2022年07月30日

トモちゃんは女の子! 柳田 史太 (星海社)


アニメ化記念ってことで。
2015年から2019年までTwitterからのWEBサイトで連載されてました。コミックは全8巻。
とはいえ、存在は知っていたものの読んだのはわりと最近でまとめて読みました。おれ的には最近のあるあるの電書でセールだったからです。
そういうことで本作もアニメ化前後でセールになる可能性が高いからチェックされておくことをおすすめします。これまた最近のあるあるですが電子書籍用の特典もありますし。

トモちゃんという男勝りな女の子が幼なじみの男に惚れてますが、男は幼い頃からライバルとして親友として切磋琢磨(おもに空手で)してきたので、むこうはかけがえのないものと思ってますがその質がずいぶんちがうというラブコメでおなじみのやつです。
1ページをワイド画面の4コマで区切って展開するというパターンです。高校生ですね。学園ラブコメ。

本作の最大の特徴は、昭和からある男勝りの女の子とニブチン(死語か)の男の子のすれちがいラブコメってベタ中のベタであり、なおかつかなりミニマリズムな内容、それなのにこんなに時間が経ったのにアニメ化になることも納得の高品質ということなんですよね。

ラブコメとは、
突き詰めるとキャラは2人でいいんですよね。それになにを加えたら独自性が出せる?もっとおもしろくなる?ということでキャラが増えていったりシチュエーションが複雑になっていきます。
そしてラブコメのストーリーのゴールは両思いになりばいい。ストーリーもキャラも目的も実に明確です。ただ、現実の「複雑」をいかに盛り込むかで味わいが変わるという。ま、ここまで極端なことをいいだすとみんな同じになりますかね。バトルマンガスポーツマンガは戦って勝てばいい、ギャグマンガはいかなる手段を使っても笑えることができればいい(だから1番好きなのかもしれない)。

本作はすごくシンプルでミニマムなんですよね。必要最低限といえるくらいストイックに展開する。それは連載媒体が4コマというのも関係しているし、Twitter連載というのも関係しているのかもしれない。

ただ、それでいて最大限のおもしろさを引き出していることに驚く。それぞれこれでもかって少数のキャラを立たせながら最大限の活躍をする。

やっぱなんのかんのいってキャラクターよ。とくにマンガはそれ。

本作は学園マンガであるわりには、学生より、それぞれの親や各キャラの過去にフォーカスし展開していくところが特徴。
親を描写することでどうやって彼女らのキャラが形成されたかの説得力をもたせてるし、「幼なじみ」の幼いころを丁寧に描くことでよりキャラに愛着が湧くから。だから主要キャラは両親を描いてる。これ実はなかなかできないこと。だって老け顔を描けないプロのマンガ家って多いもの。極端なこというと女の子しか描けない人も多い。
作者は老若男女見事に描き分けておられます。カバーをめくったあとのおまけ絵には毎回ニヤニヤするよ(電書でもみられる)。

主要キャラがそれぞれとても強い(物理でも精神でもキャラでも)ので凡百の同級生先輩後輩じゃ太刀打ちできないというところもあるんだろうかな。

この少ないキャラを磨きに磨いて立体的に「存在」させる手法がすごい。
エピソードそれぞれも的確でシンプル。はじめてのデートとか、親友とのいざこざとか。基本エピソード毎に「原点復帰」なポジションに戻るけど、その後少しづつ気持ちが進展していく。これもまた王道ですが効果的。

つまりは、
今頃アニメ化が決定するには遅すぎてもったいないくらいよくできたラブコメではあるのよね。ラブコメとするより各キャラの成長物語ってのもこれまたベタではあるが、それも大成功ですし。8巻にわたってきちんとベストのところに着地して大団円です。

そしてふと思い出すとシンプルに「いいマンガだったな」で終わる。最高の読後感です。

アニメをみてからでも遅くないですが、「いいマンガ」だったということを頭の片隅にでも置いておいてください。

あとひとつ書くことがあるとするなら、脇役のキャロルとみすずはなかなかみないグッドキャラで彼女らの存在や言動がかなりマンガをおもしろくしていたし、アニメでも双方の中の人の演技や作画を期待されるところですね。















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2022年06月11日

緑の歌 - 収集群風 - 上 下 高 妍 KADOKAWA






ネットで知った台湾のマンガです。イラストレーターとしては有名な方らしくて村上春樹さんの「猫を棄てる 父親について語るとき」には表紙や挿絵を描いております。

『猫を棄てる』の表紙と挿絵を描いた高妍さんからのメッセージ 『猫を棄てる 父親について語るとき』(村上 春樹) | インタビュー・対談 - 本の話

そして本作においても帯を書いております。いま、お写真をみましたが本作「緑の歌」の主人公に似てらっしゃいますね。半自伝ってことになるのかしら?

本作はざっくりいうと細野晴臣氏を神とあがめるマンガなんですよね。

細野さんは「音楽王」という本を出すくらい、日本音楽に多大な貢献をされた偉大な方です。おれにとっても神なのです。

主人公、緑は台湾の片田舎のJKです。あるとき教科書を持ってくるのを忘れて取りに戻ったら海辺に男が立っていました。そこでふいにスマホから「風をあつめて」が流れました。細野さんが所属していたバンドはっぴいえんどの名曲ですね。みんな聞いたことあるでしょう。CMなんかもやってましたし。

https://www.youtube.com/watch?v=0b6inZfiGrw
https://open.spotify.com/track/0YdW17YMTVaqzRkkvdlpm8?si=56d7dfef424442cd

次の日に浜辺は立入禁止になっています。男は死んだのだ。緑は確信します。
そして細野晴臣氏の憧れと男の死によっての故郷へのヘイトをもって台湾の首都台北の大学に入るのです。JDになるのです。

台北で音楽三昧のJDライフとなるわけです。気になる彼が現れたりね。で、その話の軸にずっと細野さんがいるのです。


MYSTERY TRAIN - Trailer ( 1989 ) - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=nb0yBDSqTfs

ジム・ジャームッシュ監督によるこの映画では、エルヴィス・プレスリーにあこがれてメンフィスの聖地巡礼にくる日本人カップルが現れます。若き日の永瀬正敏氏と工藤夕貴氏。
「緑の歌」でも緑が東京ではっぴいえんどを買おう!ってシーンがあります。台湾から飛行機で3時間でくることのできる日本ですが、このときの憧れの東京感は新幹線で3時間のところに住んでいるおれや、映画「君の名は。」での岐阜の田舎に住む主人公のそれと近いのかなと思ったけど、やっぱちょっとちがいますね。

本作がすばらしいのは「異国」であることなんですよ。作者や緑にとっては住んでいる場所である台湾であるけど、おれにとっては異国。それがすごくわかる描写です。それは精緻ということもあるけど、その場の空気をそのまま切り取って絵に落とし込んだのかもしれないと思うくらいのリアルが感じられるところです。太陽の暖かさ、街や海の匂い、雑踏のざわめき、夜の公園の静けさ、そういうのがみんな伝わる驚異。なんだこれは。
それは前記の東京描写のときにも感じた。逆に緑にとっては異国の東京をちゃんと描いてるところ。ああこれは異国であり東京だと。

んまあ、ぶっちゃけコーナーとしてこのバースでサラッと書かせてもらうと、緑は相当なサブカルクソ女ではあるし、おれもまあまあサブカル方面にどっぷりですがそれでもそう思えるくらいのクソっぷりなんだけどさ。

でも、それでも好きなものを好きと描くその姿勢、そしてそれがおれにきっちり伝わっってる。ココロの奥底からドワーっときます。

かなり純度の高い「好き」がつまっている。好きなものを好きと描き切る。絵を描くことなどの「表現」というものの原初の衝動が伝わってきます。

ああ!ここまで書いて天啓が。岡崎京子さんだ。彼女の初期にはその「好き」があふれているなあ。絵や描いている内容は全然ちがうけど、「これが好き」ってのの熱量は似ているなあと。というか、この時代の「好き」をつめこむタイプの漫画家を思い出しますね。あのころの漫画家はかなり偏った好みを臆せず描くひとが多かったよね。欄外に聞いていた音楽を書くとかさ。

そういう点でも異国を感じるね。日本の「いま」のマンガ事情とはちょっとちがう。そういうことを考えずに思い切り伸び伸び描いておられる。なおかつ絵はばっちり。話はポエミイだったり少女漫画チックだったり、話でグイグイ引っ張るわけでもないけど、空気が心地良い。登場人物もかわいい気持ちのいい人ばかりだしな。あと、憧れるものやひとが日本人ってのもうれしいしなあ。東京にいって松屋でハンバーグをたのんで「アニメのまんまのハンバーグがきた」ってラインを送ってるんですよ。かわいいじゃないですか。

鮮烈なマンガでした。

最後に本作で登場した台湾のポストロックバンドも紹介しておきましょう。

(1) 20121229_Feedback Rock。8mm Sky。I saw you a little bit@這牆 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=NtKB6KWKi9o
https://open.spotify.com/track/7Igr4UiLSJLQlr2TPs81Id?si=035becc7a9054aae
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2022年06月10日

時間停止勇者(9)光永 康則 講談社



エロとおもしろが反比例すると仮定する。
根拠としては、笑ってしまうと勃起しないしムラムラしない。
笑いに限らず、ある種の感情を持つ場合はムラムラ、すなわち性欲にリンクしない。
たとえば、怒りは性欲につながるとかさ。

で、
「時間勇者」の9巻を読んだ。
異世界転生したときにファミコンのコントローラを持たされた男。STARTボタンを押すと時間が停止する。それであらゆるチートを行って生き残っていくマンガ。
主人公はスケベなので時間を止めて裸にむいたり、乳首をぎゅーっとつまんだりパンツを下げて至近距離でみたりする。

そういうシーンが頻繁にあるけど、それを軽く凌駕するくらい物語がおもしろい。
いまはビーチバレー大会で国を賭けている。それと並行して剣聖(女)がダンジョンに潜っている。この2つの話がべらぼうにおもしろい。
なるほど一発芸みたいな設定なのに9巻も続くわけだ。

そしてエロを凌駕するほどおもしろいので相対的に日本1の1番エロくない=健全なマンガってことになるんだよね。

しかしもったいない。この一級品のおもしろさがアニメ化しにくいと思ったりするとなあ。
アニメ化ってそう考えると大事だよなあ。最近はおもしろいマンガを読むと、これをアニメ化して海外の「お友だち」の度肝を抜きたいなあと夢想するようになったんだよな。本作とか最高にびっくりするだろうなあと。

同様に淫獄団地なんかも無理なんだろうなあ。そちらも3巻が発売されました。こっちのほうはエロの比重は重いっすかね。





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2022年06月05日

10巻以上続くラブコメはなんかある

タイトルの通りです。気がつくと10巻以上買っているラブコメって多くなりました。このマンガはなにがあったので10巻以上つづいているのであろうか?っというか、定期購読している長期連載のラブコメマンガの「ここがすごいよね」というところを取り上げるだけの回です。いま、この時点で、取り上げようと思ってるマンガは2本くらいですし、何本取り上げるかも決めてないという、フリーセッションみたいな文章ですのでお気楽にどうぞ。


やんちゃギャルの安城さん10 加藤 雄一 少年画報社

奔放なギャルの安城さんと冴えない瀬戸くん。なぜか瀬戸くんに懐かれてる安城さんは、ツンデレのツン的な要素が皆無なので普通にエロ絡みしてくる。

本作は9巻終わり瀬戸くんが告白するところでのクリフハンガー。それを受けての10巻の大台の出だしから圧巻の告白回です。

本作は絵でねじ伏せるマンガで、安城さんをこれでもかとエロ可愛く描写するところがキモなんですがそれを鑑みても圧巻でした。見開きや1ページ打ち抜きの連発でビジュアルショック最高の告白を受けての安城さんをびっちり描写。すげえわ。売れるわけだわ。
そいでもって告白したところであんまり変わらないのもいいね。
陽性キャラの安城さんだからなあ。そこがまたよろしい。


イジらないで、長瀞さん(13)ナナシ 講談社

やんちゃギャルの安城さんと設定が似ている(どっちが先だっけ?どうでもいいか)、ギャルでスクールカースト上位の長瀞さんと冴えない美術部員のセンパイくんとのラブでコメな話。本作は10巻あたりから絵に変化がみられるようになり目を中心として描画が細密化した気はする。
でも、それよりも13巻。表紙の長瀞さんがバスタオル1枚の絵でもおわかりになるように、シャワー室を巡るエピソードが白眉。
古来よりラブコメでは伝統の、風呂を男女まちがえて入ってしまって大ピンチ回。
97話から3話にわたって繰り広げられての映画「ソウ」を思い出すくらいの緻密な話に、この使い古されたネタにまだ新しいものがあったのかという感心通り越して感動を覚えるくらいのものがありました。ちゃんとエッチだし。そして修学旅行回へと突入します。修学旅行を発明したひとって偉大だよね。こうでもないとクラスメイトといっしょに寝泊まりすることねえもんな。

アニメ2期も決まって安定度が抜群。いまトップくらいキレキレです。しかし、長瀞さんもだいぶデレデレになったなあ。こういうキャラの変化をみてとれるのも長期連載のいいところかもしれないっすよね。


上野さんは不器用 10 tugeneko 白泉社

科学部のマッド気味のサイエンティストの部長上野さんは部員の田中が好きなのでそのオーパーツな発明を使って自分を虜にすべく目論んではいるけど失敗してエロい目にあったりするという、こうやって簡潔に書き出すと良い設定だよなとしみじみ。
本作は10巻を持って終了となりました。けっこう間があったなあと思いつつも9巻10巻と同時発売。

この10巻の最終回2話が最高だったのです。こんな趣があり、見事な終わりは近年ちょっとないな。語らず話さず過不足なくなおかつ前後と。ということでもともと最高なマンガは伝説の名マンガとして完成したと思います。

作者の次回作期待してます。



からかい上手の(元)高木さん(15)稲葉 光史/山本 崇一朗 小学館

スピンオフ作品です。「からかい上手の高木さん」は可愛い少女を描かせたら当代随一(懐かしい表現だな)の山本崇一朗氏による出世作にしてアニメもつづく劇場映画も作られるというすごい作品です。そのスピンオフです。

隣の席の高木さんはいつもからかってくる。勝負を挑むけどすぐに負ける。この中学生男子のガキっぽさと、中学生女子の大人っぽさ(そういうふうに見えてた)が描かれている名作です。
で、(元)はふたりが結婚したあとの話です。子供もいます。たしか、スピンオフコンテストみたいのがあってその上位にいたやつでしたっけ?

本作は安定度と作画はどんどん本家に似ながら稲葉光史色が出てきているというなんだかすごい領域になってるなあと思います。内容も、夫婦でいながらも、からかい〜からかわれの関係はあまり変わらないし、そこに娘が関わっているので、より複合的な関係を楽しむことができるし、なによりハッピー家族なのがいいですしね。それで15巻ってすごいです。本家同様ストイックでシンプルな設定だからバリエーションを出すのが大変なんですよね。そのうえ、キャラ設定を引き継ぐわけですからそれなりの制限もありますしね。

あと刊行スピードですね。本家の最新刊は18巻で同日に16巻が発売される。だいぶ追いついている。山本崇一朗氏はほかに2本の連載も抱えてるんですがそれでもすごい話ではあありますね。



事情を知らない転校生がグイグイくる。(11)川村拓 スクウェア・エニックス

タイトルどおりの内容は1巻だけやったやんか!でおなじみの作品も11巻と。これも安定の刊行ペースです。
いじめられっ子の西村さんは無口で無愛想だから悪魔なんてあだ名をつけられてるけど、転校してきた西村くんが悪魔なんてあだ名かっこいいなんてグイグイ つきまとっているうちに西村さんがココロをひらいてどんどんかわいくなってラブコメっぽくなってまわりの友達も増えてって。
本作は11巻という長いスパンでありつつ、ちゃんと時間が進行している。それにつれてどんどんと叙情的な風景描写が多くなってきてます。11巻ではサーフィンに挑戦してます。この風景がたいそう美しかったり。サーフィンやるってなんだか
シンプルな太い線でいながら過不足なく描画できてるなあと。
やっぱ買ってしまうし読んでしまう。


いかがでしたでしょうか。あとちょっと思いつかない。最近出て手元にあるのを語りました。まあ、おもしろいラブコメはいいよねということで。
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2022年05月17日

「絶滅動物物語 」 うすくらふみ 今泉忠明 (小学館)




タイトルの通り、絶滅した動物を描いた1話完結の読み切りオムニバスです。1話1動物絶滅します。

現在は6回目の大絶滅の時代だそうです。これまでの5回は気性変動や生存競争に負けたものですが、6回目は人間によるものです。本作は人間によって動物がいかに絶滅したかを描いているものです。

これが罪悪感がすごいすごい。読後、非常に後ろめたい。

ステラーカイギュウやリュウコウバトのように「美味い」から食べ尽くしたというのはまだ序の口だというのが本作を読むと突きつけられる。

ネタバレに配慮するので詳しくは書きませんが、「こんなことで絶滅するのか」と絶句するようなのや、「やりきれねえな」ってのがあります。

人間っていろいろな意味ですげえなと、そしてこのバツの悪さはなんだ?とモヤる。ひいては人間とはなんだ?生きるとはなんだ?

絶滅させられるのは動物だけじゃないとか、いろいろな教訓をひねり出すこともできますが、まあ、さしあたっては絶滅していった動物たちに思いを馳せておこうか。

筆致や描写が凄まじいからこそ湧き上がったもので、マンガとしての完成度は高く、動物はもとより各考証も正しいのだろう。それで生まれた説得力か。

読みましょう。おれと同じ後ろめたくなりましょう。多くのひとが背負ってもいい後ろめたさですから。

絶滅動物物語 | うすくらふみ 今泉忠明 | 【試し読みあり】 ? 小学館コミック https://shogakukan-comic.jp/book?isbn=9784098612758

「ステラーカイギュウ」の回を読めます。

なお、表紙にもなっているドードー。ドラえもんや不思議の国のアリスでおなじみで、絶滅動物の代表となってます。
動きが鈍く警戒しなかったので捕まえて食用とされたために絶滅したとなってますが、実際はあの鳥の肉はすごく不味いそうです。
じゃあなんでなくなったのか?ってのがまた。



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2022年02月13日

令和4年の答え合わせ〜大友克洋全集 8 童夢〜



2022年1月21日に大友克洋全集が発売された。1回配本は「童夢」と映画「AKIRA」のストーリーボード。おれはマンガにしか興味がない気味なので童夢だけとりあえず買った。金銭的な事情も大きい。童夢にしても税込み2970円ですからね。でもこれは買ったよ。そりゃあ買うよ。

オリジナル版は発売は1983年8月18日。任天堂ファミリーコンピューター発売は同じ年1983年7月です。そして「AKIRA」の1巻は1984年9月14日です。おれは15歳でした。そりゃあ影響を受けるなってのが無理でしょうや。いまでも買った場所もシチュエーションもわかりますよ。富山市を代表する書店清明堂ですよ。当時はマンガ売り場がビルの5Fにありました。ガタゴトいって昇るエレベータの5Fの扉が開いた眼の前に童夢が平積みになっていた。たぶん発売日に買ってます。たぶん、並べ立て(開店直後)にみつけてます。みつけたとき「あっ」って声が出たのも覚えてます。

なぜ「あっ」って声が出たのかというと、やっと大友克洋らしいすごいのが出たからです。それまでに発売されていた氏の作品は短編集ばかりだからで話題ばかり先行し漏れ聞こえてきていました。

「すごいSF作品がある」「まだ発売されていない」「幻の未完作品もある」なんて雑誌のコラムにあって期待してたんですよね。それが「童夢」であり「FireBall」だったりするのです。それが出たんですよね。なんていうかな、底をしることのできなかった「大友克洋」のほんのちょっとしたものですが一端が垣間見ることができたというか。

そんな大昔のマンガ、ヤングの君等がいま読む価値あるのか?と思いそうですが、それは実のところこちらも判断つきかねます。それこそSWITCHのネット会員だったら遊ぶことができるファミコンのおまけゲームを遊んでどう思うか?ってことでなんとなく判断できそうな気がしないでもないが、実際問題、この作品から時代は変わりました。比喩表現とかではなくて文字通りの意味です。
1980年から連載されて、世界中のすべての流れ(とくにエンタメ)にあった変革とがっちりシンクロしてすべてが変わるなかのマンガの代表作がこれです。はじまりでありながらとどめの一撃でした。そう、ニューウェーブがはじまります。
すべてのマンガが変わっていきます。古い70年代を丁寧に殲滅していきます。彼らの死体は90年代中盤くらいに発掘されるまで強制コールドスリープにつきます。引導を渡したのです。

藤子不二雄A氏の「まんが道」。バスで移動しているときに前の少年がみていた手塚治虫氏の「新宝島」。このマンガがとっても「映画」だったことに両氏がインパクトを受けてなおかつマンガに描きはじめる展開になります。
本作「童夢」も衝撃の方向としてはそれですね。より映画になっていきました。

あらすじ書いてなかったですね。
郊外のマンモス団地が舞台。住人の不審死が相次いでいる。目的や意味がわからないままどんどん死んでいく。そこで刑事が乗り込んで調査を開始するが刑事も事件に巻き込まれ死んでしまう。

圧倒的画力。緻密描画、ページコストがものすげえ高そうなもの。それを「映画的な視覚効果」のために惜しげもなく使う。

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オープニング。男が団地の屋上から飛び降りるシーンを見開きの団地の空撮で表現してます。現在はドローンなどで再現できたでしょうが、これ当時、実写で撮るとなるとかなり大変なことになったでしょうね。そしてもちろんマンガでも。見開きいっぱいの団地の俯瞰に吹き出しの「どさ」って死体が落ちるシーン。この吹き出し効果は今後大量にパクられてスタンダードな手法になりますが、見開きの団地はちょっとできないんですよね。実にそういうところが大友克洋で童夢なのです。

ただ現在はPC技術の発展により「圧倒的?精緻?そうでもないな」と思ったのが最初。そりゃあ当時はすごかったプレイステーションの画像も5と比べたらねえってことと同じやで。

だがそう思った次の瞬間。この線の1本1本が人の手によって描かれてると思い愕然とする。背景を描いていたのはほぼ高寺彰彦氏だそうですが。

あしたのジョーに憧れて(3)<完> 川 三番地 (講談社 KCデラックス 月刊少年マガジン): ポトチャリコミック
川 三番地氏の「あしたのジョーに憧れて」という作品はちばてつや氏のマンガアシスタントをしてたときの背景技術描画技術について描かれたエッセイコミックですが同様のロストテクノロジーではあります。このマンガで描かれたあらゆる技法は今となってはかなり失われたものです。そういうことをして再現する意味がないですからね。高寺氏は他界されているし。

当時は圧倒的な背景に気を取られがちでしたが、いまやPCからの写真取り込みのあーでこーでのおかげでインパクトはかなり薄まっております。
ただ夜のマンモス団地の「空気」はなにより描かれております。というか、「事件」はおもに夜に起こる。そのときに急に背景の団地がジャストピントになって冷ややかなぼんやりとしたライティングに不気味に映える団地。
この「背景」としての団地と、恐怖の舞台として小道具としての団地になるときの雰囲気を描きわけることができるのは人力ならではと思いますね。リアルならいいってもんじゃないんですよね。

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団地にはボーダイなひとが住んでおり、寝ている。ホラー映画の定石で人気のないところというものから考えると千の数の人間が住んでいそうな団地が怖いマンガの舞台になるということはいかに画期的だったのか。それなのにいやに閉鎖的なんですよね。どこにでも通じているのに出られない感じがする。それも「描き方」次第ではあるんだけどね。
あと登場人物に無駄な情報が一切ない。主人公は悦子って名前以外名字すら無い。昨今の人気投票はじめるから生年月日まで決めておくとかはまったくない。
主人公悦子は、石ノ森章太郎氏の「さるとびエッちゃん」からきているらしい。前々からインタビュー等で語っておられたらしいがおれは本作のあとがきではじめて知った。
これでかなり腑に落ちたことがある。
本作はぶっちゃけると少女と老人が団地を舞台に行うサイキックバトルマンガです。ふたりともありとあらゆる超能力を本作で炸裂させて戦ってます。
悦子も敵であるチョウさんも能力者です。本編には「それ」に対する表記すらありません。だけどお互いに敵であることはわかる状態。
それでいてありとあらゆる超能力を使うことができます。ここが驚き。超能力というと、「ひとり1能力」って暗黙の了解がある。たとえばテレパシー能力のひとはそれだけとか。でも、童夢の能力者はあらゆる能力をかなり高度に使うことができる。

読んだ「当時」はそれに違和感があったけど、なるほど「さるとびエッちゃん」と聞くとガテンがいく。さるとびエッちゃんはいわゆる不思議少女が不思議な力を使うというマンガだ。別に事件を解決したりみんなを助けるわけでもない。きまぐれに不思議な能力を使う。そしてあらゆる能力がある。それは「エスパー」とか「超能力」という名前がついているわけではない。「不思議なチカラ」である。忍術でも魔法でもいいやつ。魔法が近いですか。魔法少女。魔法少女も後々には能力制限期がきますよね。ベタなところだと「おジャ魔女どれみ」あたりは。できることできないことがかなり明確にあったし限定されてましたよね。
「魔法少女まどかマギカ」あたりになるとまたざっくりといろいろなことができるようになりますが。

「童夢」のチョウさんはその能力を私利私欲で使っていて、悦子が正義の能力者かというとそうではないことが本作の実に1番恐ろしいところです。
定型的ではありますが、「サルでも描けるまんが教室」で言語化された超能力少女が能力を暴走させてしまう「イヤボン」現象が本作でも見受けられる。悦子は本作で人を殺してるし躊躇がない。もちろん感情が高ぶっているというエクスキューズはあるとしてもその後なんのペナルティもない。仮になにかあったとしてもテレポートが使えるので関係がないんだが。

悦子は正義でチョウさんを殺した。ただしそれはかなり薄っぺらいものであって、それが絶対的な正しさや考えられたものではなく、クラスの男子が悪ノリしているのを諌めるってレベルの正義なんだよね。それはいつもみているTVアニメやマンガで得られる程度の。親にしつけられた程度の。
ラストも、単純に友達を殺されたのと怖い目に遭わされた報復しとしてチョウさんに仕返しをした。複雑な感情の交錯した果てともいえるけど。

チョウさんもそもそも悪意がない。単純に悦子のほうが強いので怖がってたけどみなくなったから大丈夫と安心していた。この「ケンカ」は済んだと思っていたからこその今回表紙にもなった見開きの恐怖顔なんだよね。
このふたりは「子供」の思考で超能力バトルをして多数の死傷者を出している。その悦子がふっと姿を消してしまうというラストも考えるとしみじみ怖い。この先も、彼女は彼女の価値観と気持ちの赴くままにいろいろする可能性はある。

あるいは可能性としてチョウさんはアルツハイマーになり赤ちゃん返りしたことで能力が発動した。つまり、悦子は大人になることで能力が封印される可能性もある。
そこらへんははっきりさせないしさせる必要がない。そう、本作が1番いいのは語りすぎてないことだよね。ストーリーの全容がわかるひとはもはやいないし、起こったことをそのまま描いただけで物語ははじまり終わる。

今回あとがきを読むと、意味ありげに登場したわりにあまり活躍しなかった団地の変人らにはそれぞれ仲間になって団結して戦うなんて構想もあったそうですが、そこらへんはカットしたほうが「残った」とは思う。

で、タイトルの答え合わせであり、結論は、マンガは適度に終わらせることが大事ってことですよ。本作は語りすぎず、描きすぎたために永遠のマスターピースとなり、それはマンガ全体を変え、ここで培われたものは「AKIRA」へとつながっていったりもするわけです。

参考リンク:
聖地巡礼 「童夢・川口芝園団地」: 海cafe2 https://umi-cafe2.at.webry.info/202201/article_22.html
大友克洋の『童夢』のモデルになった団地は今・・・ 『芝園団地に住んでいます』 | BOOKウォッチ https://books.j-
cast.com/2020/10/24013264.html

(後者のリンク記事が非常に興味深し)

posted by すけきょう at 01:07| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月06日

愛するなら女たちの身体がいい 〜TS3本〜

流行りのTSモノ3作品を軸に語ります。

はちゃめちゃネタバレで1本は映像作品なので折りたたみ後にそれを書きます。それまでは概要とか書きます。興味があったらどうぞ。おもしろいものばかりですよ。



異世界美少女受肉おじさんと
親友2人。女神に異世界に飛ばされてしまう。そのときにモテない男は金髪美少女になることを願う。叶う。そして呪いをかけられる。ふたりとも惹かれ合う。それを認めるとなにかが壊れると思うので必死に否定するが惹かれ合う。
現在(2022/02/05)アニメ放映中で冬のダークホースとして話題になっています。おれも1話をみてビビビときてあっという間に去年の「このマンガがすごい」のギャラである図書カードを使って既刊6巻を揃えて一気読み。
表紙からしてなんかのパロディだよね?ってのがもりだくさん。正直なところ、この分野にはあまり詳しくないのですが、そういうのがなくても笑って楽しむことのできるほがらかTSラブコメって感じで。



VRおじさんの初恋
サービス終了が告げられているVR世界。JKのアバターの主人公ナオキ(中は独身彼女いない歴年齢のおじさん)は痴女のようなセクシーな女性ホナミと出会う。もう終わる世界をいっしょにめぐっているうちに互いに惹かれ合う。ところがホナミが急に回線から落ち連絡がとれない。忘れられないナオキはハッキングをしてホナミのデータを読み取り会いに行く。

Twitterで話題になったマンガです。その後の話も含めての単行本化しました。そこも含めて泣けたね。


『ブラック・ミラー- ストライキング・バイパーズ』予告編 - 動画 Dailymotion https://www.dailymotion.com/video/x790t1d
ネットフリックス専用の配信ドラマシリーズです。イギリス制作の「ブラックミラー」という「世にも奇妙な物語」「トワライライトゾーン」みたいな1話完結のシリーズです。特徴は近未来が舞台ってことですね。
親友2人。格ゲーを何時間でも遊び合う関係。時が経ちお互いに家庭ができなかなかVRの格ゲーでネットで遊ぶことにする。そこでヴァーチャルセックスをはじめる。これがとてもよくて離れられなくなる。妻子がいるので罪悪感を持つ。でもやめられない。

これらに共通しているものとはなにかと。折りたたみます。以下はバリバリネタバレなのでできれば読んでくださいよ。



追記あり
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2021年09月14日

怪獣8号 4 松本 直也 (ジャンプコミックス) [

怪獣8号 4 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス
怪獣8号 4 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス

4巻出たタイミングなので感想文書きます。
1話がネットでバズってから単行本はすぐに買ってますしけっこう読み返してます。

怪獣が現れる世界。主人公カフカは32歳。幼馴染の約束を守り防衛隊の隊員になろうとしたのだけど落とされて、怪獣を退治したあとの掃除係をしている。ところがある怪獣を飲み込んで怪獣8号になる。

そいでもって防衛隊をやりながら怪獣8号もやって、迫りくる怪獣をやっつけるという図式。

ベタな設定でしょ。実際、おっさんが怪獣だとバレないようにがんばって人知れず戦うって怪獣を正義の味方風の見かけにしたらもう山のようにあるじゃないですか。ウルトラマン仮面ライダーを筆頭として、まあ仮面ライダーにしても最初の設定はバッタ男で改造人間ではあったんだもんね。

そういう展開とわかってはいたけど、異様なスピードとテンポ。バトルや、見開きの止め絵でのアングルやタイミングのうまさなどで、ちょっと抜きん出たおもしろさはある。
実際、バトルモノマンガは集英社にヤマのようにあるし、その中にあって「普通」の世界観や設定ではある。ベタの度合い、絵のオーソドックスさ、その他、ざっくりと「普通」ではある。ただしおれは今はダントツで好き。なぜならいろいろ割り切ったうえの読みやすさ、ストレスフリー度が半端ないから。
3巻でのラスボス級のタチの悪い敵をもうちょっとで取り逃がしてからの「連戦」には正直ビビったし心が震えた。
なかなか敵が死なないとか、なかなか戦いが続くってのはあるし、その亜流ではあるんだけど、そのタイミングでそうくるか!ってのにしびれるんですよ。そして敵に逃げられ、自分は逃げたと。

で、その、「逃げる逃げない」をひっかけつつの4巻の展開。すばらしいよ。

まー主要キャラがかっこいい。そのキャラを最大限活かす絶妙な止め絵の1ページ2ページのぶち抜き。ONE PIECEの「ドン」部分ですね。そしてこの「ドン」が終わらない。まだくるか!こうくるか!ってドンドン畳み掛ける。読者の気を緩ませる安心させる余地をできるだけ削いでいる。出し惜しみしなさすぎてないか?って。作者の引き出しすべて机から引き出して引き出し逆さまにして中身を出し続けてるくらいの大盤振る舞いなんだよな。そこがすごく心配。それくらいの全力。
かつて、そして今は長いこと読んでませんが今もそうであろう、ONE PIECE。作者はずっと105%で突っ走っている。ただ、本作は120%くらい出してるんじゃないかと思う。

そして、たいそう酷なことをいわせてもらうと、このマンガは、120%じゃなくなったらすぐに死にます。そういうタイプの全力です。
スーパーマリオの星だけ撮りつつひたすらダッシュボタンを押し続けなければならないという地獄です。スターを取り損なってもBダッシュボタンを離しても死にます。「そういうマンガ」だからです。

作者すごくしんどそうに思います。これがどこまでつづくのか心配してます。このマラソン大会で100m走みたいなの、集英社のマンガには多いし、過去、これでつぶれてきたひと多いです。彼らを想起します。
それこそ、さっきから引き合いに出しまくりですが、アラバスタ編までのONE PIECEとかはもうそういう感じでしたよね。そこらへんは何度も読み返してました。だっておもしろかったから。作者はどうやってこれから逃げ出せたのだろうか。まあ、正直その次のからおもしろさは急速に抜けた気はしましたが。

今後どうなるんでしょうか。心配してます。が、おもしろくあっててくれとも思います(正直4巻後半のエピソード4はちょっと落ちてる)。

怪獣8号 1 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス
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怪獣8号 2 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス
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怪獣8号 3 (ジャンプコミックス) [ 松本 直也 ] - 楽天ブックス
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怪獣8号 4 (ジャンプコミックスDIGITAL) - 松本直也
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2021年09月11日

東京ヒゴロ 1 松本大洋(小学館)

東京ヒゴロ(1) (ビッグ コミックス) [ 松本 大洋 ] - 楽天ブックス
東京ヒゴロ(1) (ビッグ コミックス) [ 松本 大洋 ] - 楽天ブックス

モーニングを創刊号から買っていたのです。それはたぶん、ヤングマガジンも、ヤングジャンプも、ビッグコミックスピリッツも、創刊号に間に合わなかったからで、中とじの雑誌をひとつ購読したい欲があったからです。どうせなら創刊号から読みたかったのです。そのタイミングに応えてくれたのがモーニングです。高校のときに出ました。
その間にモーニング(イブニング、アフタヌーン他)に描いたひとはだいたい覚えてますし、モーニングの賞などでモーニング生え抜きの作者はデビューから知っているという段取りです。
結局15年ほど買ってました。未読の雑誌が10冊たまって「もう無理だ」と辞めました。

そういうわけで松本大洋氏はデビューの野球マンガを描いていたころから存じております。そして小学館に舞台を移しての「ピンポン」。同じく創刊号から読んでいた「IKKI」での「ナンバーファイブ 吾」。あとは描き下ろしの単行本「GOGOモンスター」。
ここらへんが作者との接点のすべてです。

本作は書店で目にしました。昨今はとんと書店に行かなくなり反省することしきりのマンガライフですが、本作は目があった瞬間ビビビときて、かなり久しぶりに松本大洋氏を手にとったのです。

これが最高でしたよ。なんとなれば2021年でもベスト2くらいの衝撃。正直にいうと1位は「ルックバック」です。

主人公・塩澤は、30年勤めたマンガ編集の仕事を、自身が立ち上げた雑誌の廃刊に責任を感じ辞めた。
マンガから離れようといろいろと模索するも自分がマンガ好きであることに嘘はつけず、自腹で本をつくろうと、好きなマンガ家たちを訪ねる。

まずおもしろいこと。次いでわかりやすいこと。
おれの知ってる「松本大洋」とはちがい各キャラが饒舌に状況をなんとなれば説明口調でしゃべる。それが生き生きしておりおもしろくて、実にわかりやすい。すんなり入ってくる。
この明確さに驚く。あれ?松本大洋っていったらなんだけど、「お芸術」っぽいマンガを描いていたイメージあったよな。今年は小学館の日本短編漫画傑作集やちくま文庫の現代マンガ選集などを読んでるからちょっと「お芸術」なマンガには耐性があるし大丈夫やろと気構えて読んでいたので拍子抜けするくらいわかりやすくておもしろかった。

登場するキャラがいちいち魅力的。実直でありマンガに対するどろどろのマグマのようなパッションを持っている主人公。長年の友達でありいっしょにマンガを作り上げた売れっ子の長作。
彼に後釜をまかされたものの担当のマンガ家と上手くいってない美人編集。
主人公を慕っていたためにあてがわれた女編集に反目する描けないマンガ家。
そして主人公が本を自腹で作ろうと思ったときに毎回出てくるマンガ家たち。
このどれもがナイスキャラ。後半のゲストマンガ家がいちいち最高。

とくに主人公な。高倉健な。彼は実写映画化するなら同い年くらい(40代後半かしらね)の高倉健氏にする以外ないだろうってほどかっこいい。眼鏡のつるがおれてるのでテープを巻いてるがマンガには糸目をつけない。すべてのひとに対して礼儀正しい。そして率直。上記の友達マンガに「最近おもしろくない」と告げるときに涙を流している。ベタと思いつつも率直さや心情が伺え心を打たれる。
とてもかっこいい。そしてマンガに対してとても真摯で率直。見習いたい。かっこいい。しみじみかっこいい。

読んでいるうちに思い出すよ。おれもマンガ好きなんだなと。(さあ自分語りコーナーだ)
いろいろあったマイライフ、いろいろな目にあって、なんつか、ゲームってしみじみしなくなった2021年でさ。音楽はサブスクで聞いてるけど、前ほど情熱がなくなってる気はする。で、マンガばかり読んでいた。そして読んでも読んでも飽きない。おれの人生にはずっとマンガがあったなと思う。そして、あらためておれってマンガが好きなんだなあと感じる2021年であった。

と、本作のベタさとストレートさとパッションにほだされてついこういうことを語りたくなるわけですよ。

オススメしますよ。

そして2点。

本作、長作ってマンガ家がとくにそうなんだけど、東京の風景がいちいち古い。昭和からある喫茶店だったり古書店。主人公の家も古くてしぶい。スマホは出てくるけど、いちいちは昭和からあってもおかしくないオブジェクトが多い。長作は令和に似つかわしくない、四六時中タバコを吸ってたりするし。
これはおれの知ってる平成のはじめの東京だなと。

毎話最終ページは東京の遠景が映るななんて思ってたけど、これって、表紙の鳥の眼からみた風景なんだなと気がつく。主人公は飼ってる鳥と話している。イマジナリーフレンドみたいなものかと思っていたら、鳥とは全般的に話す能力があるみたいだ。これが今後どう関わってくる設定なのかはわからないけど、鳥の目でみた東京はとてもクールでホットだなと。

この物語は最後まで見届けたい。すぐにつづきを読みたい。こういう強い気持ちがあります。

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(このビシッと礼をしている感じ、高倉健さんって感じしないっすか?)



東京ヒゴロ(1) (ビッグコミックススペシャル) - 松本大洋
東京ヒゴロ(1) (ビッグコミックススペシャル) - 松本大洋























posted by すけきょう at 22:33| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月04日

ルックバック 藤本 タツキ (ジャンプコミックス)

ルックバック (ジャンプコミックス) [ 藤本 タツキ ] - 楽天ブックス
ルックバック (ジャンプコミックス) [ 藤本 タツキ ] - 楽天ブックス

ジャンプ+で史上最多閲覧を誇る読み切り作品です。紙の本で出ました。買いました。

途中までのだらだらとしたあらすじを書きます。最多閲覧なので「知ってるよ」という方も多いでしょうが。

藤野は小学校の学級新聞での4コママンガで英雄だった。勉強もできるし体育もできるしおもしろいマンガも描くことができる。
ある日、引きこもりで絵を描いてる同級生のマンガもその横に載せてくれ(学級新聞に2本の枠があった)と担任(実に担任は本作での藤野の人生に関わる唯一の大人だったりするよね)にたのまれて了承しつつも「引きこもりに絵が描けるの?」なんて態度。
ところが彼女・京本の絵が載った瞬間クラス中に衝撃。4コマというか4つの風景画が載ったもの。クラス中衝撃だったが藤野はとくにショック。彼女はそのクオリティを1番わかってるから。
よおし見返してやると絵の描き方の本とスケッチブックを買って絵を描き続ける。それで2年。
ところが描いても描いても京本に追いつけない。そのうちに友達も家族も「絵ばかり描いててつまらない」「絵は卒業しなよ」という。称賛を受けるためにはじめたのに否定されはじめる。そこで藤野もある日突然「やーめた」と絵を描くのを辞める。そして友達と帰り道に買い食いしたり空手教室に通ったり家族でテレビをみたりする。
小学校卒業の日、担任に引きこもりの京本の家に卒業証書を届けろといわれる。
藤野は気乗りしないままに彼女の家に証書を届けに行く。家にいて反応がないの中に入ると廊下に大量のスケッチブック。そこで京本への4コマを描いてみるのだが「なにやってるんだ?」と思った瞬間、4コマの紙が落ちて、ドアの下から京本の部屋に吸い込まれていく。「やべえ」と逃げるように藤野は外に出ていく。
家に出た藤野を追いかけるように京本が現れる。大ファンだという着ている半纏にサインまでしてもらう。京本は途中でなぜ描かなくなった?と尋ねる。「これからマンガの賞に応募するから」と藤野は答える。京本には「みせてみせて」と渇望される。
降り出した雨の中、藤野は踊りながら家路につく。濡れたままのランドセルと靴下を放置してマンガを描き始める。

https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496401369355

ジャンプ+の「試し読み」にはそこまでの内容があります。50ページ弱。全体の1/3くらいですか。それで確信したよね。ここまでで短編として完成してるって。
藤野はマンガ家として最強最上の体験をしたんだよな。京本をライバル視してて追いついてやろうと2年弱の努力の結果、追いつけなかった存在に、ファンだと絶賛されて次回作をねだられる。こんな経験、マンガ家としてのみならずなかなか体験できないよな。そりゃあマンガ描くよな続けるよな。自分が報われた瞬間だよ。

雨の中のあぜ道のダンスシーンはすばらしく美しいし、本作品全体の最大のクライマックスです。最初の1/3でそこになるわけです。しかし、ライフゴーズオン。人生はつづく。物語もつづいていくわけです。

本作は、完成された短編のつづきがおもしろかったところがすごかったのです。蛇足にはならなかった。

雨のダンスシーン。このクライマックスによって「意味」が生まれた。以降、藤野の家周辺の田んぼのあぜ道はドラマを作りだす場になった。

本作、表紙でもそうだけど、背中を向けての部屋での執筆シーンが永遠にある。学習机っぽいのにパイプ椅子だったりする「リアル」。その後のバランスボールに座って仕事しているのもそうだ。どっちもめっちゃ腰をやりそうなんだけどさ。
背景にあるインプットとアウトプットの増減。
小4の「これから真剣に絵を描く」としてるときに、本棚に並ぶマンガ雑誌。それはあるとき消え、美術のための参考書(インプット)と、スケッチブック(アウトプット)に変わる。京本と描いてるときはまた雑誌が増えるのもいいよね。「**の**は最高」みたいな感じで揃って影響を受けてたんだろうなあとか。

タイトルのいくつか意味が内包された「ルックバック」。その意味のひとつである背中だけをみせる執筆シーンは、マンガを描くって「それだけ」ってことなんだよね。インプットからのアウトプットだけになる。この物語の大半マンガを描いてるだけなんだ。

物語が動くのは道なんだよね。

・藤野京本が出会った。
・完全にマンガを描くためのモードになり友達ともほとんどつきあわずひとりで下校しひとりで藤野の家に帰る。家には学校にも行かずにマンガを描いてる京本がいる。
・ふたりで描いて投稿したマンガの発表をみに雪道をかき分けコンビニに届いたジャンプをみにいく。
・入選したマンガの賞金で豪遊しようと町へふたりで繰り出す。
・連載マンガを手伝えないと京本が断る。

そして。

ネットで話題になった袂を分かった京本が通う学校で通り魔により京本が殺害される。そのあとに道がない。殺害をテレビで知った藤野は次の瞬間京本の家の中にいる。

藤野と京本が出会ったときに「道」が現れる。そして京本の死により道は消える。つまり、ふたりの「まんが道」だったわけです。

ネットで話題になった通り魔描写。あれってニュースをもとに「藤野が妄想で」作り出したキャラなんだよね。通り魔が登場する以前のシーン、藤野と京本が「会ってない」時間軸の物語はずっと藤野の妄想なんだよ。

だから、おれはこの通り魔描写は心底どうでもいいと思ったんだよね。だってそれはマンガ内においての「事実」ですらないんだから。どういう精神疾患があったとしてもそれは関係がない。藤野の妄想だから。藤野が精神病に詳しいかどうかはわからないしそれが正確かどうかはもちろんわからない。そこが重要とは思えない。それが証拠に、問題がネットで提起された瞬間にすばやく変更された。そして単行本化された際にまた変わった。おれは3種類のバージョンを目にはしてるがその「効果」の差は感じない。だから「どうでもいい」と思った。いまも思ってるし、それがどうであろうとこのすばらしい物語に一切の変化はない。

妄想による物語の書き換えで現れる道は、京本が家に帰るところ。それは京本の部屋の前のスケッチブックの廊下に座っている藤野の妄想です。妄想の「まんが道」です。


「じゃあ 藤野ちゃんはなんで描いてるの?」

その結果帰結するこのこの答えこそがすべてなのです。

本作と「バクマン」というアニメ化も実写映画化もした作品との対比がとてもおもしろい。


なんのためにマンガを描いているのか?


本作の答えは、40ページ、83ページ、119ページ、133ページにあります。


それがきっちりと上記50ページ弱の短編として完成しているの第1幕につながっている。しかも、言葉はない。

すばらしいです。なんどみてもぐっときます。最初からきちんと1本の線につながってます。ピュアで尊くて強い。それこそが本作の1番キモ。

神は細部に宿るなんていいます。ディティール。上記の通り魔描写もそうですが、いろいろと細かい仕掛けが施してあります。個人的には設定やディティールは物語を高めるためだけにあるもので、それを超えることはナンセンスだと思ってます。ゆで卵にかける塩が最上級だとどれくらいゆで卵が美味しくなるかってことっすよ。ま、重要なんですけどね。おれはゆで卵自体が美味しいかどうかに重きを置くのですよ。へのつっぱりはいらんですよ(それちがうゆでたまご)。

しかし、最初からそれありきで動いていたとはいえ、ネットで公開しちゃんと紙の本として出したことはすごいです。このマンガは短編集にありものの「カップリング」はないほうがいいですし、紙の本で持って置かなければってモノです。だからただただありがたいです。

日本短編漫画傑作集 | 書籍 | 小学館 https://www.shogakukan.co.jp/books/volume/50309
日本短編漫画傑作集 VA. (小学館): ポトチャリコミック http://sukekyo.seesaa.net/article/482745584.html?seesaa_related=category


2021年に買って損なし今後の歴史に残る1冊です。100年後の「日本短編漫画傑作集」にはこのページ数を割いても収録されるべき1本です。

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表情も絶妙だよな。


ルックバック (ジャンプコミックスDIGITAL) - 藤本タツキ
ルックバック (ジャンプコミックスDIGITAL) - 藤本タツキ

posted by すけきょう at 17:38| Comment(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする