2024年01月15日

うみそらかぜに花 大石まさる 全4巻 (少年画報社)

うみそらかぜに花 1 (YKコミックス) [ 大石 まさる ] - 楽天ブックス
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うみそらかぜに花 2 (YKコミックス) [ 大石 まさる ] - 楽天ブックス
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うみそらかぜに花 3 (YKコミックス) [ 大石 まさる ] - 楽天ブックス
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うみそらかぜに花 4 (YKコミックス) [ 大石 まさる ] - 楽天ブックス
うみそらかぜに花 4 (YKコミックス) [ 大石 まさる ] - 楽天ブックス

2023年はAIがいよいよすごいことになり、先日は、サラサラと描いたいたずら書きレベルの絵がAIのチカラで美麗なイラストに早変わりしていた。

※参照
絵がヘタすぎてもテキトーに描くだけでチョー美しい絵にしてくれるAIがスゴイ!→ マジで凄かった件「Akuma.ai」 | ガジェット通信 GetNews https://getnews.jp/archives/3463412

そうなると漫画家ってなんだろう?って思ったりするのです。もっとゲスいことをいうと「自分でもかんたんにマンガ家になれるのかな?」と思ったり。

「うみそらかぜに花」は2020年から2023年にかけてヤングキングアワーズに連載されていました。全4巻。

中学生男女による学園ラブコメ。連れ子同士が再婚して、再婚夫婦がラブラブなもんで長期の旅行に出かけたから、ひとつ屋根の下に暮らしていいるけど、そのことはみんなにナイショナイショという。
うーん、王道過ぎたために平成では避けられていたようなやつだなあって。
逆に言うと新鮮!ってことです。

描くはヤングキングアワーズの重鎮大石まさる氏です。単行本発売即買い作家20年連続ベスト3入り(おれ調べ)です。

SF&ファンタジー分野で描かれてますが、日常ネタも描かれていて、でも、割合とハイブリッドなものが多くて、それはつまりどういうことかというと、SFやファンタジーな世界で「日常」を過ごしているってシーンが印象深いです。どこの時代や世界でもひとは日常を送る的な。それがライフワーク的な? 信条的な? ただあえてそれをずらしていく冒険活劇も多いですし、だがそのなかでも「けれん」と「刺激」と「変化」が多くて飽きさせまいという工夫が多いです。

「うみそらかぜに花」はあえての「普通」がハマってます。
そしてイチャイチャドキドキのエロエロのラブコメではないんですよね。
スマホなんかをさわってる現代っ子。主人公ヒロインそれぞれの友達、そしてそれぞれの親。大石マンガの定番のおじいちゃんキャラにたくさんいる動物も全部全員愛らしい。
1巻1話学園マンガのセオリーではクライマックス中のクライマックスであるから大事に大事にしていたい学園祭からスタートしますし、これまた美味しいところであるヒロインが別の男に言い寄られるという、トリッキーすぎるスタートです。
そこから4巻まで1年間というところでしょうか。
夏休みが長くて自然と戯れる系の遊びが多いからいつもの「大石節」になってはいきますが、それはかなりウエルカムな感じです。

3巻で作者が病気による長期の休載だったり、その影響なのか4巻はあとがきで異例な謝罪があったり、そもそも全部書影載せておきますが4巻の表紙だけは描き下ろしではなくて1巻のある回の表紙に彩色したものになってます。
4巻はマンガの画風が変わって感じるほどになります。1巻2巻の画力で殴りつける感じが弱まってきます。ホントいろいろあったんだなあと思わせます。ただ、そういうこと抜きに4巻でキレイに終わっててます。さわやかに、さっぱりと。
だから、大石まさる初見にも、知っておられる方にもオススメできます。
とくにおれに似た年齢の方、すなわち、いい歳こいたおっさん。
本作に出てくる中学生たちをみている大石氏の視点は孫を見るそれです。その湯加減がとても心地良い。未読のマンガがヤマのようにあるのにその「湯」につかってたくて再読しまくってます。最初から最後までストーリーも絵も長さもキャラたちもホントいい感じなのよね。

最近になり、少し考え方を改めました。
マンガはおもしろければそれでいい。おもしろいマンガこそがえらいマンガと思っていました。
ちがいました。いえ、そんなちがってません。ちょっとちがいます。どないやねん。
最初の話に戻りますが、この分だと早晩AIは「おもしろい」マンガを生み出すことができそうだなと思えてきました。
売れている話、ネタの切り口、盛り上げる展開、手堅いキャラ配置、そして作画。これらを分析させると「おもしろいマンガ」はできそうです。
どれとはいいませんがそういうノウハウで「人力」で作られたマンガは数多くありますし、「それ」によりマネーを生み出すためのノウハウこそがマンガ躍進の原動力といってもいいすぎではありません。その作業の多くをAIに任せるだけです。これまでの作業とあまり差はないです。
それはまことにけっこうなことではあるけど、つらつらと考えるに、おれはその「おもしろい」マンガをそんなに持ってないし読んでないぞということに気がつきました。
逆説的ですが、最近の電子書籍(どこらへんが電子なのかいまもってよくわからないのですが)で安くなった昭和からのおもしろ追求マンガが安いので大量に大人買い(子供でも買うことのできる値段なんだよなこれが)したことで余計にはっきりしました。
昭和平成の名作と呼ばれる何十巻も続いているマンガがタブレットに全部収録されていて、手元においていつでも読むことができる環境にあってそれらを全く読んでないのです。あるいは読みはじめても途中で飽きます。
おもしろいマンガをなるべく買わなかったのは、おれはおもしろいマンガを買っても読まないことがわかっていたからなんだなと。えらいぞ昔のおれ。
じゃあ、おれよ。おまえが好きで買って手元においてあるマンガはどういうマンガじゃ?と。自問自答するわけですよ。
その暫定的な答えとして「楽しいマンガ」をおれは好きなんだなと。
『楽しいマンガ」の「楽しい」の表現がしっくりハマってない気がするんですよね。
「おもしろい」というざっくりの中にありつつも「楽しい」。そのマンガの中に居たいと思うような、っていうと、また微妙にニュアンスがちがってくるんですけどね。つまりは、作家性の強い作品、その人じゃないと描くことのできない世界があるというかさ。
前記のようないい湯かげんの世界ですか。
翻ってあたりまえのことをいっているような気がしますが。そしてそれはAIじゃ出にくいですよね。そのマンガのその世界に居たいかというとなかなか懐疑的だわなあ。

ところがそのいい湯かげんの楽しいマンガというのは限りなく個人的なものになっていくのですね。それは健全な気もしますが。

ということでおもしかったですよ。大石マンガこれからもずっと読みたいわ。
posted by すけきょう at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年05月18日

BETTER THAN SEX - 研そうげん ジーオーティー 

エロマンガです。成年コミックマークを3つ必要なほどハードにガッツリとしたエロマンガです。

何回も書いていますが、エロマンガに、いや、エロについてなにか言及するのはとても難しいです。
各エンタメのその年のランキングやオールタイム・ベストにAVとか成年コミックってないじゃないですか? 性嗜好はひとそれぞれだからですね。

だから本作はエロでは語りません。おもしろいマンガとして。そしておもしろいSFとして。それは、その年の「マンガ」としてランキング入りするレベルのものとして。

で、一応以下本文。

あと一応エロの感想として軽く。おれにはエロかったよ。入院中にFANZAからのDMで引っかかるものを感じて買ったら素晴らしかったと。お陰で入院中に成年コミックを買うのがブームになったくらい。まったくかなりな確率で死ぬ手術を終えてわりに安静にしてろって状況でよお。
ただまあかなりハードだしリョナ要素(検索しられ)も強めなので。
追記あり
posted by すけきょう at 15:32| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月26日

70年目の告白 〜毒とペン〜 高階良子 秋田書店




実は作者について知りません。びっくりするくらいのベテランですから。タイトルの通りのキャリアのベテランです。
大御所漫画家の生い立ちからのまんが道。全3巻。
タイトルにある「毒」は毒親のことですね。
彼女の人生に立ちはだかり続けていた母親との軋轢を描いた70年のまんが道。
これがすさまじかった。
知ったのはTwitterだったのです。圧巻とフォローしていた漫画家の方々が書いていたので、ちょうどセール日と重なっていたので「ふーん」と軽い気持ちで買い、軽い気持ちで読みはじめたがこれが凄まじかった。すっかりやられてしまった。

オープニングは母の死。そして戦時中の空襲により母が自分を生むところにタイムスリップして出産前の母親描写から物語を今の作者が見守るところからはじまる。
家を伯母にとられバラック小屋に子供4人と暮らす。父親は仕事が忙しくてめったに家に帰らない。そこでいて母親にあからさまにいびられる日々。

マンガという生きがいをみつけても馬鹿にされたり書き溜めたノートを捨てられたり、「マジか」ってエピソードがつづく。
それでいて中学卒業とともに就職。住み込みの職場で仕事の合間に布団にちゃぶ台を置いてマンガを描くというエクストリームまんが道。

そして作者は漫画家として成功するんですよ。そうなると母親が寄生しはじめるというネバーエンディング毒沼。
アシスタントの前で主人公をdisり自分がえらいことをアピールするとかいびるのが止まらないまま、ついには精神を病んだりする。

毒親ってのがよくわからないのは、結局のところ親を捨てきれてなくていつか自分をかわいがってもらえるっていくつになっても思ってるから、絶望に絶望を重ねても暗闇の中に一筋の光を見出すって構造なんかなあと。作者も「今の」作者視点から分析されてるけど。

基本というか最初から最後までラスボスとして母親は立ちはだかっているのだけど、終戦から昭和平成という時代にはなんていうか別の敵も多いんだよね。
中学のときの牛乳のエピソードがとくに強烈だった。
クラスの牛乳が足りないっていったとき牛乳嫌いの同級生が手をあげて「私のをあげます」という。それをみていた担任が、作者に「あなたは生活保護でタダで給食を食べてるんだからこういうときはすすんで差し出せ」なんていうのよ。
で、それがショックで「自分は牛乳が飲めない」という自己暗示をかける。
なんかこういう強烈なエピソードが多いんだよな。
結局、母親が財産を管理するって名目で作者の稼ぎの大半を貯金してたものの、それは晩年にボケた母親のケアホームのためになくなるとか。

いやハードすぎね?と絶句する。

昔から大好きだったって理由でフォローした漫画家もときおり毒親の話をツイートするのを読んで衝撃を受けていた。
こういうのやっぱりあるんだなあ。

こういう「まんが道」もあるんだなと。凄まじかったです。
posted by すけきょう at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月20日

ようきなやつら 岡田索雲 双葉社


このマンガがすごい2023の18位。
各コメントを読んで気になったのが1位とこれでした。

短編集。webアクションで読み切り連作として発表されていたものに電子書籍として別に発売されていたものに描き下ろしを加えてグググググと完成度を増して1冊にまとめたようです。

妖怪系を主人公としての読み切りが最後のほうで集結といった具合。

かまいたちの子供がほしいただのいたちがかまいたちの奥さんとセックスをしてばかりいる「東京鎌鼬」と、他人の心が読めるゆえにクラスから孤立しているサトリが先生の尽力で心を開く「忍耐サトリくん」は、ギャグテイストが強くて(声出して笑ったよ)、そういう路線なのかと思ったら、「川血」からテイストが変わり「峯落」から”思想”が入っていき、関東大震災の日本人による東京での朝鮮人虐待を描いた圧巻の「追燈」。そして描き下ろしでグググとまとまるという段取りになっております。

読み応えがあり、それぞれテイストががらりとちがうのにきっちり引き込まれる。

このマンガがすごい経由だったのでタイトルでひいて買ったから読み終わるまで気が付かなかったけど「メイコの遊び場」のひとだったのね。これは全3巻読んでいたのにな。
そう気づくとあらためて似たところも多いのですが、タッチがちがうので気が付きませんでした。各話ごとにガラリと話がちがうし絵のタッチもちがう(でも、統一したものもある)ので気が付きませんでした。

読み応えのある完成度の高い1冊になっております。なるほどこの年を代表する短編集になっておるなと。





1970年代が舞台。いつも眼帯をしているメイコ。いつもひとりだったメイコ。そして「仕事」をしているメイコ。
あるとき地元の同年代の少年少女に誘われていっしょに遊ぶようになる。
彼女が眼帯をとった目に見つめられると「彼女の世界」に引きずり込まれ彼女の遊び場のおもちゃになる。そうされると「壊れる」。
ということで、前半は友達といろいろな遊びをやって、後半はその遊びでひと(ほぼヤクザ)を壊すという段取り。
ラストがいいんだよな。とってもいい。いまもどこかにアラフォーくらいのメイコがいるのかしらねえ。
posted by すけきょう at 10:20| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月19日

光が死んだ夏 モクモクれん KADOKAWA



このマンガがすごい2023のオトコ編1位です。
ここ10年はもうジャンプ無双といえるような状態ですよね。1位は意外にそうでもないと思いますが。今回もベスト10には6作品が集英社ジャンプ系です。おそろしや。
その中にあって1位で非集英社でデビュー連載作です(もっともデビュー連載が1位も多い気はする)。
なにより、書店で「目立つ表紙だな」と記憶して、なおかつ最初の10ページくらいの立ち読み用小冊子をパラパラと読んではいた。
それが1位になるので「あ、あれかあ」と読もうと思ったのでした。

既刊は2巻。

中学生。主人公よしきの親友の光は死んだはずなのに気がついたらそこにいる。それを指摘するとなにかが現れる。そして黙ってくれないと殺すことになると泣きながら懇願される。くわえて親友がいないことに耐えられないのでよしきは受け入れる。
ところがさまざまな怪異がおこりはじめる。

光の中身がちがう。くわえてそれ起因でいろいろと不気味なことが起こってるということ以外はのどかで穏やかでおバカな日々。

全体的にホラータッチのホラー漫画ということがいえますが、あまり人は死んだりしないし大きなことは起こらない。ただ、ずっと不穏な感じはある。でも、それはよくいうお笑いでの「言い方やん」的に「描き方やん」って。
だから、よしきと少しのひと以外にはその変化は伝わってなくて、光は相変わらずバカでひょうきんで人懐っこくてちょっとイケメンの「いいヤツ」で、よしきのことが大好きということになってる。

だが、よしきの動揺が全くおさまらないまま、話はいや〜な方向には動いていく。

光のほうのモノローグもけっこうあるのよね。こういうのセオリーとしては、ジンガイに変わった光は謎の存在としたほうがいろいろと話しが早いんだけど、光は自分がジンガイでありつつも思考パターンは生前の光としている。ただまあ光は自身がジンガイであることでの思考や記憶も同時にあって、そっちのほうはあんまりよくわからないようになってるかな。
そしてよしきのほうもモノローグはある。最近はこういうのがよくあるよな。
ラブコメなんてのはセオリーとしてどっちかの内面はみせすぎないほうが話が盛り上がるんだけどな。
本書もわかると思いますが、よしきと光のBLっぽさはある。たぶん、人気の秘密はそこかなと思いますよ。

作画では手の描画が印象に残りますね。痩せたオトコの筋張った、でも若いからみずみずしい手。2巻に光の手をとり指でなぞるシーンのなんともエロティックなことよ。
ホラー要素として活字で表現している虫の声の音。これが夏感と恐怖感を非常に煽っててタイトル回収感あるか。

いいクリフハンガーで3巻につづくし楽しみではあります
posted by すけきょう at 15:40| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月15日

2023 このマンガがすごいに推した5本のマンガのリンク

●1位 作品名:(このマンガがすごい内での順位18位)

鍋に弾丸を受けながら 青木 潤太朗/森山 慎 KADOKAWA: ポトチャリコミック

●2位 作品名:(このマンガがすごい内での順位 圏外)

「絶滅動物物語 」 うすくらふみ 今泉忠明 (小学館): ポトチャリコミック

●3位 作品名:(このマンガがすごい内での順位20位)

完結 ゴールデンカムイ 31 野田 サトル 集英社: ポトチャリコミック

●4位 作品名:(このマンガがすごい内での順位23位)

「たま」という船に乗っていた 石川浩司/原田高夕己 双葉社: ポトチャリコミック

●5位 作品名:(このマンガがすごい内での順位9位)

緑の歌 - 収集群風 - 上 下 高 妍 KADOKAWA: ポトチャリコミック

本書に書いた文章と同じことはそれぞれに書いてますので参照のほど。

※その他、新連載の未単行本化作品、海外作品、web掲載作品、選考対象期間以前の完結作品、マンガ関係本(ファンブックや研究書ほか)など、特記してお勧めしたい作品がございましたら、ご自由にお書きください。 

これも掲載されたので

ROCA いしいひさいち (笑)いしい商店: ポトチャリコミック


ということでした。今年も良いお年を。(まだ今年中にいくつかのマンガ感想文は書くかもしれませんが)

余談。
「このマンガがすごい」は対象期間が前年の10月1日から今年の9月30日までになっております。
その期間に連載されているかコミックが発売されたものが対象になります。
コミック派のひとは10月以降に発売されると対象外になるという弱点があります。雑誌やWEBで対象期間中に掲載されたものは取り上げてもいいんですけどね。雑誌で読まなくなって久しいのでコミックという形にならないと可視化できない。
だから、コミック派のためになるべく1巻を9月にねじこめるならそうしていただけるといいなと編集各位にお願いしたいのです。


posted by すけきょう at 08:30| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月14日

ふみちゃんの楽園 さとまる まみ (ふゅーじょんぷろだくと)

ふみちゃんの楽園【コミックス版】(1)【電子書籍】[ さとまる まみ ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
ふみちゃんの楽園【コミックス版】(1)【電子書籍】[ さとまる まみ ] - 楽天Kobo電子書籍ストア
このマンガがすごい!に毎年ベスト5を書かせてもらうようになって5年ほど経つ。
ベスト5は前の年の10月からその年の9月末日まで発売された本が対象。
だいたいいつも送ったあと、「あ、これ惜しい」と思っていたのと出会うんだよね。本作もそのひとつ。

書けなくなって田舎の家に引きこもるような生活を送っている。彼氏が身の回りの世話をやっており、ふみちゃんは彼の作る料理や田舎の自然を満喫してはセックスをする。そう、セックスマンガなんですよウフフ。

理解ある彼とスローライフと自然とセックス。ふみちゃんは食べたいときに食べ、寝たいときに寝て、したいときにそれが昼でも野外でもセックスしたり自分の欲望を叶えているのです。彼は甲斐甲斐しく料理したり家事したり近所の人とコミュとったり。田舎の面倒なところ彼は楽しんで請け負ってくれてます。今年の流行語大賞にノミネートされてもおかしくない「理解ある彼くん」ですね。そりゃ楽園だわ。

本作を知ったのがTwitterのTLで今年1番の衝撃を受けたなんてあって「ほぉ」と思いながら手に取った次第。
表紙や内容を想像するにエロマンガじゃないのかな?と思いつつ読むとエロマンガではあるわけよ。
そんでもってそのアカの前後を読む限りそのツイートは女性っぽいのよね。そこにおれも衝撃を受けたのです。

なぜか?このエロマンガがおれにも「ちゃんと」エロいからです。

で、先程のTwitterの方が衝撃を受けたということは、もしかして男女ともにエロいエロマンガってこと?と思って。

ふみちゃんは奔放にいつでもどこでも彼氏をセックスに誘うし、彼氏もちゃんとつきあいますし、そのシーンもなんていうかちゃんと描いてます。女性エロマンガ特有のっていえるほどはみてないが、省略されていそうないろいろなシーンをちゃんと描いてるなあと。まあ、もしかして今の基準だと当たり前なのかもしれませんが。
それでいてこっちは今の基準のも多少は読んでいるから断言はできるのですが男性向けのエロマンガにもひけをとらないんですよね。まあ、シンプルに3文字で「抜ける」。

田舎でのセックスライフということで野外でいたす話が多いです。

ひきこもりぎみで人間嫌いぎみ(実際ふたり以外の登場人物は少ない)のふみちゃんが、村祭りがあるから行こうと彼氏に誘われたのに行かないと駄々をこねます。
で、彼はふみちゃんを浴衣に着替えさせて村祭りを見下ろす高台でレジャーシートを敷いて花火をみるのです(ここで食べるのがサンドイッチってのがいいよな)。
で、花火の下でセックスをする。
と、こういう感じです。

男女ともにエロく感じるってのが興味深くてさ。
男にはやや物足りないってひとがいそう。同じふたりだしセックスにすごくバリエーションがあるわけでもなく、ごくごくノーマルにセックスしてますからね。ふみちゃんが巨乳のバインバインってこともないし。
女にはたぶんえげつないシーンではあるけど下品ではないってのがあるのかもしれないな。
たとえば、射精シーン。たいてい中に出しててそれは「ビクンビクン」で表現してます。
そういう随所にある「汚い(と思われそうなところ)」描写を排除したり、はじまる前は必ず見つめあってチューしてからはじまるし、終わりもチューだし、やさしく声をかけるとか。なんか勉強になります。

エロ描写ばかりじゃなくて自然描写や料理描写もいいんだなこれが。

で、話が展開あるでなし、うまいもの、気持ちいいもの、心安らぐものであふれてます。まさにタイトル通り。他になにがいる?と思った。だから、2巻もあんまり余計なほうに展開しないでほしいなとは思いましたよ。

あと女の人は本作は抜けるのかどうかちょっと知りたいのでこっそり教えてください。


ふみちゃんの楽園【コミックス版】(1) (Bebe) - さとまる まみ
ふみちゃんの楽園【コミックス版】(1) (Bebe) - さとまる まみ
posted by すけきょう at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月13日

「たま」という船に乗っていた 石川浩司/原田高夕己 双葉社


たまという一世を風靡したバンドの自伝を、「たまのランニング(松本人志命名)」でおなじみの石川浩司氏が書いたものをコミカライズ。

藤子不二雄A氏のタッチをベースにあちこちのパロディを盛り込みながら、1981年から物語はスタートする。昭和56年。びっくりするくらい昔に感じる。おれももう生きてる年代だし、そこに暮らしてたんだけど。
貧乏な学生(から無職)が音楽活動をベースにだらだらと集まったりのほほんとおもしろおかしくやってるさまを描いてます。
まあ、実際のところ「お兄さん」たちではあるけどかなり個人的には離れてる生活に感じた。どくだみ荘やら男おいどんやらの世界。
貧乏バンドとして楽しくやってる自由な日々。でも、たまとしてもずんずん頭角をあらわしていく。

本作はそのまま全国区になるイカ天に出るところまで描いてます(まだつづきます)。

そのイカ天出演シーンに衝撃を受けた。

(45) たま イカ天初出演 - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=k9zjWv43bdA



こういうのいつまでも残っているわけじゃないんですが、このたまのテレビ初出演のシーン。これの「完コピ」が本作のクライマックスに用意してあるんだよ。これが衝撃で衝撃で。

これを見てからでもいいし、マンガを読んでからでもいいからみてほしい。すごいから。マンガの可能性を感じるから。

前記の通り、基本藤子不二雄Aタッチのマンガマンガしたものなのにリアルさと迫力と臨場感がすごいんだよ。思わず動画とマンガと10回くらい見比べちゃったよ。

マンガで音楽を描写する。いまアニメで「ぼっち・ざ・ろっく」などが流行ってていつつもマンガで音楽を描画するってのは問題なんだよな。
本作はそれに大きな風穴が開いた気がしたんだよ。
今年大きな衝撃を受けたよ。

音楽が聞こえたし、動画をみたらマンガにみえたよ。この感覚をみんなわかってほしいわ。

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2022年12月12日

ソアラと魔物の家 山地 ひでのり 小学館




既刊2巻。
魔法と剣の世界。孤児だった少女は魔物と戦うために軍に拾われ鍛えられ強くなり、いよいよ初陣におもむくというタイミングで魔王軍が休戦を申し込んでくる。少女はお暇を出される。急に自由になってもやることがない少女、ソアラさんは放浪の旅に出る。そこでドワーフ3人組と出会う。彼らは魔界建築士だった。ソアラさんも巻き込まれ、魔物たちのために家を作るという、劇的ビフォーアフターな話。

ゴブリンの家を作り、スライムの家を作りってやる。魔物も家があることで心が穏やかになるという。

そして2巻で物語が進行していくのよね。これがまたいい感じのストーリー。
ネタバラシしていいんだろうか。微妙なところですが、2巻冒頭で魔王軍の魔王の家にいくわけです。そこからこの物語のミッションがみえてくるという。ずっといろいろなモンスターの家をまわるビフォーアフターな1話読み切り展開かと思ってたんで、やや胸熱な展開に意表をつかれました。

見開きで家の断面図で細かい注釈を読むのはもう少年の心に戻りまくりで楽しいし、そういう絵がドーンと出てくることは鬼のように描き込まれてるってことだしな。実際、見惚れるくらいすごいです。鳥山明風ということもいえるかもしれませんが。

個人的には電書で買ったのですが紙の本で欲しかったと思うくらい。紙の上に印刷された絵をみたかったと思うくらい美麗で精緻な書き込み。

小学生男子に読んでほしいマンガ1位だよ。
posted by すけきょう at 09:13| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月11日

恋とゲバルト 細野不二彦 講談社


前作「バディドッグ」は実際細野不二彦のキャリアの頂点にあると思っていたしぜひとも最終巻もここで取り上げたかったのになかなか無念なことになったのが2022年の後悔のひとつです。

そのバディドッグの感想文で細野不二彦氏には異世界ものを描いてもらいたいなあとそのことも書いていたんですけど。その理由も。

と思ってたら本作です。本作は異世界ものではありませんが、限りなくIFの世界の物語です。

舞台は昭和。学生運動がはなやかなころ。左翼の学生に対する用心棒として主人公は雇われる。そして学生が暴れた時には猿面をつけて現れ木刀で学生を蹴散らす。
ところが、左翼学生のほうも用心棒を雇う。ヌンチャクを振り回す赤いヘルメットの学生。
それとは別に主人公は殺伐とした学校の裏庭に温室で花を育てていた清楚な女性と出会い一目惚れ。これが実は上記のヌンチャク使い。

そして主人公は、一方では敵、一方では恋焦がれるひとと出会い運命の歯車が回りはじめる。まあそういう段取りになってます。

1巻のAmazonでのレビューで学生運動の流れが史実とちがうってお怒りの方がいらしました。
学生運動の時系列かディティールがちがうのかわかりませんが、その不満をとうとうと挙げておられました。
だから、本作はIFの世界の物語なんだよと思ったのですよ。架空戦記とか。

この舞台のこの時期のこの話ということはとても重要かと思われますけど、それはエンタメを上回るほどのことはないんですよ。
この舞台のこの時期のこの話といえば、山本直樹氏の「レッド」というモデルになった当人が「まんま」とおっしゃってたものがありますが、それと比較してどっちが優れているかとかは当時流行の言葉でいうところのナンセンスってやつですよ。

1巻に「これはこういうマンガです」という宣言代わりのメッセージが多数盛り込まれてます。

まず「昭和」があります。学生運動の歴史以外にも昭和文化が爆発してます。そしてそれらがストーリーにからみついていきます。
マンガが出てきます。やけにリアルな東京の風景が現れます。そこに当時生きていなきゃわからないディティールも描かれてます。食堂の吸い殻がいっぱいではみ出てる灰皿とか阿片窟みたいなジャズ喫茶、などなど盛り込みまくり。そこに当時の炭鉱の様子とかキーとなる話も盛り込んでいく博覧強記の無駄遣いな作風はいつも通りなんですけど、本作、明らかに作者ノリノリのところがあります。
でも、それは今はないということではたまたままだ生きているひとがいくらかいる「時代劇」なんですよ。

あと、本作、ヒロインの友達がシェークスピア研究会に入っててオフィーリアやらハムレットを演じるし、いろいろと本編にも関わってくるのよね。
そうだよ、このドラマの主人公とヒロインの間柄って「ロミオとジュリエット」じゃないか。
1巻での図書室の出会いなんてとても美してロマンティックですよ。これはなにかネタもとがあるんでしょうか。おれははじめてみた演出ですね。

もうひとつ。上記のとも関連はあるけど、他になんていうか隠しネタが大量にばら撒かれていると思ったんですよ。
これまた1巻にあったんですが、物語のキーとなる左翼を率いている優男が音楽室でピアノを弾いている。
「この曲なんですか?」「サティスファクションさ」ってシーン。そのあとローリングストーンズの同曲がこのころ発売されたけどあまり人気がでなかったって記述があるけど、それよりも、おれは手塚治虫氏の「火の鳥」を連想したんだよな。未来のほうの物語で音楽室で電子エレクトーンを駆使してサティスファクションを演奏しているシーンで同じやり取りがあった。
なるほど、そういう遊びが随所にあるんかなと思ったりした。
主人公が所属している学生寮の仲間はバイトくんとかどくだみ荘に出てきたモテないやつらだしな。
たぶん、これまでもあったんだろう、こういう作者がほくそ笑んでるような小ネタもいつもにまして多いような気がする。

それでいてこれらの要素がすべて物語の邪魔をいっさいしていない。

なにもわからない読者にとっても、運命に翻弄されるふたりと昭和学生運動時代の大学を舞台とした血湧き肉躍るアクションマンガとしても十二分に堪能できるようになっている。エンタメっすよ。エンタメ。細野不二彦氏はいつだって純度の高い娯楽を提供しようとされている。おれは本当に尊敬してます。

ただ、細野氏の弱点というか、細野氏が「現代」を描こうとするとどうにもズレが生じるんだよね。そこが歯がゆい。前作の「バディドッグ」だと主人公の女子高生の娘が稀勢の里のファンからくる大相撲ファンとか。いや、そういうひといるかもしれんけどさ、なんかちがわね?って。この感覚はかなり大昔からあるので、細野氏の作風芸風とは思ってわかってるけど、なんかファンゆえにそこのところに「一見さん読者にダサって思われないか」とか無意味に気をもむのよね。
だから、細野氏の時代物は時事ネタがないから安心して読むことができるんだよな。失礼な話でもうしわけないのですが。
同じ理由で上記の異世界モノもいいのかなと思ったのですよ。でも、昭和を描くのが1番無駄がないよなと。

本作のアクションや主人公美智子さん(すごくかわいい)他の筆がノリにノっておられ、細野不二彦氏はキャリアの何回めの頂点におられるのかわからんくらい充実した読み応え満点の内容。極上の純エンタメが堪能できる。
話はいよいよと佳境に入ろうとしているのだけど、今のところ5巻で一部完になっているのが悩ましい。早く続きが読みたい。





posted by すけきょう at 11:29| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする