2008年04月14日

「海街diary1 蝉時雨のやむ頃」吉田秋生(小学館)

・かなり久しぶりの吉田秋生でした。「BANANA FISH」以来ですかね。
・そして、相変わらず正面からナイフで心臓にサクリと刺さるようなおもしろさ。これってホメてるんですよ。正直に1話目の読後感想を語るとそういうことになる。そして、2話目、3話目で刺さったままのナイフでグリグリとされて絶命したのです。
・相変わらずカンペキで、相変わらずちょろくやられたオレ。

・神奈川県鎌倉に住んでいる3姉妹(2話目から4姉妹)の物語。

・家を出て行った父親の死を知り、葬式に向かう1話。
・次女の恋の行方の2話。
・4女のサッカーチームの3話。

・以上カンペキな話が3話つまってます。とくに1話目で表題作である「蝉時雨のやむ頃」がカンペキにカンペキを重ねたスゴさ。

・葬式のグダグダや、複雑な人間関係やら、問題をバシっとドラマチックに展開している。長女のカッコよさ、4女のけなげさ、そして(4女の血はつながってない)母親の描き方。とくに母親よ。こういう女性の描写は男にできないよな。その母親に対する51pと52pの長女の落差よ。寒気がする。

・で、この1話だけで、それぞれのキャラの奥行きまでばっちり把握できるんだよな。

・もう、ナイフをちらつかせながらゆっくり近づいてきて、「あ、ナイフだ」とこっちが認識し、なおかつ、そっと刺してきているのに、まんまと刺さってしまう。カンペキです。ほかの2話もカンペキです。おれがなにもいうことがないくらい。
・そう、おれが「BANANA FISH」以降、吉田秋生作品から距離をおいたのはまさにその「おれがなにもいうことがない」からこそなんですね。

・読めばおもしろい。もうこれは100%の確信をもっている。実際に、久しぶりの本作も何回も書いている下手な表現のとおりシャープにサクリとやられてます。
・だからこそ、おれがなにもいうことがない作品にはおれが居られないんですよね。なんかよくわからないでしょうが、はじかれている感触というかね。疎外感までいわないんですが。
・逆でたとえると、バトルマンガで血肉湧く男子をみてるときの「おもしろいけど、あんな(男子が)コーフンするほどじゃないよな」と思う女子って感じかな。推測ですが。
・いや「おもしろい」んですよ、たしかに。そして本作も含め大好きです。ただ、このスキのなさが息苦しいというか、自分のどこかに合ってないからこそのよそよそしさがあるというか、少女マンガでは往々に起こる感情です。いや、少女マンガのみならず、自分のテリトリーじゃない分野のものによく起こります。

・本作はそれにくわえ、作品としてスキがなさすぎるんですよね。あえていえば、「ロナウジーニョの肉屋さん」などのギャグにある70年代なニオイですが、それで逆に、「あえて」そういうノリを出しているのか?と疑念が湧くほどです。んまあ、吉田氏のギャグセンスのみならず、ルーツは70年代の「お姉さん」な感じはあります。

・勉強不足で知らないのですが、そう考えると、4姉妹が暮らす物語ってのはなにかベースがあるのでしょうかね。「若草物語」とか? いや、知らないんですが。

・姉妹はみんなかわいく描いてますよね。久しぶりの吉田絵は萌えっぽいかわいさもちょっとだけ入ってきたのかしら。その反面、デフォルメの崩しは、往年の少女マンガ風ってのがおもしろいな。

オススメ

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2008年04月10日

「狼と香辛料」1巻 支倉凍砂&小梅けいと(メディアワークス)

・ライトのベルのコミカライズですね。ライノベ、アニメで、マンガという順番ですか。ライノベもアニメもまったく知らないのでジャストマンガのみ読んだものと思ってください。

・豊作をつかさどる神様のような存在の賢狼のホロが、行商人ロレンスと旅をすることになる中世ファンタジー世界を舞台としながらも、ありがちな剣と魔法と魔物のモノじゃないのです。

・あまりに重厚な響きに驚いたってのが率直な感想。気軽にコートに入り140キロの球を合わせてあてたら手がものすごいしびれてるinバッティングセンターって感じよ。正直なところかなり油断してました。

・中世版、「スティング」といいますか、「ナニワ金融道」といいますか、「カイジ」といいますかね、メインを貫いている中世のマネーゲーム的な話がおもしろいんだ。

・銀貨の銀の含有量で儲けようって話です。そういうのがすごくわかりやすく、なおかつ、わかりやすいからって単純化されているワケでもなく(多少は単純か)、展開していくのに、知的好奇心が充たされていきます。

・そして、ホロのかわいさよ。おもしろい物語に、カワイイ女の子。すごくいい組み合わせじゃないですか。

・前記のとおり、ラノベ版もアニメ版もよくわかりませんが、コミック版のホロはすごくカワイイよ。それはすごくよくわかる。

・ポイントはニコ目といじわるそうな口元かね。
・半円のカーブを描いた線でもって、「笑っている」と表現する。ま、いわゆるニコ目ですが、これで、「萌え」を表現させたら日本人は世界より3世紀くらい先行している技術があります。
・1話の終わり、登場シーンのヌードのホロより、64pの服を着て笑顔を浮かべながら「これどうじゃ 似合うかや」といってるニコ目。143pの機転をきかせて毛皮を高値で買わせた儲けでぶどう酒を飲んでニコ目のホロのほうがガイーンとくるくらいのショックがあります。

・作画の小梅けいと氏は、「花粉少女注意報」という成年コミックを読んだきりなんですが、それらより本作のホロのほうが魅力的だとは思います。

・カワイイホロと、テンポのいい2人のやりとりが物語を推進させるための「旨味」とするなら、屋台骨や説得力などのダシやベースにあたるのが、背景や時代考証ですかね。これがまたすごくいいんだ。

・それが正しい中世世界なのかどうかはよくわからないです。ま、そんなこといえば、賢狼とかいないとは思うし。

・ただ、冒頭の景色に吹いている風を感じられたし、後半の市場のシーンではざわめきがたしかに聞こえてくる。つまりそういうところです。キャラが呼吸し、行動することができる「背景」ね。

・こういうところはうまくごまかしたり省略したりは可能ですが、本作ではわりと正面からぶつかってます。画面が「濃い」ですからね。マメに背景があります。

「キャラが今どこにいるか?」ってことを示すのが重要なマンガとそうでないマンガがありますから、背景をちゃんと描くことが至上とはいいませんが、個人的には重要なことですね。「描くことができるのに描かない」と「描くことができない」ってのはちがいますしね。

・ともかく、おれが原作者だとしたらすごくうれしいコミカライズって思ったりもしました。「すごくちゃんと描いてもらってる!」って。

・そして読者としては、上記のとおり、アニメ版もラノベ版もナシにいきなり本書でラッキーとも思いました。「アニメとちがう!」「原作とちがう!」って思わずに純粋に話と絵を楽しむことができましたからね。

・ということで、カワイイホロとおもしろい物語のマンガですよ。2巻も楽しみにしてます。

オススメ

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2008年04月04日

「インドへ馬鹿がやって来た」山松ゆうきち(日本文芸社)

・中学生あたりから、青林堂やらその周辺にかぶれはじめて、いろいろと買ってました。当時はヘタウマブームなんてのがありまして、そこいらがグイグイと出てました。
・その中で、何冊か山松ゆうきち氏の作品もつかんでいるとは思いますし、そういう系列にあっておもしろく読んだはずです。いうても四半世紀前ですし、覚えてません。

「インドで日本の漫画を翻訳出版!!

・このオビと、失礼ながら「なつかしいなあ」との思いで手にとってみましたらば、これが途方もないアナーキーなシロモノでございました。

「56歳」の「漫画家」で「英語」も「ヒンディー語」も喋ることができずに、「インドには漫画文化がないらしいからビジネスチャンス」という伝え聞きで、「単身」、インドに飛び込んで、半年間という顛末が本作です。

「そのあまりの無謀さゆえに笑える」

・このようにオビにありますが、無謀ではないですよね。「無」そのものですよ。持っていたのは、トモダチ漫画家からインドで出版許可をもらったマンガ原稿と、身ひとつですからね。徒手空拳もいいところですよ。

・で、ネタバラシにはならないと思いますが、失敗して帰ります。その後、「月刊漫画ゴラクネクスター」で顛末を連載したのが本書ですからね。
・ただ、その半年に成し遂げたことがとてつもないんですよね。

・さて、本書、インドがいろいろとすごそうってのは予想つくと思われますし、実に、その予想をかなり斜め上するくらいの事態が頻発します。
・ただ、インドと同じくらい、山松氏がすごいんだよね。もちろん、本書は山松氏が見聞きしたことを本人がマンガにしているのですが、「なんでもねえよ」と書いたことがものすげえことってのが多い。たぶん、ネタにもならんってことで省略したことでもそうだろうなあ。

・絶対に近づくなといわれているスラム街にスタッフを求めて乗り込む。地回りのチンピラみたいなやつに、ケータイを貸したら、メモリチップを盗まれる。そいで次の日、返しにもらいにいって、返してもらっているんだからね。

・同じアパートに住んでいて、なにかとよくしてくれた奥さんに頼まれて、服を売りにきた押し売りに値段交渉したりね。もちろん、ほとんどコトバがわからない状態でだよ?

・と、おれだったらストレスで頭が倍にふくらみそうなところを、「負けるもんか」で乗り切ってますからね。

・インドに旅行したマンガってのはいっぱいありますが、このマンガはインドにビジネスにきているってのも画期的で、道もわからなければなにがなんだかわからない状態なので、観光的なものはほぼありません。あえていえば、場外馬券売り場にいったことと、買春したことくらいです。

・汚くて融通のきかない仕事の遅いめんどうなインド人を相手に丁々発止している「戦い」のマンガだったりします。
・ものすごい戦いのはずが、淡々と進行しているってのがまたすごい。

「すごいインド」に「すごい山松氏」を掛け合わせた結果、「すごい」が日常化していてるのですよ。つまり、ビジネスの日々として過ぎていくということで、それは考えると「超すごい」ことではあるのですが、そうと感じづらい。

・えーと、「ドラゴンボール」において、クリリンは地球で1番強い人間なのにすごくないみたいなことですかね。

・そしてなんともいえない凄みが後でじんわりとくるのです。すごく変わった体験です。

・それらが1番よくわかるのは、竹熊健太郎氏と大西祥平氏が聞き手のインタビューです。

山松:(インドにいって人生観が変わりましたか?という質問に対し)人生観って何?
竹熊:いやあのガンジス川でですね、川辺で人焼いててそれを犬が食ってるとか、死体流す横で水浴びしたり歯を磨いたり、そういうの見たりして
山松:そういうのは、ただ単に貧乏なバカがやることでさ、それ見て人生観が変わるってことはないよ。金持って賢くなればやらなくなるって。バカを見て感動することはない。


・ね?すごいでしょ。だいたい、いくつかの旅マンガとか、ルポだと、ガンジス川の沐浴シーンは必ずあるし、そこでみんないろいろと考えたりしてますが、全シカトですからね。
・つまり、彼にとっては西部劇のようなゴールドラッシュとか、もっといえば出稼ぎって以上の意味はあまりもってないんですね。インドは漁場って以上の意味はないんですよね。

・よって、遊びとして飲む打つ買うの打つと買うをやるのも必定ですね。ストレス解消だったりいつものことなんですね。日常の延長なワケです。なお、山松氏は酒は飲まない人だそうで飲むがないのです。

・つまり、戦いなワケです。コトバの通じないインド人とコミュニケーションをとる戦い。仕事をしないインド人に仕事をさせる戦い。本を買わないインド人との戦い。

・たぶん、異様に得るものが多いインドの旅だと思われますが、山松氏にいわせると大失敗だったんでしょうね。そういうところもひたすらすごい。

「失踪日記/吾妻ひでお」以来の衝撃があるエッセイコミック。

オススメ

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2008年03月31日

「オトノハコ」岩岡ヒサエ(講談社)

・岩岡氏のマンガにわりに共通するテーマとして、「勇気をもって一歩踏み出す」ってのがあると思います。それは、同時発売の「土星マンション」のミツにしてもそうだし、「花ボーロ」「しろいくも」「ゆめの底」の面々もそうですね。

・本作、それがすごくわかりやすい部活動モノ。

・なじめない高校。どこからか聞こえる歌声が気になっている。それは合唱部のものだった。そして、彼女は「この歌が歌いたい」という気持で合唱部に入るのだった。


わたしは今
小さな音の箱を
開けたような
気がする



・なんて1話目の終わりにモノログってます。

・ということで、合唱マンガです。少ない面子ながら、「作り上げる」ヨロコビをラブやコメなんかを交えて全1巻、描かれております。

・アタリマエでいながらアタリマエじゃない、毎日の部活動をきっちり描いているところがまずもって岩岡ヒサエ節です。
・すごく丁寧に「合唱部は毎日こうやって練習している」ってこととか、全国的に同じ傾向な気がしますが、文化部がないがしろにされ、あちこち流浪しているサマなど、すごく丁寧に、かつ、飽きさせずに描いております。
・そしてそんな中、合唱の楽しみなんてのもビシッと。

・各キャラもそれぞれ立たせる場所が適切で、印象に残る「イイコ」ばかりだよな。部長をはじめ要所に「ヘン」なところがあるけど、基本、イイコばかりでねえ。「がんばれ」と素直にいいたくなる感じ。まあ、岩岡マンガのキャラは基本的にそういう方々が多いんですが。

・小さな音の箱がどうなったかは、めいめいが確認してみてください。

オススメ

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2008年03月26日

「しあわせももりんご」2巻 うさくん(FOX出版)

・最終巻。おしいなあ。もっともっと読みたかったんだが。

・本作で、うさくん氏を知り、その後、成年コミックがつくものも拝見しているのですが、エロの配合で考えると、本作が1番適当なんじゃないかと思われるのです。

・エロマンガとマンガとザックリ分けて考えると、ちょいちょいとお互いの国境を渡る作者がいます。
・それぞれ新天地だと才能を開花させている方、ダメで古巣に戻ったりする方いろいろなケースがあります。
・それは本人のエロ度、非エロ度、もっと大雑把でシビアな「才能」を見誤っているのではないかと考えるわけですよ。

・ま、うさくん氏は両方いけそうで、純粋におれの好みの問題で、本域のエロよりは、「しあわせももりんご」くらいに手加減している童貞の夢をバーニングさせている感じが最高かと思うのです。

・ランジェリータウン(町の名前)を舞台に、超エロガキの桃彦くんと、その幼馴染で貧乳が悩みでいろいろと凶暴なりんごさんと、マスコットのカッパのかっちゃんが活躍するエロバカギャグマンガです。
・くだらないことにかけては相当人後に落ちますので、くだらないものがキライな人は控えるが吉ですが、おっぱいやパンツやエッチなカワイイ女子(「子」に重きをおいてもいいよ)が好きな方は例外かもしれません。

[コミックHOLIC]

Webコミックということを忘れてました。1話目を読むことができますので一見に如かず。ご覧ください。

「めりこみ」ネタとか、学校の校長をいたぶるサドな女子生徒のいたぶり方のバリエーションとか、リンゴさんが好きなすぐに脱ぎたがるビジュアルアイドルとか、ギャグのオリジナリティも相当侮れないものがあります。2ちゃんねるの「おもしろい画像」みたいのにアップされるくらいです。

「成年コミック」に抵触しないラインでのエロネタもあさって方向っぷりもすばらしい。

女子部のコーチになる妄想を止められないスポーツ店の妄想なんかすごいよ。「ピンポン玉4個クチに含んだらレギュラー」だって女の子に含ませて「もう入らない」と苦しんでいたら、お茶碗を差し出し「ここに吐き出すんだ!」ってね。

・ということで、2巻で終了は残念すぎるので、少年画報社とか秋田書店あたりは「しあわせももりんご」ラインの連載をうさくん氏に依頼しましょう。

オススメ


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「恋愛ラボ」1巻 宮原るり(芳文社)

・最近流行ってますよね、百合。
・そうなるとなんでもそれにこじつけたがるってラベリングの癖がでてきて困りますが、本作を百合にするのはちょっとキャラに悪いんじゃないかなと思っています。
・そうジャンルに入れてしまうと崩れてしまうデリケートな女性同士の友情を描いていると思うからです。どっちがタチとかネコとかねえ、ちょっと下品じゃありませんか。ま、ツッコミとボケはあるんですけど。

・欠点がないといわれている女子中学校の美人生徒会長。だけど、恋に恋している感じ。男らしいと評判の隠れファンが多い子に、抱き枕相手にキスの練習をしているところをみられる。それから、誤解が誤解を生み、2人で恋愛の研究をすることになったのですという4コマ。

・いやまあ例のストーリー萌え系4コマね、やっぱヌルイなあと読んでいくうちにがっしりハマっていきました。

・1巻自体が壮大な前フリだったそうですが、1巻においても40pまでと、64pまで2段階の段階があり、その後が本題って感じがします。

・40pまでは、その生徒会長と恋愛指南役の2人がかけあい漫才をしている感じで過ぎていくのです。
・さりげなくハンカチを落としてそれを拾ってもらい親しくなるということを大マジメに練習したりするけど、本番では2人ガチガチに緊張して身を寄せ合っている姿で1回ごちそうさまです。

・40pからはメンバーが増えます。これまでいなかった生徒会役員が増えていきます。そして、64pからは本当の生徒会長が登場してやいのやいのやるわけです。

・そしてボクはエノがすきです。いや、いきなりすきなキャラを書くなんて気持ち悪すぎますね。

・その真の生徒会長の、主人公生徒会長に対するゆがみにゆがんだ乙女心が最高なのです。このキャラを眺められただけでも本作を読んでよかったとココロの底から思うことができるのです。だから、おれにとって本作の価値は64p以降です。

・いわゆる、いじわる役のコをこんな愛らしくかわいらしく描くのは反則じゃないかなと。

・姑息な手、卑怯な手、それらを実行するときのツメの甘さ、会計の適切なツッコミに泣きながら逆ギレするサマ。その会計とのほのかな友情。全体的なお子チャマな感じ、どれもみんなかわいいねえ。

「お前の父ちゃんランジェリー!」

・最後には屋上からメガホンで主人公に直接悪口ですよ。この自滅っぷりにほれぼれします。いや、まあ、この意味は今のところわからないんですが。

・でもって、最終的には5人ともみんなええ子やあって感動があって、壮大な前フリの1巻が終わりますが、この1巻だけでもおなかいっぱいの大満足です。

・ギャグ自体は「ああ」と軽く受け流す感じのいかにも女性のストーリー4コマな、潤滑油の域をでないもので、笑うってことはないし、むしろ、もうちょっと控えたほうがいいんじゃねえとくらいに思いますが、彼女らのキャラを立てた活躍やストーリー展開はすごくよろしかったです。

・もともと、純然たる1本4コマ完結のスタイルが好きなので、ストーリー4コマというジャンルは好きじゃないので、距離を置いていましたが、しばらく経たないうちにすごいことになってきたなあとオノレの勉強不足を恥じいる衝撃の1冊でした。

オススメ


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2008年03月21日

「ネムルバカ」石黒正数(徳間書店)

「それでも町は廻っている」の作者による最新作。

・大学女子寮に住む2人。先輩はミュージシャンになることを夢みては、ルームメイトの後輩とグダグダしてます。

・イマドキの大学生gdgdストーリーかと思いきや、後半、ストーリーが展開してうまく着地して全1巻となっております。

・1番思ったのは大学生が登場しているってこと。先ほどひきあいに出した「それ町」は高校生が出演してます。あと小学生と。

「それ町」の歩鳥さんのような、コウハイはでもそのビジュアルや容姿、そして中身も、大学生のそれになっています。「それ町」のほうもしかり。これ、できている人ってすごく少ないなと、本作を読んで逆に思いました。
・それこそ、このごろ話題になっているロリータ関連商品の、「小学生にみえるけど成人」じゃないけど、そのビジュアルや中身で、年齢をきちんと描くことができているマンガ家って少ないぞ。
・んまあ、必要がないマンガには描かなくてもいいんだけど、本作にとって、このぬるま湯な学生ライフはすごく必要なところだから、ちゃんと大学生にみえる必要はある。
・ついでにいうなら、「それ町」も高校生であるべきだとは思う。歩鳥さんとか幼すぎるキライもあるけどね。それは「女子高生にしては幼い」ってキャラになっている。


ぬるま湯に頭まで浸かったような、でも当人にはそれなりに切実だったりもする<大学生>という不思議な時間ーー。


・カバー裏の文章ですがね。大学生という人生における特殊な時間ってありますし、本作はすごくよく描いてます。描いてますというより、思い出しました。

・飲んで騒いで、夢みたいなこととシビアな現実の話をいったりきたりして、結局、ゲロ吐いて家で寝ているわけです。

・石黒氏の資質といいますか作風といいますか、随所に「あそび」を感じられるのです。この場合の「あそび」というのは、自動車のハンドルの「あそび」って意味の「あそび」ね。まわしてもタイヤに作用しない可動範囲ですか。
・それは重要なのか、そうじゃないのか判断しにくいエピソードというかネタが、作品全体をつらぬくテーマだったり、重要な小道具だったりするのですね。

・たとえば、田口のクルマのナビ、コウハイの寿司が食べられないエピソード、田口のトモダチのイヤホン、田口にふられるコウハイの独白など、カンケイあるのかないのか微妙なところが多い。それは重要な伏線を見破られないためのカモフラージュでもあり、ギャグでもあり、って「あそび」なんですよね。それらと本作のタイトルのエピソードが同じところにならんでいるかのようにみえるものね。

・その作風は「それ町」でも、以前の短編集でも散見されますが、本作がその「あそび」が実はかなり精緻に練り上げられたモノってことがわかります。

・その「あそび」はまた、日々無為に過ぎていく、金がない、おもしろいことのない、期待もないけど、不安もボンヤリしていてよくみえないって大学生活にすごくマッチしてはいます。

・そして、最終2話でgdgdはなくなります。ま、想像つくだろうから軽くネタバラシすると、彼女がメジャーデビューするって展開です。
・それは終わるための終わりですが、終わってみると、そこらかしこにあった伏線がキレイにつながって回収されていることを知るのです。タイトルの意味も、「ああなるほど」とわかるのです。

・随所にアオイしクサイ。大学生はわかったようなことをいうぶん、実は高校生までより、余計にアオくてクサイってところありますよね。
・これを石黒氏はどういう思いで描いたのかとか、いわゆるモノを作っているヒトにはどのように映ったのかと考えるとおもしろい。

・いろいろと残る作品です。

オススメ


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2008年03月15日

「眼鏡なカノジョ」TOBI(フレックスコミックス/ソフトバンククリエイティブ)

・眼鏡をかけた少女による、「BOYS BE…」な話。1話読みきりで全8話。

[Yahoo!コミック]

・IEでしかみることができない(FireFoxだとダメ)なWebコミック連載です。「ヒャッコ」とかもやってますね。

・本作は、カワイイ女の子+眼鏡って完全に割り切っているところがスゴイ。ほかに要素はないといってもいいくらい。

・カワイイ女の子が出てくるマンガなら他にもアホほどあるし、描画でもっとも大事なのはカワイイ女子を描くことができるスキルだと常々思っております。その点ではすごく合格点です。「萌え死ぬ〜」です。

・ポイントは眼鏡をかなり執拗にからめていることですね。全8話、眼鏡の「お見立て」はダテ眼鏡でおなじみの時東ぁみさんが担当しておりますし、各話、眼鏡の特性を活かしたところがポイントになっております。

・眼鏡をはずしたがる彼氏、アイドルが変装のため、眼鏡がなくてみえない恐怖、眼鏡屋の娘にホレたから眼鏡を買う、眼鏡で顔がよくわからない、眼鏡は欠ける、眼鏡は曇る。

・これらにカワイイ女子を融合させて化学反応をしたら大爆発したのが本作というわけだよ。

「こんな女いねえよ」感が強い、二次元に住まうファンタジーな女子が現実へのリンクを果たしたのが眼鏡って点がすごく新鮮。

・ジャストアタマの中だけでできた女性ってんは、実はあまり萌えないんですよね。でも、逆に三次すぎるのもダメ。だから、二次をベースに三次をいかに注入するかが腕のみせどころだと思うのですよ。その橋渡しを果たしているのが本作では眼鏡ということです。そういった意味でかなり強力なアイテムとして他に類をみないくらいメガネを使用してきます。

・そういった意味じゃ、すごく機能的というか機械的というか、そういうところすら感じます。「メガネをつかって萌えさせよう」という企画先行というかね。まあ、あとがき描き下ろしに連載裏話マンガがありますけどさ。

・それはでもすばらしい企画だったなとは思います。

・余談。一見逆説的になりますが、エロマンガは、非エロのものより萌えが減るのです。なぜなら、エロシーンは現実にかなり即してますからね。現実的なモノをいろいろと描くわけですし。そこにファンタジーを注入しすぎると、エロくなくなるという致命的な現象が起こりますからね。だから、エロで萌えるのはすごくデリケートなバランスの上に立っているということがいえます。本作、そういった意味じゃ超非エロです。

・ま、理屈はこのくらいにして、あとは萌え死ぬことにしましょうよ。

・本作に登場する8人の女子はいちいち「チクショーかわいいなあおい」と叫びたくなる方ばかりです。でいて、「眼鏡」以外のポイントが薄いのはすげえなと思います。たとえば、巨乳とかそういうカラダ的な特徴は薄い。

・とくにすげえのは5話かな。いわゆる牛乳瓶の底なメガネを最初から最後まではずさないんですよ。つまり、目がみえない。目を描いてない。それで上記の「チクショー〜」が有効ですからね。

・ま、個人的に「嫁」認定は、メガネが曇るほど赤面症のあがり症の千秋さんかね。ドストレートのツンデレがすばらしいです。

「こんな女いねえよ」と思いつつも夢想せずにいられない男子向けファンタジーとしてすばらしい1冊かと思います。

オススメ

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