2022年12月09日

運命の巻戻士 木村風太 (小学館)




コロコロコミック連載のハードSF。既刊2巻。
主人公は時空警察特殊機動隊。
不慮の事故や事件で亡くなった人を時間を巻き戻して救う超精鋭部隊。通称“巻戻士”。

つまりはリプレイもの。同じ事件のシチュエーションを何度も何度も繰り返すことによって少しづつ改善していき、救助したらミッションクリアという。

1話では銃をもったコンビニ強盗に1発当てさせては次に弾道を避けてってのを繰り返して全弾撃ち尽くしたところで逮捕確保って作戦をとりますが、途中でやめます。なぜか?

2話は無人島の流れ着いた少女。2日目に病死するのでそれまでに200km離れた島まで移動しなければならない。この鮮やかでいて「コロコロ」で美しい解決策。

毎話完結ということではなく3話からは主人公が巻戻士になったわけであるCASE999というミッションになり、さらに2巻がすさまじかった。
3話からのつづきから、アクションギャグ描き込みの密度も仕掛けも超大きい空港ミッションがはじまります。古今東西のハイジャックものを見尽くしてもなお鮮烈な感動がある新機軸。

コロコロでいながらハードなところはハードだしグロなところはグロなところもすごい。そこがハードSFの由来っすよ。いやちがう。
SFとしてもシンプルでいながらよくできたリプレイの設定です。

書き込みもすごい。空港で飛行機でミッションですよ? どんだけの描き込みになるか想像はつくでしょ?それをやってのけてます。すごい。

しかも、コロコロっぽく熱血少年なんですよね。
ぷにるもいいけど本作もいいですよ!
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2022年12月08日

タイのひとびと 小林 眞理子 ワニブックス


タイの旅行記。タイの美味しいものやタイのひとに親切にされたこととか。
おれ最初ベテラン漫画家さんだと思ってたんだよね。小池真理子だわな。ちがうわ。しかもそれ小説家だな。

さっぱりした本人の似顔絵とタイのひとびとの絵、そして精緻な背景画。なんかツールと使っておられるのかしら。写真を線画にするやつとか。マンガはどうもiPadで描かれてるようですし(マンガ内に現地の外で描くシーンがいくつかある)。

エピソードからして頻繁にタイに訪れてらっしゃるようですごくベテランだけど言葉が難しく、食事の時とか試行錯誤なところがおもしろい。
レストランでメニューの1番上ならたいていメジャーなものだろうからって一か八かで注文したらペプシが出てくるとか、食い合わせが悪かったのか駅で吐いたらビビるくらい丁寧に介抱してもらったりとか。

タイは基本親日のようだし、なんとなれば少し憧れがあるみたいで基本的にモテるみたいですね。1回目にきたら「日本人?」と聞かれてそうだと答えたら2回目にきたときにカタコトで「いらっしゃいませ」っていってもらえたりしてな。ええのお。

本作を知ったのが、ネットでバズった綾波レイみたいなツンデレ少女がいるレストランにいった話だったけど、なぜかそれが収録されてなかったんだよな。いまでもネットで読むことができたんでそれはそれでいいんだけど、おれみたいにその記事きっかけで本をよんでみようってひとは、気に入った曲がアルバムに入ってるだろと買ったらシングルにしか収録されていない曲だってわかる程度のショックはないでしょうかね?まあ、それに匹敵する可愛いタイの方々がたくさん登場しますけどね。
https://hint-pot.jp/archives/150395/2/


余談。
タイの方々って雪にすごく憧れを持ってるそうです。おれみたいにガッツリ雪国在住はいったらモテるのだろうか。そういや、仕事場にいるベトナム人は冬になんだかすごいの着てるよ。むこうの国じゃ着れないようなモコモコのダウンとか。
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2022年12月07日

ウィッチウォッチ 篠原 健太 集英社


最新刊は8巻です。ちょっと遅いのですが、7巻で主要キャラが出揃って本格スタートという形になったのでまあいいんじゃないかと思います。
そして8巻までずっとべらぼうにおもしろいです。
「スケットダンス」「彼方のアストラ」という2作品とも名作でありつつアニメ化も決めている作者による最新作です。

魔女のニコを護衛するために鬼の男がニコと同棲する。その後、入居者が増えていき、天狗に、狼男に、吸血鬼って具合に6巻で4人。ということで5人で同居しております。これが固定メンバーというところか。
ニコは1000年に1度の特別な能力を持つ魔女で彼女が襲われるという予言がありましたので4人でなにか災厄からニコを守ろうと。だから、タイトルに帰結するわけです。

「彼方のアストラ」から知って「スケットダンス」を読んだのでにわかなんですが、「スケットダンス」にはいろいろと驚かされました。これって「こち亀」じゃんって。
その細かいキャラ設定、変幻自在の引き出し。ギャグと油断したらドシリアスな展開。アクションも豊富。と、なるほど、彼方のアストラの幕の内弁当かっていうくらいの詰め込み具合、サービス精神は、作者の芸風なんだなと感心しました。

本作はスケットダンス路線でありつつも、ニコの魔法が織りなすドタバタがさらに盛り込まれていて、スケットダンスではわりと封印気味であった、時事ネタやジャンプのパロディなどさらにもりだくさんな内容になっており、毎話今度はどうなる?と思ったりしてました。

ユーチューバーネタやヴィンテージジーンズ、デスゲーム、おじさん構文、同人誌即売会、現在のヤングがどう思うのかは実際のところ知らないですが、現在のヤングも楽しめるコンテンツが盛りだくさんの、「雑誌」のタイミングで読んで、「ああ今週もおもしろかった」と思うマンガですよね。そういう意味でも王道。時事ネタの意味がある、ジャンプ他キャラの内輪ネタの意味がある王道。でも、コミックで読んでもちゃんとおもしろい。そうところは優れている。熟練の味わい。








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2022年12月06日

異世界ありがとう 荒井小豆 ジアナズ (小学館)




異世界ものです。既刊は2巻。

おっさん2人が同窓会で出会ったけど2次会で死にました。そして美少女エルフと愛嬌のある小動物的なかわいさのある少女として転生しました。
そしてもう働かなくていいんだから異世界を満喫たろう!冒険したろう!って感じ。

本作は、メタネタや現実ネタがあり、なんだかあやふやな異世界。どこまで動物的な野蛮な住人。かと思えば、みょうに整った街の人々やギルドのシステム、神様の存在など、異世界ネタを知ってる人ならすっと入れますが、なれてないとやや敷居が高いかしらね。でも、ふたりのやりとり等、基本はコメディ要素の強いかけ合いで進行していきますね。
1巻前半はふたりでモンスターとはいえないくらいの動物をやっつけたり、異世界のお約束であるステータスをみようとしたり、魔法を発動させようとして、とても楽しいけど、そこからひとに会うんですよ。で、2巻では街にもいきます。そこから1巻前半部とはだいぶ毛色が変わってきます。

2巻ピンチに落ちて助けられます。そしていっしょにパーティーに行かないかと先輩異世界転生者に誘われます。そのかわりやるけどねって。

そこらへんからかなりノリがちがってるなあと。つまらなくなったってのではないけど、おもしろさの質が変わってきたかなと。あといろいろあってウジウジ展開になるのよね。あとは細かい設定なんかも。それもどうやら2巻で終わったみたいなんで3巻からはまた毛色が変わりそうな予感なのよね。

異世界ありがとう=水曜どうでしょう

って感じなのかしら。ノリが近いってところもあるよな。

ぶっちゃけ、センス一発なところがあるから合う合わないが強めではありますが、さいわいおれは合います。3巻も楽しみ。
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2022年12月05日

友達以上恋人未満  yatoyato (集英社)






ジャンプ+って攻めてるよね。いまさらだけど。なにが攻めてるって載っているマンガの幅よね。

元AV女優が主人公。いろいろあって引退してひっこんで田舎で引きこもりをしている。
親に無理やりお見合いをセッティングされてあったのが元AV男優で何度も「お仕事」した男。
そしてはじまるプラトニックラブコメ。
ありそうでないけどどちらかというとヤングジャンプっぽい設定ではあるよね。

ジャンプ+のレーティング基準はどうなってるの?って心配する向きはいるかもしれないが、これがあっと驚き全年齢向き仕様。エロくないっていうには主人公はトランジスタグラマでいいものを持ってらっしゃるし、けっこうエロい服着てるしなあ。あんな胸元開ける服をいつも着てるか?っていうかそこがサービスなのか。で、ま、回想シーンとかでそのシーンの前後も出てきます。エロいかどうか最近はすっかり現役から遠ざかっているので判断しかねますが、ひとつ強くいえることは、この絵なくして本作は成立しないってことですね。それくらい絵の魅力がエグいです。

太い主線で描かれていてデフォルメとリアルのはざまのようなタッチなのに、人物も背景もひどく魅力的。というか完全におれ好み。とくにカラーが素敵なんだよなあ。

ストーリーのほうは王道ラブコメでいて、設定を忘れないような作りになっており、ちゃんと元AVってのや、AVをやる前は女優でくっていきたかったとかそういうのもからませつつ手堅く楽しく展開していきます。
このふたりがプラトニックってのもおかしな話だけど基本ふたりとも真面目に仕事としてAVをこなしてたんだろうな。そこにエロいものや爛れたものを読者が感じないように繊細に注意を払っております。

メディアミックス化(死語かね)するとしたらアニメがいいか実写ドラマがいいか。実写にしてもエロありのVシネマ的なものが安易だけど、坂とかのトップアイドル的なひとがやるのもいいかもなあと(原作はエロないんだし)。でも、絵に惚れてるんだからアニメで動くのもみたい。どう考えてもそこらの実写女優よりあの絵にふさわしい声優が声をあてたほうがいいに決まってるし。って妄想を暴走させすぎですね。
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2022年09月23日

月出づる街の人々(1)酢豚ゆうき 双葉社

連作短編という感じでしょうか。1話読み切りですが話やキャラはつながっている。

高校生がメインの登場人物。この世界はいわゆる亜人が登場する。フランケン、透明人間、狼男、メドゥーサ、ナーガ、ドラキュラなどなど。

なにかするわけでもなく、イメージとして近いのは、「僕のヒーローアカデミア」のようにそれぞれが個性としてどこかに属しているという感じで、それもまた血ではないんだよね。だから、メデューサの子供がフランケンだったりする。個性だったり特徴としてのフランケンだったりメデューサだったりする。そんなゆるゆるな世界。ここでけっこう好き嫌いが出そうな気はしないでもないがおれは気にはならなかったわ。

第1話。透明人間少女と狼男少年。雨の日に傘を貸して自分は狼に変身して帰った少年と少女との交流。図書室であって狼となった少年の毛づくろいをする。少女はペットセラピーと親が犬アレルギーで飼えなかったので嬉々として狼にブラッシングするけど、そこはそれ狼男は思春期なわけで女の子に毎日ブラッシングされたらモヤモヤするよなそりゃ。

第3話がネットで知った透明人間少女とメデューサの話。メデューサは髪の毛が生きた蛇でできているのよね。それぞれ名前をつけてかわいがってる。頭から生えてる蛇を飼ってる感じね。透明人間少女は彼らを餌付けさせてもらうのが趣味になっている。で、メデューサにおいての「抜け毛」ってつまり蛇の寿命でもあるのよね。ということで蛇が死ぬ話です。感動ですし、こんなメデューサの話をみたことないなあと感心しました。

かように身体的な特徴の差異をベースに多感な時期の少年少女を描いております。柔らかい描画もあいまって読後「いいなあ」と思うやさしい味の世界が広がっております。「なんじゃこの世界」とも思いますが。ここまでわかりやすくそれぞれの個性があったら逆にみんながみんなに寛大になってやさしくなれるんんだろうなあとも思いましたよ。

「フランケンの糸」なんて話は作者にしか思いつかないだろうなあ。これまでにみたことないアプローチのフランケン像。



ほっこりしますよ。2巻楽しみです。

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2022年09月20日

われわれは地球人だ!(1)高橋聖一 双葉社




ということで全2巻ちゃんと2回レビューしてますよ。名作だからね。

本作はおれと同じと思ってる担当編集のラブコールに応えて描いたものですよ。


女子高生3人。それぞれの理由あって次の日にオープンの日本一の巨大ショッピングモールに侵入する。するとショッピングモールは地球を飛び出し広大な宇宙の旅に出る。1巻の残り1/3くらいでタイトル通りのことが起こる。よその星に着陸するのですね。そして現れた方々にいうわけです。


1巻は設定とJK3人の個性と友情を楽しむって感じではあります。ショッピングモールはゾンビ戦なんかでの籠城の基本となってますが、本作はゾンビや外敵はいなくてなおかつ中身がなくなるなんてサバイバル要素もなく(電気水道インフラもなぜかつながっている)、どちらかというと閉塞した孤独な感じは映画「シャイニング」を思い出しますね。

そして、地方JK3人にとって「世界」ってまさにショッピングモールのなかそのものだよな。JKにかぎらずか。あらゆるものがあるし、これが「我々の世界だ」と紹介することができる。だから「地球」のすべてを携えて宇宙を旅するわけです。本編でもキャラがそういうことをいってます。


すごく律儀で精緻な描画。それこそ前作よりさらに背景などは細かく細かく描画されている。あのなんでもあるショッピングモールを余すことなく細かく。それでいて宇宙も。宇宙人も。


2巻からが本番となりそうなので2巻を読んでから書こうとも思ってたのですがこれはいま紹介しなくてどうする?って思ったので取り急ぎ。作者が想定している内容まで描けますようにと願います。あとがきマンガにも登場された双葉社の平田昌幸さん(本作ができるきっかけになった編集)にとくに願います。

posted by すけきょう at 18:39| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月29日

ROCA いしいひさいち (笑)いしい商店

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がんばれタブチくん〜おじゃまんが山田くん〜隣の山田くんホーホケキョで、朝日新聞で「ののちゃん」を連載中のベテランでレジェンドなマンガ家による同人です。



ここらへんより入って通信販売でどうぞ。1冊1000円で送料500円です。

これは、
ポルトガルの
国民歌謡『ファド』の
歌手をめざす
どうでもよい女の子が
どうでもよからざる能力を
見出されて花開く、
というだけの
都合のよいお話です。

海辺の街に住んでいる吉川ロカさんがファドを歌い、皆の心をつかんでいくというお話です。

10年にわたりあちこちで描かれております。

いしいひさいち新境地などと話題になっておる作品ではありますが、実際のところ、キャリアをドーナツブックスほかのシリーズでわりとつぶさに観察していたものとしては新境地なのが通常運転すぎて、本作がとくに画期的に新境地とは思えなかったんですよね。

ドーナツブックは双葉社から出されていた新書サイズの4コマ集であちこちに描かれたものを再編集したその都度のベストセレクションな存在でクロニクルみたいな感じですが、これが毎巻新境地というべき、4コマに革命が起こるような作品集なんですよね。
B型平次シリーズ、さがしやケンちゃん、ノンキャリガールなどなど。もちろん、出世作のバイトくんにしろタブチくんにしろ、そのジャンルを築き上げたくらいの画期的なものではあるのですよ。そもそもがこのドーナツブックスにしても新書サイズ1ページに4コマ1本というスタイルが斬新で(だから買いはじめた)したし。

だから本作もいつもの「新境地」ではあるなあと思いました。

ときおり拝見する文章や、雑誌(漫金超など)、いしひさいち読本的なもので、博覧強記な方というのは存じ上げてましたが、それをファドに注力されてる感じ。それが端々からこぼれ出る感じ。音楽理論でROCAがすごいことを表現してるのがすごいよなあ。引き合いにだされてた実在のミュージシャンも興味深かった。

4コマをベースとして展開しておりますがときおり「2コマ」打ち抜きのハッとするシーンにぐっとくる。ストーリー4コマということか。きちんと4コマで1笑いあるところはベテランのなせる技。サザエさん等を引き合いに出すまでもない、4コママンガの登場人物の時間が流れないという基本から逸脱したロカさんの成長物語。そこもストーリー4コマっぽくはある。このあたりは熱心に読んでないので今もどれくらいの割合や規模で描かれてるのかわからない。4コマ雑誌がつぶれるとか、そのわりにアニメ化が決まったとか、いろいろあるようですが。

そして重要なキーワード「サウダージ」。ここでも出た。

鍋に弾丸を受けながら 青木 潤太朗/森山 慎 KADOKAWA: ポトチャリコミック http://sukekyo.seesaa.net/article/490920336.html?1661740849

本作でも、鍋に〜でも、ひとことでは簡単にいえない複雑な感情表現だそうです。なんかわかったようなわからないような、まだおれには難しいのかもしれない。

1回読み、そして感想を頭に思い浮かべてから、またファドの有名な人(らしい)アマリア・ロドリゲスなどをYou Tubeで聞きながら本作を読み返す。そして発見する。、

最大の特徴は、吉川ロカの生地であり、友人の柴島美乃とともに育った地元の港町の印象がすごく強いこと。それこそ、誰(京アニ?)がいつからはじめたかわからない女の子萌えアニメにおける聖地巡礼に行きたいくらい魅力があるところに思ったのだけど、読み返すと実際のそのシーンが少ない。不思議。というか、それはすべてラストシーンに集約されていたんだね。あのシーンを読んだときに感じた潮風はなんだったんだろう?そして感動とかエモいってシンプルな言葉で足りない複雑ななにか。これがサウダージなのかはわからないが忘れられない2022年でも強烈なマンガ体験にはなった。

ファドとこの街のロケーションがまたぴったりなんですよね。ファドって港町の音楽やなあと。おれの感覚なのでちがう可能性も高いのですが、そうなってしまいました。それはもういしい氏のせいです。

あ、あと、いしい作品にしてはわりとダイレクトな下ネタがあったかなーとも。

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柴島美乃(2コマ右側)の目の描写がすごい

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2022年08月22日

完結 ゴールデンカムイ 31 野田 サトル 集英社


最終巻が出ました。超最高で連載がはじまり、話題を独占したまま、だいたい最高のまま駆け抜け、随所に話題をふりまいて、人気を維持し続けて超最高で終わりました。だから最終的な評価は超最高です。

マンガにおける終わり方というのを考えるのです。これまでは人気がある限り続けるというのが定番で、たぶん、いまも主流はそうなのかもしれない。でも、いくつかのマンガは終わることを許されるようになっている印象。本作はどうだったのかは知らないが、終わるべきして終わり、描きたいことは余すことなく描いた印象。そこが超最高でした。

他作品を引き合いに出すのは抵抗はあるんだけど、「鬼滅の刃」。いろいろと有名な本作ですが、本作の1番1位のところ(子供表現っすね)は、23巻1巻かけて完膚なきまでに終わったことだと思う。どこまでが連載誌にどのようなカタチで掲載されたのかは知らないし興味はないが、この圧倒的な「最終巻」はたぶん今後出てこないんじゃないかと思われます。あらゆる方向や表現で終わった。

ゴールデンカムイの最終巻もなかなかたどりつけないところまで行き着きました。

長いあらすじは複雑なので省略させてもらいますが、最終章に入ってからの一気呵成の盛り上がりと、オールスターキャストが一同に介しての大活躍。そして、最終巻ではベストメンバーが函館から札幌に向かう機関車で最後の死闘を繰り広げてます。この流れのローディング時間のない感じはすばらしい。
もともと、ゴールデンカムイの特筆すべき点は、1ページ先の展開が読めないことで笑いあった次の瞬間に銃を撃ってくるやつと対峙する。このテンポ、スピード。あとは博覧強記なあらゆる要素をぶちこんだ、作者野田サトル氏の頭と脚を巨人が絞った汁のような話です。彼のすべてがあります。昔のロボットアニメの「出力フルパワーにしろ」ってコンソールのつまみを無造作に全部回しきる感じでしょうか。

でもって、ゲームや映画や小説やマンガで散々こすられてる動いている列車での戦いを研究したおしこすりたおし、かつ、ゴールデンカムイらしさを抽出した上での決定版のような戦いよ。列車であることがすべて盛り込まれつつちゃんとそれらを盛り上げに使いつつヒートアップさせてます。しかも、戦いってことでいうと、函館の五稜郭でのひろいところからの狭いところとかのメリハリも効いている。流れとしては満点ですよね。いわれてみれば船上や飛行船など乗り物の戦いも数多く収録されていますよね。ほんとスキがないマンガだ。

最後の最後の最後の最後まで盛り上がり、各人かっこよく、そっれぞれの積み上げたキャラらしく、有終の美を飾っております(死んだり生きたりはありますが)。
物語も当然のことながらキレイにキレイに、このごった煮闇鍋の混迷の限りを極めた作品をきちんと終わらせてます。

名作っていわれるマンガも最終回覚えてないもんだぜ。そこらへんは島本和彦氏の「アオイホノオ」にくわしいけど、マンガ全体の99%おもしろければ最終回なんて些細なものはどうでもいいって文化は受け継がれております。
ゴールデンカムイも、最終回を迎えるにあたって、電書を期間限定で全話無料公開したりみんなで盛り上げたりもしていたなあ。
ホムンクルスやアイアムアヒーローや浅野いにお氏の何回聞いてもタイトルを覚えられないデデデデみたいなやつも次巻最終回や最終巻って帯や宣伝に出すようになったもんな。

時代は変わりました。それぞれいつ終わるかは別だけど、「最終章」突入なんて書いてますしね。

それぞれマンガやマンガ家の持ち味や個性や才能があるから一概にはいえませんが、おれは適切なタイミングでスパっとおわらせるほうがすべてめでたいんだなと。

野田サトルさんは次回作を描きそうだし、ちがう分野を攻めてきそうだし、それもちゃんとおもしろいはず。(しばらくはゴールデンカムイ関連のものを描きそうだけど)

posted by すけきょう at 13:23| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

鍋に弾丸を受けながら 青木 潤太朗/森山 慎 KADOKAWA




振り返るとネットから話題になっているマンガというのは増えた。というか、ネタ元としてネットをかなり活用してるからだ。それが本からでもなく本屋からでもないというところに危機感と罪悪感のようなものを覚えるが、そんなことは知ったことではないというばかりに日々のSNSや情報サイトから新作話題作の情報は入ってくる。
正直打率はそんなでもないが、本や本屋のバッターボックスに立ってはいないので比べるまでもない。おれの住んでる町は本屋を開くと町から補助金が出るくらいだが本屋ができる気配はないままだ。

まあ余談。

本作はその流れのままにネットで知ったものだった。

・世界でも危険なところのメシは美味い
・作者は世界の人間がすべて美少女に見える

この2点の「フック」から注目された。それでおれも知ったので、フックは不要といえないのですが、美少女はともかく(じゃなきゃおっさんだけだし)、危険なところってのはあまり関係ないような気はする。日本以外はたいてい危険なところってことになってるし。(本作はその例外が現れるが)

失礼ながら原作者のことは存じ上げてないのですが、小説家であり漫画原作者であり仕事で釣りをしに全世界を飛び回っている様子。その釣り仕事の合間に食べる食べ物を紹介するのが本作になるのか。
今のところは、1巻2巻で、アメリカ、ブラジル、ドバイってところでしょうか。

本作は人生観を揺さぶられる。揺さぶらされ続けているよ。毎エピソードううむと唸る。そしてオノレの人生を振り返りフウとあらぬほうを眺める。

1巻2話。アメリカ・シカゴのイタリアンビーフからそう思う。ありったけの薄切りの牛肉を挟んだパンを、その肉を焼いたときに出てくる肉汁に浸してシナシナベタベタになったサンドイッチを縁側でスイカを食べるように食べる。アメリカ在住のイタリアンマフィアが開発した安価でごちそうをたくさん食べるための食事。

1巻3話。ブラジル・アマゾナス。もらったフルーツジュースが禁断症状が出るほど美味い。これなに?と尋ねると「アバカシ」と答えが。何だそれ?と思って持ってきた果物がパイナップル。完全に熟したパイナップルというのは現地でないと真の味がわからないと。アバカシを振る舞ってくれたブラジルの友達が1番美味いジュースはオレンジです。つまりそれも。

この2つのエピソードに感じ入るものがあったのです。以降も同マンガでは「現地でないと食べることのできないうまいものがある」「現地のひとは1番うまい食べ方を知っている」と。この2本の柱を軸にエピソードが展開されています。

もちろん、上記のイタリアンビーフもアバカシも食べてみたい。そして「サウダージ」も味わってみたい。本作のほかにも最近もうひとつサウダージという言葉をみかけた。たぶん、2022年のおれのキーワードはサウダージだと思う(からもうひとつも早急に紹介しますj)。

ただ、イタリアンビーフがうまそうでもアバカシのジュースがうまそうでも、「そこ」に行けるのかというとその可能性は限りなく少ない。劇的に所持金が増えて劇的に健康にならないと叶わぬ夢ではあるなあと。

そう考えると、どこでおれの人生がこうなった?ということで人生観が揺さぶられるのですよ。理由はどうあれ、感情を動かされることで感動になるわけでかなり感動してるんですよね。

2巻ではその余韻や「思いにふける」がどんどん強く重くなってきている。それはつまりマンガとしての深みが増してるということなんだろうか、おれのシンクロ率が高くなっているからなんだろうか。ただ、マンガにおいて「おもしろい」ってこういうことだからさ。それはおれがいわゆる釣行記的な本(オーパ!とか)や紀行文(深夜急行とか高野秀行氏の著作とか)
にふれてこない人生だったので、新鮮だった可能性も微レ存。

最新刊2巻描き下ろしのグリルドチーズ。これがすごかった。

アメリカの食べ物屋にたいがいあるらしい料理。フライパンにバターをしいてチーズを挟んだパンを焼くってだけの料理。誰でもできるし家でもできるけど、非常に奥深い料理ということを滔々と語られておる。それはいわば日本における卵がけご飯だと。生卵を食べることができるのは日本だけってことを抜きにしても、日本人は心のどこかに「日本人が1番うまい卵がけご飯の味を知っている」って思ってるように、アメリカンはグリルドチーズの「正解」を知っているという感覚。この説明の腑の落ち方が異常なんだよね。

グリルドチーズにしてもアメリカにいって絶対に食べるかっていうと1回や2回じゃ食べないよなあ。だから日常的にアメリカにいって、「そういう店」にいかないとね。そしてそのうまさに目覚めないと。そういうところが素直にすごくてすごいからこそ自分の人生の振り返りという反動がくるわけで。

そしてそのことがまた感情を揺さぶらされる。と、まあ、かなり個人的な理由ではあるが本作は心に残るマンガとなった。ただ、ここまで変な方向からの入れ込み方をしてない娘も楽しいしおもしろかったと感想をよこしたのでマンガとしておもしろいのもまちがいないのですよ。


「鍋に弾丸を受けながら」(森山慎/青木潤太朗)のイタリアンビーフ : マンガ食堂 - 漫画の料理、レシピ(漫画飯)を再現 Powered by ライブドアブログ https://mangashokudo.net/entry/blog-entry-662.html

余談ですが。
こういう料理再現や「本物」の写真ってあまりみたくないって思うんだよな。マンガで完結してるし、なんか夢が壊されたってんじゃないけど(それいうなら登場人物はみんなおっさんだし)。でも、イタリアンビーフはやっぱり食べておきたいなあ。
posted by すけきょう at 13:20| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする