする。すなわちそれ「最前線」。そういうことを書こうとして日本語のロックなんていったのよ。
・つまり、かなり既存のコミックエッセイに影響を受けてないと。

・コミックエッセイに関しては思うところがある。
・最近の文芸書コーナーにあるような1200円くらいのやつな。
・なんつーか、タイトルみただけでどういうことが書いてあるかわかる。たとえば、ココロの病になったのとか、妊娠出産で大変だったのとか、あちこちでひとり様をやってみたのとか、あちこち旅行いったのとか。表紙とオビ、あるいは裏表紙をみただけでどういう内容かがわかる。
・それでいてシンプルなかわいらしい絵で、デフォルメを効かせた表情やセリフ(動きはそうでもない→なぜなら描けないから)でおもしろおかしく展開する。それがどんなダークな内容でも。
・あと大事なのが作者=主人公が女性であることな。割合はどれくらいかわからないけど、100円賭けてもいい、女性のほうが多い。
・もともと書店には「女性エッセイ」なんて棚があるくらいで、そこのスペースをどんどん割り込んでいっている状況かと。

・これほどみかけるということは、一定数売れてる、すなわちニーズがあるからだろうと思うし、それについてどうということはありません。いくつかココロ震えるような名作があるし。
・けど、それが「コミックエッセイ」と全てみたいに思われるのは抵抗あるのです。

・たぶんに、吾妻ひでお氏がありきなんだと思います。それでいて、ギャグマンガ家のやっていた本編に楽屋話がまざるのや、少女漫画の雑誌連載時の余白をコミックになるとき埋めるためのマンガによるあいさつやよもやま話が「コミックエッセイ」の萌芽で、吾妻ひでお氏の「不条理日記」なる金字塔が立ち、その楽屋よもやま話がメインとなり、現在まで至るのでしょうか。

[こうの史代【平凡倶楽部】]

・本作、「コミックエッセイ」でありながら、「コミック」のところも「エッセイ」のところも限りなく独自の解釈で「これでもいいよね?(コミックエッセイだよね?)」みたいに広げておられる。
・もともとがWEB連載ということと、多分に担当編集の柔軟さフトコロの広さがすごくいい具合に作用されているのか、やりたいようにやられており、27回にタダの1回もダブりがないんです。なんのダブりかというと、内容、作風、表現法、虚実の割合です。それでいて、こうの史代さん自身に起こったよしなしごと「のみ」を記してるわけです。まあ、プラス関連したいくつかの短篇も含めてあります。それがまたいいアクセントであり自然に収まっている。

・バラエティさは上記リンクに収録されている5回分の収録をごらんになってもおわかりいただけるでしょう。

第20回「東京の漫画事情」では、東京都の青少年健全育成条例の改善案についての「取材」。
第24回「曇天ゆけむり殺人旅情」では、日光の華厳の滝をみたときの感想と油絵。
第25回「アサキユメ」では、切り絵で、月がのぼってから夜が明けるまでを。サイレントで。
第26回「密かな休日」は平凡社にむけてだした2枚の「絵葉書」。
最終回「8月の8日間」その1その2では定点カメラで、広島の8月にあるイベントの観測を。

・これらすべてネタがちがうこと、それでいて「コミック」であること、「エッセイ」であること、そして「コミックエッセイ」であることですよ。ちょっとした奇跡みたいに、1冊にある。身の回りのささいな日常を描いたという奇跡。

「東京の漫画事情」は「コミックエッセイ」か?という疑問は浮かびます。本作内(いくつかの短編はのぞく)に活字はいっさいなくて、文字の多いところでも全ては書き文字だったりします。この回はその最たるものです。青少年健全育成条例の担当者に話を伺い、いろいろと興味深い発言を引き出しておられます。
「コミック」というと限りなく薄いですが、一応、「絵」もありますしね。

・副都知事が「傑作ならば規制しない」なんてことをTwitterでおっしゃっていたのも記憶に新しいですが、こうの氏のまごうことのない傑作「この世界の片隅で」は、「未成年」の女子が愛のない結婚をしてるので条例にひっかかるおそれがあるかもとして審議してもらうように申請しておりますよ。もし、どういう審査が行われているのかわかりませんが、この作品が条例に抵触するようなことがあるのかね?とか。
・というより、これを読むだけで、条例が非常にあやふやで怪しいことになってることがよくわかる屈指の資料になってると思いますよ。だって担当者が「わからない」連発だし、いろいろな横のつながりや連携がまったくないんだもの。当時がそうで、今はちがうのかもしれませんけどね。

・一方で「アサキユメ」は限りなく創作ですね。切り絵で月がのぼり夜が明けるまで、絵をつなぎ合わせるというエッセイ要素もコミック要素も少ないものです。月がのぼり、月が割れて玉子になり、玉子の黄身のハイライトがトンネルの出口になりという具合に。


・そんな数々の中、たぶん、最高傑作というかちょっとしびれあがるくらいすごいなと思ったのが「私の白日」です。2ページで前記の有象無象の「エッセイコミック」群に匹敵するようなことが描かれております。いろいろとびっくりします。その内容がユーモアって糖衣にくるんであることにも。

・全体的な内容にちょいと踏み込むと、本作は、前記の名作「この世界の片隅で」を2年の歳月を経て完成させたあとはじまった連載で、その作品自体が随所に影響を及ぼしております。

・連載はじめてすぐに「戦争を描くという事」でダイレクトな想いを吐露され、「二二年二月二日」では「この世界〜」が文化庁メディア芸術祭で優秀賞をもらったということでパーティーに参加される様子を覚書風に日記にされ、短編マンガ「なぞなぞさん」では戦争を描くマンガ家としてインタビューされるということを描かれてます(これは創作ってテイなんでしょうけど)。そして本書でしか読むことのできないあとがきにもそこんとこが描かれてます。
・その思いそのものにもすごくココロを動かされるし、こうの氏のココロを動かされた意見に対しても「なんで?」と思ったりします。

・そして、本作、それらの姿勢全部ひっくるめて、とっても「ロック」なんですよ。ロックのもっている攻撃性を感じます。それが「日常を描き続ける漫画家、こうの史代(オビ裏より)」によって提示されているのがスゴイ痛快なんですよね。
・ここしばらくのどこのなによりもアグレッシブで、魂の叫びを感じます。そういうあふれる思いをもって「日常」を描いておられます。ギャグも描かれております。すごいことですよこれは。
「すごい」エッセイコミックとは、「おもしろい」エッセイコミックとは、身内や自分がうつ病になったり、自分が出産したり、ガイジンと結婚しなくても描くことができるのです。

・本作1冊で、「コミックエッセイ」の可能性を何百倍にも広げたと思います。
・ときおりそういうエポックな作品は生まれます。前記の「不条理日記」しかり、「ゴーマニズム宣言」「しあわせのかたち」などなどね。それらが書いてある歴史年表に新たにくわえるべき1冊であります。
・でも、これらの作品とちがい、完全たるワン&オンリーなスタイルである、誰にもマネのできないモノなのだったりもするのです。こうの史代氏にしか描けないエッセイコミックです。いくつかの「部品」は模倣できるかもしれないし、使われると思いますが、「平凡倶楽部」というひとつの作品はこうの史代氏にしか描くことのできないのです

・それらはこうの作品全部をみてもそうだし(本作を経て、また「楽しい」マンガを描く決心がついたとおっしゃってますし)、2010年に発表された全マンガ作品においてもかなりの重要作品と思います。
・マンガ史のスパンをGoogleマップみたいに引き伸ばせば伸ばすほど光り輝いてみえるはずです。10年後50年後100年後。100年後にマンガがあるのかわかりませんけど。

・そして。

・上記のよく解らん文章全部いったんクリアして(貧乏性だから消さないけど)、ただ楽しい日常コミックエッセイとしても読むことができますしそれこそが本線ですね。それがまた信じられないくらいすごいのですが。
・こうの氏にしみついてるギャグセンス(「今日の運勢」で大笑いさせていただきました)と、相変わらずスゴイ絵をあらゆる手法であらゆる発想(「注目の新刊」の書評はすげえ)で、描かれてて、それらは「楽しい」に直結しています。

・あーと、弱点というか、弱いところもあるかな。これまでのこうの作品の随所に忍ばせてある艶がないことかね。こうの作品はどれもエロティックというか艶っぽさが漂ってるんですよ。本作はナイとはいいませんが少ないかなー。ま、自分のこと描くのに艶っぽさが出すぎるのもアレですものねえ。
・短編「古い女」の最後の笑顔とか、「四月の雪を追いかけて」のお母さんのうなじとか?あ、でも、萌えもありますね「聖さえずり学園」。
(「聖さえずり学園」読んで、「マジで萌え4コマ描きませんか?」ってオファーきたんですよ的な笑い話もありそうだなあ)

・こうなってくるといよいよ自慢話になりますが、同人版の「こっこさん(こうの史代氏を知る最初の1冊として最適)」の感想をWEBに書いたら公式サイトの掲示板にリンクされて「もっとわかりやすくほめてくれ」とコメントをいただいたことはすごく誇らしいことになるんだな。

・どうだいいだろう?

・そしておれはこれからも自慢したいので、こうの氏はどんどんステキな作品を描いていただきたいなと思います。「おれはあの人間国宝のこうの史代さんにコメントをもらったことがあるんだ」って孫なんかにいいたいから。

オススメ

・もう、こうの作品は全部そうなりそうな気がするなあ。ゴルゴ13みたいな社会派クライムアクションとか、週刊少年誌の海賊の少年が主人公のバトル作品描かれてもスゴイの描きそう(絶対にお描きにならないと思いますが)

・カラーページ多数の、とても丁寧な作りになっております。そうなると手に入りにくくなる可能性も高いということなので、気になった方はぜひ早いうちにお求めを。

[Amazon.co.jp: 平凡倶楽部: こうの 史代: 本]

[Amazon.co.jp: こっこさん: こうの 史代: 本]
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2011年01月25日

「真昼に深夜子」2巻 宮田紘次(エンターブレイン)

・本作は永島慎二の「柔道一直線」だよな。

・と、マンガマニアっぽいことをいってケムにまこうとしましたが、実はおれは「柔道一直線」どころか、永島慎二氏の諸作品もあまり読んだことはないのでした。

・永島慎二氏は「漫画家残酷物語」や「フーテン」などの当時の若者にビリビリくるマンガを描いておられて、月刊誌週刊誌の少年漫画の商業主義をバカにされており、「こんなものはおれにも描くことができる」って実践のためにド少年漫画である「柔道一直線」を描いたってエピソードを思い出してあてはめてみたんですね。
・このエピソード自体もちょいとあやふや。

[「ききみみ図鑑」宮田紘次(エンターブレイン): ポトチャリコミック]

・話題になったみたいであちこちで平積みにされている「ききみみ図鑑」。
・2巻の帯にも「[ききみみ図鑑]が話題沸騰中、新鋭・宮田紘次の最新刊!」というコピーがありました。
・すなわち、宮田紘次氏の「本線」が「ききみみ図鑑」のようなモノで、本作は商業主義っぽいってアプローチで描かれた印象。。なんつーか、表紙の「はしゃいだ」感じがとくにそう
思わせるんだよな。コミックの表紙も各話の表紙も。

・んまあ、こういう昭和のもう廃れ果てた古臭くも青臭い、えーと、だから、青カビが生えたような価値観を引っ張り出すような、懐かしさ「も」、宮田紘次氏の作品には感じられる。それだけではないです。念のため。

・現在、そういう視点はナンセンスですわな。なにが商業主義だってーの。んま、それはおれが10代じゃないからそう思うのかもしれませんが。

あらすじ。
・女子高生真昼さんが、幽霊の深夜子(みよこ)さんと、契約をすることになります。神様の出す指令をこなしたらスタンプが1個。カードがいっぱいになったら願い事が叶う。

・この話。1巻のAmazonのレビューにもありましたが、すごく手垢にまみれた設定です。過去ボーダイなジャンルでボーダイな数の話が紡がれているハズです。
・なぜならマンガにむいたよくできた設定だから。えーと、「商業主義」の。

・マンガにむいた設定は、キャラがわかりやすく、柔軟に展開が変えられ、それでいながら明確なゴールが定まっていることです。

・ゴム人間、三刀流などの個性的な仲間と、なにが起こるかわからない世界で、ひとつながりの財宝を探す。
・素人ながら演劇の天才が、親が1流女優の娘と、切磋琢磨し、幻と呼ばれた最高峰の演劇の主役を勝ち取る。

・な?

・キャラ設定と、目標設定が決まれば柔軟に対応できる。
・腕っぷしが強いショートカットの貧乳の真昼と、メガネでクールで頭脳明晰でいてちょっとミステリアスな深夜子のコンビが、巨乳の先生として潜り込んでいる神様が気まぐれにだすさまざまな指令を果たす。

・迷いネコを探す、恋愛成就させる、メイド喫茶のアルバイト、野球部の助っ人、犯人探し、演劇部の助っ人などね。
・本作、2巻で完結してますが、この「指令」はいかようにも伸ばすことが可能であることはわかります。指令の数だけいろいろと展開があることも想像がつきます。
・こういう学園を舞台に「いろいろ」やるってのも、ルーツは「ハリスの旋風/ちばてつや」あたり、あるいはもっと前からある設定です。

・でも、最近はあまり使われてないところと思うんですよね。だから、余計に昭和な感じが。
・そこいら、作者も重々承知してやっておられますね。1巻はそのオマージュみたいなもので、ラストの深夜子のセリフがすべてを物語っておられます。

・そいでね、1巻はちょっとギクシャクしてる。キャラを動かしきれてない感じといいますか。とくに最初のほう。だから、真昼の指令をやる動機づけや、深夜子のミステリアスなところがなんだか逆に鼻につくというか。
・実のところじっくり読むと細かい仕掛けやネタが散りばめられている。自分のいったセリフが2巻で帰ってきたりとか。あのキャラが、実はこうで、この行動には意味があってとか。作者にしてみればもっとじっくり長くやりたかったのかなと思ったり。
・2巻、どの時点でそうなったのかわかりませんが、だいたい1冊分、とにかく終了にむけて大疾走します。1巻での仕込みが花開いてなおかつこれでもかこれでもかと畳み掛けていきます。

「ききみみ図鑑」の「視える音」も学園祭のシーンが印象的でしたが、さらに上回り盛り上がり「さびしい」学園祭シーン。そして祭りが終わるわけですよ。
・こんな学園祭の空気、「現実」か映画「翔んだカップル」のモグラたたきのシーンでしか感じがことないよ。ここがもう圧倒的におれの琴線をかき鳴らす。

・作者、映画スキでそういう暗喩とか、おれにはわからないパロディや引用をたくさん散りばめられている感じがします。本作は作者の引き出しの多さを知らしめた作品ですね。解説したいところが1番ネタバレになるんだよなあ。惜しいなあ。

・おれはいいマンガを読むと実写映画化の監督したくなる癖があるんですが、本作に関しては作者に譲りたいです。非常にいいアングルと「描写」で随所に電撃が走りますね。しかも、マンガ的にも実写映画的にもナイスなところがあるという。たぶん、1巻のギクシャクもそこにも原因があるんだと思う。

「ききみみ図鑑」のときも感じてましたが、宮田氏の画力はすげえよ。しびれるくらい丁寧でハデで動くよ。キャラもカメラも。でも、だからか、描きすぎている。
・過信されてるわけでも謙虚なわけでもなく、逆に不十分と感じてらっしゃるわけでもないし、「ジャスト」の位置を探っておられますが、うますぎる故に少しづつ「多く」描きすぎてしまってる。だから、軽くて手垢にまみれた設定じゃトゥーマッチになる。そういう現象が起こってると思う。
・話と絵にはバランスがある。釣り合うことが大事。上記の商業主義云々はつまりそういうこと。「ききみみ図鑑」のようなノリ、ふさわしいコトバとは思いませんが便宜上「文学なノリ」に彼の絵は釣り合ってるように思える。それが「真昼に深夜子」だとトゥーマッチに思える。
・ま、1巻はね。2巻は宮田氏の画力と才能がないと描けないすばらしさと思います。なんど読んでもココロが震えるよ。なんど読んでも発見があるよ。

・1巻はじめ、がさつで、暴走族のリーダー2人をのして子分(勝手に慕われてる)にしてクラスメイトはアンタッチャブルな存在で殺伐としてた真昼さんが、さまざまな経験のあと2巻後半からあきらかに顔つきが変わってくるんだもんな。それは連載における画力向上とかそういうんじゃなくてあきらかに意図的に。そしてそれがすごく素直に受け入れられる。自然だから。スムーズだから。

・そもそも、宮田氏の絵も不思議なノリですね。「現実」を消化されてる絵ではあるし、その際にいろいろなところを経由されてるんだけど、村野守美氏や坂口尚氏あたりの昭和の短編の名手による影響が濃い感じがします。とくに女体描写。なんだろう、痩せててチビな真昼さんでありながら、「うしじまいい肉か!」ってくらいもっちりしたお尻。下腹もリアルに張ってるよなあ。もちろん、胸もリアルなタレ具合で、大きいヒトにはきちんと重力がかかってる。調べたら東京造形大学を出ておられるそうでなるほどと。ただ、「古い」ワケではないんだな。そこが不思議。きちんと21世紀のマンガとしてそこにある。あと、エロいわけでもないわ。そこはどうなのかと思ったりもしますが。だから、そこに目がいくけど、邪念に惑わされることないですよ。あと、エロシーンはパンツみえたりの「サービス」って程度なので、カ、カンチガイしないでよね。

・2巻で終了してます。作者や編集の本位だったのかどうかわかりませんが、とにかく、ムダがなくて全力疾走で駆け抜けていくような「いい話」で、長い短編みたいです。
・正直なモトもコもない感じで書くと、1巻ちょっとイマイチと思ってもガマンすれば2巻でガツンと感動できるよって。
・で、宮田紘次未読の方はまず「ききみみ図鑑」からはじめられたらいいんじゃないかと。

・おれは彼女らの涙に何度泣かされてるんだろう。これを書くにあたって読みなおすたびにジーンときている。

・あと、「柔道一直線」買っておくべきかなあ。

オススメ

[Amazon.co.jp: 真昼に深夜子 1巻 (BEAM COMIX): 宮田紘次: 本]
[Amazon.co.jp: 真昼に深夜子 2巻 (ビームコミックス): 宮田 紘次: 本]

[Amazon.co.jp: 柔道一直線 (第1巻): 梶原 一騎, 永島 慎二, 高森 篤子: 本]

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2011年01月15日

「食の軍師」泉昌之(日本文芸社)

・泉昌之30周年記念単行本だそうです。もうそんななるのか。
・とはいえ、デビュー単行本「かっこいいスキヤキ」は1983年ですね。ファミコンと同じ年なんだ。
・おれは、泉昌之名義より原作担当であるところの久住昌之氏を知ったほうが早いと思うのです。
・角川書店がだしていた雑誌「バラエティ」にコラムを書いておられたような。昨日の残り物をいろいろとアレンジしてるうちにワケがわからなくなるというものだったかな。そして、泉昌之名義のデビューが「かっこいいスキヤキ」、久住昌之氏が有名になった「孤独のグルメ」「花のズボラ飯」など、久住氏はいくつかある引き出しでもやっぱり「食」はかなり大きなウエイトを占められているしカンケイあるのですねえ。
・そもそも久住昌之名義の1st字の本が「江ぐち」ってラーメン屋への思いをよでた本だったよなあ。
・泉昌之名義でも食関連の本が多いです。

・本作もそう。
・読んで最初に連想したのはバナナマンの日村氏です。貴乃花の子供のころのモノマネで有名になった芸人さんですねという説明ももはや不要ですね。バラエティに欠かすことのできない存在になってます。

・本作、泉昌之氏のデビュー作からのキャラ・本郷をもってきた軍師シリーズがメインです。
・本郷が外食をたのしもうとする。そうするとパーカーの男が現れる。彼が「イキ」な注文をする。それにライバル心をいたく刺激されて、負けじといろいろと対抗する。それを三国志の孔明の策などにみたてる。でも結局敗北を感じてうなだれる。

「おでんの軍師」では、しょっぱなに「大根、コンニャク、ごぼ天」をたのむパーカーにライバル心を刺激され、「あいつと同じものをたのむと負け」って自分ルールをしいて、それに対抗すべき「ハンペン、玉子、ちくわぶ」をたのみ「白三形の陣で勝負!」なんてひとりごちてるワケですね。
・だいたいこのパターンでやきとり、寿司、日本ソバなどといき、ついに「焼肉」では差し向かいの勝負になり、最後には泉昌之1stコミック「かっこいいスキヤキ」の「夜行」よろしく「弁当の軍師」になるわけです。いっしょに旅行いくんだよ。つまり仲良しになってるの。まあ、本郷のほうはずっとライバル心メラメラ燃やしてるのだけど。

・そう、このシリーズの最大のポイントは2人ってことなんですよ。「孤独のグルメ」にしても「花のズボラ飯」にしても、「おひとり様」だったわけです。それが2人で食べる。しかも、それが「バトル」になっている。
・実は超画期的なんですね。
・つくる方のバトルはあるけど、食べる方のバトルなんかこれまでなかったから。あー、まー、大食い選手権的な、フードバトルなマンガはあるんでしょうけどね。

・その視点でいうんなら、たとえばデビュー作「夜行」では1人で食べてるけど、その図式は、弁当との戦いだったわけです。vs弁当ね。いかにダンドリよく美味しく食べるか。そのおかずの順番をさぐりながら食べると。ま、最終的に大事に温存していたカツが玉ねぎのカツで惨敗してしまうわけですが。

「いかに美味しく食べるか」

・これが基本テーマです。こうすると本作も「夜行」も「孤独のグルメ」他作品も同じになりますが、本作や「夜行」はそれを競技やバトルの位置まで高めているところが画期的なんですね。「より美味しく」って感じで。んま、それがつまりバカらしいんですが。

・だって「別に食べたいものを好きなだけ美味しく食べればいいじゃないか」って思うし、そういう視点を持ったらこの本郷のやってることはただただ滑稽だからね。
・実際、パーカーオトコにも「どうでもいいじゃん」的な諌められ方をしてますし。

・ここでバナナマン日村氏に登場願います。
・彼は、相方の設楽氏や、第3のバナナマンといわれている盟友でありブレーンである放送作家のオークラ氏などの、グルメに囲まれていて、打ち上げなどで彼らの立ち居振る舞いや注文のチョイスにすごくコンプレックスを感じてます。
・たとえば、設楽氏がいいタイミングで焼き鳥屋でオクラをたのむ感じに「イキ」とか「かっこいい」って思うのですよ。
・たとえば、夜通しライブの稽古をやって明け方「軽くさっぱりしたもの食べようよ」って大戸屋にいってみんな朝定食みたいなものを注文しているのに、ひとり「和風ハンバーグ定食」をたのんでいることに引け目を感じるのです。「でも和風にしたよ?」なんてギャグにまで昇華してはいるんだけど。
・で、それに対抗して、「冷やしトマト」という金脈を発見し、いっとき雑誌やなんかのインタビューにすら「最近冷やしトマトにハマってる」なんていって、逆にバカにされたりね。

・食事において勝った負けたってのはわりにあるんだろうけど、同じルールのもと、同じ店で、「試合」にするのっていかにもオトコですよね。孤独のグルメ風にいうと「ソース味って男の子だよな」ってか。ソース味のバトルですよ。
・日村氏と久住氏は同じものがあるし、これ読んで「あるある」と思ったおれも同様です。
・実際、本郷にしても美味しいものを美味しく食べて満腹になってるんだからね。ただ、パーカー男に負けたって点だけひっかかっているわけです。

・こういうところは大事ですよね。

・本作、この一点のみで、展開してるところがすごいんですよね。実は、このやり方、相当店や展開が限られてきますからね。
・まず、ラーメンだけって1品しかない店はできないでしょ? 逆にファミレスみたいなメニューが多岐に広がりすぎるのもムリ。ああ、まあ、ホテルの朝バイキングなんてのもありましたけど。
・そこいらの「調理」がミゴトなんですね。1回の食事に軍略と戦略という名に変換したこだわりをくっつけて、なおかつ、本郷を上回るイキな立ち居振る舞いをパーカーオトコにさせたりね。
・それらを最終的にバカらしいって位置に落とし込んでいる。
・その原作をあうんの呼吸でマンガ化している和泉晴紀氏がまたすばらしい。「夜行」のときの劇画パスティーシュ的なアプローチから完全に和泉晴紀のそれになっている絵が映えるわけよ。これが30年の味わいだねと。つーか、ハラが減るよ。

・実は「孤独のグルメ」も久住流のギャグマンガではあるんだよなとか。

・ともあれ。30年おめでとうございます。40年に向けてがんばってください。

オススメ

[Amazon.co.jp: 食の軍師 (ニチブンコミックス): 泉 昌之: 本]



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2010年12月24日

「斬り介とジョニー四百九十九人斬り」榎本俊二(講談社)

・1回目は圧倒される。
・読後、空気が漏れたような笑いがしばらく続いた。おれはなにをみたのだろうと。過ぎ去った嵐のあと荒野となった畑を前にしている農夫気分で。

・2回目は爆笑した。爆笑というのは大勢で起こすものってのが正しいそうだが、おれの心情としてはこれが正解すぎるのでこれでいく。随所で爆笑した。

・3回目は感嘆する。ただただすげえと。細かい隅々に宿ってるモノを鑑賞。

・4回目は今。そう、ポトチャリコミックを書いてるのです。最近はこういう熱量のものに触れたときにしか書けない不感症ジジイだからしょうがないのです。本作は書かせる熱量があります。

・もともと「えの素」、さらに以前の「ゴールデンラッキー」でも、短篇集の「enotic」でもものすげえアクションを描いておられ唸ってましたが、今回、ほとんど描き下ろしのような体裁で100ページオーバーの全編アクションです。唸りっぱなしで声が枯れました。

・かなり意識されて無駄な要素を抜いておられます。だからあらすじはスーパーシンプル。

・2人のおサムライさんが、囚われの身となった村娘を救出するために山賊一味に乗り込んで全部切り刻む。
・100pのうち切り刻んでないのが数ページという感じです。

・もともと殺害などの残虐描写は、氏の十八番ではありますが、メインを4コマやショートに振っているために描写はどちらかというとシンプルなものでした。ところが本作は血しぶきまくりの劇画タイプの描写でなおかつ大ゴマです。

・あらためて「榎本俊二」というヒトの唯一無二の絵のウマさを思い知るのです。
・100ページただチャンバラしているマンガを面白くするために必要なものはなにか?という問題に対する模範解答は、「上手く描くこと」ですよ。
・そして「上手い絵」について考えたり理屈をこねるってパターンを用いなくても今回は大丈夫なのです。答えが1行目にあるから。
・圧倒的なんですよ。

・人物描写というか、身体描写に長けておられる作者のスキルが大爆発しております。

・おれが定義する「絵がヘタ」は、「なにが描いてあるかわからない」です。
・デッサンが正しくても、書き込みが細かくても、CGバリバリでも、絵をみて必要な情報が入ってこない場合「ヘタ」とします。マンガの絵は記号。記号がわからないのはケアレスミスといっしょですよ。テストだったらバツ。

・本作はその真逆ね。まったく頭を使わなくてもそこに起こってることが容易に理解できるし、すごいアングルや描写テク、氏が映画スキということを想起するようなストップモーションなどが多用されてますがそれになんのエクスキューズもいりません。

・読んでないヒトのために1部シーンを字で書いてみます。絵を思い浮かべてみてください。

(どっちが斬り介でジョニーかわかりませんが便宜上表紙キャラを斬り介として)
・斬り介が剣をかまえてる敵の前をモーレツないきおいで駆け抜けていく。駆け抜けた先には首が飛んでいる。
・だけど、ひとりの敵が首の前に剣を構えていたために、斬り介の刀が折れる。
・それから数人は切られずにスカってしまい駆け抜ける。
・斬り介はその前にまいておいた剣をとりに戻り、数人おいたところからまた首を切りながら駆けはじめる。
・助かった数人は、斬り介が切ってるところをぼーっと眺めている。
・と、反対側からジョニーに、顔の半分でざくりと切られる。
・そのまま前に顔の半分が落ちる。視線は斬り介のほうを向いたまま。

・マンガ家志望で未読の方はこの文章をもとに絵を起こしてみてくださいよ。だいたい7ページになるかな。
・そういう感じで100ページです。

・読んでなにもないという意味ではすごくこれまでどおりの榎本作品ではあります。一生懸命にナンセンスです。今回は彼の特異な文章センスやネーミングセンスなどもほぼないです。ひどすぎるスプラッタマンガにありがちの死体インフレにもすぐなります。カタルシスみたいのもないです。投げ出すようなラストだし。
・あと、読んでためになる小学館的なうんちくもないですし、歴史考証なんかもないです。細かいネタにファンなら「俊二ったら〜」ってニヤリとするシーンやパターンがありますが、それも目当てにするというものではないです。

「すごいものをよんだ」というもやんとしたモノは確実にココロに残ります。確実にです。そしてこれはほかで得難いかなりな独自のモノと思います。

・最大のポイントはそれを得るために税別619円を払うべきかどうかってことですね。
・おれが女性で絵がかけるなら、斬り介とジョニーが恋人同士で都知事を斬り刻む同人誌を描くくらいホレこんでいるんですが。

・榎本俊二ファンはノータイムでマスト。
・いわゆる切株映画、もういわなくなってずいぶん経ちますが「悪趣味」や「テイストレス」が好物のヒトもイケるハズです。
「すごいもの」に飢えているヒトはいいですよ。「すごいおもしろいもの」かどうかは評価が分かれますが、本作の「すごい」は確実なところですので。

オススメ

[Amazon.co.jp: 斬り介とジョニー四百九十九人斬り (KCデラックス): 榎本 俊二: 本]


追記!
リンク先のAmazonのレビューが興味深かった。☆3つのヒト。

わかっちゃいるけど受付なかったと、どう考えても雑誌連載時に読んだ記憶で描いてます。そして、わざわざダメを出すくらい印象に残っていたということですね。
つまりそれくらいの吸引力と、選民性を内在しているということですので、オススメと書きましたが注意なさってください。
posted by すけきょう at 15:03| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月19日

「ききみみ図鑑」宮田紘次(エンターブレイン)

・音にまつわる8本の短編集。
・作者にとっては初連載作だそうです。おれは情報はまったくないです。
・表紙の教室の机に座ってギター抱えてる少女に見惚れて買いました。
・そして、その少女が登場する1話目にやられました。そういうことを書こうと思います。

・その前に。
・ほかの話もよくできております。音、音楽に、まつわる人間模様ということで、時代も舞台も設定も練られております。

「天使の声」。エレベータが故障で閉じ込められる。インターホンの応対に出た女性は意外な人物だった。
「秘密の合言葉」。お嬢様高校。校門から入るときに「ごきげんよう」というのが決まりになってる。それが恥ずかしくてどうしてもいえない生徒と、どうしてもいわせない先生の話。

・たとえば「天使の声」は、ほぼ2人の会話のみで展開するけど、女性側のまわりの描写と、声しか聞こえない女性に妄想をふくらます男ということで広がりをみせる。
・たとえば「秘密の合言葉」は、いつも叱ってる先生がもう辞めることを知り、夜に2人で校庭で話をするシーン。そこで「ごきげんよう」にこだわる意味がわかる瞬間とかさ。
・あと、まあ、みんな女性が主人公なんだね。みんなカワイイわ。

・そして1話目「視える音」よ。オビにもある「僕は音楽が嫌いだ」というモノローグからはじまる話。
・主人公(男)は音を視覚化するチカラがある。そしてそのことでバカにされたりイヤな思いをしてるから音楽をキライになった。
・ヘッドホンの音漏れからは痴呆の顔したひまわりがヘラヘラと笑いでて、選挙の演説のスピーカーからはタヌキが現れる。
・ところがあるとき、竜が背後を通り過ぎる。「なんだ今の?」と音のでどころをさぐると、女の子がギターを弾いていた。

・音楽がスキ。たとえば、CD買ったりDLしたりするくらいに音楽がスキなヒトは、大なり小なり音楽にやられた瞬間というのがあるし、それは多いほどステキな体験です。
・ベターなネタでいうと、ビートルズの「She Loves You」の「Yeah!」にココロを奪われたからギターを手にとったというかな。衝撃を受け衝動にかられるパワーを感じるワケですよ。
・本作は「音が視える」ということで、それをビジュアルで表していて、実にうまく「やられる」瞬間を描いております。何度見ても文化祭のライブシーン鳥肌がたちますよ。
・また、女の子がげじげじ眉のそばかすで天パーってのがいいんですよね。クセのある女の子がものすげえ音を出すって感じが余計にかっこいい。

・そして「けいおん!」の原作を2巻で買うのを止めた理由を考えるのです。あのマンガは「そういうこと」をキレイに抜いている。衝動も衝撃もない。んまあ、フェアな描写をさせてもらうと、2巻まではなかった。3巻4巻は知らないです。
・逆にとても画期的かもしれない。音楽に対してのリスペクトが感じられない音楽マンガなんてあまりないから。
・そもそも音が聞こえないマンガにおいて、音楽を題材とする際に、音楽のパワーが感じられないなんてのは愚弄もいいところとは思う。それはいくら設定でも、内容がおもしろいとか、合ってるとか、そういうところで理解はしてても根底の違和感はガマンならないわけですよ。
・もっとも、アニメ版は感じられたんだけどな。「ホンモノ」の聞こえる音楽が流れてるワケだし、愛生、歌うまいし。いい曲も多いし。
・だから、なんだったんだろうとは思うけど、抜けてるからこそ、アニメで思うさま「盛る」ことができたのが成功の秘訣だったのかしらと思ったり。もとがプレーンだから「自由にカスタマイズOK」状態?

・2話目「奪われた歌」はネタバレになるからあらすじを書くことができないけど、こっちも「音楽」というもののすばらしさを満喫できるようになっております。実は、個人的なベストは2話だったり。
・おれにとってちょっと収まり悪かったのは3話目「始まりのリズム」です。1話目の「音」の衝動、2話目のメロディ、そして3話目でリズムという感じになりたかったのでしょうけど、3話目はサイレントでさ。すげえ気合の入った上手い絵ではあるんだけど、サイレントで全編通すほどじゃないよ。「まだ」。たぶん、5年後、同じものを描かれるとみちがえるとは思いますけど。

・久しぶりに全編通してさわやかで気持ちのいい短編集を満喫しました。シアワセ。
オススメ

参照:
[Amazon.co.jp: 音楽と漫画: 大橋裕之: 本]

衝動と衝撃といったら、こちらもスゴイ。すごい絵なのに音が聞こえてくるしド迫力です。こっちのほうが「買う」「読む」で考えると敷居は高いけど、「ききみみ図鑑」を読んで「ここに書いてあるとおりだ」と思ったあなたは、このマンガにも同等のインパクトは感じられるはずです。これも音楽に対するリスペクト度合いがすばらしい。

[Amazon.co.jp: ききみみ図鑑 (ビームコミックス): 宮田 紘次: 本]


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2009年11月13日

「月刊哀川編集長」1巻 大見武士(少年画報社)

・いやね、「戦国妖狐」の3巻読んで感動して涙してね。「ようこそ世界に」ってすばらしいセリフだよなあとか思って、タンノウしたあとに、「じゃあ軽いものを」と思ってこれを読んだら、こっちでも涙したんだよな。もちろん感動して。

・いやもう、いろいろな「泣き」があると思うけど、本作の場合「可愛い泣き」だよな。哀川編集長が可愛いすぎるんだよ。もうなんつーか、リミッターはずれたところにある非リアルで、男の理想を追求したドリームガールなんだけど、久しぶりにハンパない可愛さを感じたし、その「可愛い」ってのがまた個人的感情に訴えかけるもの、もっといいかたを変えるならばフェチな嗜好によるものじゃなくて、もっとこう万人にヒットするような広い効果が期待できるのがスゴイなあと思ったんだよ。まあ、万人ったって当然ヤロウがメインすけど。

・あ、おれとしたことが、どういうマンガかも説明してないな。取り乱して構成ぐちゃぐちゃですいません。

・エロマンガ雑誌に新しい編集長がきました。メガネで語尾が「〜のだ」のクール女史といった趣でした。すごい有能ですが、エロ方面の免疫がなくて、編集5年目の主人公と「勉強」と称したマンガを読んでいるうちにカンケイを持ってしまいます。以降、上司と部下というカンケイながら、あちこちでいたしてるバカップルというお話でござい。

・作者はローションが登場するエロマンガ3部作と、他社で読者投稿のエロ体験マンガなどをお描きになっておられるベテランさんです。ただ、わりとずっと変化球なエロばかり描いておられるような気がします。だから、正直、本作もそういうタグイの、ひょっとしたら非エロのギャグマンガ?くらいに思っておりましたら、まさかの超王道エロコメがくるとは逆に意表をつかれました。
・そして、それまでの変化球が功を奏しておられるのか、大爆発ですよ。
・なんていうか、ちゃんと踏まえているというか。変化球な話でも女の子のかわいさを表現できていた上手さを本作ではもっとド直球にしたといいますかね。

・最大の特徴というか、おもに80%以上は哀川編集長がカワイイことですよ。これにすべてを投入しております。だから、王道でありながらも、久しぶりに「こういうの」読んだなって気がしたりね。
・まだ1巻で今後展開があるでしょうが、エロ方面のバリエーションがまたいい意味でなくてね。アブノーマルなプレイになるでなし、複数登場するでなしね。
・主人公にメロメロで、なんでものぞむことをするし、一途で、やや素直クールですが、やっぱりいろいろ恥ずかしいってなんつーかストライクゾーンをズビシッと投げてきたのがすばらしいのです。

・ほかに示しがつかないから2人のカンケイは秘密にしようということですが、つい弁当を作ってきたり、上司と部下でも「たまたま」帰りの電車がいっしょになるなら不自然じゃないだろうって待ってたりね。

・いやもう作者自身ずっと彼女をメインにした話がやりたかったそうで、そのあふれんばかりの愛情ですごくキラキラと輝いていてその可愛さに感動するんですよ。

・劣情も当然ありますけど(基本そういうマンガですし)、可愛いという感動もなんですよ。そっちも同時かそれ以上に湧き上がる。「可愛いなあ」って。いつものおれが使う「カワイイ」じゃなくて「可愛い」なんですよ。「愛す可し」存在なんですよ。
・もう、彼女がこのマンガに「存在」するだけで成功だろうと。

・とくにたまらないのが5話かな。もともと編集の才能がものすごい哀川さんが本格的に手がけた回がすごく売れる。しかも、担当作品がのきなみ人気投票の上位を独占。
・表面上はクールだけど、実はすごくうれしくて主人公の前ではしゃぐ。でも、主人公の担当した作品は下位。で、怒ったあまりに半レイプしそうになるんだけど…って感じか。そのあとがすばらしいね。

・エロ系と萌え系はとかく「蓼食う虫も」や「あばたも」的な状態になりがちで、こうやっていろいろと書くのは難しいけど、哀川さんが可愛いことには自信があるぜ!と思ったイキオイで書いた後悔はしてない(的なテンプレを書かせるほど)。

・と、この手のドリームガールに愛情を注ぐことができる仲間にはオススメしておきますよ。

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2009年09月28日

「P.S.アイラブユー」谷川史子(集英社)

・気がつくと谷川氏の新刊はまちがいなく買うようになってる。理由はシンプルで「買わずにいられない」からだ。

・すばらしい短編集です。表題作と「Room201」という連作短編のエピソード1がとくにすばらしかったのでそれについてだけ書きます。
・どれくらいすばらしかったのかというと、あまりおもしろくてヤバイので本能的に読む手が止まってしまうほどですよ。そういう点ではホラーマンガよりコワイマンガですよコレ。

「P.S.アイラブユー」
・ドイツ語の翻訳をしているひとり暮らしの女性。
・1日に1回図書館に出かけるようにしてる。そうしないと引きこもりになるから。
・そこで、少年と出会う。子供が苦手な彼女だったが、すっかりとなつかれてしまう。
・そして母親と話すうちに、彼女は子供を育てている間、自分はなにをやっていたのだろうと思い悩む。自分以外の誰かのために走ったり一生懸命になったことがあるのか?って。
・後編では、少年の母親視点から描かれます。彼女は少年の初恋になるわけですね。でも、彼はここのコじゃないからいってしまうわけです。初恋と別離になるわけですよ。

・で、ちょっと実験的なことをこれからしてみますよ。本作のネタバレを書いてみます。

・ネタバレを忌み嫌ってる方がいらっしゃることは承知してます。でも、します。

・この少年は10年前彼女にプロポーズした元彼のコだったのです。

・さあネタバレしてしまいました。あんまりにもタメがなくてビックリしたでしょ?
・このネタバレ本作の魅力を髪の毛1本ほども下げることはないのです。

・もうそこに至る前にすでに感動の嵐にまみれてるからですよ。ええ。それは後日談というかオチのようなものです。そしてさらにその後感動が待ってるわけですし。

・まあ、少年がカワイイことよ。いわゆる快活で無邪気な少年なんですけどね。男の子がほしいなと普通に思うわけですよ。おれが思うくらいだからショタの気がある女性はもうイチコロじゃねえかしら。
・と、まあ、あいかわらず、母親も翻訳家も、かわいらしく描かれてますしね。立場がちがう2人の女性を同じくらい美しく魅力的に描いてますからね。

・で、ビートルズの曲名と思っていた「ラブ」はすべてにインターネットのように広がっているなあと思うのですよ。

「Room201」episodo1:S区
・と、この「P.S.アイラブユー」の感動覚めやらぬ間にはじまる連作短編3作の1話目もまた女性の文筆業が主人公の話です。

・彼女はちょっとスランプ気味の作家をしております。彼女は合コンで知り合ったハチミツを売ってるくまのプーさんみたいな男性と同棲しております。
彼との生活は幸せなんですが、家事もやるようになってただでさえスランプの作家業が煮詰まって追い詰められて爆発するのですよ。

・と、まあ、こういう話は少女漫画でかつてようけ読んだ気がするわ。というか、ぶっちゃけ「P.S.アイラブユー」の翻訳家はそれでプロポーズを断ってひとりで暮らししております。

・本作すげえのはその後だったりします。予想外だったなあ。
・おれにとっては久しぶりに意表をつかれた物語だと思ったし、これ、実は描画によるところが異様に大きいですよ。それを描いた絵の巧さよ。
・というか、谷川氏にしか描けないよなあ。だって、怒涛の後半の展開がすべて「ジャスト」の絵だったよ。このコマのこの表情はコレしかありえないって絵しかなかったし、そうじゃないとおもしろさにつながらないどころか物語が破綻してたよ。

・これはネタバレしなかったよ。

・あとの2作品も並々ならぬ意欲作というか実験作ではあります。こっちについても語りたいところですが、それは読んでのお楽しみってことで。

・もう毎回渾身のフルスイングです。それが420円です。傑作です。オトクです。買いましょう読みましょう涙しましょう。

・描き下ろしあとがきマンガによると、有名な方に占ってもらったところ、追いつめられて血反吐を吐いたモノじゃないとおもしろくならないといわれたそうです。
・じゃあ谷川氏にはもうしわけないけどもうちょっと楽しませていただきたいなあとは思うわ。

・また次回作も買わずにいられないね。

オススメ

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2009年08月24日

「3月のライオン」3巻 羽海野チカ(白泉社)

・3巻にしておれのフラグが立った気がするんだわ。それは100%おれのせいです。だからいつもにもまして、以下の文章は「おれの場合」になると思われますのでアテンションプリーズ。

「ハチミツとクローバー」の作者の将棋マンガです。おれは「ハチクロ」読んでませんし、アニメも映画もドラマもわかりません。メガネの男が憎たらしいって情報を巡回しているブログでチラリとみたくらいかな。それが誰かはもちろんわかりません。
・いつか読んでやろうと思っていたら完結してしまい、じゃあってんでタイミングがあった本書を手にとったのです。

・これが1巻と2巻読んだ感想はあんまりいいものではありませんでした。なんだろう、メリはあるけどハリがない、コシはあるけどキレがないって感じでしたか。今となっては「過去」の感想なのでだいぶ忘れてしまいましたが。
・キャラクターは魅力的ですが、ストーリーを牽引するものとそのひっぱった先の目的地がイマイチみえないので、おもしろいんだけど、なんだかふわふわもやもやしてるなあと思ったのです。1話1話もいつの間にかはじまって終わってって感じで、なんだかキツネにつままれたような感じも記憶しております。
・それはそれでいいのかなと思い、1巻2巻と買っては、猫がカワイーとか、あんなかわいらしい絵なのにあちこちエロスだなあと思ったりして読んでいたのです。3巻もそれまでと同じだろうに「おれには」ガンときたのです。そうなると1巻と2巻も急につながり評価が高まりはじめるのです。圏外から赤マル急上昇状態になるわけです。

・ときおりそういう現象が起こります。逆は非常によくあります。1巻がおもしろくて2巻3巻とガックシっての。

・もちろん3巻までずっと買って読み続けていたわけだし、ある程度のおもしろさはおれ内にあったのはまちがいないのですが、これまでの感想をひっくり返して、「超おもしれー!」と窓を開けて田んぼに向かって叫びたくなるようなコーフンを覚えたのは久しぶりです。

・将棋の対戦がガーンときました。これが呼び水になったことはまちがいありません。
・主人公は史上最年少現役中学生でプロ棋士になりました。家も出て、自分には将棋(で勝ち進む)しかないとまわりを遮断気味に将棋にまい進しておりました。そして宿敵に挑む機会にたどり着きましたが、その前のノーチェックの棋士に「アタマをかち割られる」ワケです。
・そこいらの流れにずーっとココロが震えまくりです。身体のどこかにマナーモードにしたケータイをいれてそれがずっと鳴っているのかと思うくらいジーンときているわけですね。

・遮断気味の主人公がまわりの「おせっかい」に徐々にココロを開いていくのもステキなんですね。いろいろな意味で「井の中の蛙」が井戸から這い出てくるんですよ。この成長の過程がとてもラブなんですよ。
・日本語でいうと「情」でしょうかね。

参照: [3月のライオンの舞台へ 六月町編 - hachimitu blog]

・舞台が東京の下町をベースにしているのも「情」が健在というところがあるからなんでしょうね。

・主人公がまたプロ級の「かわいがられ」で、美人3姉妹やら、担任の先生やら、将棋のライバルやらに、たっぷりとかわいがられてます。「うらやましい」という感情もあるんだけど、ああ、これならおれもかわいがるよなあと思わせるような魔性っぷりも実は奥に潜めているのだと思います。
・こう、主人公の境遇を「かわいそう」と思うからかわいがるんじゃなくて、もうかわいがらずにいられないなにかを秘めているような。ホストクラブにいくとNo.1にはなれないけど、No.3あたりをずーっとキープしそうな感じがあるよね。

・さ、恒例の「ちょっとなにいってるかわからない」状態になってきてますのでそろそろ切り上げます。
・こういうこともあるので、マンガを連載途中で見切るのはmottainaiと思うのですよね。まあ、割合でいうとすごく少ないですが。

オススメ


・機会をみつけて「ハチクロ」もガーンといってみようかしらと画策中です。

・あ、あと、「ヒカルの碁」などと同様、将棋のルールわからなくても大丈夫でありながらも将棋コラムありってことになってますが、まあ、おれには将棋あんまりカンケイのないマンガではあるね。囲碁でもチェスでもペタンクでもおもしろさはいっしょだとは思う。

[ペタンク - Wikipedia]

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2009年08月23日

「友達100人できるかな」 1巻 とよ田 みのる(講談社)

・衝撃だった。

・宇宙人がきました。地球を侵略しますといわれました。それを食い止めるには友達を100人作れとのミッションが下ります。そして、36歳の小学校教師は気がつくと1980年に10歳の姿でいました。
・そして友達を作る話です。失敗したら人類滅亡。

・この設定がすごい。まったく水も漏らさぬカンペキさ。
・タイトル自体は有名な歌ですね。

参照:
YouTube - 一年生になったら
http://www.youtube.com/watch?v=Lmouubf2GME&feature=related

・ただ、それを実行すると考えます。いろいろと年代でちがうと思いますがおれのときだと、1学年4クラスでだいたい2クラス強。すなわち、同級生の半分と友達になるわけです。これはけっこうしんどいね。
・それをMUSTで「やらされる」のはさらに倍率ドンでしんどいでしょう。
・これまた個人差があるとは思いますが、この小3ってのも絶妙です。このころは友達カンケイが異常にユラユラしてるころですし、ちょうど、男女間のいろいろも表面化してくるという不思議なころ。これがもうちょっと上になると「そういうもの」として安定してくるころでもありますし。
・そういう「いつのまにか」を描くってのはすごくおもしろいし、そこで36歳のメンタリティが残っているというのがポイントなんですよね。「いつのまにか」を子供同士のなんとなくで片付けなくて、ある種、理詰めでいかないとダメになる。

・まったくもってムダがない設定。しかも、1から10までみんな「効いている」んだよ。ミッションも、宇宙人も、36歳のまま小3ってことも小学生教師も、友達100人ってことも、すべてが効いていてのおもしろさです。
・彼自体、間もなく出産する妻をおいているために否が応でも人類滅亡を食い止めなければならないし帰らなければならないって動機があるしな。
・実に緻密でよくできた設定に衝撃。

・1巻全5話、サブタイトルにそのころの名曲がついており、随所にレトロネタを織り交ぜながらも、友達作りに奮闘するわけですが、人生いろいろ、男もいろいろ、女だっていろいろ咲き乱れるのということで、攻略がちがうわけですよ。

・2話「危険なふたり」ではクラスで1番凶暴でひとりぼっちのガキ大将とコブシで語らうし、4話「ネバーエンディングストーリーのテーマ」ではSF好きの読書家で夢想家の少年と本気で「ごっこ」をすることで友情を勝ち取るわけですよ。

・ブレがないんだ。まだ、1巻5話でいいきることはとてもできませんが、上記の設定が絶えず「効いた」まま進行するのがまたおもしろい。
・こういうの、すぐにシャバダバになってしまうマンガ多いじゃないですか。絶えず、「友達」「100人」「人類滅亡」などのキーワードが物語りにからんでくる。

・そうしながらも、主人公は、学習していくわけです。友達になるには、本気でぶつからなければならない、対等に感情をぶつけあわなければならない、逃げてはならないとかな。誠意が必要とか。

・なによりも!毎話毎話理屈吹っ飛ばしたところですばらしい。基本1話で1人トモダチのペースで進行しているけど5人まで1回もハズレなし。いやハズレどころじゃねえな。あとがきマンガに即していえば全打球ホームランです。

[ポトチャリコミック: 「FLIP-FLAP」とよ田みのる(講談社)]

・大げさじゃなくて、このすごく気に入っている前作1作分の感動が1話毎に押し寄せてきます。いやちょっと大げさかもしれない修正。

・とくに、小3の妻に会いにいく話がステキ中のステキです。だーれもなにもなってないのに涙が出てくるってのはいいよねえ。
・トモダチとチャリンコでどこまでもいくってのも「スタンドバイミー」的でいいしなあ。

・と、キャラクターがだいたい気持ちのいいうやつばかりってのもそうとう高ポイント。まあ、これはとよ田みのるマンガではデフォルトだけどな。

・すばらしい。何度でも書きたいくらいすばらしい。2巻もどうなるか楽しみ。
・トモダチカンケイが弱まったらどうなる?とか、トモダチが増えるってことはすなわち「人気者」になるってことで、それがどういう変化をもたらすか?とか、トモダチ同士のモメゴトはどうする?とか。
・今のところ同級生ばかりだけど、上級生下級生とトモダチになるという展開も十分に考えられるよな。
・あと1巻最後の展開も今後にいろいろ影響ありますし。

・もうずっと応援したいくらいホレ込んでます。めざせアニメ化映画化ドラマ化。
「団地ともお」あたりといっしょに、日曜の6時と6時半のフジのアニメ枠を奪いとれ!

オススメ

・そして、ふと思うわけですよ。義務教育プラス高校3年ってのはトモダチを作るためにあったんだなと。
・つまり、小中高生全員がこのミッションに参加してるんだよなあ。おれももっとマジメにこのミッションに取り組めばよかった。

[Amazon.co.jp: 友達100人できるかな 1 (アフタヌーンKC): とよ田 みのる: 本]


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2009年08月22日

「ダニー・ボーイ」島田 虎之介(青林工藝舎)

・シマトラこと島田 虎之介氏の新作を読むときはいつも緊張します。
・2年に1作のペースで発表される作品はどれもこれも圧倒的な完成度を誇り、おれを魅了し続けてます。
・ただ、三ツ星レストランの最高級特選コースのようなもので、こっちも脳みそをフル回転させ、精神をフラットの状態に落ち着けてあたらないといけないのです。正装で正座って感じで。
・どうしても身構えてしまうのです。そしてやや恐怖もあったりするのです。「おもしろさがわからなかったらどうしよう」って。
・それはいつも杞憂であることもわかってます。読み終えるころにはおもしろさに安心し、2回3回と読むたびに発見や感動があらたにみつかります。

・本作もはたしてそうでした。そして、もうすでにまだシマトラ氏のアタマの中にしかなさそうな次回作に思いを馳せたりするのです。たぶん、それはシマトラ氏が作品を発表されるたびに続くのだろうと思われます。

・それらも含めて、「シマトラの新作を読む」という儀式のようなものですね。

・では、本作「ダニーボーイ」について書いていきます。

・幻と呼ばれたミュージカルでトニー賞を取り損ねた日本人の生涯を、彼と一期一会った女性のおぼろげな記憶とともに語るという短編連作です。

・前作「トロイメライ」では1台のピアノの数奇な運命を追いかけておりましたが、今回は男です。というよりか歌なのです。彼の歌声です。
男の記憶はすべて歌とともにあります。

・生まれたばかりのうぶ声から彼は「歌ってた」のです。
・そして歌とともにあった生涯は彼と歌を1セットで人々の記憶に刷り込まれている。

・それらがホロリとこぼれるように思い出されるのがいいんですよね。たとえるなら蚊取り線香の灰が落ちる感じかしら。ふとそこに歌っている彼が浮かび上がる。

・作中「風の又三郎」のインスパイヤがありますが、窓からそよいでくる風のように彼の歌が脳の中に流れ込んでくるわけです。そしてその歌声のみ残してまた彼女らの記憶から風のように消えてしまう。

・藤井フミヤ氏がおっしゃられていたように「歌はみえないしさわれないのに感動するからすげえ」というステキなアレのように、みえないさわれないものを、同じようにみえないさわれない、「思い出」とリンクさせて、1人の男のみえないさわれない生涯を語るってのはすごくステキですよ。
・んー、ロマンチックです。

・あらゆる年代の女性の耳をとりこにした彼の歌声を想起しつつ、たとえば本作が1本の映画になったとして、どう聞こえるか、どう音楽は鳴るのか?と想像しつつ聞くとすごくステキだと思うのです。

・たとえば、ファーストシーン。
・1p目、滑走路に初老の男が歌いながら歩いている。その歌声。
・2p目、それを管制塔から眺めている女性。管制塔から歌声はちがって聞こえるわね。
・3p、プロペラがまわって離陸準備の指示を待つ状態。もうここでは歌声は聞こえずエンジンの音と、管制塔内のノイズ。
・そして2人が無線でやりとしたあと、

「オーケイ 離陸を許可します。ダニーボーイ」。

たぶん、このセリフにはなんのノイズもないと思うのよ。そいで飛んでいるセスナを背景にタイトルドーンですよ。で、本編がはじまりそこから毎話あるテーマ曲、1話目は「Come Sunday」が流れ、作者の思い出が語られはじめるわけですよ。

・曲の数々はド渋なものが多く、おれにはよくわかりません。ジャズや昔の映画音楽が多いですかね。童謡の「ちょうちょ」とか「フニクリフニクラ」もありますけどね。そういうのがわかるとまた一段と深みを増すんだろうな。

・そう、本作はあるミュージカルスターの生涯を描いたミュージカルになっているんですね。シマトラの最新作はミュージカルだったのですね。前作も音楽が重要でしたが、今回はさらに耳をすまして読むのです。そこで鳴っているであろう音楽を、そして彼の歌声を、想像しながら読むのですよ。

[シマトラWORLD、サントラ推奨! - 4310]

・ここですばらしすぎるサイトのご案内。YouTubeで各話の該当曲を紹介してくださってます。読んだ方は、ここをBGMにもう1度。まだの方はここをみて想像を膨らませてください。

・なんつーか、これまでの3作のようなダイナミックな!怒涛の!ってラストや展開はなかったのですが、このヒリヒリとせつなく、悲しい「ハッピーエンド」はずっと余韻が残りますよ。
・主人公・伊藤幸男の人生は、椎名林檎のアルバムタイトルにもあった「歌い手冥利」につきるんじゃないかと。

「やっぱり」いい作品でした。「やっぱり」シマトラはサイコーですね。「やっぱり」次回作もいいに決まってる。でも「やっぱり」読む前は緊張するけどね。

オススメ

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posted by すけきょう at 14:38| Comment(0) | TrackBack(0) | オススメコミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする