2019年08月17日

乙女文藝ハッカソン(1)(2)(3) 山田 しいた (講談社)











作者によるツイッター1話貼り付けのパターンで「これはなんだ?」とはまってすぐに2巻まで揃えて3巻はリアルタイムで完結ということになっております。全3巻。

[乙女文藝ハッカソン - 山田しいた / 第1話 文藝沼 | コミックDAYS]

女子大学生がチームを組んでハッカソンにチャレンジする話。

文芸ハッカソンとはなんぞや? ハッカー+マラソン=ハッカソンね。

5人1チームで24時間でコードを書くのがハッカソンでその文芸版。5万文字の小説を即興で1本作り上げるというコンテスト。

3巻まででメンバーを組んでハッカソンに参加して戦うまでの話。

なにがすごいって物語のバリエーションとその分析。そりゃまあ戦う人物の数だけ物語の骨子だけでも必要になるからね。なおかつその物語の優劣をかなり「理系」に判断している。そこがまた新鮮。なるほど、物語の優劣ってきちんとあるもんなんだなと。そこが1番よかったところ。

また「物語」の見本市のような構造だからか、本編のストーリーが一筋縄ではいかないのがおもしろい。3巻での展開と着地点がまた。
広そうでそうでもないところがいい。これは当初の構想通りなのかしら。実質5人(もっといえばもっと少ない)が進行していく感じ。

ただまあ絵のこなれ具合はそれほどでもないかなあ。随所に「かわいい」と「すごい」はあるけど。とくにクライマックス以降。



うむ。ここではベタに「山田しいた先生の次回作にご期待」しますと。









posted by すけきょう at 13:57| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

開口一番!(1)町田 翠 (小学館)




おれの家の半径100mを舞台に描かれた(って衝撃がおれには1番だった)「ようことよしなに」の作者による最新巻。今作はおれの住んでいるところと関係ないな。

落語マンガ。学校でお調子者お笑い担当が進路まで吉本(って名前じゃないけど)を目指したけど土壇場でみた寄席がおもしろくて落語家を目指す。

半分くらいで弟子入りするまで、後半は弟子入りライフ。その顛末を落語で一席ぶちながら紹介するという体裁。

前作「ようことよしなに」より全ステイタスでのレベルアップが最大の特徴。画力も物語も構成もキャラもすべて底上げされている。

ただまあスムーズ故に王道一直線であり単調になってるけどね。でも、王道ってそんなもんだし。

あとなんていうかな、じっとりしてるカッコ悪さというかな。それは「ようことよしなに」からなのでそれはもう作者の味なんだろうけどさ。

本作でも高校時代お笑い得意キャラだけど、実はまわりでうざがられてる。そしてそれを目撃したりする。
あとすがりつく母親を引きずりながら師匠の家に戻ったりとか。
じっとりべっとりの青春だよなあ。

カッコ悪さと恥ずかしさと。とにかく汗のべったりした感じがマンガにはよく表れてる。

がんばれ同郷って気持ちはいまだにあるけどがっつり本格的な漫画家になりつつあるなあとも。




posted by すけきょう at 13:29| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マコちゃん絵日記(13)うさくん (茜新社)




最終巻。
小3のマコちゃんが繰り広げるほのぼの日常マンガ。だいぶ昭和よりのドタバタ。
うむ。連載していた「LO」という意識高い系成年コミック雑誌と心中する勢いで続くかと思ってたよ。

ただ最終巻だけあってすべてがもう「これでもか」の怒涛の名作群。アンドいろいろなエピソードが決着編。極めてエモエモエモ。

12巻(あるいは11巻だっけ?)あたりからはじまったマコちゃんがお父さんのやってるぬいぐるみ屋をやってみようかなって試行錯誤するエピソードが素敵だね。「こころをこめてぬいぐるみを縫う」ってなあ。ラストエピソードもそれだよ。さすが主人公。

あと、主人公がほぼ関係ない、家族が片親の子を連れた遊園地の話がとてもいい。片親でいつも遊びにやれない子を連れて行く。楽しんでる我が子と親友、そして楽しんでるよその子らも含め母親が「みんな… 幸せであってほしい…」とひとりごちるのは掲載誌のことも考えると、とってもいいセリフだよ。みんなしあわせであってほしいよ。

なんといっても1番のお気に入りキャラクターである副担任の長豪近先生も解決したのがよかったよね。彼女とっても小さいから、生徒になめられないように意図的にロボのような機械的な態度をとるけど、それとは別にどことなくクールなところあるなあとも思った。

終わるのが惜しい。マンガ内のキャラも作者もマンガのあとも幸せになってほしいものでした。しかし、うさくんう氏は伊集院光氏でいうところの「深夜の馬鹿力」にあたるものが終わって次はどうなるんでしょうか。




posted by すけきょう at 13:08| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

赫のグリモア(1)(2) A-10 (講談社 )








1巻からみかけてはいたのよね。でも、作者のA-10が「あの」A-10先生とは思わなかったのよ。寡作だけど出すと必ず心に爪痕を残すマンガを描くあのA-10先生とは。とくに「GIRL?NEXT DOORの1話には脳天に電撃の衝撃。

参照:
[なまのまんこの破壊力〜げんしけん二代目5巻&more〜: ポトチャリコミック]
[GIRL?NEXT DOOR | ワニマガジン社]

表紙絵も「そのころ」とちがうし、A-10先生がマガジン?講談社?と思ってたんだけど、2巻発売時に衝動におされて買ったらビンゴ。マジかと。

女子中学生が曾祖母からの遺産を受け継ぐ。廃墟のお屋敷の隠し部屋には魔導書(グリモア)である「赤ずきん」がいる。そしておれと契約しろそうすれば助けてやると。

んー!ベタ! まあ1巻の手が出なかったのはA-10先生であろうとなかろうと「どうせ」そういうベタなやつなんだろ?って。まあ、成年コミック描いてたやつが一念発起してそれこそNEXT DOOR目指してやって玉砕するってあるあるじゃない。ベタじゃない。あるあるじゃない。話も異世界ものの前は掃いて捨てるほどあった話風じゃない?と。

ところがそうじゃないからここを書いているわけだ。

1話からベタな進行でありつつ横紙破りのオンパレード。そこでもうノックアウト。そして表紙はともかく中の絵は紛れもないA-10先生のそれで。

あかずきんは契約を破棄しようとだまくらかそうとする、そしてそれを上回る予想外の方法で解決。

なおかつ全編に漂う斜め上からの「痛み」描写ね。展開もそうだけど、ここでこの「痛いやつ?」って感じがくる。身体描写でも精神のほうでもくる。

そして毎回の引きも異様に強い。「え、次どうなるの?」「え?そうなるの?」って。

これはベタではない! すごく強いマンガだ!と。

1巻では衝撃のつづれ織りであっけにとられたけど2巻はいきなりエモい。

それでいて2巻でも同様でありながら、同様にベタに進行していく。これがすごい。横紙破りの「破れ方」を丁寧にコントロールしている。当たり前っちゃ当たり前だけど、それを逸脱して、後半苦しくなるマンガって実は存外に多い。まあ、ドラゴンボールとか? ONE PIECEとか? 作った設定、意表をつく展開にしたいがために後々苦しくなっていくところか(それをさらなる意表をつく展開で乗り切り乗り切り長期展開ってパターンも多いけどそれは博打すぎるそして失敗は多すぎる)

たとえば「すごい」ということをあらゆる見せ方をする。2巻ではどら焼きを食べるシーン。これがエモい。なぜかは読んでいただくとわかるが「すごさ」を表現するのにどら焼きを食べるのね。

そして1巻からパワーアップしたクライマックス何秒かのあいだに事態が飲み込めないくらいの「いろいろ」おこる畳み掛けの巻またぎの引き。

2巻の終わり7pすごい。

ということでエロがないA-10先生の漫画もすごいなあと。



posted by すけきょう at 12:58| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

心臓 奥田亜紀子 (リイド社)




読み終えて最初に思ったのが「さよなら平成」と。

6年ぶりの単行本だそうです。おれにははじめてです。書店にて「呼ばれ」ました。こういうことがあるので書店で本たちの声に耳をかたむけるのは大事なのです。

5本の短編に大橋裕之氏との合作ショートショートな「DREAM INTO DREAM」がインターミッションのように収録。

アフタヌーン系の雑誌におもに発表されておられる感じで、それはいま、奥付をみて知ったのだけどいわれてみればそれっぽいなと思ったりちょっと違うなと思ったり。

余命宣告されたJKの表題作「心臓」

親友とそのDV彼氏との変な関係の「ニューハワイ」

寝たきりの双子の姉と妹の恋愛の「神様」など。

昭和より地続きの「平成」を想う。それは最新作である「るすばん」にとっても顕著だけど、平成というのは日常にPCやデジタルが本格的に入り込んではいるけど、溶け込む最初であり最後の時代だったなと。昭和だと完全な異物であるPCをはじめとするデジタルガジェットが日常に溶け込んでいく過程こそが平成だったのかしらと。

「るすばん」でマンガを描いている彼女は「スクリーントーンとはなんだろう?」と思いつつ点々を描くことでで再現しようとする。逆に令和以降はスクリーントーンの使用頻度は極力下がるだろう。いまや液タブで描くほうが主流げな感じあるし。
そんな昭和と令和の狭間に存在する平成。文化その他モロモロ。その総決算のように思えた。そう考えるとギャグ要素の強い大橋裕之氏との共作の数々もいかにも「それ」に思えたりしてくる。

偶然かどうかともかく本作に出てくる小物はこの先消えゆく感じのものが多い。黒電話、ファミコン、ブックオフ、有線のイヤホン、和室に誂えた木で組んである外枠の和テイストの蛍光灯のシェード、ねるねるねるね等々。本作にガラケーはあるけどスマホは出てきてないしね。

引き合いに出すのもなんだけど、今年読んだ中ではもっとも「令和」な感じをもった「ヒョウヒョウ/ネルノダイスキ」とは好対照であり、この2冊で2019年令和元年はかなりセットになっているように思えた。これまでのマンガとこの先のマンガのセット。

参照:[ひょうひょう ネルノダイスキ (アタシ社): ポトチャリコミック]

それぞれの作者が新しいや古いってことじゃなくてそれぞれの作品、今回の場合は本作が「平成」を指してたわけでね。奥田亜紀子氏の次回作は令和を先取りするものかもしれない。
でも、平成は終わったという思いはこの作品で強く感じた。ニューハワイのDV男も平成が生んだ化け物のような気もするしな。

そう考えると書店によって新刊のマンガを眺め「これおもしろそう」とジャケ買いする機会も減っていきそうだよな。書店で紙の本を買ってきてネットに感想を挙げる。そしてネットで買ってもらう。これも非常に平成ですね。令和もそれがつづく感じはしないね。

ポトチャリコミックなんてのもね。






posted by すけきょう at 12:47| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

やんちゃギャルの安城さん 4 加藤 雄一 (少年画報社)




グルメマンガと同様の現象が起こってるなあと令和に入ったくらいから感じはじめた。
ラブコメに飽きてきたなと。

ラブコメはずっと続くのかと思ってた。だけど、ああいう特殊設定による関係が縮まりも遠ざかりもしない生ぬるい日常が延々と続く系のラブコメは急に飽きてきた。ぶっちゃけると「からかい上手の高木さん」の一連に飽きを感じていた。アニメも原作も。それはクオリティが高く「おもしろさ」という観点から非の打ち所がないことから導き出されたものなんすけどね。

単なるこちらの飽きか一過性のものか。ともかく。

理由は分析できる。Twitterだ。タイムラインを眺めていると毎日たくさんの数の4pの部品のような美味しいところだけ凝縮したマンガが流れてくることだ。かつてはギャグではあったけど現在はラブコメが主流になった。サルビアのつぼみの蜜のようにちょろっとあるラブコメのエキスを毎日のようになめてりゃラブコメ耐性もできようもんだ。それでもまあ飽きないもんだなと思ってたけど甘かったな。飽きたわ。
またTwitterマンガ家の4pマンガはかなり拙いものが多い。ラブコメ系統のものと啓蒙や告発系のものはちょっとしたテンプレがあるしいうても4pなのでパターンをつかみやすい。そのキモ描写だけならそんなに難しいことはない。その甘いところ以外をおもしろくしてキモまで飽きさせずに誘導するほうが100億倍むずかしいんで。
でも、そのラブコメのパターンはでも大事なパターンでもある。あえていうところの「普通のマンガ」でも使われるところだから。そこを大挙んしてこするわけだからそりゃラブコメでのドキドキする感じは摩耗するわね。

本作はやんちゃギャルの安城さんが陰キャボーイの瀬戸くんといちゃいちゃするマンガ。

本作もその大事な美味しい蜜のところは使われる。
本作はでも相変わらずいい。丁寧な描写に徹しているし、なおかつ丁寧に変化をさせている。丁寧に「蜜」の前後も描かれている。

いや、とどのつまりが好みに帰結するのかとも思う。

4巻はいやに安城さんほかのデフォルメ描写が進行した気がしないでもないが、そのおかげでより生き生きした感じは出た。そして相変わらず関係性は変化していくしふたりはどんどんいい感じになっていく。陰キャボーイがやんちゃガールにデートを誘ったよ。

このマンガの特徴である女性がくっつくいてくる(文字通りの意味)のって単純に気持ちがいいんだよね。その感じがすごく良く出ている。しかも柔らかい一方じゃなくて硬いところ(骨とか頭とか)の感じもあるなあと。
そういうところは4pのテンプレラブコメじゃなかなか描けないところ。
ここいらが成年コミックエロからそうだけどラブコメでもある、「リアル」の取り入れ具合の妙だよな。ドリアルでもあかんしドファンタジーでもあかん。その狭間での調節具合いな。本作は絶妙。おれ感覚ではね。他の人だとまたちがう感覚があるとは思う。

ただまあ次はどうなるかって危うさはある。結論。現在のラブコメのスタイルは飽きつつある(おれ感覚)ってことで。
グルメはもう完全にふるいわけが終わり、異世界ものも年末ごろは「昔はやったよね」っていわるんだろうなあ。
ラブコメはねえ、、、、(新味が入ったら盛り返しそうな気はするんだけどね)



posted by すけきょう at 12:18| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

六道の悪女たち(16)中村勇志 (秋田書店)




この巻ちょっと尋常じゃないものがあったので取り上げます。だいたいがコミックも10巻を超えて毎巻感想なんてかけないわなあ。「おもしろかった」しかねえっての(このサイトの存在否定)。まあ、同出版社で同時期から刊行されてアニメ化も決まったり各種漫画賞ももらってるアレの最新刊はまだ読んでないというのを差し置いて書きます。

なにに感じ入ったのかちょっと説明が必要なのでちょっと長くなりますがご容赦を。

六道という冴えない男がいます。おじいちゃんの秘術で悪女にだけモテる体質になります。そういうヤンキーバトルとラブコメとギャグがまざったようなマンガです。

16巻ではシリーズ最長の争いであった鬼島連合との残党3人が登場します。
1組は兄妹の双子でお互いに女装男装して性差を変えます。そしてもうひとりはサディスティックな思いが高まりすぎて、強い男を屈服させることにのみ喜びを感じるタイプです。だから前の戦いでは六道はモテましたがいたぶられる方向にモテました。

双子のほうは六道と敵対する高校に入学しました。ところがその高校で「狩り」がはじまります。まあ犯人はもう一方のサドガールなんですが。そいで、六道に惚れてる双子の妹が六道に助けを求めます。
ところが、敵対する高校だけあって番長はそれをメンツの問題として断ります。

だからどうした?

この答えがすばらしかったんですよ。

答えはシンプルだったんです。六道を女装させて高校に侵入させました。ほかの六道グループも変装してます。
このことによりとてつもない化学変化が巻きおこる。

まず敵対する高校の番長(男)が女装した六道に惚れる。
そして男装してる妹(女)はそれを防ぐために「つきあっている」と宣言する。
なおかつサドガール(女)は女装した六道をストレートに恋愛対象として惚れる。
その結果、六道とつきあってる男装妹をサドガールが横恋慕で憎むという。

いやあすげえ。女装するというシンプルな変化でこれだけの複雑な反応が起こり、それぞれはスムーズで自然で、かつ、圧倒的にドタバタでおもしろい。すげえなと思った。発想の転換というか。どうしてこの3人を残したのかってわかったわ。

ヤンキーバトルマンガなんかまったく興味ないので大半はスルーしてるけど、本作は、できる限りその「端っこ」のほうに立とうとしてあらゆるバリエーションを盛り込んでくる読者を楽しませようという気概に惚れるね。亜流だけど王道。抜け道だけど本道。

最高です。





posted by すけきょう at 11:34| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

筒井漫画讀本(壱)筒井康隆/相原コージ (実業之日本社)




底本は1995年に発売されたものでナンシー関氏の消しゴムはんこによる表紙だった。
筒井康隆小説をマンガ化したトリビュート。音楽の方のトリビュートは大昔からあるものだけど、複数のアーティストが1曲をカバーするというスタイルになってからのそれが流行ったのは1990年代に入ってからで本作の底本の1年前にはやたらと売っていた記憶のあるカーペンターズのトリビュートが売っていた。
それを受けてのマンガにおけるトリビュート「ブーム」も今に至るも面々とつづく人気ジャンルのひとつではある。

本作の豪華メンバーよ。
以下敬称略。
相原コージ、吾妻ひでお、いしいひさいち、内田春菊、蛭子能収、加藤礼次朗、喜国雅彦、けらえいこ、三条友美、清水ミチコ、しりあがり寿、とり・みき、ふくやまけいこ、まつざきあけみ、南伸坊、矢萩貴子、山浦章、
そして特別収録として筒井康隆自身によるアフリカの血がボーナス収録。

すごいメンバー。平成の最初のほうからずっと現役の方も多いしなんとなればビッグネーム揃いともいえそう。当時も今もおれには「買わない理由はない」メンバー。それでいて、唯一全集を持ってる筒井先生の作品集だからな。

とはいえ、いまは令和。気がつけばこのメンバーの最新刊ってそれぞれなにを買ったっけ?って感じではあるし、筒井先生のも今持ってる未読の最新作は「聖痕」かなってていたらく。

なので運がいいというか逆にすごく新鮮ではあったのよね。

原作に忠実なコミカライズであろう、内田春菊「ムロジェクに感謝」、相原コージ「死にかた」、加藤礼次朗「トラブル」などは原作の味わいが出ている。
内田ムロジェクの舞台劇のようなドタバタ、物語内の平野オサムのようなキャラが非常にうまくマンガ化されてるなあと思った。ああいう軽薄というかお調子者役をおしつけられるピエロ的なひとがよく登場するよね。
相原死に方の金棒で潰された女性からタンポンがポーンと飛び出す描画とか「ああ相原コージだ」としみじみ思うし、加藤トラブルの最近のゾンビものに通じつつ今はなくて今も全然通じる原作の力と確かな描画力。

蛭子能収「傷ついたのは誰の心」も非常に丁寧な仕事で印象に残った。いまマンガ仕事はどうなさってるのか知らんけどおれがいくつか持ってる著作のなかでもあらゆる描写が丁寧とほうと思う。たしかこれは筒井自身も漫画化してるな。

吾妻ひでお「池猫」もダークネスな画風のころのものでのサイレントマンガ。水墨画風の味わいはかなり短い期間だったような気もするので貴重。
ふくやまけいこ「かいじゅうゴミイ」でのピッタリの題材を大幅に「かわいい」で上書き更新した強力な逸品。ふくやま画の「かわいい」が尋常じゃない強さを持っていることに改めて気がついた。令和でもすごくかわいいままだ。

解説の藤田直哉も指摘しているけどもベストは「我が良き狼」のとり・みきかね。カートゥーン風のコミカルな戯画化とリアルな劇画化。それでいて劇画のほうの空にはこれは書割でセットですということを表す「スジ」が描かれてる。どれもこれもが空想の中のオールドグッドタイムという。

今はだいぶなくなってきた有名人にマンガを描かせてみるというノリの清水ミチコ、南伸坊の絵物語風なのもそう。実にこれが1番「時代」を感じされる。そしてそういう流れにあるのかのと思っていたけど実はかなりな画力やマンガ力があることを認識する筒井本人作。

しみじみとそれぞれの作品のチョイスの確かさだな。そこいらはプロだなと。自分が求められてる資質を読み取りたしかなコミカライズで応えると。

もう1冊出てるので近いうちに「弐」もあるかもしれない。期待していよう。




posted by すけきょう at 10:55| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

涙煮込み愛辛さマシマシ にくまん子 (KADOKAWA)




2019年はにくまん子さんが世間にみつかりなおかつ席巻した記念すべき年かと思う。にくまん子イヤー。
ということで今年3冊めの作品集。また同人誌からの編集版なのかしら。別にそれは問題ない。

だめな男女の恋愛模様な短編集。4pくらいのから長めのやつから、ベタに王道なのから実験的なのから。

時系列がわからないから迂闊なこともいえないんだけど、前作である同人編集版「恋煮込み愛つゆだく大盛り」よりは最近な感じはあるし、実験的な作風はちょっと引っ込め気味ではあるのかな。

それでも惑星にロケットで行き留学してくる遠距離恋愛を描いた「とおくとおくとおくのほしきみはしらないしらないわたしのはなし」とかすごい。なにがすごいって設定はバリバリのSFなのにSFの部分が絵日記で描かれていて、そうじゃないところの描写は「現代」のそれでさ。スマホで連絡とるとか未来ブラジャーみたいなものがあるわけでないし。まさに「現代」(素人でも宇宙に出かけられるテクノロジーだけ発展してそれ以外はまるで現代)って無理してないSFが斬新だったり。

かと思えば2pでほぼにくまん子マンガのキモを鮮やかに押さえたといえる「セックスもする友達」の切れ味最高。4pの「ガラスのくつずれ」の現在も連載しているしこれまた2019年に単行本をお発売した「泥の女通信」的な「きれい」にまとめたマンガがまたとても気持ちいい。

で、前作「恋煮込み愛つゆだく大盛り」において多くの人を虜にした「よよの渦」のよよ的なキャラがまた爆誕しましたよ。本作のクライマックスである「考えるアシコ」のアシコですよ。いまここまで書いてわかりましたが、「考える葦(子)」にかけてるのか。
ちょっとひとより考えすぎるからとろくみえるアシコさんの話。ほのぼのオムニバス4コマから「なんだこれは」というラストに到着する。すごいわ。すごいとしかいいようがない。それはだってこっちの貧弱な交友人生では出会ってないような、もしくはおれが節穴だからみつけたなかっただけなのかわからんけど、そういうアシコのすごさを「すごい」っておれみたいなぼんやりにもわかるように描いてるのがすごいんだよ。すごいしかいってない。

なおかつさっきも出したよよの別のエピソードがあるのもまたうれしくてかつ胸が締め付けられるだよな。それは「よよの渦」の結末を知っているからなんだろうが。

VIVA!にくまん子イヤー!




posted by すけきょう at 10:45| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マンガ サ道?マンガで読むサウナ道?(2)タナカ カツキ (講談社)と、お熱いのがお好き? 大町テラス (イースト・プレス)







へー「サ道」ってドラマ化になってるんだというのと2巻が出てたので買う。実はその前に「サ道」チルドレンとして「お熱いのがお好き?」があって、ここまでブームはひろがって「ととのう」というのは普通の言葉になりつつあるなあと感心したのだった。

サウナに入る〜水風呂に入る〜休憩する〜のサイクルを繰り返すと「ととのう」という状態がくる。トランス状態というか。それを説いた「サ道」はインパクトあった。

「サ道2」はその続編。キャラを立てつつもサウナ新ネタを続々投入。たとえばロウリュのこと、水風呂のこだわり、サウナに住むという計算。会社員ライフとサウナとか。読むと「あーサウナ行きてえ」と思うのは毎度のことっすね。近所でロウリュのあるサウナねえかな(って今調べたらあったわ。しかも県内2箇所しかなくてその一軒がおれの住んでいるところの近く。へー)

「お熱いのがお好き」
これはサウナ通いが趣味の三十路のOLを描いたフィクション。徐々に進行していく。OLが日々のいやなことなんかをサウナのととのうことで解消させると。
オビで「サ道」のタナカカツキさんが書かれてる「オッパイ丸出しでととのったー!」ってあるように毎度OLさんは裸でサウナに入り水風呂に入って休憩して「ととのったー」しております。まあ余裕で想像つかれますようにチンチン勃たせる意図のオッパイではありませんので。ただ、作者のあとがきこぼれ話として作者自身の裸をモデルにしているので風呂であったときに主人公と同じ裸だっていわれたエピソードは「え?そうなの」とちょっと襟を正す感じありましたわ。あ、でも、そうか。エッチなシーンはいくつかあるんだな。うーむ。恋多き女ではあるのよね。後半は恋愛事情も混ざっていく。日々の生活と密かな喜びとしてのサウナって感じ。そのあとの晩酌などもあるけど。

グルメマンガのグルメのところがサウナになるって寸法さね。ただ、それだけじゃないなあと。独特のしっとりした感じやら「サ道」ともまたちがうサウナ観察なんかはおもしろかったわ。

この双方のサウナ描写が興味深い。

あとおまけとして。
「サ道」2巻のアマゾンレビュー。水風呂で潜るのはマナー違反とあるけど、それはローカルルールでOKなところもあるんじゃないかなと。そこにすごく噛み付いてるレビューが目立った。サウナでのマナーってのも大変だし、「マンガ描写」でも許せないってのもあるんかね。そこいら考えると表現って本当めんどくさいよなあって。




posted by すけきょう at 10:38| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする