・そして、相変わらず正面からナイフで心臓にサクリと刺さるようなおもしろさ。これってホメてるんですよ。正直に1話目の読後感想を語るとそういうことになる。そして、2話目、3話目で刺さったままのナイフでグリグリとされて絶命したのです。
・相変わらずカンペキで、相変わらずちょろくやられたオレ。
・神奈川県鎌倉に住んでいる3姉妹(2話目から4姉妹)の物語。
・家を出て行った父親の死を知り、葬式に向かう1話。
・次女の恋の行方の2話。
・4女のサッカーチームの3話。
・以上カンペキな話が3話つまってます。とくに1話目で表題作である「蝉時雨のやむ頃」がカンペキにカンペキを重ねたスゴさ。
・葬式のグダグダや、複雑な人間関係やら、問題をバシっとドラマチックに展開している。長女のカッコよさ、4女のけなげさ、そして(4女の血はつながってない)母親の描き方。とくに母親よ。こういう女性の描写は男にできないよな。その母親に対する51pと52pの長女の落差よ。寒気がする。
・で、この1話だけで、それぞれのキャラの奥行きまでばっちり把握できるんだよな。
・もう、ナイフをちらつかせながらゆっくり近づいてきて、「あ、ナイフだ」とこっちが認識し、なおかつ、そっと刺してきているのに、まんまと刺さってしまう。カンペキです。ほかの2話もカンペキです。おれがなにもいうことがないくらい。
・そう、おれが「BANANA FISH」以降、吉田秋生作品から距離をおいたのはまさにその「おれがなにもいうことがない」からこそなんですね。
・読めばおもしろい。もうこれは100%の確信をもっている。実際に、久しぶりの本作も何回も書いている下手な表現のとおりシャープにサクリとやられてます。
・だからこそ、おれがなにもいうことがない作品にはおれが居られないんですよね。なんかよくわからないでしょうが、はじかれている感触というかね。疎外感までいわないんですが。
・逆でたとえると、バトルマンガで血肉湧く男子をみてるときの「おもしろいけど、あんな(男子が)コーフンするほどじゃないよな」と思う女子って感じかな。推測ですが。
・いや「おもしろい」んですよ、たしかに。そして本作も含め大好きです。ただ、このスキのなさが息苦しいというか、自分のどこかに合ってないからこそのよそよそしさがあるというか、少女マンガでは往々に起こる感情です。いや、少女マンガのみならず、自分のテリトリーじゃない分野のものによく起こります。
・本作はそれにくわえ、作品としてスキがなさすぎるんですよね。あえていえば、「ロナウジーニョの肉屋さん」などのギャグにある70年代なニオイですが、それで逆に、「あえて」そういうノリを出しているのか?と疑念が湧くほどです。んまあ、吉田氏のギャグセンスのみならず、ルーツは70年代の「お姉さん」な感じはあります。
・勉強不足で知らないのですが、そう考えると、4姉妹が暮らす物語ってのはなにかベースがあるのでしょうかね。「若草物語」とか? いや、知らないんですが。
・姉妹はみんなかわいく描いてますよね。久しぶりの吉田絵は萌えっぽいかわいさもちょっとだけ入ってきたのかしら。その反面、デフォルメの崩しは、往年の少女マンガ風ってのがおもしろいな。
オススメ
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