・女子高校生のほがらかな日常4コマです。
・この新装版の「新装」具合と、同じく [ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 2009年6月27日公開]の新装具合が、すごく2009年という感じがしました。
「新装」でも「リメイク」でもネーミングはなんでもいいんですが、こういう過去にあるものをあらためて売り出すという商売においての新しいカタチのような気がしました。
・音楽CDがすごく顕著ですが、なんども手を変え品を変え再発売されてます。音質がよくなった、紙ジャケットになった、ボーナス曲が入った、ボックスになった等、ファンはそのたびに「チッ!」と舌打ちしながらもせっせと買い足してました。
・それと同じ現象がマンガ業界にもあって久しいです。名作はどのバージョンを買えばいいのか迷うほど種類があります。手に入りにくい作品を読むことができるってメリットはそうとう大きいので邪険にすることもないんですよね。ただ、エロ系の新装版なんか、ひどいのになると短編集2冊くらいの中身を入れ替えてタイトルを入れ替えて、表紙描き下ろしにしてまったくの新作みたいなカタチとしてすずしい顔して売り出して、なーんか、読んだことあるなあって思いながらも途中で気がついてギャー!ってこともちょいちょいとあるので、あまりいいイメージを持ってません。
・基本、短編プラス、表紙描き下ろし、初出時のカラー部復活くらいじゃ買うことねえなとは思うことにしています。金は有限じゃないですからね。
・本作もそのつもりでした。だから新作描き下ろし分は掲載雑誌の「ゲッサン」買って読むことで対応しようと思ってました。
・ところが、ネット情報でかなり多くの場所が書き換えてあることを知りましたよ。そして気がつくと1巻が手に入らないくらい売れていると。その後再刷分を買い、以後は懲りて2巻3巻と取り寄せで買うという状態。書店も平積みの山積み状態。ほかの「新刊」に負けてないくらい売れてるようです。
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なんとゆーか、描いている方としては、昔を懐かしんで描いているというより、もうちょっと積極的な気分です。
あずまんが大王も連載の最初と最後では全然違います。
10年たった今、同じの描いてちゃいかんだろう、と。
[あずまきよひこ.com: ENTRY [あずまんが大王 補習編]]
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・よくある「もうあちこち直したくなってそれやると時間がいくらあっても足りないので恥を忍んでそのままで出します」って再発売モノでのテンプレをちゃんと直して実行してみたカタチなんですね。時間はちゃんと足りたわけです。
・だから、そういうイイワケ書いて新装版を出していたマンガ家が今後この技を使えなくて死亡することが確定しました。というか、ホント、出版社も作者もそういうところでちょっと誠意をみせる必要は確実に生まれたね。
・この感じが相当新しいし画期的だと思う。ついにマンガもセルフカバーの時代がやってきたなと思ったよ。よくアコースティックでニューレコーディングで往年の名曲を収録なんてのがあるじゃん。なかにはアルバム全部それってのも。あるいは、過去の演奏に今の演奏をくわえるなどのセッションですかね。オーバーダビングでもいいか。
・それをマンガできちんとやったワケですよ。
・手塚治虫氏の諸作品や「ガラスの仮面」が雑誌掲載時からずいぶんとカタチを変えてコミックになっているってのは有名な話ですが、1回単行本で出たものを新装版にあたって変えるのが、同じ方法のエヴァと相まってひどく2009年的だなと。しかも、それを「売り」にする感じ。手塚氏のそれなんかはわりに作者とマニアに向けての満足であるが、その効果範囲を相当広めた感じ。
・なおかつ、それが4コママンガというのがさらにスゴイ。
・書き直しは絵のみならず4コマのオチや印象や感触を変えるものも多数ありまして、4コマのうちの1コマだけとか、全部に変更があるとか、確認してないけど削除されたネタとか、再構成もひどく細かくしてあり、それらを「補完」するって意味で描き下ろしの16ページなどもくわえてあります。描き下ろし分を「補習編」としたのはだからエライ秀逸なんですね。
・そして最大の問題はその是非ですね。
・是です。
・そうなんだよこれが。大いに是。作者のブログにあったように受け取り方は読者それぞれだし、おれも当初「ゲッサン」の創刊号に描き下ろしが載った時点ではずるく保留気味ではあるけど非のほうだった。
(参照:ポトチャリポラパ/ダイアリー 「萌え変り」)
・ただ1巻読むと是にカンタンに変わりました。この「お直し」の労力とそれがちゃんと効果を生み出しているのをみて「前のほうがよかった」とはとてもいえません。そして実に大きなポイントはそこにもあったりするんですよ。
・前のと比較したくなるんだこれが。メディアワークス(現アスキー・メディアワークス編)版のとどうちがうか?って。
・ときおりあきらかにこのコマから書き足してあるなとか、オチをゆがめてあるなとか思えるところがあり、じゃあってんで原典にあたりたくなる。そして、別にメディアワークス版が絶版になったワケじゃないのがまた画期的なんですよね。そうじゃなくても105円とか安くはないにせよブックオフなんかでもカンタンに手に入りますしね。
・おれも近いうち何十回も読んだメディアワークス版と読み比べてみようかと思ってます。
・たぶん、その後の感想は「どちらもそれはそれでいい」になると思われます。
・そしてそう思えるところが「あずまんが大王」の特異なところですし、オンリー1なところです。
・だって、過去も現在も、発売して10年後に、新装版だからって、けっこう書き直してあるからって、読みたい買いたいって思う4コママンガってどれくらいある?というより1冊でも「ある?」
・これは「あずまんが大王」のクオリティだけではなく、うまい短さで終わっている、つづく「よつばと!」もヒット、アニメも名作(ついでにいえばサントラや主題歌は超名作)、今でもネットで語られるくらいキャラが愛されているなどのミラクルがたくさん重なってないとダメです。マンガの短さってのは大事だよなとおれはつくづく思うよ。長いととても書き直してられないしね。
・それは前記の「エヴァ」も多く共通点がありそうだよな。
・新装するにふさわしいモトのクオリティってのはあるよ。
・あと作者の情熱も重要だわな。
・そして「あずまんが大王」を新装版で出すことにGO!を出した小学館のアタマのよさを思う。本作は再発売するにもっともふさわしいものと思うよ。だって、「ノスタルジー」と「過去の名作の復習」という2つの理由以外の売りがある数少ないモノだから。
・実に2009年の「今」読むべきマンガだと思う。読んだヒト、読んだことないヒト、どちらも「今」読むべきだと思う。
・2009年は過去3年くらい振り返ってもいいマンガが多く出ている当たり年である気がします。それでも「あずまんが大王」の新装版の新装具合はかなり上位に食い込む重要事項だと思われるのです。
オススメ
・ザックリと新装版について話すと、より4コママンガらしくなったね。起承転結を目指し1ページに2本の4コマで2回笑わせようというココロミを強調している感じ。
・その分、いわゆる「萌え4コマの元祖」という作者がよろこんでなさそうなレッテルを払拭すべく、そっち方面は抑え目にした印象。
・顕著なのが3巻でのよみの柔軟体操のシーン。ストーリー4コマでよくあるパターンの最後のページだけ非4コマの大コマを使うやつ。あれがなくなって普通の4コマ2本にしている。そういうさっぱり感を出すことで再読性の高さをより高めようとした感じがします。
・あと、マヤと榊の出会いなどの、ショートストーリーにも「ちゃんと」笑いを入れようとしたりね。より隙をなくした感じ。そこいら別に萌えれば笑いはなくてもOKという昨今には、ちょっとだけトゥーマッチかと思ったりもしました。
・以下さらにgdgdと。
・ともが中心人物であるなとは思っている。彼女がいたからこそ「あずまんが大王」として成立している。かきまぜ役、進行役。そして凡百の女子中心萌4コマにはなかなかない、すばらしい「発明品」だと思う。
・さらに新装版で思ったことは、ともの幼馴染で腐れ縁のよみについて。
・よみは、根っこのところはともといっしょで、だからこそ波長が合い縁が続いていると思うのよ。
・でも、彼女は、OLや大学生にまちがわれる大人びた風貌や、アタマのよさ、くわえて親にもいろいろといわれてそうで、そんなこんながあり「いいこ」「おとなしいこ」を演じているし、本人もそれでOKだと思っている。でも、実は遊園地とか甘いものなんかの前では本来の自分が出るし、それをちょくちょく引き出してくれるともが好きなんだろうなあと思ったりする。その本人も意識してない「子ども」のところがすごくかわいらしい。
・新装版ではバランスをとるためかどうかわからんけど、よみを推していてよかった。かわいらしさを再発見し、やっぱりイイコだよなあと再確認した。
・いわゆる「嫁」でいうと、よみか神楽だよなあ、ぼかぁやっぱり。
・といまさら萌え目当てとかじゃなくてもいいんだけど、キャラを楽しんだり語ったりはこれから先もネットや実社会であると思うのでそういった点での「基礎教養」としても本書は必要だとも思うぞ。
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