2019年06月11日

平太郎に怖いものはない(後編)スケラッコ (リイド社)


児童書「ヘイタロウ妖怪昔ばなし」にインスパイヤされたマンガ。完結。
高校にいかずにひとりで親がやっていたお好み焼き屋を切り盛りしてるヘイタロウ。
何故か出没する妖怪や怪異現象。それに動じず寡黙にたんたんと日々を過ごす。
非日常そのものの毎日を強引に日常に過ごす。彼はなんでも極力平気で「いつもどおり」にしようとする。この「いつもどおり力」がすごい。だから、こわくないんだよね。こわいものでもこわくないひとが平気でいるから。だからとっても不思議な感覚。アイスクリームの天ぷらみたいな。まあ、お好み焼き屋の話なのでそっちのほうでうまいたとえがみつかるとよかったのですが。

「盆の国」「大きな犬」からのコマ運びやセリフなどのマンガ内に流れてるテンポはやはり独自でいいよなあ。落ち着くわ。

このマンガで1番思ったのは、「へいちゃん」みたいなお好み焼き屋が近くにあるといいよなあと。あとそういう店をやりたいなあと。

スケラッコさんの次回作を楽しみにしてます。



posted by すけきょう at 19:05| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

午前4時の白パン 木村いこ (ぶんか社 )


木村いこさんの創作マンガ集。イラストレーターやエッセイコミックの印象が大きいので意外な感じでした。

食をテーマとしたオムニバス読み切り集。「だし巻き卵」「ソース天ぷら」「立ち食いうどん」「白パン」など1食1話。

「夜さんぽ」という名作では夜にさんぽするというマンガに、視覚聴覚触覚などをフィーチャーして「夜」を描くということをやっておられてすごかったのですが、本作も、食に関して、積極的に泣かせるでなし笑わせるでなし、毎日3食に出てくるあたりまえの食とともにある日常を描いている。そう、食事をフックにしてるけど、それをことさらにありがたいものとはしてないんだよね。戦争で食べたあれはうまかったなあ〜とか、遭難して食べたチョコが〜とか。それの真逆。そこが最大の特徴だと思う。
もちろん美味いまずいって話じゃなくて、その食べ物はいつもそこにいて自分を形作ったりいい影響を与えてくれると。

たとえば「だし巻き卵」。通りかかる居酒屋のお姉さんに惹かれてる男子高校生。名物らしいだし巻き卵を1回食べたい。でも、高校生は居酒屋にはよう入ることができん。と、落とし物をきっかけに食べるその甘口でもしょっぱいだけでもないだし巻き卵に「大人」を感じる。お姉さんには彼氏がいたこともわかるし。そこがまた大人の味ってね。

みたいな。

食べ物とそのひっかけるところのギャップというか変なところが絶妙で、「いこまん味」になってるなあと。また、天ぷらにウスターソースをかけずにいられない父や、毎日うどんを食べないと気がすまないギャルJKとか、関西圏なのがまたうれしいところ。無理して全国区にしてないというかな。

女の子がまた気負いがないんだよな。プールの売店で売ってる焼きそばを食べる話の豊満な女性やら、ドテラにギブスの主人公のお姉ちゃんとか、美少女なのにオタク2人をさそってピクニック。焼き鳥の缶詰を食べ続ける等、みんな愛嬌のある女性ばかりで最高。そしてこっちも関西風味かねえ。なんつか、いくつのひともこのまま「ひとのええおばちゃん」になる感じがして。

料理ネタも、上記の天ぷらソースもそうだし、餃子を両面焼いたり(パリッと感が高まるそうで)、雑煮のもちにきな粉をつけて食べたり(奈良らしい)、食のこだわりのある回もあるし、へーと思う。

母親が関西圏出身(鶏肉をカシワっていう)なので、ソースに天ぷらは昔からおなじみ。富山のうずまきかまぼこを厚めに切って天ぷらにしてソースかけて食べたら最高だったなあと。久しぶりに食べたくなったわ。




posted by すけきょう at 19:04| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

怨霊奥様(2)若狭たけし (BookLive )


結婚した奥様は怨霊でしたと。
ネットでかなりバズってらっしゃるようで。マンガ家さんでもかなり昔からフォローさせてもらってるので情報は入ってくるほうなんですが人気があるそうで。

わりと同じことを書いているのですが、今回も30分の深夜コメディ・ドラマなドタバタをすごく丁寧に描いております。この褒め言葉になるのかわかりませんが「テレビみたい」って感じでは孤高ともいえるくらいの作風だと思います。

マンガのテンポやギャグとはちょっとちがう感じ。これはなんだろう?と毎回謎に思うのですが、前記のように多くの方に受け入れられているようでなによりです。

いつも思うけど若狭作品ってすぐにでも実写ドラマ化デキそうなの多いんだよね。というか逆で、またまた前記のように実写ドラマのコミカライズみたいな。若狭さんの中では映像である実写ドラマをそのままマンガにしてるんじゃないか?ってくらいで。それでも本作は際立って「ドラマ映え」しそうな気がするんだよな。

「美味い玉」食べたい。ドラマ化してコンビニとタイアップして「美味い玉」発売してほしい。コンビニのどこに売るんだ?




posted by すけきょう at 18:59| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

剥かせて!竜ケ崎さん 1 一智和智 (オーバーラップ)



Twitterでブイブイいわせてらっしゃる作者の新刊。紙の本で買うのははじめてです。というのも、Kindleで無料の本をけっこう出されてるからですね。本作もKindle無料版として本作の3話まで収録してたものがありました。

https://twitter.com/burningblossom/status/1135493508242894848

亜人ものです。リザードマンのJKのトカゲであり人間である竜ヶ崎さんの脱皮した皮にのみ興味を示す変態少年とその少年に恋してる竜ヶ崎さんのいろいろとおかしい話。
少年は皮を丹念に拾って組み替えて皮だけの竜ヶ崎さんを作ることに命をかけてます。竜ヶ崎さん自身は「本人に興味を持って」とストレートにいってるにもかかわらず。

と、現在はほぼその1ネタなんですが、ネタや話へのバリエーションや展開はさすがベテラン。しかも、変態同士のラブコメ未満(男があまりラブっぽくないし)なのにきちんと後半にクライマックスを用意してるしなあ。

半透明のまぶたやキレイなエメラルドグリーンの瞳、ひび割れて脱皮がはじまる身体など、フェチがビクビクくるところも多いしで、スキのないバカ亜人マンガとしてとてもいいです。



posted by すけきょう at 18:57| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ぼくたちは勉強ができない 12 筒井 大志 (集英社)


珠玉…。アニメ放映中での新刊はやはり気合が入るのかね。注目が高まるからなあ。それにきちんと高クオリティで応えるのが素晴らしい。アニメ化のときの原作単行本発売のクオリティってどれも気合入ってる説を誰か記事にまとめてくれよ(ま、「気合入ってる」が主観だからわからんか)。

勉強を教える家庭教師役の主人公がかわいい女の子に翻弄されるハーレムモノ。

表紙は読者投票で1位だった桐須先生オンリーで、当然クライマックスの話もそれを持ってきている。でも、他のキャラもそれぞれすばらしエピソードをぶっこんで色を薄めない感じ。前巻では薄めだった緒方さんとあすみさんのエピソードもすばらしい。

これがおもしろいのは、それぞれのキャラと主人公のマンツーマンのラブ模様がそれぞれレベルがちがうんだよね。
なにげに緒方さんは最初にキスしてるけどそれは事故。文乃さんはぬいぐるみ越しのキス。うるかは「あいさつ」での口のキス。そいでうるかは崖っぷちでどうするか?のキワまでいってるし、文乃は彼女らの気持ちに配慮し遠慮しつつも惹かれている自分に揺れてるし、緒方さんはピュアすぎて本人もやっと自覚し無自覚のアプローチからかなり意識して先に進んできてるし。桐須先生は先生と生徒というラインを死守してるけど惹かれる自分を否定しきれなくなり、あすみさんはそれらからいっさい距離をおいてるけどそれはポーズで本当はすごく憧れてるみたいなな。
全部別のマンガのヒロインできそうなキャラなんだよな。それらをすごく上手に交通整理してる。んまあ、もっと直截な表現するなら「まとめて」る。

と、でもそれって両刃の剣でもあるわけでさ。ラブコメで魅力的な女性を描けば描くほど、「いずれひとりを選ぶ」という展開に抵抗が生じてくるし、それが魅力的に描けば描くほど選ばれないと辛いことになるからなあ。それを選別するための11巻かと思ってたらまたリセットになったよなあ。それぞれがそれぞれの親密度をジワっと上げてる巻でさ。

作者はバランスのひとであるから、そういう方面にもいい着地点を用意しているのかそれともウヤムヤのママ終わるのか。11巻のヒキも意外に消化したしなあ。でもそれらの経験値をキャンセルしているわけでもないし。うーむ。目が離せないマンガだ。



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その着せ替え人形は恋をする(3)福田晋一 (スクウェア・エニックス)


ギャルが実はオタクでコスプレをしたい。主人公は陰キャで祖父のやってる雛人形づくりにしか興味が無いと思っていたら服作りに才能を発揮してすげえ服を作って、彼女に見事なレイヤーデビューを果たした。そしてギャルは主人公をスキだと自覚してしまった。
ここまでが2巻で、3巻は新キャラが現れてどうなる?ってヒキだったんだけど。

新キャラが!

すげえ!

すげえ!

かわいい!

そうなんですよ。新キャラって恋の鞘当てかと思ったら、コス募集でおしかけてきて美味しいところすべてかっさらっていった台風のような3巻でした。そういう展開ってアリなのか?と思ったりしましたよ。かなりピュアな「かわいい」担当なんですよね。

伝説のレイヤー。だけどちびっこで純情でかわいい。彼女と新しい衣装を作ろうという名目でいろいろと遊んで回る。

うーむ、闇属性光属性とあるけど、本作はレイヤーの光の部分のみ。しかも、真夏のギラギラな感じで。

そいでもってヒロインも依然いい子でかわいいという。なんだこれ?「かわいいマシマシ」かよ!(ハライチ岩井風)って感じ。

ただどうなるんだろうかなあとも。このまま「かわいい」でフルスロットル勝負でいくのかと。いまはその真っ白になるくらいのライトに照らされた(バラエティに出てる大物女優風)カワイイのインパクトにやられたけどそのままで済むのか?と。
そんな無用の心配をしたくなるほど、カワイイ強行突破な3巻でした。




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2019年05月24日

彼女と彼氏の明るい未来 1 谷口 菜津子 KADOKAWA


前作「彼女は宇宙一」が今は亡き「このマンガがすごいWEB」のマンスリー(復活希望)でランクイン(5位)した作者による長編。
ちょっと未来。理想の恋人が現れた。幸せの絶頂の主人公。だけどこれまで女運他が壊滅的に悪かった主人公。彼女をどうも信用できない。だからVRで過去をのぞき見できる装置を使用して彼女がヤリマンだったかどうかを確かめに行くのでした。

前作ゆずりのSF〜ファンタジーの流れにありながらもキモは男女間のココロの動きってのは同じで、ちょっと先の未来道具がバシバシ登場するけど、結局、彼女がヤリマンかどうかチェックするって展開はおもしろいな。

ただ1巻のほぼ終わりになってやっとVRをかぶって潜入するってどうなのよ?どういうペースなのよ? なんとなれば星新一氏が今もご健在だったらショートショート30枚くらいでチョチョイのチョイとなんかやっつけそうな気がするでもないんだよな。

ま、ショートショートならね。

それに収まらないと思ったから、もっと具体的にいうなら「勝算」があるから長編にしたわけだもんな(作者と編集は)。それに期待して読みます。あとたぶん同じものがあったらおれも確認してたかもしれないなあと。そうじゃなかったら知らないころの奥さんとか。

細かい未来描写が楽しい。画面が浮かび上がって宙空にフリックする感じはいいよな。



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シネマこんぷれっくす! 3 ビリー (KADOKAWA )



映画バカ3人娘と彼女らに振り回される映画バカ見習いとの映画バカのためのバカマンガ。
アナーキーなようでいて、非常に丁寧に、映画ウンチクと映画あるあると映画バカの奇行を織り交ぜて構築している。
まあ、だからなのか、宿命なのかわからんけど、シネマ部の面々も「映像研には手を出すな」の面々も設定だと、学園のお騒がせ一味って感じなのが、普通に部活動に熱心な感心な方々ってことになってるんだよな。こいつらもわりに映画をみた感想を部室で喋ってるだけ感。

ただ、娘さんたちの懐かないネコ3匹(とちょっとツンデレ1匹)な感じがかわいらしいなあ。巻を追うごとに娘さんたちがどんどんかわいくなってくるのがずるい。普通に萌えマンガになっている。
とりあえず作者イチオシの映画「ガタカ」はみなきゃなと思いつつ10年くらい経ってる(作者にすすめられるより前から気になっている)。


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レイリ(第6巻)岩明均/室井大資 (秋田書店)


6巻で終わり?なんて思ったけど、コレは文句なしにキレイな終わりではあるだろうなと(アレはどうなったというところもあるけどまあ)。
そして終わってみれば6巻、ずっと素晴らしいママだった。
レイリという少女の数奇な人生を描いてます。たぶんコレ以上は蛇足なんだろうなあ。「あずみ」なんて永遠に終わらない(終わった?)作品を考えるといけないのですが、これは必要十分の活躍だよなあ。少女として、少年として、天才剣士として、ひとりの女として、母として、いろいろなレイリを描いていた。

しかし、本作は表情だな。マンガは表情だね。適時正解の表情を描くことができるならば文は要らない。それをかなり実践されたマンガ。それは原作者である岩明氏ゆずりであるが、本作のほうがすごみを増していたな。とくに勝頼と明智光秀のあの表情。すべて事情と感情を描いてる。絶品。あとラストな。あのレイリの表情。

表情で泣き笑いできるすごさを堪能したよ。

(岩明氏があとがきで書いておられたマンガ担当のもうひとりの候補もちょっと気になるなあ)



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水は海に向かって流れる(1)田島 列島 (講談社)


前作「子供はわかってあげない」はとてもインパクトが有りました。その年のNo.1に選んですよ。

[決勝戦 ギガントマキア 対 子供はわかってあげない: ポトチャリコミック]

5年前ですよ。5年前のおれいい文章書くな。

そして田島列島氏は5年後の本作もとてもすばらしかったです。

おじさんのいるアパートに住まうことになった少年。駅まで迎えにきてくれたOLさん。彼女の母と少年の父はW不倫をした仲だった。

前作ゆずりのユルユルとしたキャラのやりとりでありながら重々しい内容で展開する1巻でした。

あ!かなり変速展開の「めぞん一刻」になるんかな。少年とOLさんはつきあったり恋に落ちるのか?うーむ。

そういうわかりやすく収まるところに収まることを期待するものではないような気はしますと、思いつつ、前作はすごくきれいに収まるところに収まったからなあ。

オビや他所の感想をみると、セリフのやりとりがすごいとありますが、スゴイのはそれもこれも含めて、マンガとして成立していることかと。
マンガはその絵の中にキャラが呼吸をして過ごすことができる空間であることがもっとも上等。視点を変えると、読者にとってキャラがいきいきと活躍している場がマンガの中の世界に成立しているかどうかこそが命。

たとえば本作のヒロインの得意料理ポトラッチ丼。これがすばらしい。食べたくもあるし、この料理ができる背景を考える。そしてこんな奇天烈な料理を実践するからこそ、後半にあんなことができるんだなとか。そういう積み重ねも含めての、この漫画におけるこのセリフこのキャラこのストーリーの描画がジャストってことが大事なのよ。
それに関してはやっぱり天才といっても過言ではないな。本作の描画とキャラのやりとりと話はすべてがこの絵でジャスト。
これができないプロのマンガ家もけっこういるよ。
ほしい絵に合わせると画力は変化していくんだよね。でも、逆に、この絵に合う話を作るって方向の方もいらっしゃる。どっちが正解ということはない。そして田島列島氏は後者というわけでもない。ただ、いまはジャストフィット。だからこそすべてが決まっている。



posted by すけきょう at 22:14| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする